クラウドへの移行。これの目標はズバリ、ホスティング環境の改善。実際の要件に応じて、クラウドコンピューティングを使うことから様々なメリットを享受できます。
新規導入であれ、既存のサービスの移行であれ、クラウド環境を(オンプレミスの場合よりも)優れたものにしたいはずです。そのためにはまず、クラウドコンピューティング技術の幅広いメリットを理解し、それが自社のビジネスにどのように応用できるのかを理解する必要があります。
ほとんどの人がクラウドコンピューティングのメリットを知るために「表層」に注目します。しかし、実際には、結果としてのメリットを、どのようにして応用できるのかを理解するのは、必ずしも容易ではありません。表面下の複雑な要素を理解しなければ、このソリューションが組織にもたらす真の価値を十分に理解することはできないのです。
この記事では、典型的なアプローチの一歩先へ進みたいと思います。クラウドを利用することの利点をより明確に、より完全に理解していただくことが目的です。全体像だけではなく、各クラウドのメリットに焦点を当てながら、それらを実現するための基本的な機能や特徴を深く理解します。
それでは、2024 年にクラウドコンピューティングを利用するメリットを一緒に深掘りしましょう。
クラウドコンピューティングは「お得」
サービスをクラウドに移行することで、資本支出を「変動費」に置き換えることができます。必要のないサーバーハードウェアやソフトウェアに大量の投資をするのではなく、コンピューティングリソースを消費したときに「消費した分だけ」支払うことが可能に。
クラウドコンピューティングは、適切に活用することで、ITインフラの導入、管理、およびアップグレードにおいて最もコスト効率性の高いアプローチとなります。
クラウドコンピューティングは根本的に、コスト削減を視野に入れて設計されています。柔軟な価格設定、リソース消費量のコントロール、関連する管理コストの排除など、クラウドコンピューティングはオンプレミスでの導入に比べて、あらゆる側面でコスト削減を実現します。
ここでは、クラウドがコスト削減効果を発揮する基本的な仕組みについて詳しくご紹介します。
規模の経済
クラウドコンピューティングでは、自社で全てを管理する場合よりも低い変動費が実現できます。
数十万人の利用者の使用量を集約することで、大手クラウド事業者は「大規模なスケールならではのメリット」を享受し、低コストの従量課金モデルを提供することに成功しています。
これにより、ロボット工学、機械学習、量子コンピューティングなどの最先端技術を手頃な価格で利用できるようになります。クラウドサービスモデル以外では、これらの技術を低価格で利用することはできません─このような先端技術を導入し、維持するためのハードウェア、ソフトウェア、および関連するコストは、天文学的数字になります。
クラウドは、中小企業にも大きな変化をもたらします。これまで大企業でしか利用できなかったテクノロジーが利用できるようになり、競争の場が広がります。
従量課金
クラウドの料金モデルでは、テクノロジーの利用コストを柔軟にコントロールすることができます。
クラウドサービスは、必要なときに必要なだけ追加・削除でき、時期や社員の勤務時間などの需要に合わせてリソースを拡張できます。また、オンプレミスでの導入に伴う導入・管理・アップグレードのコストを回避することも可能です。
オンプレミス型の場合、ハードウェアとソフトウェアを所有するための資本が必要となります。また、その技術を使うかどうかにかかわらず、関連する管理やメンテナンスの費用も発生します。
その結果、クラウドの従量課金モデルでは、オンプレミスと比較して、確かなコスト削減を実現することができます。もちろん、技術や導入コストをかけずにリスクフリーで技術を試すこともできます。
オートスケール
サーバーハードウェアとそれが提供するコンピューティングリソースは、テクノロジーインフラを構築するプラットフォーム(つまり土台)です。一般的には、これがコストの大半を占めます。
クラウドでは、オートスケール機能により、コンピューティングリソースの消費量とそれに伴うコストをコントロールできます。需要の変化に応じてリソースを自動的に追加・削除することで、コンピューティングリソースの利用率とコスト効率を最適化。必要な分だけ支払うことが可能です。
オンプレミスでのコンピューティングリソースの導入には、固定費が発生します。必要と思われるサーバーハードウェアを購入し、そのコンピューティングリソースを使用するかどうかに関わらず、管理・維持するための費用が発生します。
