Expressは、サーバーサイドのウェブアプリケーション構築に役立つ人気ウェブフレームワーク。そのインストール手順はどのOSでも比較的シンプルです。
この記事では、Expressの概要やメリットについてご説明した後、Windows、macOS、LinuxにExpressをインストールする方法を順にご紹介していきます。
Expressとは
Expressは、高速かつ柔軟、そしてミニマルなNode.js用ウェブフレームワーク。無駄な複雑さを排除し、最小限の作業でウェブアプリケーションやAPIを作成することを目的に開発されました。ルーティング、ミドルウェア、および繰り返しのタスクを管理するためのシンプルで汎用性の高いアプローチで、サーバーサイドアプリケーションの開発が簡素化されます。
Node.jsとの関係
Expressは、JavaScriptを使ってサーバーサイドアプリケーションを作成するプラットフォーム、Node.js上に構築されており、Node.js組み込みのHTTPモジュールを強化したり、ウェブアプリの構築と管理に役立つ機能を利用したりすることができます。
主な特徴
Expressは以下のような特徴から、多くのウェブ開発者に支持されています。
- ルーティングとミドルウェア対応:ルートを定義してHTTPリクエストを処理したり、認証、認可、データ検証などのタスク用のミドルウェアの統合が容易です。
- テンプレートエンジンとの統合:様々なテンプレートエンジンに対応しているため、サーバーサイドで動的なHTMLページを簡単に作成できます。
- HTTPリクエストとレスポンスを処理するためのAPI:HTTPリクエストとレスポンスを扱うための高度で使いやすいAPIを使用すると、クライアントとのデータ送受信が効率化されます。
- モジュール式で拡張性の高いアーキテクチャ:モジュラーデザインにより、独自のモジュールやサードパーティのパッケージを使って簡単に機能を拡張することができます。
堅牢な機能とシンプルさを重視するExpressは、ウェブアプリケーションを素早く効率的に構築したい人にとって理想的な選択肢です。
Expressを利用する企業
スタートアップや名の知れた企業のほか、個人のウェブ開発者、バックエンドエンジニアなどもExpressを利用しており、そのシンプルさと柔軟性から、あらゆるウェブアプリケーションプロジェクトで採用されています。以下は、Expressを利用する企業の一例です。
- IBM:グローバルIT企業のIBMは、サーバーサイド開発におけるフレームワークのシンプルさと効率性を活かして、さまざまなアプリケーションやプロジェクトにExpressを採用。
- Uber:バックエンドサービスの一部にExpressを使用し、高いトラフィック負荷に対応できるフレームワークとスケーラビリティを活用。
- Accenture:世界的な総合コンサルティング企業であるAccentureは、ウェブアプリケーション開発の技術スタックの一部としてExpressを採用し、その使いやすさと柔軟性を活用しています。
- Autodesk:デザインとエンジニアリングのソリューションで知られるAutodeskは、そのモジュラーアーキテクチャと拡張性を買い、ウェブアプリケーションの一部にExpressを採用している。
Expressを使用するメリット
ウェブアプリケーション開発において人気を誇るExpressには、開発者向けのメリットが多数あります。
開発プロセスの簡素化
わかりやすいAPIと適切なデフォルト値によって、サーバーサイドアプリケーションの構築を簡素化。これによって、複雑な低レベルの詳細を扱うことなく、アプリケーションロジックの記述に専念できます。
大規模なコミュニティとサポート
Expressには、フレームワークの開発、サポートの提供、さらに機能を拡張するサードパーティパッケージの開発に貢献する開発者で構成された、大規模なコミュニティが存在します。そのため、使用し始めたばかりのユーザーも安心で、問題に直面しても、他の開発者が共有している解決策を参考にすることができます。
ミドルウェア統合
ミドルウェアとは、HTTPリクエストの受信とレスポンスの送信を変更、処理するために使用する関数です。ミドルウェアを使用すれば、認証、認可、およびデータ検証などの機能を簡単に実装でき、クリーンでモジュール化されたコードを書くことができます。
拡張性とカスタマイズ性
モジュール式で拡張可能な設計によって、独自のモジュールやサードパーティ製パッケージで簡単に機能を強化可能。優れた柔軟性によって、プロジェクトごとの要件に応じたカスタマイズも容易です。
データベースとの連携
データベースとの接続が容易で、データを効率的に保存、取得することができます。MySQL、MongoDB、PostgreSQLなど、主要データベース管理システムを幅広くサポートしています。
また、データを扱うためのオブジェクト関係マッピング(ORM)レイヤーによって、データベースのクエリを書く手間も削減できます。
高パフォーマンス
軽量かつパフォーマンスに最適化されているため、Expressで構築するアプリケーションは、他のフレームワークで構築されたものよりも高速で応答性に優れている傾向に。短時間に大量のリクエストに対応しなければならないプロジェクトに適しています。
Expressを使用する前提条件
Expressを利用するには、以下の知識が必要になります。
- ネットワークとウェブサーバーに関する基礎知識
- コマンドライン、ターミナルの十分な使用経験
システム要件
Expressを実行するには、お使いのシステムが以下の要件を満たしている必要があります。
