近年、ウェブサイトのセキュリティは最優先事項です。データやユーザーの安全を考慮し、しかるべき対策を講じなければ、万が一の事態が発生した際の損失は計り知れません。
WordPressサイトのセキュリティといえば、開発者やサイト所有者の行動に焦点が当てられることが多く、ウェブホスティング選びの重要性は見落とされがちです。
安全なホスティング環境はセキュリティの基盤になります。優れたホスティングサービスは、経験豊富な開発者であっても阻止できない脅威からサイトを保護してくれるため、安心感を得ることができます。
今回はウェブホスティングがセキュリティ強化に果たす役割を掘り下げ、WordPressサイトならではの要件を探り、ホスティングがセキュリティにどのような影響を与えるかをご紹介します。
WordPressのセキュリティ
WordPressは、シンプルなカタログサイトから企業向けアプリケーションまで、多くのウェブサイトを動かしています。その柔軟性の高さは大きな利点ですが、同時にセキュリティ上の課題でもあります。
WordPressのセキュリティ強化策が他のプラットフォームと異なる理由には、以下が挙げられます。
多くの人気サイトで採用されている
WordPressは、コンテンツ管理システム(CMS)市場を牽引する存在です。世界的に有名なハーバード大学、Meta(旧Facebook)、NASA、ホワイトハウス、TIMEなど、政府機関や大企業の数多くのサイトで使用されています。そのため、WordPressはサイバー攻撃の標的になりがちです。
悪意のあるユーザーは、ボットをトレーニングしてWordPressを使用するサイトを探し、既知の脆弱性、弱いパスワード、サーバーのセキュリティホールなどの弱点を検出します。またDDoS攻撃を仕掛けてサイトの可用性を妨害し、マルウェアを拡散して、サイトのフロントエンドを改ざんすることも。このような攻撃は、小規模なサイトにも絶え間なく実行されているため、WordPressサイトのセキュリティ確保は24時間常に気を抜けません。
テーマとプラグインの複雑なエコシステム
テーマとプラグインの組み合わせは無限に存在するため、2つとして同じWordPressサイトは存在しません。この多様性は強みである一方で、弱点でもあります。
例えば、機能の拡張のために人気のあるプラグインをインストールしても、そのプラグインのメンテナンスが不十分であったり、しばらく放置されていたりすると、サイトのセキュリティを脅かす脆弱性が生じる恐れがあります。
たとえメンテナンスが行き届いているソフトウェアであっても、知らぬ間に欠陥が発生することも。したがって、定期的な更新と監視が重要になります。これは家をメンテナンスするようなもので、どれほど頑丈な構造でも、時間の経過とともに定期的なチェックとメンテナンスが必要です。
WordPressコアのセキュリティ欠陥
セキュリティ上の欠陥は、WordPressのコアから発生することもあります。通常は修正プログラムがすぐにリリースされ、自動更新によって適用されますが、すべてのサイトで自動更新が有効になっているわけではありません。
リスクが伴う組み込み機能の一つがXML-RPCです。WordPressと外部システム間の通信を可能にするなどの正当な用途がある一方で、DDoS攻撃やブルートフォース攻撃の実行に悪用される可能性があります。旧技術であるものの、XML-RPCはいまだに多くのWordPressサイトで使用されており、XML-RPCに対する自動攻撃も一般化されています。
頻繁な更新と脆弱性パッチ
WordPressでは頻繁にコアの更新が行われており、開発者も定期的にテーマやプラグインを更新してセキュリティの脆弱性に対処し、新機能を導入しています。この活発な更新サイクルは、リスクを最小限に抑えるために不可欠ですが、すぐに適用されなければ意味がありません。
サイト所有者は、警戒を怠らず速やかに更新を適用しなければなりません。更新が遅れると、既知の脅威に対してサイトが脆弱なままになってしまう可能性があるためです。WordPressは数年前にコアの自動更新を導入したため、ほとんどのサイトではマイナーなセキュリティリリースとメンテナンスリリースが自動的に適用されるようになっています。サイトによってはメジャーアップデートも自動適用されますが、デフォルトでは有効になっていません。
自動更新にも懸念点があり、プラグインが危険にさらされている場合、自動更新が行われると、悪意のあるコードがインストールされてしまう可能性があります。そのため、信頼できる開発者が構築したプラグインであることを定期的に確認することが重要です。