ここでは、クラウドを利用したコスト削減の方法を簡単にご紹介します。主要サービスを使って、クラウドのコスト削減効果を見てみましょう。
- Alibaba Auto Scaling(オートスケーリング)
- Azure Autoscale(自動/オートスケール)
- AWS Auto Scaling(オートスケーリング)
- Google Compute Engine Autoscaling(自動スケーリング)
一時的な仮想マシン(VM)インスタンス
クラウド技術が大幅なコスト削減を可能にする明確な例として、一時的な仮想マシン(VM)インスタンスが挙げられます。
このVMは、クラウド事業者における「未使用の容量を使い」実行されます。一時的なインスタンスでは、クラウド事業者が任意のタイミングでリソース割り当てを行うことができ、結果的に一貫性が予測できるものではありません。そのため、一時的なインスタンスは、通常の従量制の価格よりも80〜90%も安い、非常に割安な価格で提供されます。
優先度の低い(中断が発生しても問題のない)ワークロードを定期的に実行しているのであれば、一時的なVMは理想的です。一般的なクラウドのVMに比べて大幅なコスト削減が可能なだけでなく、この種のワークロード専用のサーバーを購入、導入、維持するコストや手間が省けます。
一時的なVMインスタンスは、主要な4つのクラウドプロバイダすべてで提供されています。
- Alibaba Cloud ECSプリエンプティブルインスタンス
- Amazon EC2スポットインスタンス — 最大90%オフ
- Azureスポット仮想マシン — 最大90%オフ
- Google Cloudプリエンプティブル仮想マシン — 最大80%オフ
無料プラン
ちょっとしたリソースしか必要でない場合は、クラウド事業者が提供する無料プランで、コストをかけずにこの技術を利用することができます。
主要クラウドプロバイダでは一般的に、短期トライアル、12か月間無料、無期限無料などのかたちで用意されています。それぞれ、人工知能、演算機能、データベース、開発、ネットワーク、ストレージなど、100種類以上のクラウド製品の利用権が付帯します。
要件が十分に小さければ、コストをかけずにクラウドを運用することも可能です。コスト削減の仕組みとして検討してみてはいかがでしょうか?
さらに、無料版では、オンプレミスでは高額な費用がかかる技術を試してみることができます。
主要なクラウドプロバイダ4社の無料プラン/オプションを利用して、コスト削減の可能性を検討してみるのは大いにアリでしょう。
クラウドコンピューティングの「可動性」
クラウドコンピューティングには高い「可動性」が確保されています。インターネットに接続されていれば、いつでも、どこでも、どんなデバイスからでも仕事ができます。このメリットがこれほど重要になったことは、未だかつてありません。
在宅勤務
コロナウイルスの大流行により、ここ1年でリモートワークへの大規模なシフトが起こりました。世界中の企業がオフィスを閉鎖。従業員は自宅で仕事をすることに。多くが、無期限での在宅勤務に移行しています。
クラウドコンピューティングは、仮想ワークステーションの強みを生かし、在宅勤務をサポート─従業員による、自宅から企業のアプリケーションやデータへの高速かつ安全なアクセスが可能に。物理的に離れた場所にいる従業員に、オフィスにいるときと同じようなテクノロジーや仕事環境を提供することができるため、自宅でもオフィスにいるときと同じように生産性を維持することができます。
また、従業員はこの働き方の柔軟性により、ホームオフィスの利用方法を最適化し、より良いワークライフバランスを維持できます。
外出先での仕事
いつでもどこでもアクセスできるクラウドコンピューティングを活用することで、外出先での仕事も可能に。外回り中の営業、長距離通勤者、緊急時の避難など、どこにいても仕事ができます。
遠隔地で働く従業員であっても、企業の最新データがクラウドに投稿されるとすぐにアクセス。何千km離れていても関係なし。どこにいる同僚とでも共同作業を行うことができます。
クラウドコンピューティングの「セキュリティ」
クラウドのセキュリティは、すべての組織とそのクライアントのサイトにとって、最も重要なポイントです。重要なシステムや極秘データをクラウドコンピューティングに移行する際に、セキュリティ上の懸念を感じる─そんな不安があるのは、当然のこと。ファイルやプログラム、その他のデータをオンサイトで安全に保管するのさえ大変。それらがクラウドで保護されていることを、どうやって確認できるのか。
