PHPフレームワークは、ウェブ開発で広く利用されています。
数々の選択肢がありますが、中でもSymfonyとLaravelは一線を画す存在。両者とも高速かつ安全で、効率的にウェブアプリケーションを構築することができます。
どちらかのPHPフレームワークを利用しようと検討中の方は、決定する前にSymfonyとLaravelそれぞれのメリットとデメリットを把握しておきましょう。
今回は、最も人気の高い2大PHPフレームワーク、SymfonyとLaravelを徹底比較していきます。
Symfonyとは
Symfonyは、PHPコンポーネントで構成されるウェブアプリケーションフレームワークです。
再利用可能なPHPコンポーネントとMVCアーキテクチャによって、高い信頼性が確保されるため、大規模なプロジェクトに取り組む企業に理想的です。コードエラーを削減しながら、開発作業を効率化することができます。
Symfonyはコンテンツ管理システム(CMS)、マイクロサービス、ブログ、レポート、ボット、ECプラットフォーム、会計システムなどに使用されるのが一般的で、その目的は要件に応じたソフトウェア構築の簡素化にあります。フレームワークのコンポーネントは、高度なインストレーションに利用可能です。
Symfonyの主な機能
Symfonyには、ビジネスアプリケーションの開発と運用に有用な機能がいくつかあります。
MVCアーキテクチャ
スケーラブルで組織的なサイト開発に理想的なMVC(Model-View-Controller)アーキテクチャの採用によって、プロジェクトを整然としたファイルシステムで開発することができます。ビジネス層とプレゼンテーション層を継続的に分離することで、開発プロセスが効率化され、シンプルに。新たな機能の実装にかかる時間や労力が削減できます。
柔軟なURIルーティング
Symfonyのルートコンポーネントは人気が高く、多くのフレームワークで採用されています。ルートコンポーネントは、PHPアプリでのルート構築、汎用性の向上に貢献します。特注のPHPアプリケーション開発で、機能性の高いルートコンポーネントをお探しなら使用しない手はありません。アプリケーションのルートをYAMLで定義することができます。
Twigテンプレートエンジン
コントローラからHTMLを生成、もしくはメールのコンテンツを作成するには、アプリケーション内でHTMLを管理し、レンダリングにはテンプレートを使用するのがベストプラクティスです。Symfonyはテンプレートの構築に、多機能で高速、安全なTwigを採用しています。Twigのテンプレート言語を使用すれば、明瞭で可読性に優れたテンプレートを書くことができ、ウェブデザイナーにも優しく、ある意味ではPHPテンプレートよりも強力です。
Twigは、以下のような特徴から非常にユーザーフレンドリーです。
- 構文が驚くほどシンプルで、テンプレートの可読性が高まる。
- 空の配列を繰り返し処理する際、デフォルトのテキストを表示するなど、よくある状況に対するショートカットがある。
- 構文がシンプルで理解しやすいため、ウェブデザイナーも快適に作業を行うことができる。
- 構文は完全な単体テストが行われ、文書化されている。
セッション管理
SymfonyのHttpFoundationコンポーネントには、堅牢で柔軟なセッションサブシステムが組み込まれています。これは、シンプルなオブジェクト指向のインターフェースを通して、様々なセッションストレージドライバでセッション管理を行うことが目的です。Cookieはクライアントサイドのデータストレージを提供しますが、扱うことができるデータ量はごくわずか。ブラウザによって異なりますが、1つのCookieは1つのドメインあたり2KB程度。その点、セッションが提供するサーバーサイドのデータストレージでは、大量のデータを扱うことができます。
エラーログ
ロギングには、さまざな方法でログを記録、保管可能なPHPのログ管理ライブラリであるMonologを採用。Symfonyのログは環境に応じて、プロジェクトディレクトリのvar/log/dev.logとvar/log/prod.logサブディレクトリに保存されますが、config/packages/monolog.phpにあるMonologパッケージの設定ファイルで設定の変更が可能です。
Symphonyの使用事例
Symphonyで開発されている主なアプリケーションには、以下のようなものがあります。
- トリバゴ
- Drupal
- Wikimedia
- phpMyAdmin
- Dailymotion
- Spotify
- NatGeo
- OpenSky
- Doctrine
- BlablaCar
- Vogue France
- Doc planner
これはあくまでも一例であり、Symfonyを使えばほぼすべての一般的なアプリケーションを構築することができます。学習管理システム、金融アプリケーション、SaaSアプリケーションなども開発可能です。
Laravelとは
Laravelは、創造的で美しい構文が特徴的なオープンソースのPHPウェブアプリケーションフレームワーク。Symfony同様、MVCアーキテクチャを採用しています。わかりやすく簡素化された記述スタイルで知られ、最小限に設定で利用可能です。ウェブアプリケーションの構築に様々なフレームワークの最新コンポーネントを使用しており、PHPを扱い慣れている人にとって習得しやすい選択肢です。
そのシンプルさによって、開発作業の効率化が期待できます。また、依存関係の管理ツールとモジュール化パッケージも組み込まれており、優れた機能、高いパフォーマンス、検証セッション、適応性を考慮すれば、あらゆるタイプのプロジェクトに応用できます。SaaSベースのアプリケーション、多言語CMSプラットフォーム、オンデマンドのオンライン配信アプリ、自己ホスティング型の監視アプリなどが一般的な使用事例です。
