クラウドコンピューティングは、テクノロジー、製品、サービスの広大かつ複雑なエコシステムへと成長—数多くのクラウドプロバイダーが拡大を続けるクラウドマーケットシェアをめぐり競争を繰り広げる数十億ドル規模の経済圏が生み出されています。

消費者にとって、このクラウドエコシステムと関わり合い、これを理解することはすます困難になっています。業界大手のAmazon Web Services、 Microsoft Azure、Google Cloud Platformといった名前を除いては、クラウド市場は多くの人にとって依然として謎に包まれています。

今回は、クラウドマーケットを深掘りしましょう。さまざまなクラウドサービスを見て、大手クラウドプロバイダーを理解し、2020年のクラウド市場シェアを探ります。

また、企業がクラウドに移行する方法と理由、これに関連するメリットやコストについてもご説明します。

クラウドコンピューティングサービスの3つの主要なタイプを理解する

クラウド市場とそのシェアに迫る前に、まずクラウドコンピューティングの3つの主要なタイプを理解しましょう。各タイプには、市場を構成する様々な範囲のサービスやクラウドプロバイダーが存在します。その3つの主なクラウドコンピューティングのタイプとは次のとおりです。

サービスとしてのインフラストラクチャ(IaaS)

各プロバイダーのサービスを介して、ネットワーク、ストレージ、サーバーなどのコンピューティングリソースを状況に応じ利用することが可能になります。利用者はプロバイダーのインフラストラクチャ内で、自らのプラットフォームとアプリケーションを実行します。これにより、 ストレージと処理のニーズに応じて拡張の自由がきく柔軟なハードウェアリソースが確保できます。

サービスとしてのプラットフォーム(PaaS)

プロバイダー提供のクラウド環境を使ったアプリケーションの開発、管理、ホストが可能になります。プラットフォームにあるツールはテストや開発をサポートしています。

プロバイダーは、基盤となるインフラストラクチャ、セキュリティ、オペレーティングシステム、バックアップについての責任を負うことになります。

サービスとしてのソフトウェア(SaaS)

プロバイダーのクラウドベースのソフトウェアを利用することができます。ローカルデバイスにソフトウェアアプリケーションをインストールする代わりに、ウェブまたはAPIを使用しプロバイダーのアプリケーションにアクセスします。

(関連記事:SaaSマーケティングの7つの大事な原則

アプリケーションを通じて、自らのデータを保存・分析します。ソフトウェアのインストール、管理、またはアップグレードに時間を費やす必要はありません。これはすべて、プロバイダー処理する内容となります。

上記3つの各サービスカテゴリはさらに、パブリック、プライベート、ハイブリッドに分類されます。

プライベートクラウド

プライベートクラウドでは、独自のデータセンターまたはイントラネットでホストを行います。利用者自身がサーバー、ネットワーク、ソフトウェア、プラットフォームリソースの独自のクラウドエコシステムを所有、管理、更新、アップグレードします。保護にも同様に自らのファイアウォールとセキュリティソリューションを用います。

パブリッククラウド

パブリッククラウドでは、プロバイダーのデータセンターインフラストラクチャを利用します。当然、プロバイダーがすべての管理、保守、セキュリティ、アップグレードを担当することになります。

ハイブリッドクラウド

ハイブリッドクラウドは、パブリッククラウドとプライベートクラウドの両方を組み合わせて使用することを意味します。利用者が、2つのサービスをどのように組み合わせるか、特にパブリッククラウドとプライベートクラウドの間でやり取りされるデータのセキュリティ管理を行う責任を負うことになります。

2024年クラウドコンピューティング市場の概要

クラウドコンピューティング市場は巨大です。Synergy Research Groupの最近のデータによると、7つの主要なクラウドサービス・インフラストラクチャ市場セグメント、オペレーター、ベンダーにおいて、2019年上半期の収益は1,500億ドルを超えています。前年比24%の成長です。

クラウド市場はすでに巨大ですが、これからの拡大の余地も大いにあります。Gartnerは2019年のIT業界における世界規模の支出を3.97兆ドルと予測しています。

クラウド市場の成長とセグメントリーダー
クラウド市場の成長とセグメントリーダー(画像の参照元:Synergy.com)