実際には、クラウド技術によって、セキュリティの強化とそれに伴うメリットが無数にもたらされています。RapidScaleの調査によると、94%の企業がクラウドに切り替えた後、セキュリティが向上したと報告。その理由を見てみましょう。
ソフトウェアの自動更新
IaaSやSaaSに移行することで、ソフトウェアの自動更新というセキュリティ上のメリットを享受できます。ほとんどの場合、クラウドサービスプロバイダは、プラットフォームのセキュリティアップデートや脆弱性に対するパッチ適用という業務を担います。
これにより、組織内技術チームで、脆弱性を防ぐためにソフトウェアを常に追跡したり、アップグレードのことを心配したり、リソースの浪費を気にしたりする必要はなし。また、サービスをクラウド化することで、ローカルにインストールされているソフトウェアのアップデートをスタッフが見落としてしまう可能性もなくなります。
最先端のツール
クラウドに移行することで、最先端のセキュリティツールが利用できるようになり、セキュリティ強化につながります。
そのようなセキュリティツールは通常、クラウド事業者の既存のセキュリティインフラ上で、クラウドサービスとして提供されます。そのため、深いレベルでの統合が可能です。実際に利用できるクラウドセキュリティサービスの例を、以下にご紹介します。
DDoS保護
クラウドサービスは、DDoS攻撃の検知と緩和を自動で行ってくれます。クラウドサービスが自動で維持されるので、リソース消費量の増加など予期せぬDDoS攻撃に伴うコストから解放されます。
ファイアウォール
クラウドプロバイダは通常、最先端のファイアウォールにより、基本的なレベルでの保護を確保しています。これに加えて、いくつかの種類のクラウドファイアウォールサービスもあります。
- 管理コンソール:クラウド環境におけるファイアウォールのルールを設定・管理するための中枢機能です。
- ウェブアプリケーションファイアウォール:一般的な悪意のある行為からウェブアプリケーションを保護するサービスです。
- 仮想プライベートネットワークファイアウォール:クラウドベースのVPNにファイアウォールを導入するマネージドサービスです。
アクセス管理コンソールの確認
ほとんどすべてのクラウドサービスに、アクセスを管理・保護するための中央コンソールがあり、ここから、誰が何にアクセスして、何を実行できるのかを制御できます。
シングルサインオン
シングルサインオンを介して、クラウドやオンプレミスのデプロイメント全体における、複数アカウントやアプリケーションのアクセスを管理・制御できます。従業員の生産性やツールの使い勝手の向上につながります。
デフォルトでの暗号化
暗号化は、データを保護するための重要な手法です。データを暗号化することで、復号鍵がなければ解読することは事実上不可能となり、万が一データが傍受・取得されたとしても、データの機密性と安全性を確保することができます。
クラウドには、「デフォルトでの暗号化」というメリットがあります。主要プロバイダは普通、256ビットのAES(最も堅牢な暗号化方式の一つ)を使用してデータを暗号化しています。
通常、以下の2つの形式でデータ暗号化が提供されます。
- 保管時の暗号化:クラウドに保存されているデータを保護
- 転送時の暗号化:クラウド間転送時のデータを保護
責任の分担
クラウドコンピューティングの大きな利点は、「セキュリティの責任が分担」され、長年の情報セキュリティの課題を克服できることです。
オンプレミスでは、セキュリティに投資するための責任やリソースが十分でないことがあります。数多くの要件に対し注意が分散すると、攻撃者があらゆる層の脆弱性を利用し始める危険性が生じます。
クラウドでは、インフラレベルでプロバイダに実装されている回復力や保護機能を活用しつつ、そこで満たされていない責任を個別に解決することが可能に。日々の「セキュリティ上の責任」をクラウドプロバイダに移すことで、セキュリティ強化の網を広げるために、細かな点に注意を向けることができます。
クラウドコンピューティングの「柔軟性」
クラウドコンピューティングの主な利点の一つは、柔軟性。クラウドテクノロジーでは、基盤となるインフラやリソースがすでに用意されているため、ボタンのクリックだけでリソースを追加・削除できます。
