RubyとRuby on Railsは全くの別物ですが、その類似した名前と共通した歴史から、この2つを混同している人は少なくありません(駆け出しの開発者の間では特に)。

そんな誤解を解消すべく、今回はそれぞれの特徴と歴史をご紹介し、両者の違いを見ていきます。

RubyとRuby on Railsの違い(要約)

まずは、RubyとRuby on Railsの違いから。

Rubyは、C言語をベースに構築され、広く普及しているオープンソースのオブジェクト指向の汎用スクリプト言語です。マルチプラットフォーム対応で、Windows、macOS、Linuxで使用できます。シンプルさと楽しい開発作業を重視して設計されており、ウェブアプリケーション開発において人気の選択肢です。

一方、「Rails」とも呼ばれるRuby on Railsは、MVC(モデル、ビュー、コントローラー)アーキテクチャに基づくオープンソースのウェブ開発フレームワークです。言語にRubyを使用して、データベース駆動型のウェブアプリケーションを開発することができます。

それでは、両者についてもう少し掘り下げてみましょう。

Rubyとは

Rubyの生みの親は、日本のソフトウェアプログラマーであるまつもとゆきひろ氏(通称Matz)。1993年に誕生し、最初のバージョンであるRuby 0.95は1995年12月21日にリリースされました。

RubyはPerlやPythonと同様、プログラマーの生産性を高めるために設計されたインタプリタ方式の高水準言語です。Adaのようなオブジェクト指向言語として開発されていることから、パフォーマンスとシンプルさのバランスが絶妙です。

まつもと氏は、自分自身、そして他の開発者がコーディング作業を楽しむことができ、同時に作業量が軽減できるプログラミング言語を目指して開発しています。

Rubyは過去10年間、人気プログラミング言語として選ばれ続けており、その人気の理由はシンプルさと使いやすさにあります。

汎用性の高いプログラミング言語

Rubyは、純粋なオブジェクト指向言語で、すべてがオブジェクトとして扱われます。整数のようなプリミティブ型でさえ関数やインスタンス変数を持ち、メソッド連鎖(メソッドチェーン)がサポートされています。

例えば、整数に対してドット記法を使った2つの異なるメソッドを使用し、絶対値を求めて3乗するのを、1行で完結することができます。例えば、absを使用して-3の絶対値を求め、pow(3)で-3 の絶対値を3乗すると以下のようになります。

value = -3.abs.pow(3)

Rubyは、様々なタイプのアプリケーションの開発に利用でき、汎用性に優れています。さらに、関数型プログラミングもサポートされており、プログラムは関数と同様に動作する手順でグループ化した命令で構成されます。

ライブラリ

Rubyには、多数のライブラリも組み込まれています。RubyGemsと呼ばれるパッケージマネージャーもあり、Rubyコミュニティの開発者によって作成された「gem」というパッケージを利用できます。gemを活用することで、既存のRubyアプリケーションの機能や性能を拡張したり、変更したりすることができます。

gemには、コードと対応するテストツール、ドキュメント、およびgemspec(gemに関する情報を含むファイル)が含まれ、gemspecには、gemの名前、説明、必要な依存関係が格納されています。

例えば、k8s-clientは人気のgemで、アプリケーションに追加すると、Kubernetesクライアントライブラリにアクセスできるようになります。

また、nytimes_top_storiesのようなニッチなgemもあります。名前の通り、このgemをアプリに組み込むこと、New York Timesの最近の見出しを取得できるようになります。

Rubyの用途

最も一般的な用途としては、ウェブ開発、静的サイトジェネレーター(フロントエンド開発)、サーバーサイドアプリケーション、DevOps、自動化、コマンドラインツール、データ処理アプリケーションなどが挙げられます。

具体例は以下のとおりです。

Rubyの利点と欠点

Rubyには多数のメリットもあれば、欠点もあります。両者を考慮して、Rubyを使用すべきか、それともPythonやC#のような他の言語を使用すべきかを判断してみてください。

利点

  • 使いやすく、すぐに使える機能が揃っている
  • Rubyの開発者コミュニティによって開発されたサードパーティライブラリが多数
  • 生産性を重視し、作業を最小限に抑える設計であり、他の言語と比較して開発作業が高速

欠点

  • メモリ消費量が多く、ガベージコレクション(GC)の効率が悪いため、パフォーマンスが低下することがある
  • 汎用性が高いが、ウェブ開発向きで、デスクトップアプリ開発などの他の分野では不利
  • 導入以降も開発が進んでいるにも関わらず、未だ「ニッチな言語」の位置付けにあり、類似言語であるPythonほどの存在感を確立できていない

Ruby on Railsとは

Ruby on Railsは、Rubyでウェブアプリケーション開発に人気のフレームワークで、MITライセンスの下で簡単に入手可能です。このフレームワークを使用する目的でRubyを学習する開発者も少なくありません。フレームワークであるRuby on Railsは、ウェブアプリケーションの構築に必要な構造とすべてのコンポーネントを提供し、構築を簡素化してくれます。