クラウド市場を構成するセグメントを詳細に見てみると、パブリッククラウドソリューションが大多数を占めていることがわかります。これは、RightScaleの「2019 State of Cloud」レポートにある通りです。同レポートによると、91%の企業がパブリッククラウドサービスを使用しており、72%がプライベートクラウドソリューションを選択しており、69%がハイブリッドソリューションを選択しているとのことです。

IDCの予測によると、パブリッククラウドサービスとインフラストラクチャへの世界的な支出は、今後5年間で2倍になると予測されています。2019年の2,290億ドルというランレートは2023年までにほぼ5,000億ドルに。驚異的な5年間の年平均成長率(CAGR)になるでしょう。

IDCレポートは、SaaSを支出の最も大きいカテゴリと考え、予測期間全体におけるパブリッククラウド支出の半分以上をこれが占めるとしています。IaaSは2番目に大きな支出カテゴリで、5年間のCAGRは32.0%と予測されており、最も急速な成長を見せています。PaaSの支出は最も低いとされ、5年間のCAGRは29.9%と2番につけています。

パブリッククラウド市場をより深く知るには、この他の調査やレポートにも目を向ける必要があります。

SaaSパブリッククラウド市場シェアを掘り下げて考える

サービスとしてのソフトウェアは、最も成熟したパブリッククラウド市場であり、健全な成長を見せています。Synergy Research Groupの最近のデータによると、ソフトウェアベンダー各社は、2019年第1四半期に230億ドルを超える収益を上げているとのことです。

市場の年間ランレートは1,000億ドル超に。このレポートは、おおよそ30%の年間成長を示し、IDCの前述のWorldwide Public Cloud Services Spending Guideと強い相関関係にあります。

SaaS市場は主要ベンダー5社により支配されています。これらのSaaSベンダーが、世界のSaaSクラウド市場シェアの51%を占めます。

業界をリードするのはMicrosoftで、市場シェアは17%、年間成長率は34%です。同社は(主に高い成長を見せるコラボレーションセグメントにおける優位性により)市場シェアを伸ばし続けています。

次にSalesforceが12%のSaaS市場シェアを獲得し、年間21%の成長を記録しています。それに続くのがAdobeで、SaaSの市場シェアは10%、年間成長率は29%です。続いてがSAPで、6%のSaaS市場シェアと39%の年間成長(上位5社でトップの成長率)を報告し、上位ベンダーを追います。最後がOracleで6%の市場シェアを獲得し、年間29%の成長を報告しています。

SaaS市場シェアと収益成長率
SaaS市場シェアと収益成長率(画像の参照元:Synergy.com)

以下10のベンダーがSaaS市場の26%を占め、26%の成長が報告されています。具体的には、Cisco、Google、IBM、ServiceNow、Workdayなどがあります。

SaaS市場の進化

SaaS市場は成熟しているかのように見えますが、拡張の余地はまだあります。現在のSaaS市場は、エンタープライズソフトウェア支出全体の約20%しか占めていません。エンタープライズソフトウェアの支出の大部分が依然としてオンプレミスのソフトウェアソリューションに集中しているため、SaaSベンダーはこの市場に目を向け、企業にクラウドへの移行を呼びかけています。

2019年、SaaSベンダーは大きく3つの陣営に分かれます。従来型エンタープライズソフトウェアベンダー、クラウド生まれのベンダー、市場での拡大を目指す大規模ITベンダーです。

従来型エンタープライズソフトウェアベンダー

これには、Microsoft、SAP、Oracle、IBMなどのビッグネームが並びます。彼らには既に大量のオンプレミスのクライアントがおり、SaaSベースのサブスクリプションモデルへのコンバージョンを目論んでいます。

クラウド生まれのベンダー

これに該当する比較的新しい企業は、高い成長率で急速な成長を続けています。Zendesk、Workday、Atlassianなどが含まれます。しかし、このような面々には、Microsoftのような圧倒的な認知度が欠けています。

大規模ITベンダー

SaaS市場で活躍するこのグループには、GoogleやCiscoなどがあり、GoogleのG SuiteやCiscoのコラボレーションアプリなどのサービスを利用して、市場でニッチを切り開いています。