オンプレミス型の展開(新しいサービスを導入するために、複雑かつ時間と費用のかかるプロセスを考慮しなければならない)では得られないメリットです。
クラウドテクノロジーの柔軟性により、以下のように重要な機能や制御面での特性が確保できます。
事業の拡大
例えば、新興企業や事業拡大中の企業であれば、クラウドの柔軟性により、たった数回のクリックで世界のどこにでも新しいバーチャルオフィスを立ち上げることができます。オンプレミス型ソリューションのように、コストや時間の制限を受けることもありません。また、経済的負担が大きくなったリソースについては、いつでも「閉鎖」できます。
リソースのコントロール
クラウドでサービスを展開することで、リソースを柔軟にコントロールできます。ボタンをクリックするだけで、既存の需要に合わせてクラウドリソースを追加・削除可能。さらに自動化ツールによってリソースの消費を最適化することもできます。このようにリソースをコントロールすることで、エンドユーザーへの最適なサービス提供を行いながら、コスト効率を高められます。
リソースをコントロールできるもう一つのメリットは、価格モデルの柔軟性です。クラウドプロバイダは通常、「従量制」と「インスタンス予約制」の価格モデルを提供しており、クラウドリソースの消費と支払い方法を柔軟に管理できます。前払いによる割引を利用するか、最新のテクノロジーに自動的にアップグレードするオプションを利用するか、あるいは1つのテクノロジーに固定するかを自由に決められます。
新しい技術の検証
新しいテクノロジーをオンプレミスで試すのは現実的ではなく、費用面でも無理があります。クラウドには、新たなテクノロジーを有効化し、ものの数時間以内に稼働させることができる柔軟性があります。また、クラウド事業者の多くで、無料トライアルや従量課金制が採用されているため、経済的な制約を受けることなく新しい技術を試すことができます。
いつでもどこでも仕事ができる
クラウドテクノロジーの「可動性」は、(先に触れた通りですが)従業員がいつでもどこでも仕事ができる環境を形作ります。インターネットに接続されていれば、どんなデバイスからでも企業のアプリケーションやデータに安全にアクセスすることができます。
クラウドコンピューティングの「スピード」
クラウドコンピューティングにおけるスピードには様々な形があり、それぞれが利点や機会をもたらします。クラウドコンピューティングにおいてスピードが果たす役割をご紹介します。
展開のスピード
クラウドでは、マウスを数回クリックするだけで、新しいリソースを導入できます。オンデマンドでサービスを利用できるため、リソースへのアクセスにかかる時間が数週間から数分に短縮されるだけでなく、技術チームにおける作業負担も軽減されます。
その結果、組織の「俊敏性」が飛躍的に向上し、実験や新しいアプリケーションの開発に必要な時間とコストを最小限に抑えることができます。
処理速度
クラウドには無限に近いコンピューティングリソースがあるため、優れた処理速度という恩恵が受けられます。オンプレミスでは処理に数時間かかる複雑なワークロードも、数分で完了します。サイトの読み込みが速くなり、動画のレンダリングも高速に。その用途は多岐にわたります。
優れた処理性能は、データ処理においても重要です。ビッグデータや機械学習などのサービスに、クラウドの無限に近いリソースを利用することで、従来の分析よりもはるかに速く、データから深い洞察を引き出すことができます。具体的には、次のようなことが可能になります。
レイテンシ
Azure、AWS、Google Cloud、Alibabaは、グローバルネットワークを運用することで、アプリケーションサービスを最小のレイテンシで提供することに成功しています。
オンプレミスの利用で、言うまでもなく、最も低いレイテンシを実現することができますが、国際的に展開する場合には、常にクラウドに分があります。グローバルクラウドプロバイダの広大なネットワークにより、社員や顧客に対して、遅延を最小限に抑えた状態でアプリケーションやデータへのアクセスを提供することができ、オンプレミスに付随する地理的な制約を受けることなく、一貫したUXの向上を実現できます。
クラウドコンピューティングの「協調性」
2人以上でビジネスを行っている場合、「コラボレーションの快適さ」は最優先事項であるべきです。チームの専門知識を組み合わせて活用することで、革新性を高め、作業量を向上させることができます。クラウドベースのコラボレーションには数多くのメリットがあり、どのプロジェクトチームも必ず検討すべきでしょう。
