データベースの管理は複雑ですが、ウェブサイトを運営する上で必ず必要です。幸いなことに、phpMyAdminなどのソフトウェアを使用するとその作業が非常に容易になります。この人気の管理ツールは、一見習得するのが難しく思えるかもしれませんが、一度コツをつかめば、データベースへのアクセスや修正がとても楽になります。
最も難しいのは、phpMyAdminのインストールと、ウェブサーバーのセットアップです。てこずったとしても、それは決してあなただけではありません。
今回の記事では、主要なオペレーティングシステムにphpMyAdminをインストールする方法と、その後の設定方法を順を追ってご紹介します。
早速見ていきましょう。
動画での解説もご用意しています。
phpMyAdminとは?
すべてのウェブサイトの裏にはデータベースがあります。このデータベースによって、ユーザーのアカウント情報から投稿に至るまで、あらゆるデータを保存することができます。様々なデータベースサービスが存在しますが、中でもMySQLは最も人気があります。ともすると、あなたのサイトで使用されているのもこちらかもしれません。MySQL以外だとMariaDBも人気があります。
特にウェブサイトの管理に慣れていない場合、MySQLを直接操作するのは、複雑でわかりにくく感じるかもしれません。しかし、データベースの操作は、サイトのメンテナンスを行う上で必要なことです。
phpMyAdminを使えば、ブラウザベースの視覚的なインターフェースにより、MySQLのデータベース操作が容易になります。その人気の高さから、Kinstaを含め多くのレンタルサーバーでphpMyAdminがサポートされています。
なぜphpMyAdminが必要なのか
phpMyAdminなどのツールを使わないと、コマンドラインでデータベースにアクセスするしかありません。つまり、視覚的なインターフェースに頼ることなく、テキストプロンプトへのコマンド入力のみで操作することになります。これは混乱を招きやすく、誤ってサイトを損傷してしまう可能性すらあります。
phpMyAdminは、無料のオープンソースツールです。さまざまなレンタルサーバーがこれに対応している他、自分でインストールして利用することも可能です。一度インストールすれば、視覚的なインターフェースからデータベースコマンドを実行でき、直感的な操作が可能になります。
使うべきか迷っている方には、phpMyAdminを実際に試してみて操作性を確認することをおすすめします。使い心地が気に入ったら、サーバーにインストールしましょう。
phpMyAdminの動作環境
phpMyAdminをインストールするための要件は、幸い比較的単純です。何かしらのウェブサーバーがあれば、ほぼ間違いなく使うことができます。以下は動作環境の詳細です。
- ウェブサーバー
- MySQL、MariaDB(5以降)
- Javascript、Cookie、Bootstrap 4.5をサポートするウェブブラウザ(phpMyAdminにアクセスするため)
- PHP 7.2.5以降
- その他のPHPの要件:セッション、スタンダードPHPライブラリ(SPL)Extension、Hash(ハッシュ)、Ctype、JSONのサポート。Mbstring Extensionなどの拡張機により、パフォーマンスが向上し、さらなる機能が利用できます(すべての要件を確認するには動作環境のページをご参照ください)。
なお、多くのレンタルサーバーにはphpMyAdminが標準でインストールされていますので、自分でインストールする前にご確認下さい。Kinstaもそのうちの一つです。データベースマネージャーを開くには、Kinstaのアカウントにログインし「情報」タブの「データベースへのアクセス」を確認します。
phpMyAdminをインストールする前に、レンタルサーバーのドキュメントをチェックして、すでにインストールされていないか確認しましょう。
phpMyAdminのインストール
お使いのサーバーでのphpMyAdminサポートを確認したら、いよいよインストールです。ウェブサーバーにはさまざまなオペレーティングシステムがあります。今回はWindows、Mac、Linuxディストリビューションといった、主要なものすべてをご紹介します。
それでは、phpMyAdminのインストール方法を順を追って説明します。
Windows 10でphpMyAdminをインストールする方法
システム要件にあるように、phpMyAdminを使用するには、PHPとデータベースを搭載したウェブサーバーが必要です。Apache、PHP、MySQLを個別にダウンロードすることもできますが、Windowsを使ってサーバーを立ち上げるには、もっと簡単な方法があります。
WAMP(Windows、Apache、MySQL、PHP)は、すべての条件を備えたサーバーを簡単に作成できる無料のソフトウェアです。また、必要に応じてXAMPP for Windows(Apache、MariaDB、PHP、Perl)を使うこともできます。
いずれかのソフトウェアをダウンロードしたら、インストールとセットアップの手順に従って進んでいきます。
WAMPまたはXAMPPを使用しているとします。どちらもphpMyAdminが標準でインストールされています。ブラウザで、http://localhost/phpMyAdmin