複数の攻撃ベクトル
WordPressサイトをハッキングする方法は一つではなく、セキュリティ設定の中で最も弱い部分が狙われるものです。悪意のあるユーザーやそのツールは、その弱点を見つけ出し攻撃するほどに賢いのが現状です。
一般的な攻撃ベクトルには、以下が挙げられます。
- ブルートフォース攻撃:ユーザー名とパスワードの組み合わせを繰り返し試行して不正アクセスを試みる
- 漏洩したパスワード:弱いパスワードや過去に漏洩したパスワードを利用してサイトを制御する
- クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF):悪意のあるリクエストを送信し、認証済みユーザーを騙して意図しないアクションを実行させる
- クロスサイトスクリプティング(XSS):悪意のあるコードをサイトに注入してマルウェアを拡散する
- SQLインジェクション:侵害したデータベースを介してユーザー情報を盗用し、サイトのコンテンツに悪意のあるコードを注入する
- DDoS攻撃:サイトにトラフィックを殺到させ、速度を低下させたり停止したりする
- リバースシェル:脆弱性を悪用してリバースシェルを確立し、サーバーのオペレーティングシステムやWordPressを遠隔操作する
ホスティングがWordPressセキュリティの鍵を握る理由
WordPressのセキュリティは複雑なパズル。そして最初のピースとなるのはウェブホスティングです。WordPressに特化していないホスティングは、セキュリティに悪影響を与える可能性があります。以下、ホスティングがサイトのセキュリティに与える影響を見てみましょう。
格安サーバー=セキュリティ対策に不安あり
割引や手頃な商品にはどうしても目が行くものです。しかし、価格と価値は時に同等です。格安レンタルサーバーは一見魅力的ですが、なぜこの価格でサービスを提供することができるのかを考えてみましょう。
この犠牲になるのはセキュリティである可能性が高く、安価なホスティングサービスは、リスクを最小限に抑える最新技術に投資していない場合があります。財務的な観点から見れば、これは理にかなっています。一流のセキュリティは安価ではありません。したがって、低価格で安全性の高いサービスを提供することは実質不可能です。
また、ハッキングの被害に遭えば、サイトのクリーンアップには多くの時間と費用がかかります。長期的には格安レンタルサーバーを選択することでかえって費用がかさむ可能性があります。
したがって、サイトのセキュリティはビジネス、組織、機関、政府にとって最優先事項であるべきです。質の高いプレミアムホスティングは決して安価でないかもしれませんが、価格に見合ったセキュリティ機能とサポートを提供しています。営業担当者に相談すれば、プランをお得に利用できる可能性も高く、セキュリティにまつわる様々な問題、サイトのダウン、および役に立たないカスタマーサポートに悩まされることもありません。
例えば、Kinstaでは、エンジニアによる迅速なカスタマーサポート、高度なセキュリティインフラをはじめとする優れた機能の数々を提供しており、高い安定性と信頼性を手にすることができます。また長い目で見れば費用、時間、そして繰り返される問題に対処する手間の削減につながります。
サイトへのアクセスを許可するトラフィックの種類
ボットトラフィックには悪質なものがあり、安全でないホスティングではこのトラフィックを検出し、区別することが困難です。
悪意のあるボットに侵入を許せば、ハッキングの被害に遭う可能性が高まります。ブルートフォース攻撃を試行したり、脆弱なプラグインを探し回ったりするボットも存在します。
例えば、トラフィックを適切にフィルタリングしない、セキュリティ機能が不十分な格安レンタルサーバーでサイトをホスティングすると、悪意のあるボットがサーバーに殺到し、速度低下やサイトのダウンが発生することがあります。
不審なトラフィックをブロックしてハッカーからサイトを保護するのが最善です。ウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)を採用しているホスティングは、ボットがサイトに到達するのを阻止してくれます。WAFはシールドの役割を果たし、受信トラフィックを分析して、害を及ぼす前に疑わしい活動をブロックします。