いつでも、どこでも、協働する
これまで何度も触れてきたクラウドの「可動性」は、コラボレーションともうまく結びついています。クラウドでは、インターネットに接続できるデバイスであれば、いつでも、どこでも、企業の文書やデータにアクセスすることができます。
つまり、自宅やオフィス、さらには複数のタイムゾーンの垣根を越えて、より頻繁かつ効率的にコラボレーションを行うことができます。これにより、孤立しがちな遠隔地のスタッフの積極的な関与が促せます。
リアルタイムでの更新
クラウドは、データの一貫性を保ち、ストレスのないコラボレーションを可能にします。クラウドベースのファイル、ドキュメント、データに加えられた変更は、リアルタイムで自動的に同期されるため、関係者は常に最新のバージョンで作業することができます。
これにより、一貫性のない重複したドキュメントの発生を防止し、ドキュメントへのアクセスのための順番待ちも排除できます。すべての更新情報が記録されるため、誰が何を変更したかを追跡し、エラーが発生した場合には前のバージョンにロールバックすることができます。
大容量ファイルへのアクセス
些細なことかもしれませんが、大量のファイルの送受信やアクセスは、生産性の低下を引き起こします。さらに、ほとんどのメールサービスでは25MB以上の文書を送信できないという制限もあり、クラウドベースコラボレーションの利点がより強調されるかたちに。
ドキュメントをクラウド化することで、ファイルを送受信する必要がなくなり、ドキュメントの受信や配布の手配に伴う「遅延」から解放されます。また、機密情報を誤って他人に送ってしまったり、セキュリティ上の問題があるデバイスにダウンロードしてしまったりすることがないので、セキュリティ面でも安心です。
クラウドコンピューティングの「効率的な復旧」
悪意ある行為であれ、自然災害であれ、人為的ミスであれ、ソフトウェアエラーであれ、ハードウェア障害であれ、原因にかかわらず、ディザスタリカバリは、Kinstaを含むあらゆる企業にとっての重大事項です。重要なシステムやデータへのアクセスが失われると、たとえ短期間であっても、生産性の低下や風評被害により収益に悪影響が及ぼされる可能性が。
クラウドに移行することで、ディザスタリカバリという意味でも、大きなメリットがもたらされます。
リカバリにかかる時間の短縮
完全に災害を予測したり予防したりすることはできませんが、復旧を早めるプロセスを導入することは可能です。クラウドではデータの復旧や展開が迅速に行われるため、生産性を取り戻し、通常の業務をより早く再開し、あらゆる緊急事態への対応を迅速に行うことができます。
RapidScaleの調べによると、4時間以内にディザスタリカバリを行うことができるとするクラウドユーザーの割合は、非クラウドユーザーに比べて2倍以上となっています。
単一障害点がない
サービスの展開やデータの保存をオンプレミスで行うと、単一障害点が発生します。1つの災害がオペレーション全体に影響を与える危険性があります。一方でクラウドでは、無数のフェイルオーバーシナリオを想定したグローバルネットワークが利用でき、ダウンタイムの可能性を大幅に減らすことができます。
場所の制限なし
クラウドがあれば、「世界そのものがリカバリサイトに」なります。オフィスの電源が切れても、オフィスが火事になっていても、クラウドのアクセスがあれば、どんなデバイスでも、どんな場所でも、いつでもテクノロジーを利用することができます。
データ損失の防止
クラウドへの移行で、データはローカルデバイスに保存されなくなります。ドキュメントやデータベースがクラウド上に保存され、バックアップや、変更があった場合にはリアルタイムで更新されます。火事や盗難、単純なハードウェアの故障など、ローカルのハードウェアにデータを保存する際に介在する多くのリスクを取り除くことができます。
クラウドコンピューティングの「サステイナビリティ」
続いては、持続可能性です─環境に優しいテクノロジーの採用、組織の二酸化炭素排出量削減を意味します。現代社会では、すべての企業に、真の持続可能性をもたらすソリューションへ投資を行う責任があります。
クラウドベースのテクノロジーを採用することで、クラウドコンピューティングの持続可能性という利点を活用できます。
100%再生可能エネルギー