IaaS・PaaSパブリッククラウドマーケットの調査と理解

IaaS・PaaS市場の正確な状況を把握するのは、なかなか簡単ではありません。この分野の大手ベンダー(AmazonやMicrosoftを含む)は、多くの場合、IaaSとPaaSを組み合わせた収益を報告しています。

これに加えて、レポートの内訳の透明性も欠如しており、市場の真の姿を把握するのは非常に困難です。ただありがたいことに、GartnerやIDCなどの大手研究機関によるレポートを使ってより深い洞察を得ることはできます。

パブリッククラウドインフラストラクチャで最大の市場シェアを持つプロバイダーとは?

世界的なサービスとしてのインフラストラクチャ市場に関するGartnerの最新のデータは、324億ドルの年間収益を示しています。2017年の247億ドルから31.3%の成長です。

Gartnerによると、2018年の時点で、世界のIaaSクラウド市場シェアのほぼ80%を占める5つのベンダーが市場を支配しているとのことです。そのベンダーとは、Amazon(47.8%)、Microsoft(15.5%)、Alibaba(7.7%)、Google(4.0 %)、IBM(1.8%)です。

表:世界的なIaaSパブリッククラウドサービスの市場シェア [2017〜2018年](単位:百万ドル)

企業 2018

収益

2018

市場シェア(%)

2017

収益

2017

市場シェア(%)

2018-2017

成長 (%)

Amazon 15,495 47.8 12,221 49.4 26.8
Microsoft 5,038 15.5 3,130 12.7 60.9
Alibaba 2,499 7.7 1,298 5.3 92.6
Google 1,314 4.0 820 3.3 60.2
IBM 577 1.8 463 1.9 24.7
Others 7,519 23.2 6,768 27.4 11.1
合計 32,441 100.0 24,699 100.0 31.3

2019年の上位5つのパブリッククラウドインフラストラクチャプロバイダーの提供するインフラを詳しく見てみましょう。Gartnerと各プロバイダーの収益レポートのデータを組み合わせて考えます。

Amazon Web Services (AWS)

世界のパブリッククラウドインフラストラクチャ市場のほぼ半分を所有するAmazonは、明らかに市場をリードする存在だと言えます。2018年、Amazonは154億ドルの収益を報告し、前年比26.8%の成長となりました。この優位性を2019年に引き継いで、Amazonは第一四半期第二四半期を合わせたAWSの収益が161億ドルであり、2018年上半期から39%の成長となりました。

Microsoft Azure

Gartnerは、市場シェアが15.5%であることから、Azureの年間収益は50億ドル、2018年の成長率は60.9%と予測しています。しかし、Microsoftのパブリッククラウドインフラストラクチャ市場シェアの実態は依然として闇の中にあります。Microsoftは「商用クラウドビジネス」というまとまりに組み込むことでAzureの収益を隠し続けています。

2019年、MicrosoftはAWSから市場シェアを奪取することが確実視されており、Azureの収益は前年同期比70%の成長を報告しています。全体として、Microsoftの第一四半期第二四半期を合わせた商用クラウドビジネスの収益は206億ドルと報告され、2018年上半期には40%の成長率です。

Alibaba

Gartnerによると、7.7%のパブリッククラウド市場シェアを持つAlibabaの年間収益は24億9,000万ドル。2018年には92.6%という驚異的な成長を遂げています。この中国の大手eコマース企業は、2019年にかけても驚異的な成長を続け、第一四半期第二四半期の合計収益は22億ドルと報告されています。これは66%の成長です。これにより、同社の年間収益は40億ドルを超えることになります。

Google Cloud Platform (GCP)

Gartnerによると、Google Cloud Platformは、4%のパブリッククラウド市場シェアを占めると推定されており、2018年の年間収益は13億ドル、成長率は60%です。GoogleのCEO、Sundar Pichai氏が、クラウドサービスの収益が80億ドルに迫る勢いであることを報告しており、GoogleがAlibabaを追い抜く可能性もあります。GoogleはGCPの収益とSaaS G-Suiteのサービスを組み合わせて報告しているため、これについては鵜呑みにしないことも重要です。