Ruby on Railsプロジェクトの構築済み構造
Ruby on Railsプロジェクトの構築済み構造

MVCアーキテクチャを使用すると、フロントエンドとバックエンドにまたがるフルスタックアプリケーションを開発可能です。

Ruby on Railsはオープンソースプロジェクトとして、2004年にDavid Heinemeier Hansson氏によってリリースされました。同氏は、37Signals社によるプロジェクト管理ツール「Basecamp」の開発に携わりながらRuby on Railsを開発し、設定より規約(CoC)とDRY(Don’t repeat yourself)原則が重視されています。「設定より規約」とは、あらかじめ定義された規約に従えば、コードの記述量も設定の手間も抑えることができることを意味します。DRY原則は冗長性を避け、ソフトウェアパターンの繰り返しを削減する指針です。

Ruby同様、Ruby on Railsもリリース当初に広く普及したものの、新たなフレームワークが登場するにつれて一歩後退。しかしながら、何年もかけて開発が進み、現在も大きな支持を集めています。今日もRailsが選ばれる理由は、開発に構造をもたらす規約に準拠していることから、コードの読み書きがしやすく、開発プロセスと市場投入までの時間が短縮できることにあります。

Ruby on Railsの用途

Rubyと異なり、Ruby on Railsは「ウェブアプリケーションの開発に特化したフレームワーク」であり、用途が限られます。しかしその分、優れた機能を搭載しており、GitHubTwitchSoundcloudShopifyHuluAirbnbBaseCampなど、誰もが知る人気ウェブアプリケーションの構築に採用されています。

Ruby on Railsの利点と欠点

オープンソースフレームワークであるRuby on Railsには、開発者への様々なメリットがある一方、いくつかの欠点もあります。フレームワークの選択は、プログラミング言語の決定と同じくらい重要です。以下の点を考慮し、適切な判断を下してください。

利点

  • オープンソースフレームワークで、自由に使用することができる
  • Rubyの高度に発達したエコシステムを利用できる
  • XSS、CSRF、SQLインジェクション攻撃からの保護など、セキュリティ強化策が組み込まれ、デフォルトで有効になっている
  • 膨大な数のライブラリ(gem)により非常に生産性が高い
  • 迅速なプロトタイピングが可能で、MVPに理想的

欠点

  • gemの依存関係が多いことから起動に時間がかかり、生産性に影響が出る可能性がある
  • 事前に定義された構造とコンポーネントによって通常のウェブアプリは簡単に構築できるが、柔軟性とカスタマイズ性には欠ける
  • 開発作業の高速化に伴い、サーバーやデータベースアーキテクチャの問題によってパフォーマンスが低下することがよくある(アプリケーションをスケーリングする際に顕著)

RubyとRuby on Railsの主な違い

RubyとRuby on Railsの特徴を押さえたところで、両者の根本的な違いをまとめてみます。

Ruby Ruby on Rails
言語/フレームワーク C言語ベースのプログラミング言語 Rubyで書かれたウェブ開発フレームワーク─言語にRubyを使用するため独自の構文はなし。ウェブアプリ開発でRubyの機能を強化するために使用される。
セキュリティ すべてがオブジェクトであることから、すべてのデータをカプセル化でき、安全性が高い。 クロスサイトスクリプティング(XSS)、SQLインジェクション、クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)、ロギングの脆弱性などへ対策を組み込み、高いセキュリティを確保。
原則 開発作業の生産性を高めることを目的としたユーザーインターフェースデザインの原則に基づく。 開発作業量を減らし、生産性を高めるため、CoCとDRY原則を重視。
用途 ウェブアプリやデスクトップアプリなど、様々なソフトウェア開発で使用でき、汎用性が高い。 ウェブ開発に使用されるのが一般的。

RubyとRuby on Railsのどちらを先に学習すべきか

RubyとRuby on Railsの違いがわかれば、どちらを先に学習するのがいいのかが気になるところ。まずはプログラミング言語のRubyから学びましょう。Ruby on Railsを使用するのにRubyの知識が必須というわけではありませんが、Rubyを避けては通れません。したがって、先にRubyを学んでおくことをお勧めします。

Rubyに限らず、他のすべての言語とフレームワークにも言えることですが、フレームワークを使い始める前に、フレームワークが書かれている言語の基礎を学ぶのがベストプラクティスです。

例えば、LaravelPHPで書かれており、Nest.jsTypescriptで書かれています。そのため、Laravelを使う前にPHP、Nest.jsを扱う前にTypescriptを学んでおきましょう。

まとめ

今回は、意外と知られていないRubyとRuby on Railsの違いについて触れました。RubyとRuby on Railsの歴史と特徴、そして両者の本質的な違いを学んだことで、両者が全く別物であることを理解できたはず。

また、両者の主な用途、メリットとデメリット、そしてRubyまたはRuby on Railsを使用した人気サイト、アプリ、ツール例もいくつか取り上げました。

RubyとRuby on Railsは、どちらもプログラミング作業を充実させ、作業効率を向上する目的で開発されました。決定的な違いは、Rubyはデスクトップやウェブアプリケーションを構築するためのプログラミング言語で、Ruby on Railsは、Rubyの機能を強化したウェブアプリケーションフレームワークという点にあります。

RubyなしにRuby on Railsを使用することはできません。Ruby on Railsでは、Rubyに搭載されているセキュリティ機能がさらに強化されているため、非常に安全なフレームワークです。また、Rubyはユーザーインターフェース設計の原則に基づいてるのに対し、Ruby on RailsではCoCとDRY原則が重視されています。

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Steve Bonisteel Kinsta

Kinstaのテクニカルエディター。救急車や消防車を追いかける記者としてキャリアをスタート。1990年代後半からインターネット関連の技術情報を担当している。