- 対応OS:Windows、macOS、Linux
- ハードウェアの要件:最小限(Node.jsに依存)
- Node.jsのインストール:Expressをインストール前に必要
バージョン
Expressのバージョンは主に以下の2種類があります。
- 安定版(Stable):十分にテストされた信頼性の高いバージョンで、安定性を優先する本番環境やプロジェクト向け。
- 最新版(Latest):最新機能と改善点を含み、安定性には欠ける。最新のアップデートを試したい、潜在的な問題のリスクを念頭に置いている場合に適している。
また、スムーズな統合と競合を最小限に抑えるため、選択したバージョンとプロジェクトで使用する他のライブラリとの互換性は必ず確認してください。
Expressのインストール方法
Expressのインストール方法は、お使いのオペレーティングシステムによって異なります。以下、OS別に手順をご紹介していきます。
WindowsへのExpressのインストール
WindowsマシンにExpressをインストールするには、以下の手順に従ってください。
1. Node.jsをインストールする
Expressをインストールする前に、まずはNode.jsをインストールします。Node.jsの公式ダウンロードページから、適切なWindows版をダウンロードしてください。
ダウンロード後、インストーラーを起動し、プロンプトに従ってインストールを実行してください。
インストール後は、コマンドプロンプトで以下を実行します。
node --version
これによってインストールされたバージョン番号が表示されれば、Node.jsが正しくインストールされています。
2. npmをインストールする
npmは、Node.jsの公式パッケージマネージャーで、Expressなどのライブラリのインストールに使用します。npmをインストールするには、管理者用のコマンドプロンプトを開き、以下のコマンドを実行してください。
npm --global
これによって、最新バージョンのnpmがインストールされます。インストール後は、次のコマンドを入力し、npmが正しくインストールされているかを確認します。
npm --v
3. ディレクトリとプロジェクトを作成する
Expressをインストールするには、Expressを格納するためのフォルダを作成します。コマンドプロンプトを開いて、以下を実行してください。
mkDIR ExpressProject
これで、カレントディレクトリに「ExpressProject」という名前のフォルダが作成されます。
次に、以下で作成したフォルダに移動します。
cd ExpressProject
ディレクトリに移動したら、次のコマンドを使ってExpressをインストールします。
npm init
これでプロジェクトの構成と依存関係を保存するための基本的なpackage.jsonファイルが作成されます。
アプリケーション名とバージョン番号を指定するプロンプトが表示されるため、EnterまたはReturnキーを押して、デフォルトの設定をそのまま保存します。ただし、以下のようなプロンプトが表示されることもあります。
entry point: (index.js)
この場合は、「Index.js」を任意のアプリケーション名に変更してください。
4. Expressをインストールする
package.jsonファイルを作成したら、以下のコマンドでExpressをインストールします。
npm install express
これでExpressがグローバルインストールされ、マシンのどのディレクトリからでもアクセス可能な状態になります。
5. サーバーの起動する
以下のコマンドでサーバーを起動します。
DEBUG=nodeapp:* npm start
それから、ブラウザで「http://localhost:3000」にアクセスすると、Expressのウェルカムページが表示されます。
以上で完了です。早速Expressを使ってウェブアプリケーションの構築を始めましょう。
macOSへのExpressのインストール
続いて、macOSにExpressをインストールする手順を見ていきます。
1. Homebrewをインストールする
Homebrewは、アプリケーションを容易にインストール、管理できるmacOS用のパッケージマネージャーです。
ターミナルを開いて、以下のコマンドを実行してください。
/usr/bin/ruby -e "$(curl -fsSL https://raw.githubusercontent.com/Homebrew/install/master/install)"
EnterまたはReturnキーを押して、デフォルトの設定を保存すると、Homebrewのインストールが開始されます。
2. Node.jsをインストールする
Expressをインストールする前に、Node.jsのインストールが必要になります。Node.jsの公式ダウンロードページから、macOS版インストーラーをダウンロードします。ダウンロード後、インストーラーを起動し、プロンプトに従ってインストールを行います。
インストールを終えたら、ターミナルで以下を実行します。
node -v
これによってインストールされたバージョン番号が表示されれば、Node.jsが正しくインストールされています。
3. Expressをインストールする
ターミナルで以下のコマンドを実行します。
npm install -g express
これでExpressがグローバルインストールされ、マシンのどのディレクトリからもアクセス可能な状態になります。