詳細については、Google Cloud Platformマーケットシェアガイドをご覧ください。

IBM

Gartnerによると、IBMは1.8%の市場シェアを持ち、2018年の年間売上高は5億7,700万ドル、24%の成長です。IBMは主にそのハイブリッドクラウドサービスで名を馳せ、IaaSプロバイダーであるRed Hatを340億ドルで買収—2019年に市場を一変させるべく邁進しています。

PaaS市場における機会の理解

Gartnerによると、2019年のPaaS市場価値は200億ドルを超えると予測されています。この数字は、2022年までに2倍になることが予想されます。22のカテゴリにまたがる360を超えるベンダーと550のクラウドプラットフォームサービスにより、同市場は成長を続けています。

IaaSやSaaSとは異なり、PaaS市場を支配するのはほぼ不可能だと言われています。驚くべきことに、Gartnerは、レポートで概説されている22のサービスのうち10以上を提供できるのは、既存の360 PaaSベンダーの中で10のみであると報告。大多数のベンダーが、多目的ソリューションよりも特定の目的に合った単一のPaaSサービスに集中するよう促されるかたちとなっています。

十分なリソースを持つ者にとっては、22のサービスすべてをカバーする多目的ソリューションを開発することにより、PaaS市場の半分以上を掌握するチャンスがあります。現在、この分野で競合できるベンダーはごくわずか。大方の予想と違わず、Amazon、SAP、Google、Oracle、Microsoft、Salesforce、IBMがこれにあたります。

企業がクラウドに移行している理由

クラウド移行の背景にある各社の決定はすべて異なる理由に基づきます。ただし、企業の移行を後押しする共通項も見出されるもの。企業がクラウドベースのエコシステムに移行する最も一般的な理由を見てみましょう。

クラウドを利用することのメリット

移行の最も一般的な理由の1つとして、クラウドコンピューティングの広範にわたるメリットが挙げられます。さらに優れた柔軟性、スケーラビリティ、セキュリティも魅力となっています。これらのメリットについては、次のセクションで詳しくご説明します。

サポートの終了

すべてのハードウェア・ソフトウェア製品にはライフサイクルがあります。ベンダーがサポート終了を発表すると、別のソリューションを検討せざるを得なくなります。この自然発生するタイミングをきっかけにして、ますます多くの企業がオンプレミスからクラウドベースのソリューションに移行しています。

これを機に古いライセンスとハードウェアの利用をやめることになります。サポート終了後のソリューションを使い続けるのは、セキュリティリスクの点で理想的でないことは、言うまでもありません。

事業買収

企業合併に際し、さまざまなアプリケーションやテクノロジーランドスケープの非互換性が露見し、解決すべき課題がしばしば発生するものです。複数のオンプレミスデータセンター全体でこれらのランドスケープを管理することを検討する必要がある場合は尚更です。

このような状況では、アプリケーションとテクノロジーをクラウドに移行することが最適解となる可能性があります。新しい地域や業務を続ける従業員にシームレスに対応できる一貫したソリューションがスムーズな移行を促します。

契約の更新

多くの企業は、定期的に契約の更新を行う必要のあるプライベートデータセンター、ハードウェア、ソフトウェアプロバイダーと契約しています。これは、前述のサポート終了と同様に、特定のサービスやソリューションのデプロイの方法を考え直す機会をもたらします。

つまり、コストの増加やその他のさまざまな制限となる要因により、コスト効率のいいクラウドベースのソリューションに移行する必要性が生まれます。

コンプライアンス

金融サービスやヘルスケアなどの業界では、データコンプライアンスは事業運営の要です。オンプレミスのソリューションを選んだ場合、規制の変化や継続的な管理が、リソース面での大きな課題をもたらす可能性があります。

クラウドに移行すると、すでにコンプライアンスに準拠しているサービスが選択できます。コンプライアンス要件が変更される際には対応しアップグレードすることのできるクラウドプロバイダーが必要になります。

セキュリティリスク

サイバー攻撃の深刻さと規模が日々増大する中で、守りの準備が整っていない企業も存在するでしょう。

多くの企業でツールや人材の欠如が見られますが、これに限らず、既製のソリューションを提供するパブリッククラウドを利用することで、リスクを軽減できます。クラウドプロバイダーが脅威に対する保護のために提供することのできる膨大なリソースは言うまでもありません。