Amazon、Google、Microsoftの3社は、グリーンエネルギーの開発に積極的に投資しています。各社とも、消費エネルギーの100%をグリーンエネルギーで賄うという「クリーンな未来」を目指しています。
これらのサービスを利用することは、テクノロジーに付随して「環境に優しいエネルギー」を選択することを意味します。
炭素効率
先進的なクラウドプラットフォームに移行することで、二酸化炭素排出量を大幅に削減することが可能です。クラウドプロバイダは、グリーンエネルギーやサーバーの高稼働率などを組み合わせることで、オンプレミスのソリューションに比べて大幅に低い二酸化炭素排出量で、同量のタスクを実行することができます。
AmazonやMicrosoftの調査では、クラウドとオンプレミスを比較した場合、二酸化炭素排出量を88〜98%削減できるとしています。
クラウドコンピューティングの「安心サポート」
どんなテクノロジーを利用するにしても、時にトラブルシューティングの知識不足に直面することになるでしょう。クラウドコンピューティングの大きなメリットの一つは、このような問題が発生したときにサポートを受けられること。この利点をさらに高めるのが、サポートチャネルの大半が無料であるという事実です。もう少し掘り下げてみましょう。
セルフサービス支援
クラウドに関するさまざまな問題は、セルフサービスのサポートチャネルを活用して解決できます(ただし、自分で解決策を探す時間とやる気があればの話ですが)。
ドキュメンテーション
クラウドプロバイダ各社は通常、技術関連のドキュメンテーションを豊富に用意しています。これを活用して、利用可能なあらゆるテクノロジーの構築、設定、デプロイ、管理、トラブルシューティングを事実上「ゼロコスト」で行うことができます。
主要プロバイダが公開しているドキュメントをご紹介します。こちらから、リソースの規模がご理解いただけるはずです。
- Amazon Web Servicesドキュメンテーション
- Alibaba Cloudドキュメントセンター
- Google Cloudドキュメンテーション
- Microsoft Azureドキュメンテーション
コミュニティ
各クラウドプラットフォームには、ドキュメントに加え、活発なオンラインコミュニティもあります。何十万人ものクラウド知識人や愛好家が集まっており、その知識や専門性が共有されています。
コミュニティを訪れ、巨大かつ無料のサポートリソースを自由に利用できます。想像し得るあらゆるトピックやテクノロジーを網羅したブログ、イベント、チュートリアル、ディスカッションフォーラムなどがあり、全体として、成長を続けるエコシステムとなっています。
価値あるサポートコミュニティを以下にご紹介します。
サポートプラン
クラウドを導入しても、管理やトラブルシューティングを行う能力や時間が常にあるわけではありません。時に、組織の事業を継続するために、プロによる迅速なサポートが必要となる状況に遭遇するでしょう。
このような事態に対応するため、各クラウド事業者は、基本的なクラウドサポートプランに加え、有料のプレミアムプランを用意しています。プレミアムプランを利用して規模を拡大することで、以下のようなサポートにアップグレードできます。
- ベストプラクティスのチェック
- 追加のコミュニケーションチャネルの利用(電話、メール、ライブチャット、ビデオ通話)
- 24時間年中無休の対応
- 業務上非常に重要な障害に対する15分以内の対応
- APIのサポート
- トレーニングリソース(オンラインと対面式の両方)
- テクニカルアカウントマネージャーによる対応
また、サポートプランをニーズに合わせて柔軟に調整することができます。公式サポートプランが月額30ドルから15,000ドルの間であることを考えると、このような柔軟性は非常に魅力的です。
主要クラウドプロバイダの提供するサポートプランは以下の通りです。
クラウドコンピューティングの「コンプライアンス」
テクノロジーに関して言えば、「コンプライアンス」とは、政府や業界が適用する規制や要件の高まりを意味します。
規制の厳しい業界であろうと、特定の地域であろうと、あるいはその両方で事業を行っている場合であろうと、テクノロジーのコンプライアンスは困難な課題です。準拠しようと努力しても、すぐに圧倒されてしまうことでしょう。