KinstaではWAFを設定する必要はなく、インフラストラクチャ上のすべてのサイトが独自のルールセットとDDoS対策を備えたファイアウォールを含む無料のCloudflare統合によって自動的に保護されます。この統合により、悪意のあるボットが攻撃を試みる前にブロックされるため安心です。
Cloudflare統合に加え、ブルートフォース検知、SFTPのみのファイルアクセス、包括的なセキュリティ保持誓約などのようなセキュリティ機能もご用意しています。これらの防御層により、サイトの安全性が確保されるため、セキュリティ侵害の心配をすることなくビジネスに専念することができます。
他のWordPressサイトからのウイルス伝染
WordPressのマルウェアは従来のコンピュータウイルスと同じで、警告なく瞬く間に拡散します。1つのサイトが感染すると、同じサーバー上にある他のサイトにも広がる可能性があります。これは共用サーバー環境の大きな課題です。
共用サーバーを利用して複数のサイトをホスティングしているとします。1つのサイトが感染すると、同じサーバー上にあるすべてのサイトに広がる可能性があります。このようにクロスコンタミネーション(交差汚染)の発生したアカウントのクリーンアップは不可能に近く、まずは感染源を特定する必要があります。感染源となった問題を根絶して初めて、他のサイトのクリーンアップに取り掛かることができます。これは気の遠くなる作業です。
隔離されたソフトウェアコンテナを使用することで、このようなマルウェアの侵入を阻止することができます。各サイトが独立したコンテナで動作し、ハードウェアやソフトウェアのリソースを共有することはありません。
Kinstaでは隔離コンテナ技術を採用し、他のサイトと完全に分離された環境でサイトを実行するため、完全なプライバシーとセキュリティが保証されます。Linuxコンテナにはまた、専用のリソースが割り当てられます。
マルウェアからサイトを保護するWordPressのセキュリティプラグインも活用することができます。Kinstaではまた、無料のマルウェア除去を含むセキュリティ保証も提供しています。
定期的なバックアップの重要性
質の高いサイトのバックアップの確保は、セキュリティ強化策の一環になります。バックアップは緊急時の救世主となり、すぐに以前のバージョンにサイトを復旧することができます。しかし、どのようなバックアップでも良いというわけではなく、古くなったバックアップや破損したバックアップは役に立ちません。
サイトがハッキングされ、以前の状態に復元する必要がある場合、バックアップが古い、または破損していると、サイトを適切に復旧することができず、データ損失やサイトのダウンにつながる可能性があります。
WordPressプラグインは、無料・有料を問わず数多くあり、バックアッププラグインも例に漏れませんが、プラグインの利用が最善策とは限りません。バックアップ機能を提供するホスティングサービスを利用する方がより信頼性の高いアプローチを取ることができ、設定やメンテナンスの手間をかけることなく、一貫してデータを保護することができます。
Kinstaでは、データを常に安全な状態に保つため、複数のバックアップ機能を提供しています。毎日の自動バックアップ、および必要時の手動バックアップで柔軟性を実現し、ミッションクリティカルで動的なサイト向けには、時間単位(1時間または6時間)のバックアップアドオンも提供しており、最新の変更も確実に保存します。
定期的なバックアップに加えて、システム生成バックアップで重要なタスクの実行前にもデータを保護します。テーマやプラグインの更新、ステージング環境から本番環境への反映、検索と置換の実行、サイトのリセットのようなタスクの実行中に何らかの問題が発生した場合は、すぐに実行前の状態にサイトを復旧することができます。
継続的なサイト監視
サイトの稼働状況─スムーズに動作しているか、問題が発生していないかなどを把握することも重要です。適切なサイト監視により、問題発生時にも速やかに対処できるようになります。
サイト監視機能を提供するWordPressプラグインもいくつかあり、稼働率、パフォーマンス、潜在的なエラーの追跡に有用です。何らかの問題を検出すると通知が送信されるため、サイトに影響が及ぶ前に対処することができます。
例えば、Jetpackのようなプラグインは基本的な監視機能を提供していますが、これについてもホスティングサービスが提供する監視機能を利用することで、より包括的でシームレスな保護を確立できます。Kinstaのようなプレミアムホスティングでは、すべてのプランに稼働状況監視が付帯し、3分ごとにサイトをチェックします。3回連続でエラーが検出されると、警告メールを送信して問題を通知します。
