ウェブ開発における技術スタックの選定は、新しいプロジェクトを開始する際に非常に重要です。技術スタックは、システム全体のスケーラビリティ、メンテナンス、全体的なパフォーマンスに直接影響を及ぼします。数ある中でも人気のある2つのオプションがLAMPとMEANです。どちらも柔軟性と使いやすさを誇るオープンソースのスタックで、ダイナミックなウェブアプリケーションを構築するのに有用です。
この記事では、これらのスタックの長所と短所を比較し、プロジェクトに適したスタックを選択できるようにお手伝いしたいと思います。
プロジェクトにおすすめの技術スタック
客観的に「ベスト」と呼べる技術スタックというものは存在せず、プロジェクト固有のニーズに合った選択肢を選ぶことが重要です。以下のセクションでは、LAMPとMEANの背景、コンポーネント、用途についてご説明します。
LAMPスタックとは
LAMPは、1998年から広く使われている、歴史あるスタックです。最初の技術スタックの1つであるLAMPは、その安定性と様々なウェブアプリケーションやフレームワークのサポートで高く評価されています。PHPベースのエコシステムは、小規模でコンテンツ駆動型のシステムに特に向いています。
主なコンポーネントは以下の通りです。
- Linux:LinuxはLAMPスタックのオペレーティングシステム(OS)です。フリーでオープンソースのLinuxは、多くの開発者にとって人気のある選択肢であり、必要なバージョンを選択でき、あらゆるプロジェクト向けに最適化されています。
- Apache:Apacheはスタックのウェブサーバーです。初期からあるサーバーであるにもかかわらず、カスタマイズ性が高く、使いやすい堅牢な性能を誇ります。
- MySQL:MySQLは、ウェブ開発向けに広く最適化されたリレーショナルデータベースです。信頼性が高く、使いやすく、複数の言語と互換性があるMySQLは、20年以上にわたって親しまれてきたツールであり、統合が容易であることも特徴です。
- PHP:PHPは、フロントエンドおよびバックエンドのウェブ開発向けの汎用言語です。多くの開発者にとって馴染みのある幅広い機能とライブラリがあります。
MEANスタックとは
MEANは比較的新しい技術スタックです。2013年にValeria Karpov氏により開始され、それ以来、順調に人気が高まっています。このスタックは同時に大量の接続を処理できるため、データによって駆動する大規模なリアルタイムアプリケーションに向いています。
主なコンポーネントは以下の通りです。
- Node.js:Node.jsがMEANスタックの基盤になります。Node.jsは言うなれば、JavaScriptをどこでも実行できるオープンソースのクロスプラットフォーム環境です。非同期アーキテクチャにより、リアルタイムアプリケーションを簡単に作成できます。
- MongoDB:MongoDBはデータベースでの、データのクエリとインデックス作成を可能にする強力な機能を搭載しており、アプリケーションでの大規模なリクエストの処理を後押しします。NoSQLに分類され、テーブルの代わりにドキュメントコレクションを使用しデータが保存されます。MongoDBでは、JSONのようなデータ構造でドキュメントを階層的に保存することになります。
- Express.js:Express.jsは高速で柔軟なバックエンドフレームワークであり、Node.js用のHTTPサーバーとして機能します。ルーティング、ミドルウェア、テンプレートなど、ウェブアプリケーションやAPIを構築する機能を豊富に備えています。
- Angular:AngularはGoogleによって開発されたオープンソースのフロントエンドフレームワークです。これをHTML、CSS、TypeScriptと組み合わせて、動的なシングルページウェブアプリケーションを構築することができます。Angularは迅速な開発と容易なテストを得意としており、モジュール型のコード開発が実現します。
MEANの詳細については、MEANスタックについてのこちらの記事をご覧ください。
LAMPスタックとMEANスタックの比較
LAMPとMEANはどちらも、ダイナミックなウェブアプリケーションを実行できますが、それぞれ異なるタイプのソフトウェアに向いています。そのため、2つのスタックの違いを理解して、プロジェクトに最適な選択肢を選ぶことが重要です。
言語とエコシステム
技術スタックを選ぶときは、どちらのプログラミング言語に慣れているか、あるいはどちらの方が習得しやすいかを考慮することをおすすめします。そして、好みの言語を使うことは、モチベーションや生産性の向上にもつながります。
LAMPではPHPが使用されます。PHPは成熟した、汎用性の高い言語で、コミュニティの規模も圧倒的です。PHPには、数多くのライブラリ、フレームワーク、ツールで構成される豊かなエコシステムが存在します。また、PHPの開発者コミュニティにより、新規利用者がスムーズに学習を進められるように、リソースやサポートが用意されています。
MEANはJavaScript上で動作し、すべての主要ブラウザでサポートされています。ウェブ上で最もユビキタスな言語の1つであるJavaScriptの構文はわかりやすく、開発をスピードアップするのに役立つリソースも豊富です。また、MEANは比較的新しい概念ではありますが、すでに活発なコミュニティが存在しています。