Laravelの主な機能
Laravelには、ローカリゼーション、ビュー、セッション管理、特定のコントローラへのリクエストルーティング、組み込みの認証システムといった便利な機能が多数あります。
MVCアーキテクチャ
先にも触れましたが、LaravelはSymfony同様、プレゼンテーション層とビジネスロジック層を分離するMVC(Model-View-Controller)モデルを採用しています。LaravelのMVCデザインパターンには、多数のビルトイン機能が含まれ、アプリのパフォーマンス向上、およびセキュリティとスケーラビリティの強化を後押しします。
組み込みの認証システム
AuthとSessionファサードは、一般的にLaravelの統合された認証とセッションシステムに接続するのに使用されます。Cookieを使用したブラウザベースのリクエスト認証に役立ち、ユーザーの検証、認証情報の確認も可能です。さらに、ユーザーのセッションCookieを即座に取得し、認証情報をセッションに保存できます。
Bladeテンプレートエンジン
LaraveのテンプレートエンジンであるBladeは、記述構文とテンプレートエンジンの使用を簡素化する優れものです。条件文やシーケンスは、Bladeが提供する構造の1つで、ビューファイルを作成し、.php拡張子の代わりに.blade.php拡張子で保存するだけで、テンプレートが生成されます。生成されたテンプレートは、resources/viewサブディレクトリに格納され、追加ファイルで拡張可能なマスターテンプレートを構築できる点は、Bladeテンプレート最大のメリットです。
Artisanコマンド
LaravelのコマンドラインツールであるArtisanは、繰り返し実行するプログラミングプロセスの自動化に便利です。データベース構造やスケルトンコードも構築することができます。さらにマイグレーションタスクの管理にも便利で、異なるデータベースシステムの管理も容易に。
Artisan経由でMVCファイルを作成すれば、そのリソースや設定と対話することができます。さらに、自分でコマンドを作成して使用したり、アプリケーションをさらに効率化するためにコードを書いたりすることも可能です。Artisanの能力はそれだけにとどまらず、マイグレーションを作成したり、パッケージアセットを公開したり、その他さまざまな関連操作を実行することもできます。Artisanコマンドは多数用意されており、独自のコマンドが必要になる状況でも、このビルドインコマンドを好む人が多いようです。
独自の単体テスト
Laravelは、アプリケーションの構築に最も広く使用されているPHPフレームワークですが、その革新的なテスト機能もまた注目に値します。Laravelでのテストには、Feature(機能)テストとUnit(単体)テストの2種類あり、前者ではコードベースをテストし、後者ではクラス、コントローラ、モデルなどを作成することができます。
Laravelの使用事例
美しく表現力豊かな構文が特徴のLaravelは、ウェブアプリの構築に理想的。Laravelで構築されている代表的なアプリケーションには、以下のようなものがあります。
- Pfizer
- BBC
- About you
- Ratio
- TourRadar
- Crowdcube
- 9GAG
- Fingent
- Invoice Ninja
- Cheesecake Labs
- Belitsoft
- Innowise Group
SymfonyとLaravelの徹底比較
LaravelかSymfonyのどちらかを選択する際には、それぞれのメリットとデメリットを把握しておきたいところ。どちらがプロジェクトに適しているかを判断するために、この2つのフレームワークの類似点と違いを見ていきましょう。
類似点
LaravelとSymfonyはどちらもPHPベースであるため、いくつかの類似点も見られます。
- プログラミング言語がPHP
- クロスプラットフォーム対応
- マルチユーザー、多言語コンテンツをサポート
- アプリケーションのフレームワーク、インターフェースのデザインパターン、テキスト検索
- MVCアーキテクチャとORM(オブジェクト関係マッピング)
- 一般的なタスク用のCLIツールとテストツール
- フルスタックフレームワークで、複数のプラットフォームで動作
- 国際化に対応し、拡張性に優れる
- 大規模なコミュニティによる開発者サポートがある
人気と求人需要
統計によると、1万1,654件のサイトがSymfonyを使用しているのに対し、Laravelは13万5,974のサイトで使用されています。市場シェアに関しては、Laravelは訪問数1万件、10万件、100万件のウェブサイトで最もシェアを占めています。GitHubの統計では、Symfonyのスター数は2万5,400、Laravelは6万5,800です。また、コミニュティの貢献者数も考慮すべき重要な点。Symfonyには2,394人、Laravelには2,576人の貢献者がいます。以上の数字から、Laravelの求人需要の方が高いことが見て取れます。
学習曲線
Symfonyの方がLaravelよりも習得に時間がかかります。ドキュメントは非常に有益ですが、Laravelの豊富なリソースとコミュニティサポートには相当しません。対するLaravelは習得しやすく、数々の解説記事、動画、ドキュメントを通してLaravelを徹底的に学ぶことができます。
パフォーマンス