4. Express Generatorをインストールする
Express Generatorは、Expressアプリケーションのひな形を素早く生成するのに役立つCLIツール。ターミナルで以下のコマンドを実行してインストールしてください。
npm install -g express-generator
インストールしたら、Express Generatorを使ってExpressアプリケーションを作成できます。
5. Express Generatorを使ってアプリケーションを作成する
Express Generatorでアプリケーションを作成するには、ターミナルで以下のコマンドを実行します。
cd ~/FolderName
「FolderName」は、アプリケーションを格納するフォルダの名前に置き換えます。
以下でアプリを作成します。
npx express-generator --view=pug AppName
「AppName」 は任意のExpressアプリ名に置き換えてください。
6. Expressサーバーを起動する
Expressサーバーを起動するには、以下のコマンドを実行します。
npm start
実行すると、デフォルトのポート(通常は3000)でExpressサーバーが起動します。任意のウェブブラウザで「http://localhost:3000」にアクセスすると、Expressのウェルカムページが表示されます。
以上で完了です。早速、アプリケーション開発に取り掛かりましょう。
LinuxへのExpressのインストール
LinuxマシンにExpressをセットアップするには、以下の手順に従ってください。
- Node.jsをインストールする
- アプリケーションのディレクトリを作成する
- Expressをインストールする
- Express Generatorをインストールする
- Express Generatorを使ってアプリを作成する
- 依存関係をインストールする
- Expressサーバーを起動する
1. Node.jsをインストールする
Expressをインストールする前に、お使いのマシンにNode.jsをインストールします。ほとんどのLinuxディストリビューションでは、パッケージマネージャーを使用してインストールします。UbuntuやDebianの場合は、以下のコマンドを実行します。
sudo apt install nodejs npm
インストール後、ターミナルで「node -v」を実行すると、インストールされたバージョン番号が表示されます。これでNode.jsが正しくインストールされているかどうかを確認します。
2. アプリケーションのディレクトリを作成する
次に、以下のコマンドを実行してください。
mkdir AppName
cd AppName
「AppName」 はアプリケーション名に置き換えてください。
続いて、以下のコマンドでpackage.jsonファイルを作成します。
npm init
ReturnまたはEnterキーを押してデフォルトの設定を保存します。ただし、以下が表示される場合は、「index.js」を任意のメインファイル名に変更してください。
entry point: (index.js)
3. Expressをインストールする
ターミナルで以下のコマンドを実行してください。
npm install express --save
これによって、Expressがアプリケーションディレクトリにインストールされます。package.jsonに依存関係も追加されるため、必要があれば簡単に再インストールが可能です。
4. Express Generatorをインストールする
Express Generatorは、Expressアプリケーションのひな形を素早く生成するためのCLIツールです。ターミナルで以下のコマンドを実行してインストールします。
npx express-generator
インストールしたら、Express GeneratorでExpressアプリケーションを作成できます。
5. Express Generatorを使ってアプリケーションを作成する
Express Generatorでアプリケーションを作成するには、ターミナルで次のコマンドを実行します。
express --view=pug AppName
6. 依存関係をインストールする
以下のコマンドで、Expressの依存関係をインストールします。
cd AppName
npm install
7. Expressサーバーを起動する
最後に、以下のコマンドでExpressサーバーを起動しましょう。
npm start
実行すると、デフォルトのポート(通常は3000)でExpressサーバーが起動します。任意のウェブブラウザで「http://localhost:3000」にアクセスすると、Expressのウェルカムページが表示されます。
以上でインストール完了です。
まとめ
この記事では、Windows、macOS、LinuxシステムにExpressをインストールする手順をご紹介しました。Node.jsとExpressのバージョン番号を表示して、正しくインストールされているかどうかは忘れずに確認しましょう。
お使いのオペレーティングシステムにExpressをインストールした後は、早速ウェブアプリケーション開発を始めましょう。Expressは、開発作業を簡素化すると同時に、拡張性とカスタマイズ性も与えてくれるため、ウェブ開発者やバックエンドエンジニアには見逃せない選択肢です。
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