必要となる容量

多くの企業に言えることですが、急激な成長、または季節的な容量の大幅な変化で、ハードウェアの使用率の問題が発生することがあります。事業で必要とされる条件を満たせない、ほとんど活用されていないオンプレミスのサービスに料金を支払い続けると、コストはすぐに累積します。

そんな時にはクラウドへの移行により、コンピューティングを状況に応じて素早く増減する柔軟性が確保できます。従量課金制によるコストの削減です。

ソフトウェアとハードウェアの更新サイクル

オンプレミスのデータセンターやソフトウェアアプリケーションを管理する際には、すべてを最新の状態に保つ必要があります。更新サイクルの評価に伴い、クラウドへの移行が大幅に安価かつ有益であることが判明するかもしれません。

SaaSの定期契約、またはアプリケーションのパブリッククラウドへのリフト&シフトによって(コストのかさむオンプレミスのソフトウェアライセンスやハードウェアのアップグレードに比べて)大幅なコスト削減を実現できることがあります。

クラウドコンピューティングサービスへの移行が事業にもたらすメリット

ここまでは、あらゆる企業がクラウドへの移行を進めている主な理由をご紹介しました。次に、これを行うことのメリットを見てみましょう。

コスト削減

多くの企業がクラウドに移行する主な動機の1つは、関連するコストを削減すること。これは直接的にも間接的にもなり得ます。事業の種類とクラウドの使用方法に応じて、さまざまな方法でコストを削減できます。

いくつかの例として、変化する需要に合わせてコンピューティングをスケーリングする、ハードウェアとソフトウェアの管理に費やすリソースを削減する、またはデータに対する深い洞察を得ることが挙げられます。

スケーラビリティ

クラウドサービスの主なメリットの1つはスケーラビリティです。クラウドコンピューティングを使用すると、コンピューティングとストレージの要件を軽快にスケーリングし、事業の日々のニーズを満たすことができます。従量課金制により、費用を細かに制御し、季節的な需要の変化に合わせたスケールアップ・スケールダウンが可能になります。

競争力

企業のIT部門に割り当てられるリソースには限りがあります。だからこそクラウドに移行することで、競合他社よりも速く事業を展開することが可能になります。

オンプレミスインフラストラクチャを管理するサーバールームから解放されることで、収益を生み出すプロジェクトへのIT部門の力の集中が実現します。最近のVerizonによる調査によると、77%の企業がクラウドテクノロジーにより競合他社を上回る優位性を手にしたと感じているとのこと。

詳細については、なぜシステム管理者になろうとすることが悪い考えなのか、をご覧ください。

セキュリティ

クラウドプロバイダーは、企業にセキュリティの大幅な改善をもたらします。例として、Microsoftは、1日あたり6兆5000万を超える脅威シグナルを監視し、システムとデータの保護を唯一の目的とする3500人の社内セキュリティチームを擁しています。クラウドに移行すると、セキュリティに必要とされるリソースがプロバイダーの手に委ねられ、社内のセキュリティチームは、他の仕事に専念できるようになります。

障害からの復旧

技術を運用可能な状態に維持することは、事業成功の鍵です。今現在ビジネスプロセスをどのように管理していても、システムに裏切られる日は来ます。現代社会では、ほんのわずかのダウンタイムでさえも、生産性、収益、ブランドの評判に大きな影響を与える可能性があります。

クラウドテクノロジーは、迅速なデータリカバリと、障害発生時にフェイルオーバーを実行することのできる大規模なデータセンターを提供してくれます。

コラボレーションの加速

クラウドコンピューティングは、事業のコラボレーションを簡素化・改善します。クラウドベースのプラットフォームを介し、チームメンバーによる情報の簡単かつ安全な作成、編集、表示、共有が可能になります。コラボレーションが促進され、スタッフはモバイルデバイスを使用して外出先からでも接続可能に。