さらに、無料のAPMツール(アプリケーションパフォーマンス監視)でサイトのパフォーマンスを監視し、必要に応じて自分で問題を特定して、サイトのスムーズな運営に役立つインサイトを得ることができます。
データの暗号化
暗号化は、ユーザーとサイト間で共有されるデータを保護し、第三者がパスワードやプライベートな通信などの機密情報にアクセスできないようにします。セキュリティの確保には、強力な暗号化ソリューションの導入が欠かせません。
Cloudflareのようなサービスは、データ伝送を保護するSSL証明書を提供していますが、ネームサーバーの交換などの設定が必要になることがあります。このプロセスを簡素化し、一部のホスティング会社では暗号化機能をサービスに統合しています。
Kinstaでは、複雑な設定なしで堅牢な暗号化をデフォルトで使用することができます。Cloudflare統合によるワイルドカード対応のSSL証明書を含め、所有権が確認されたすべてのドメインを自動的に保護します。これにより、訪問者とサイト間で転送されるすべてのデータが確実に暗号化されます。
さらに、サーバーへの暗号化されていない接続はすべてブロックし、SSHおよびSFTPによる暗号化された接続のみが許可されます。
セキュリティプラグインだけでは不十分
セキュリティプラグインのインストールは、自分でセキュリテイ強化策を講じる方法の一つです。自分で制御できるという感覚を得ることができ、確かにセキュリティは強化されますが、プラグインには根本的な問題があります。
セキュリティプラグインは、攻撃者がサイトに何かしらのアクションを実行するまで機能しません。例えば、ボットをブロックしても、ボットには何度も攻撃を仕掛ける機会があり、サイトのパフォーマンスに影響を与え、リスクを増大させる可能性があります。さらに、攻撃者はプラグインを回避する特別なマルウェアを設計しています。一部の悪意あるファイルは、検出を回避したり、プラグインを完全に無効化したりすることも可能です。
ボットがサイトに侵入し、脆弱性を突こうとしているとします。セキュリティプラグインが最終的にはボットをブロックしてくれるかもしれませんが、ボットが複数回攻撃を試みるまでブロックすることができません。さらに、巧妙なマルウェアがプラグインの防御を回避したり、無効化したりして、サイトの脆弱性を残す可能性もあります。
このような理由から、潜在的な問題がサイトに到達する前に、サーバーレベルでブロックするのが最善です。サーバーレベルでセキュリティ強化策を講じているホスティングサービスでは、より包括的にサイトを保護することができます。
Kinstaのホスティング環境には以下のような機能があるため、セキュリティプラグインの導入が不要です。
- ウェブアプリケーションファイアウォール(WAF):悪意のあるトラフィックがサイトに到達する前にブロック
- DDoS対策:悪意のあるトラフィックに圧倒されないようにサイトを保護
- ブルートフォース検知:不正アクセスの試みを検出して軽減
- マルウェアのスキャンと除去:マルウェアのスキャンと除去を定期的に行い、サイトをクリーンで安全な状態に保つ
- 隔離コンテナ技術:同一サーバー上のサイト間の交差汚染を阻止
Kinstaではサーバーレベルでセキュリティを強化し、攻撃に対してより強固な防御層を確立して、サイトの安全性と高いパフォーマンスを保証しています。セキュリティに対するこの包括的なアプローチにより、プラグインだけでは対処できない脅威からもサイトが保護されているという安心感を得ることができます。
まとめ
ウェブサイトのセキュリティ確保には、多方面からのアプローチが欠かせません。セキュリティに特化したホスティング選びは、セキュリティ強化策の大部分を占めています。
安全なホスティングサービスは適切なツールと技術を採用し、WordPressとそのエコシステムの要件を理解して、バックグラウンドで攻撃者を徹底的に阻止します。
ハッキングやマルウェア感染はいつ起こるか予測できません。ホスティングが与える影響を理解した上で、優れたホスティングサービスを利用してください。
ウェブセキュリティに関してご質問がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
コメントを残す