多数のWordPressサイトを管理していると、管理画面上で繰り返しのタスクをこなすために、多数のクリック操作が求められることがあります。

制作会社としてWordPressを運用している場合、こうした反復作業を自動化することで、大幅な時間短縮が可能になります。そこで役に立つのがKinsta APIです。Kinsta APIを活用すると、MyKinstaにログインすることなく、通常行っている運用タスクをそのまま実行できるようになります。

「自動化」と聞くと、スクリプトの作成やインフラ管理、さらにはそれらを連携させるための高度なプログラミング知識が必要だと感じるかもしれませんが、最近ではZapierやn8nといった自動化ツールの登場により、そのハードルは大きく下がっています。コードを書かなくても、アクションのスケジュール設定、処理のループ化、条件分岐の追加、非同期処理の実行、さらにはSlackへのレポート送信まで行うことが可能です。

この記事では、ZapierがKinsta APIの上位レイヤーとしてどのようにワークフローを実現するのかをご紹介します。この仕組みを理解すれば、さまざまな場面に応用できるようになります。

ZapierとKinsta APIの連携方法

Zapierは、トリガーと1つ以上のアクションを結びつける仕組みです。トリガーには、毎週日曜日の午前2時といったスケジュール実行のほか、Slackのメッセージ、フォーム送信、あるいはZapier上の手動ボタン操作など、さまざまなイベントを設定できます。

Zapierでトリガーを追加
Zapierでトリガーを追加

アクションとは、トリガーが発生した後に実行される処理のことで、今回の場合は主にKinsta APIへのリクエスト送信になります。

Zapierには、HTTPリクエストを生成できるWebhooks機能が標準で搭載されているため、GET、POST、PUT、DELETEなどのリクエストを、Kinsta APIのエンドポイントに直接送信することができます。

Zapierのワークフローを使用してAPIリクエストを行う
Zapierのワークフローを使用してAPIリクエストを行う

例えば、上記のアクションでは、/sitesエンドポイントに対してGETリクエストを送信し、企業アカウント内にあるすべてのWordPressサイトの一覧を取得できます。

また、APIキーを安全に渡したり、environment_idなどの必要なパラメータを指定したりすることも可能で、リクエストの処理はZapierが自動で行ってくれます。

Zapのワークフローに認証キーを追加
Zapのワークフローに認証キーを追加

真価が発揮されるのは、複数のステップを組み合わせたときです。まずすべてのサイトを取得し、その後それぞれのサイトに対してループ処理を行うことができます。

Zapのループアクション
Zapのループアクション

上に示されているように、各サイトのsite_idとsite_nameを抽出し、そのsite_idを別のアクションに渡して、環境情報を取得します。

Kinsta APIを使用したZapワークフロー
Kinsta APIを使用したZapワークフロー

以下の例では、サイトIDを取得した後、他のアクションを使用してループ処理を行い、利用可能なプラグインの更新を確認します。更新がある場合は実行し、ない場合はスキップします。

Kinsta APIを使用したZapワークフロー
Kinsta APIを使用したZapワークフロー。

これは、Zapierで実行できることのほんの一例で、コードを一切書かずに、大規模なワークフローを構築することができます。

もう1つのメリットは、ZapierのAIエージェント(コパイロット)です。Claudeのようなチャット形式のインターフェースを備えており、やりたいことを説明し、APIのエンドポイントやパラメータを共有するだけで、一連の処理を自動で実行してくれます。

ZapierのAIエージェント
ZapierのAIエージェント

これは制作会社にとって大きなメリットになります。

ZapierとKinsta APIで構築可能なワークフロー

ZapierがAPI呼び出しをトリガーし、結果のループ処理や条件分岐を実行できることを理解すれば、実運用でのユースケースも見えてきます。

以下、制作会社の日常業務に役立つ4つの例をご紹介します。

1. 複数サイトにわたる定期メンテナンス

プラグインの更新は、それほど複雑な作業ではありません。実際、MyKinstaを利用すれば、一括操作機能を使って、複数のサイトに対する更新を一箇所からまとめて実行できます。

MyKinstaでプラグインを一括更新
MyKinstaでプラグインを一括更新

MyKinstaにログインせずに作業したい場合、この操作をスケジュール化したい場合、あるいは特定のワークフローに組み込みたい場合には、Zapierが役立ちます。

ZapierとKinsta APIを使用することで、スケジュールされたワークフローを構築できます。例えば、毎週日曜日の午前2時にZapierが自動的に実行され、すべてのWordPressサイトを取得し、各サイトの環境情報を確認したうえで、更新可能なプラグインを特定して、必要なものだけを更新するなど。さらに、各更新後には処理が正常に完了したことを確認し、最後にキャッシュをクリアして変更がすぐに反映されるようにします。