可動性

クラウドコンピューティングは、世界中のどこにいても、スタッフをループの中に維持します。クラウドテクノロジーは、モバイルアクセスをサポート—スタッフがモバイルデバイスを介して会社のシステムやデータに安全にアクセスできるようになります。リモートワークをサポートし、場所に縛られずスタッフの接続性と生産性を確保します。

Insight

デジタル時代の到来で、顧客のトランザクションや、顧客と会社の接点について無数のデータポイントが追跡できるようになりました。もちろん、このデータを事業のために分析することは困難であり、時間もかかります。

適切なクラウドプロバイダーを選べば、莫大な投資をすることなく、分析機能(データの処理、分析、価値の発見に活用)を備えた強力なコンピューティング、ストレージ機能をすぐさま利用できます。特に、AIと機械学習により裏打ちされたBIツールの最近の進歩と可用性には、目を見張るものがあります。

品質管理

品質の欠如と一貫性のないレポートは、ビジネスの成功に大きな影響を与える可能性があります。クラウドベースのシステムはこれを防止し、すべてのドキュメントを1つの場所に1つの形式で保存します。コラボレーションシステムはバックアップやバージョン管理も担い、データの正確性と一貫性を維持しながら、スタッフ皆が同じ情報にアクセスできるようにします。

持続可能性

環境問題などと相まって、持続可能性は企業にとって最優先事項となっています。クラウドプロバイダーの選択は、 二酸化炭素排出量削減につながります。大手クラウドテクノロジープロバイダーは、データセンターでの再生可能エネルギーの使用を支持しています。

また、仮想サービスモデルを選択し、物理的な製品やハードウェアへの依存を減らしています。クラウドコンピューティングは、リモートアクセシビリティという意味でも有利に働き、スタッフの通勤に伴う二酸化炭素排出量を減らすことにも役立ちます。

事業におけるクラウドコストの計算

クラウド移行の原点となる動機の1つは、コスト削減でしょう。ただし「オンプレミスソリューションよりも安価」だとするクラウドの印象は変化しています。

2020年、運用をクラウドに移行することで支出を大幅に削減することは可能ですが、これは保証されてはいません。ビジネスのコスト削減を達成できるかどうかは、選択したクラウドの料金モデルと、クラウドサービスを効率的に運用できるかどうかに依拠します。

クラウドへの移行と最適化の初期投資は短期的にはマイナスのROIを生み出す可能性があり、これを認識しておくことが重要です。

GartnerのリサーチディレクターであるMarco Meinardi氏は、オンプレミスのデータセンターからAmazon Web Services EC2への2500台の仮想マシンのワークロード移行に関する事例を公開しました。

移行とクラウド最適化技術(適正化、スケジュール策定、リザーブドインスタンス)への初期投資の後、オンプレミスの場合に比較してクラウドIaaSの総所有コストは55%減少しています。

クラウド移行の総コスト
クラウド移行の総コスト(画像の参照元:Gartner.com)

もちろん、クラウドのコスト計算の際には、IT部門の間接費を考慮することが重要です。ソフトウェアの更新、障害の発生したハードウェアの管理、コンプライアンスの遵守を任せられるため、それに付随する時間が節約できます。

クラウドへの移行を検討している方のために、クラウドIaaSへの移行コストと現在のオンプレミスと比較したTCO(総保有コスト)を把握するのに便利なツールをいくつかご紹介します。

AWS、Azure、Google Cloud Platformのコストの比較

パブリッククラウドインフラストラクチャへの移行を計画しているならば、適切なクラウドプロバイダーと価格モデルを選択することが重要です。パブリッククラウドベンダーが提供する料金体系は複雑なため、簡単な作業ではありません。クラウドの価格は、さまざまな要因に応じて大幅に変動し得ます。その要因の一部は次のとおりです。

  • デプロイするサーバーの仕様と数
  • 保存、転送する必要があるデータの量
  • オペレーティングシステムとソフトウェアの種類
  • 支払いの単位(分、時間、月単位)
  • 従量課金制、リザーブドインスタンス、長期契約
  • 必要なクラウドデータセンターのロケーション

これらの要素はあくまでも一例です。AWS、Azure、Google Cloud Platformなどの大手ベンダーは、何百種類ものサービスを提供しています。それぞれに独自の請求頻度や、価格に影響を及ぼす何千もの設定があります。