を開きます。すると、ログイン画面が表示され、すべて正しくインストールされたことが確認できるはずです。
MacでphpMyAdminをインストールする方法
MacでphpMyAdminを使用する手順は、Windowsと少し異なります。要件はすべて同じですが、macOSにはApacheとPHPの両方が搭載されているので、別途ダウンロードする必要はありません。
Macには、2つの方法があります。他のOSと同じようにXAMPPを使用するか、すべてを個別にインストールするかです。
OS X用のXAMPPをダウンロードし、開いたら、アプリケーションフォルダにドロップします。
/Applications/XAMPP/manager-osx.app
からXAMPP Controlを開き、ApacheとMySQLサーバを起動します。その後、http://localhost
を開くと、全てが正しく動作することが確認でき、「ツール」セクションにphpMyAdminのログインメニューが表示されるはずです。
phpMyAdminを手作業でインストールする場合でも、手順は簡単です。すでにApacheとPHPはあるので、MySQLをダウンロードするだけです。ドロップダウンメニューで必ず「macOS」を選択しましょう。ファイルをダウンロードしてインストールし、説明に従って、表示されたユーザー名とパスワードを記録します。
その後、システム環境設定を開き、MySQLを起動してサーバーを立ち上げることができます。また、ターミナルで次のコマンドを実行して、Apacheを起動することもできます。
sudo apachectl start
あとはphpMyAdminをインストールします。フォルダ名を「phpMyAdmin」に変更し、「/Library/WebServer/Documents/」に移動します。ブラウザで「http://localhost/phpMyAdmin」にアクセスして、正しくインストールされていることを確認しましょう。
Homebrewをインストールしている場合は、brew install phpMyAdminというコマンドを入力する方法もあります。
UbuntuでphpMyAdminをインストールする方法
人気で使いやすいLinuxディストリビューションの1つであるUbuntuは、サーバー構築に便利な選択肢です。
ApacheとMySQLを自分でインストールすることも可能ですが、LinuxにはLAMP(Linux、Apache、MySQL、PHP)という標準のサーバーソフトウェアパッケージがあります。WAMPやXAMPPとは異なり、これにはphpMyAdminが付属しませんので、別にインストールする必要があります。幸い、Ubuntuでは、あらゆるインストールをコマンドラインで実行できます。
まず、taskselが有効になっていることを確認します。Ubuntuのサーバー版にはインストールされているはずですが、デスクトップ版であれば、次のコマンドで有効にすることができます。
sudo apt-get install tasksel
その後、taskselを使って、次のコマンドでLAMPサーバーをインストールすることができます。
sudo tasksel install lamp-server
するとphpMyAdminをインストールできます。
sudo apt install phpMyAdmin
これで、パソコン上でサーバーが動作するのに必要なファイルはすべて揃いました。
CentOS 7でphpMyAdminをインストールする方法
CentOS 7へのphpMyAdminのインストール方法は、他のディストリビューションと非常によく似ています。ただし、このOSは一般的なaptコマンドではなくYumを使用しているため、コマンドが若干異なります。
また、必要なサーバーコンポーネントを一度にインストールできる便利なLAMPスタックが存在しないため、Apache、MySQL、PHPを個別にダウンロードする必要があります。とは言え、幸い、これらはコマンドラインから簡単にインストールすることができます。
では、コマンドラインを使ってLAMPスタックをダウンロードしてみましょう。まずは、Apacheからです。
sudo yum install httpd.service
Apacheサーバーを起動し、ブート時に実行されるようにするには、以下のコマンドを使用します。
sudo systemctl start httpd.service
sudo systemctl enable httpd.service
さて、次はデータベースをインストールします。CentOS 7ではデフォルトでMariaDBがインストールされます。phpMyAdminとも完全な互換性があるので、安心して使うことができます。代わりにMySQLをダウンロードすることも可能ですが、手順が少し複雑になります。そのためMariaDBを使いましょう。
sudo yum install mariadb-server mariadb
これを実行して、ブート時に起動させることができます。
sudo systemctl start mariadb
sudo systemctl enable mariadb.service
MariaDBのインストールを終え、セキュリティを確保するために、以下のコマンドでセキュアインストールを実行します。
sudo mysql_secure_installation