これにより、手動での確認作業から、体系的かつ自動化された監視へと移行できます。こうした仕組みを数十のサイトに適用すれば、節約できる時間は非常に大きくなります。

2. 初期対応のトラブルシューティングワークフロー

クライアントから「サイトの動作が遅い」「一部が正しく読み込まれない」といった報告があった場合、多くの企業は同じ初期対応を行います。キャッシュのクリア、PHPの再起動、ログの確認、そしてサイトが正常に応答しているかどうかのチェックです。

これらの作業はすべてMyKinstaから実行でき、それだけで解決することは多いですが、1日に複数のサイトやチケットを処理していると、こうした小さな反復作業でも負担が積み重なっていきます。

ZapierとKinsta APIを活用すれば、これらの手順をワークフローとして体系化可能です。手動でサイトにアクセスする代わりに、Zapをトリガーするだけで、キャッシュのクリア、PHPの再起動、処理完了の待機までを自動で実行し、その後Slackに確認メッセージを送信することが可能です。さらに、これをサポートワークフローと連携させれば、問い合わせに特定のタグが付いたタイミングで、初期対応が自動的に実行されるようにもできます。

目的は調査そのものを置き換えることではなく、初期対応を標準化することで、チームが毎回同じ手作業を繰り返さなくても済むようにする点にあります。

3. デプロイ対応ワークフロー

ステージング環境を日常的に利用している場合、すでに一定のリリース手順が確立されているかもしれません。例えば、ステージング環境でテストを行い、本番環境へデプロイし、キャッシュをクリアしたうえで、すべてが正常に動作することを確認するといった流れは一般的です。

これらの作業もすべてMyKinsta上で実行できますが、日時を設定したリリースウィンドウに合わせて実行したい場合や、Slackをトリガーにしてデプロイを開始したい場合など、より大きな運用フローに組み込みたいときには、Zapierが仲介してくれます。

Kinsta APIを使えば、MyKinstaと同様、ステージング環境を本番環境へ反映するワークフローを構築でき、さらにどのファイルを反映するかを指定することも可能です。

Kinsta APIを使用して環境を本番環境に反映
Kinsta APIを使用して環境を本番環境に反映

その後、操作が正常に完了したことを確認し、キャッシュを自動でクリアしたうえで、デプロイ完了をチームに通知します。

これにより、リリースチェックリストを構造化されたワークフローへと置き換えることができます。各ステップを個別に覚えておく必要がなくなるだけでなく、いつ、どのようなアクションが実行されたのかという記録も残せます。

4. クライアントのオンボーディングサポート

新規クライアントのオンボーディングでは、通常、サイトの作成、ステージング環境の設定、チームメンバーの招待、アクセス権限の確認といった手順を踏みます。

これらの作業はすべてMyKinstaで手動で行うことができ、問題なく対応可能です。しかし、クライアントのオンボーディングを頻繁に行う場合、こうした細かなセットアップ作業でも、時間的な負担は徐々に大きくなっていきます。

ZapierとKinsta APIを活用すれば、このプロセスの一部を自動化できます。たとえば、以下に示すように、Stripeでの支払い完了をトリガーとして処理を開始することが可能です。

ZapierにおけるStripeトリガー
ZapierにおけるStripeトリガー

その後、サイトの作成と環境設定を開始します。完了後、Zapierはチームに確認通知を送信し、基本設定が完了したことを知らせることができます。

必要に応じて、引き続き手動でサイトを確認することも可能ですが、意思決定を伴わない反復的な設定作業は自動化できるため、作業負担を大きく軽減できます。

サーバー環境をプログラム可能に

多くの制作会社にとって、サーバーは単なる管理対象の一つに過ぎません。しかし、Kinsta APIとZapierを組み合わせることで、サーバーは「オーケストレーション」の対象へと変わります。

MyKinstaで行うのと同じ操作をスケジュールに基づいてトリガーしたり、サポートワークフローに組み込んだり、より広範な運用プロセスと連携させたりすることが可能になります。Zapierがワークフロー層として機能し、Kinsta APIが運用の制御を担います。

複数のクライアントサイトを管理していて、標準化やスケーリング、運用負荷の軽減を目指している場合は、KinstaのWordPress専用マネージドクラウドサーバーをぜひお試しください。

専任サポート、成長支援、そして長期的なパートナーシップを求めている制作会社向けに、エージェンシーパートナープログラムもご用意しています。

ご興味がありましたら、営業部門までお気軽にお問い合わせください。設定や目標について、ご相談いただけます。

Joel Olawanle Kinsta

Kinstaでテクニカルエディターとして働くフロントエンド開発者。オープンソースをこよなく愛する講師でもあり、JavaScriptとそのフレームワークを中心に200件以上の技術記事を執筆している。