以前のバージョンではLaravelに分がありましたが、Symfony 4+登場以降、Laravelがパフォーマンスで大きな差をつけることはほぼありません。かつて強みであったLaravelのパフォーマンス改善は、もはや過去のもの。どちらのフレームワークを選択するにせよ、最新バージョンを使用すれば、パフォーマンスに大差はないでしょう。
モジュール性と拡張性
Symfonyの再利用可能なコンポーネントの方がモジュール性に優れており、大規模で複雑なプロジェクトでは、そのシンプルなコード編成から大きなメリットを享受することができます。このため、熟練のPHP開発者は、LaravelよりもSymfonyを好む傾向にあります。
Laravelで作成できるのは、MVCベースのアプリのみ。したがって、MVCパラダイムから外れると対応できなくなります。
しかし、Laravelの構築済み依存関係によって、アプリケーションの立ち上げ、開発、実行は非常に簡単です。大規模なアプリケーションを開発する場合については、アプリのスケーリングを考慮し、依存関係やプラグインを慎重に選択する必要があります(プラグインを多数使用すると、スケーラビリティに影響が出る)。
セキュリティ
Symfonyのセキュリティシステムは堅牢ですが、セットアップがやや複雑である可能性も。また、さまざまな認証方法と詳細な権限設定があります。対するLaravelは、よりわかりやすいアプローチをとっており、基本的な機能で十分なセキュリティが確保されます。
ORM
Symfonyは、Doctrineを通してデータを取得するためにオブジェクト関係マッピング(ORM)を採用しており、SQLite、SQLServer、SAP Sybase SQL Anywhere、MySQL、Oracle、PostgreSQLに対応しています。Laravelは、Eloquent ORMを採用。データベースは、MySQL、SQLite、PostgreSQL、SQLServerをサポートしています。
データベースの移行
Symphonyでは、データベースの移行が自動化され、モデルのフィールドに必要になるのは簡単な定義のみ。これだけ聞くと、この点ではSymphonyが優勢と思えますが、Laravelのデータベース移行は手動にもかかわらず、フィールド定義が不要です。したがって、データベースの移行という観点では、どちらもそれぞれに優れています。
サポートとコミュニティ
Symfonyには優れたドキュメントがありますが、複雑です。Laravelは人気の高さゆえ、数々のトレーニング、オンライン学習コース、サポートリソースがあります。さらに、Laracasts、Treehouse、Codebright、Sitepointなどの学習サービスを通して学ぶことも。結論として、Symfonyの方が習得の難易度が高く、ドキュメントは参照できるものの、Laravelに匹敵するほどの解説記事やコミュニティサポートはありません。
SymfonyとLaravelのどちらを選ぶべきか
LaravelとSymfonyのどちらを選ぶかは、最終的な目的によって異なるため、一概にどちらかが優れているとは言えません。
以下に該当する場合は、Symfonyを選ぶのが得策です。
- 複雑なエンタープライズアプリケーションを開発する場合(Symfonyはよく構造化され、拡張可能で、メンテナンスが行き届いている)
- 重要な長期プロジェクトに取り組む場合(Symfonyは今後6年間の明確なリリース日が決まっており、途中で計画変更が必要になる可能性が低い)
以下に当てはまる場合は、Laravelをおすすめします。
- PHPフレームワークを初めて使用する場合(Laravelは習得が容易で、構文もシンプル。学習リソースも豊富)
- スタートアップで製品を開発してロジックをテストしたい場合(Laravel開発者の採用は比較的容易)、また素早くアプリを開発したい場合
いずれを選ぶにしても、フレームワークを運用するためにホスティングサービスが必要になります。Kinstaのアプリケーション&データベースホスティングソリューションは、小さなPoC(概念実証)アプリから、複数の統合データベースを持つ大規模なインタラクティブアプリまで、あらゆる種類や規模のプロジェクトに適しています。
アプリケーションホスティングのプラットフォームは、開発者がコーディングに専念できるように設計されており、サーバーサイドの面倒な作業は、経験豊富なKinstaのエンジニアが担当。アプリケーションは、GoogleトップクラスのプレミアムティアネットワークおよびC2マシンで実行され、Cloudflare統合によって、高いセキュリティも保証されます。さらに、Kinstaでホストするデータベースとのシームレスな接続も実現します。
アプリのデプロイ方法は非常にシンプル。GitHubリポジトリに接続し、いくつかの設定を行うだけ。今ならどのプランを選択しても、初月は20ドル分のリソースを無料でご利用いただけます。
まとめ
今回は、機能性に優れたPHPフレームワーク、SymfonyとLaravelの比較をご紹介しました。
どちらのフレームワークを使用するのが良いかどうかは、目的とそれを実現する技術に依存します。
Symfonyは、最新の開発技術を必要とする複雑なウェブアプリケーション、もしくは長期の開発プロジェクトに適しています。短期間かつ限られた予算で、シンプルなウェブアプリケーションを構築するなら、Laravelがおすすめです。
あなたはPHPプロジェクトでどちらのフレームワークを使用していますか?以下のコメント欄でぜひお聞かせください。
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