最後に、MySQLパッケージとPHPをインストールします。
sudo yum install php php-mysql
また、PHPが正常に動作するように、Apacheサーバーを再起動する必要があります。
sudo systemctl restart httpd.service
これで、必要なLAMPスタックが揃い、ようやくphpMyAdminのダウンロードに取り掛かることができます。Yumリポジトリにはないので、代わりに次のコマンドでEPELリポジトリをインストールする必要があります。
sudo yum install epel-release
そしてphpMyAdminをインストールします。
sudo yum install phpMyAdmin
CentOS 7では上記のとおり手順が少し多いですが、これでサーバーの準備ができ、設定へと進めます。
DebianでphpMyAdminをインストールする方法
CentOS 7と同様に、LAMPスタックをインストールするには、コマンドラインを使用して個別に実行していく必要があります。まず、次のコマンドでApacheをインストールしましょう。
sudo apt install apache2
次に、MariaDBをインストールします。CentOS 7と同様、このLinuxディストリビューションはMariaDBとの相性が良いので、そちらを使用することをお勧めします。
sudo apt install mariadb-server
また、こちらもCentOS 7と同様に、データベースのパスワードを追加し安全性を確保するためにセキュアインストールを実行します。
sudo mysql_secure_installation
最後に、PHPと、サーバーが動作するのに必要なその他のパッケージをインストールします。
sudo apt install php php-mysql libapache2-mod-php
最後に、phpMyAdminをインストールして終了です。
sudo apt install phpMyAdmin
phpMyAdminへアクセスする方法
phpMyAdminを正常にインストールできたら、これにアクセスしログインする方法はどのOSでも同じです。
ウェブサーバーのアドレスの末尾に/phpMyAdmin/
を追加します。サーバーを立ち上げたばかりであれば、アドレスは「localhost」となっているです。そちらにアクセスしてみてください。
http://localhost/phpMyAdmin
すでにウェブ上で稼働しているサーバーであれば、IP、もしくはその他アドレスになる場合もあります。わからない場合は、ApacheやMySQLの設定ファイルにアドレスが記載されている可能性がありますので確認してみてください。
ログイン画面が表示されたら、ユーザー名とパスワードを入力します。新規でインストールしたばかりであれば、ユーザー名はおそらく「root」であり、パスワードは空白のままで大丈夫です。それがうまくいかない場合、パスワードが「password」である可能性もあります。
ログインできない場合は、phpMyAdminまたはMySQLの設定ファイルを確認し、ログイン情報を探しましょう。また、インストール時にログイン情報を変更している可能性もあります。
Linuxユーザーの方は、ページへのアクセスやログインができない場合、以下のLinuxコマンドを試してみてください。
sudo dpkg-reconfigure phpMyAdmin
最後に、Kinstaのように、phpMyAdminが予めインストールされているレンタルサーバーを使用している場合、通常レンタルサーバーの管理画面内にログイン情報とリンクが記載されているはずです。この場合、自分でサーバーにphpMyAdminをインストールする必要はありません。
phpMyAdminを設定する
データベースマネージャーをシステムにインストールし、準備ができたら、次はphpMyAdminを設定します。他のサーバーソフトウェアでも言えることですが、各種調整が必要になるものです。
また、phpMyAdminの設定を行わないと、セキュリティのリスクが高まる可能性があります。システム保護の設定を行う必要があります。
データベースのバックアップを復元する必要がある場合は、phpMyAdminを使用していつでも新しいSQLファイルをインポートすることができます。データベースやその設定に大きな変更を加える前に、特にテストサーバーで作業していない場合は、必ず頻繁にバックアップを取るようにしてください。
SQLクエリを実行する方法
phpMyAdminが使用できるようになったところで、SQLクエリを実行する方法も理解しておきましょう。
トップページ(サイト全体に適用されます)あるいは特定のデータベースやテーブルでクエリを実行することができます。画面上部の「SQL」タブをクリック、コマンドを入力し、「実行」を押します。
よく使うSQLクエリは次のとおりです。
- Select:ほぼすべてのクエリの頭に使用する最も重要なタグ
- Create Table:新規テーブルを作成
- Alter Table:カラムを追加
- Insert:レコードを追加
- Delete:カラムの削除
- Update:テーブルの値を編集
- Sum():すべての値の合計を集計
- Avg():平均値を集計
- Count():入力済みの要素を数える