すでにAWSとGoogle Cloud Platformについての記事では、それぞれを比較して、IaaS・PaaS製品やサービスの理解を深める詳細な分析を行っています。さらにMicrosoftには、 AWSとAzureのサービスの比較に関する便利なガイドもあります。

クラウドデプロイにかかるコストの一部を概説するために、大手IaaSプロバイダー、PaaSプロバイダーであるAWS、Azure、Google Cloud Platformを比較し、サーバーとストレージというパブリッククラウドホスティングデプロイメントの組み合わせを検討しました。

価格の比較を簡略化するために、Cloudoradoを使用しました。このツールでは、CPUパワー、RAM、ストレージ、OSなどの基本的な仕様を選択できます。このベーシックな構成を使用し、プロバイダーのさまざまなサービスを1か月あたりの価格と共に比較してみましょう。

この例では、次の設定を用いました。

  • CPUパワー:4
  • RAM:8GB
  • ストレージ:1TB
  • OS:Linux
クラウドプロバイダー クラウドホスティングサービスの内容 1ヶ月ごとの価格
Google Cloud Platform カスタムマシン 8 GB RAM / 4x CPUs $126
Microsoft Azure A4 v2 仮想マシン $159
Amazon Web Services EC2 c5.xlarge + 1 TB SSD EBS $225

さまざまなクラウドホスティングの設定を比較した結果、Google Cloud Platformが常に最も経済的なオプションとなりました。例外は、Windowsを選択した場合で、同OSの所有権によりMicrosoft Azureが一位に躍り出ます。

もちろん、このコストとセットアップは、あくまでも表面的な情報に過ぎません。さらに掘り下げていくと、各プロバイダーには数百に及ぶカスタマイズや割引モデルがあり、それらを組み合わせ高度にパーソナライズされたクラウドデプロイメントが実現します。クラウドコンピューティングの時間を事前に購入することを厭わない場合には、多くの場合、確約利用割引が利用できます。

デプロイに必要な条件を把握しており見積もりを取得したい場合は、各プロバイダーの料金計算ツールが便利です。これを使えば、IaaSおよびPaaSの全体像を理解した上で、デプロイのニーズを満たす、高度にパーソナライズされた見積もりが手に入ります。

まとめ

クラウド市場は当社にも、実際に事業のメリットとなる幅広いサービスをもたらしてくれています。これを有効活用するためには、あらゆる選択肢を比較検討できるだけの知識が必要になります。また、クラウドデプロイメントを最適化して、オンプレミスデプロイメントよりも実際にコストを削減する意欲も必要です。

SaaS、IaaS、PaaS市場の全てで、Google、Amazon、Microsoftという馴染みのある名前が並びます。これらの大手テクノロジー企業は、あらゆるセグメントで市場シェアを確立しています。また、新製品・既存の製品の研究開発を支援するリソースがある限り、今後数年間も、彼らの優位性が維持されることは予想に難くありません。

クラウドプロバイダーへの移行を検討する際には、競争力のある製品、サービスの種類、割引モデルを調査、理解するようにしてください。ここに時間を費やすことで、企業のニーズに合わせてカスタマイズされたクラウドセットアップを最も効率的な(「最も安い」にこだわらないこと)コストで確保できます。また、コストを計算するときは、クラウドモデルへの切り替えによる間接費という意味でのメリットも必ず考慮してください。

GCPは現在小さなクラウドプロバイダーの1つですが、それと同時に、最も急速に成長を続けているプロバイダーの1つでもあります。パフォーマンスの絶え間ない革新、確約利用割引による価格の優位性、世界中のあらゆる場所にある高速グローバルネットワークなどが、この成長を裏で支えています。

Kinstaは、WordPressホスティングインフラストラクチャ全体でGCP一本に特化した世界初のマネージドWordPressホスティングでした(2016年に遡ります)。現在、多くの競合他社がこれに続いています。

あなたのクラウドサービスの経験はどのようなものですか?下のコメント欄から教えてください!

Edward Jones

8年の業界経験を持つテクノロジーライター。Microsoft、IBM、Entrepreneurなどの大手出版社で300本以上の記事を執筆。