クラウドでは、業界の厳しいコンプライアンスをすでに満たしている状態で、オンデマンドのテクノロジーソリューションが提供されます。これには、CSA STAR、GDPR、HIPPA、PCI-DSS、およびさまざまなISO規格が含まれます。クラウドに移行することで、他の方法では難しい(または不可能な)コンプライアンス基準を遵守するために必要な時間、専門知識、および費用まで不要になります。
どのプラットフォームでも、自社クラウドソリューションに付随し、包括的なコンプライアンスプログラムが用意されています。各社とも、競合他社よりも多くの認証、法律、業界固有の規制、セキュリティ、プライバシー関連のコンプライアンスに準拠するために切磋琢磨しているのです。
以下のリンクから、主要クラウドプロバイダの提供するコンプライアンスプログラムをご覧いただけます。
クラウドコンピューティングの「競争力」
クラウドへの移行は、ライバル企業を凌駕する競争力をもたらします。Versionの調査によると、77%の企業がクラウド技術によって競争力が高まると考えています。
このメリットを得るための道筋は一つではありません。クラウド本来の特性を活かし、無数の方法で「強み」を享受できます。クラウドが競争力向上に貢献するほんの一例を、以下にご紹介します。
- 革新に集中できる環境を確保:クラウドに移行することで、基盤となるインフラの管理責任がプロバイダに移ります。これにより、IT部門はビジネスの発展のための革新的なプロジェクトに専念することができます。
- 常に最新のテクノロジーを利用できる:オンデマンドで柔軟に利用できるクラウドでは、最先端のテクノロジーが生まれた際にすぐに利用することができます。オンプレミス型のシステムで発生する導入の遅れや資金面での負担がありません。
- より機敏なビジネスに進化:クラウドでは、新しい地域への進出、新しいテクノロジーの実験、サービスの追加や削除などを迅速かつ容易に行うことができます。この俊敏性により、市場の変化に対応し、競合他社に先駆けて新たな機会を得ることができます。
- 競合他社との差別化:クラウドのスケールメリットを活用することで、先進的なテクノロジーをより身近なものにすることができます。小規模な企業でも、大きな市場で優位に立つことも可能です。
クラウドコンピューティングの「実用的洞察」
デジタル時代の変遷により、「知は力なり」という格言が「データは金なり」に塗り替えられました。
今日、私たちはかつてないほど多くのデジタルデータを生成しています。現在の予測では、2021年には毎日2.5兆バイトの新しいデータが生成されると言われています。そのデータの中には、特に貴重なものが─非常に実用的な宝物が眠っているのです。
クラウドテクノロジーを利用することで、顧客との取引、ビジネスプロセス、テクノロジーの利用に関するデータをより深く理解し、「データをお金に変える」ことができるようになります。
クラウドコンピューティングの手頃な価格と柔軟性にて、機械学習、AI、ビッグデータ分析などのサービスを利用することができる時代です。これらのサービスを利用することで、新しい方法でデータを分析し、洞察を得ることができ、それによって(これまでアクセスできなかった)データ─特に非構造化データ─から価値を生み出すことが可能に。
また、多くのクラウドベースのソリューションには分析機能が組み込まれており、導入環境全体のデータを総合的に把握できます。ユーザーの行動やリソースの消費量など、あらゆる種類のデータを追跡する仕組みやカスタマイズを施したレポートを簡単に作成し、会社全体の情報を分析可能です。この洞察により、効率性の向上、セキュリティの改善、リソース管理の自動化、企業目標達成のためのプランを立てることができます。
まとめ
ここまで来れば、クラウドコンピューティングのメリットが紛れもなく広範囲に及ぶことが、お分かりいただけたはず。クラウドに移行することで、ビジネスのほぼすべての分野で確実な改善を実感できるでしょう。
この記事では、そのメリットを実現するために組み合わされている基本的な特徴、機能、およびメカニズムを概説し、これらのメリットの中には固有のものもあれば、利用者の積極的なインプットを必要とするものもあることをご説明しました。ここまでの説明で、クラウドがもたらす大局的なメリットだけでなく、その先にある核心的なメリットについてもしっかりとご理解いただけたのではないでしょうか。
このようにして理解を深めたことで、クラウドコンピューティングの強みをよりよく活用していただけましたら幸いです。
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