データベースシステム
MEANとLAMPは、全く異なる2つのデフォルトデータベースを採用しています。LAMPでは主にMySQLを使います。MySQLは人気と信頼性の高いリレーショナルデータベースで、はっきりと定義されたスキーマを使いテーブルにデータを格納します。対照的に、MEANは柔軟なNoSQLデータベースであるMongoDBを採用し、コレクションを用いたデータ格納を行います。
両者の主な違いはスケーラビリティです。MongoDBでは、複数のサーバーにデータを分散させるシャーディングによって、簡単に水平スケーリングが実行できます。一方、MySQLでは、CPU、メモリ、ディスク容量などのリソースをサーバーに追加する垂直スケーリングが可能です。垂直スケーリングはシャーディングよりも簡潔ですが、制限が多く、費用対効果も低めです。
MySQLとMongoDBの詳しい比較はこちらをご覧ください。
パフォーマンスとスケーラビリティ
WordPressやJoomlaのような人気システムを含む多くのアプリケーションで優れたパフォーマンスを実現するために、多くの開発者が長年にわたってLAMPの改良に従事してきました。しかし、トラフィックの多い複雑なアプリケーションでは、制限が見られる可能性があります。
MySQLは、あるポイントを超えるとスケーリングが難しくなり、スタック全体のスケーラビリティが制限されることがあります。また、Apacheは大規模な同時接続を処理するのに苦労し、さらなるパフォーマンスの問題につながる可能性もあります。
一方、MEANは、Node.jsのノンブロッキングI/Oと非同期処理により、あらゆる規模のアプリケーションにおいて、パフォーマンス面での強さを見せます。この高い並行性により、MEANスタックはパフォーマンスに影響を与えることなく、複数のリクエストを同時に処理可能です。また、MongoDBの水平スケーリングにより、大量のデータの処理にも対応できます。
LAMPスタックとMEANスタックの使用例
どちらのスタックにも長所と短所がありますが、どちらかを選ぶ際に最も重要なのは、「何に使うか」ということです。LAMPとMEANでは、似たようなアプリケーションを構築できますが、それぞれの強みは異なります。
LAMPスタックの使用例
LAMPスタックは小規模から中規模のウェブサイトやウェブアプリケーションに適していますが、特別な準備をすれば大規模サイトにも対応できます。
一般的な例としては、WordPress、Joomla、Drupalのようなコンテンツ管理システム(CMS)や、Magneto、OpenCartのようなECプラットフォームが挙げられます。
LinuxとApacheの組み合わせは、上記の用途におけるセキュリティや安定性の確保に一役買ってくれます。PHPを使用して、決済ゲートウェイやプラグインなどの機能を開発・統合することも可能です。LAMPの信頼性の高いデータベースは、これらのサイトで生成されるデータと相性がいいと言えるでしょう。
MEANスタックの使用例
MEANスタックは、シングルページアプリケーション(SPA)やリアルタイムで処理される機能を持つウェブアプリケーションに適しています。Node.jsはWebSocketを使ったリアルタイム通信に優れており、Angularは読み込みの素早さとメンテナンスの容易さに定評があります。
MEANは、MongoDBの水平スケーリングとNode.jsのノンブロッキングI/Oモデルの恩恵で、スケーラブルかつデータ集約的なアプリケーションにも向いています。また、JavaScript上で動作するスタックとして、MEANはフルスタックのJavaScript開発と高い親和性を誇ります。アプリケーション全体で単一の言語を使用することで、開発と保守がはるかに簡単になるでしょう。
技術スタックとKinsta
選択する技術スタックにかかわらず、それをホストする場所が当然必要になります。Kinstaのホスティングソリューションを使えば、スタックに関係なく、どんなウェブアプリケーションでもデプロイ可能です。Kinstaは、PHP、Java、Python、Node.jsなどの主要プログラミング言語をサポート。また、MySQL、PostgreSQL、Redisなどのデータベースを世界中どこでもホストすることができます。
KinstaではGoogle Cloud Platformを利用しているため、RAMやCPUリソースの枯渇を心配する必要はありません。また、サイバー攻撃からアプリケーションを保護するセキュリティ強化策や、プラットフォーム上でホストされるすべてのサイトを対象とした無料のDDoS攻撃対策も徹底しています。
まとめ
LAMPは、汎用性と豊富なリソースで知られる盤石の技術スタックです。しかし、ウェブ開発現場におけるトレンドの変化に伴い、LAMPは近年競争の激化に直面しています。つまり、よりモダンな技術スタックが台頭しているということです。MEANは、JavaScriptの柔軟性、MongoDBのスケーラビリティ、Node.jsの並行性を組み合わせた、あらゆる規模のアプリケーションに対応する堅牢な選択肢です。
最終的に、LAMPとMEANのどちらを選択するかは、実際のプロジェクトの要件、言語の好み、スケーラビリティの条件などにより決まります。
コメントを残す