- Round():設定した整数へ四捨五入する
- Max():最大値を求める
- Min():最小値を求める
- Between:特定の範囲内のカラムを選択
- Group By:テーブルをデータ毎にグループ化
- Order By:特定の順番に結果を表示
コマンドは他にもたくさんありますが、まずはこのあたりがおすすめです。
デフォルトのphpMyAdmin URLを変更する方法
phpMyAdminのアクセスリンクをデフォルトの設定(http://website.com/phpMyAdmin
)のままにしておくと、セキュリティ上のリスクが発生する可能性があります。
ページが見つけやすいため、ハッカーが総当たり攻撃によりユーザー名とパスワードをしらみつぶしに試行する可能性があります。認証情報をデフォルトの「root」や「password」のままにしておくと、さらに厄介です。
URLを別のものに変更することで、他のユーザーによるアクセスのリスクを抑えることができます。
phpMyAdmin.confをテキストエディタで開きます。Windows/WAMPではC:\wamp\alias
に、XAMPPの場合はxampp\apache\conf\extra
に、Linuxの場合は/etc/httpd/conf.d
、Macの場合は/usr/conf/extra
にあります。
その中に次の行があるはずです。
Alias /phpMyAdmin /usr/share/phpMyAdmin
/phpMyAdmin
のパスを任意の新しいアドレスに変更します。例えば、次の通りです。
Alias /exampleURL /usr/share/phpMyAdmin
ここで設定したアドレス(http://website.com/exampleURL
)にアクセスすると、phpMyAdminのログイン画面を開くことができます。
NGINX認証ゲートウェイを設定する方法
また、認証ゲートウェイでセキュリティの階層を増やす方法もあります。phpMyAdminログインページのURLを変更した後、このページをパスワードで保護すれば、リスクをさらに低下げることができます。
NGINXサーバーとLinuxの組み合わせを使用している場合には、以下のコマンドを実行して、認証ゲートウェイを作成できます(これはApache サーバーでも作成可能です)。
まず、パスワードを作成し(「example」を好きなものに変更してください)、それをメモしておきます。
openssl passwd example
NGINXのフォルダに設定ファイルを作成し、名前をつけます。
sudo nano /etc/nginx/examplename
コロンの位置に注意しながら、このファイルにユーザー名とパスワードを次の通り入力します。
exampleusername:examplepassword
そしてNGINXの設定ファイルを開きます。
sudo nano /etc/nginx/sites-available/default
「server」のブロックに、次のコードを貼り付けてゲートウェイを追加します(※値を変更するのをお忘れなく)。
location /example {
auth_basic "Login";
auth_basic_user_file /etc/nginx/examplename;
最初の /example
はphpMyAdminのURLに設定したもので、auth_basic
の変数は好きなものに変更できます。最後の/examplename
は、先ほど作成したパスワードファイルの名前にします。
これでログインする際、phpMyAdminのログイン画面が表示される前に、設定した認証情報の入力が求められます。
phpMyAdminのシンプルな代替案「Adminer」
AdminerはphpMyAdminに似た、オープンソースの無料データベース管理ツールです。phpMyAdminよりもシンプルな代替ツールとして開発されています。当初はphpMinAdminという名前でした。
どんなウェブサーバーにも簡単に導入できます。必要な作業は、軽量なPHPファイルをたった一つアップロードするだけです。
Kinstaの無料で使用できるローカル開発ツール「DevKinsta」では、データベースマネージャーの実行にAdminerを利用しています。簡単なデータベースの切り替え、テーブルの表示と編集、データベース値の操作、データベースのインポートとエクスポート、SQLクエリの実行など、強力なデータベース管理機能を豊富に搭載しています。
その特徴や使い方については、Adminerに関するこちらの記事で詳しく解説しています。
まとめ
phpMyAdminを初めて使う際は、少し戸惑うこともあるかもしれません。しかし、一度インストールと設定の方法を知ってしまえば、データベースへのアクセスはWordPressにログインするのと同じくらい簡単になります。
Windowsユーザーも、MacやLinuxユーザーも、この便利なデータベースマネージャーを利用することができます。PHPがインストールされたウェブサーバーさえあれば、こちらの記事でご紹介した方法で簡単に使いこなせるはずです。正しく設定し、セキュリティ強化のちょっとした工夫も実施すれば、もうデータベースの編集に悩まされることはありません。
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