Nestは、ウェブアプリケーション開発において、近年人気を伸ばしているNode.jsフレームワークです。モジュール性と堅牢な機能を兼ね備えたこのプログレッシブフレームワークは、開発者の間で注目されています。使用を検討している方は、ぜひこれからご紹介する手順を参考に、お使いのOSにインストールしてみてください。
主要オペレーションシステム、Windows、macOS、LinuxそれぞれにNestをインストールする手順を見ていきます。
本題に入る前に、まずはNestの概要と機能についてご説明します。
Nestとは
Nestは、スケーラブルなNode.jsサーバーサイドアプリケーションを構築するために設計されたプログレッシブフレームワーク。モジュラー型アーキテクチャと、JavaScriptのスーパーセットとして開発されたTypeScriptを採用し、開発プロセスを効率化します。この組み合わせにより、TypeScriptの静的型付けなどの機能を活用しながら、保守管理の容易な構造化されたコードを記述することができます。
また、人気の高いNode.jsライブラリのExpressとFastifyの上に構築されています。そのため、Nest独自の便利な機能に加えて、このライブラリに関する豊富な知識とコミュニティのサポートも利用することができます。Nestの主な機能は、以下の通りです。
- 依存性注入:高度な依存性注入(Dependency Injection、通称DI)システムで、アプリケーションの依存関係を管理するプロセスを簡素化。コードテストが容易になり、保守性が向上する。
- マイクロサービス対応:アプリケーションの成長に合わせて拡張できる分散システムの構築が簡単。
- 開発に役立つ堅牢なCLI:Nest CLIは、開発作業を簡素化する高度なコマンドラインツール。新規プロジェクトの生成、既存プロジェクトの管理、アプリケーションのビルド、テスト、デプロイなど、一般的な開発タスクを実行可能。
次に、Nestを採用している代表的な企業をご紹介します。
Nestを利用している企業
Nestは、その強力な機能と使いやすさによって、スタートアップから大手企業まで、幅広く使用されています。特にNode.jsの開発者やバックエンドエンジニアにとっては、スケーラブルで保守性の高いサーバーサイドアプリケーションを構築するのに画期的なツールです。
さまざまな有名企業が自社のプロジェクトにNestを採用しており、その信頼性や評判はますます高まっています。
代表的な企業には、以下が挙げられます。
- Adidas─世界的スポーツウェアブランドのAdidasは、バックエンドアプリケーションの一部にNestを採用し、そのモジュラー型アーキテクチャとTypeScriptのサポートを活用している。
- Sainsbury’s─イギリス最大級のスーパーマーケットチェーンであるSainsbury’sは、デジタルプラットフォームを含む多くの社内プロジェクトにNestを採用。
- ING─大手オンライン融資プラットフォームのINGは、バックエンドサービスの構築と保守管理にNestを利用している。
- Valudio─ソフトウェア開発会社であるValudioは、ウェブアプリケーションとモバイルアプリの構築を専門とし、バックエンド開発用のフレームワークの1つとしてNestを使用している。
Nestを使用するメリット
ウェブアプリケーションの開発にNestを使用するメリットは、以下のような点が挙げられます。
- スケーラブルなアーキテクチャ:モジュラー型アーキテクチャによって、大規模なアプリケーションの構築が容易に。また、マイクロサービスに対応しており、アプリケーションの成長に応じて柔軟に拡張でき、機能の追加も簡単。
- TypeScriptによるコードの質の改善:TypeScriptの採用によって、より保守性の高い堅牢なコードを記述可能。TypeScriptの静的型付けなどの機能は、開発の初期段階でエラーを検出するのに役立ち、最終的にはコードの質を上げることができる。
- 他のライブラリやフレームワークとの容易な統合:ExpressやFastifyといった、人気の高いNode.jsライブラリと互換性があることから、既存のコミュニティリソースやサポートを利用できる。他のライブラリやフレームワークとも簡単に統合できるため、幅広いプロジェクトにも対応。
- 活発なコミュニティとサポート:開発に継続的に貢献したり、フォーラム、チャットルーム、オンラインリソースを通じてサポートを提供したりする開発者で構成された活発なコミュニティあり。問題に直面したり、助けが必要になったりした際には、コミュニティで答えが見つかる可能性が高い。
以上のメリットを考慮すれば、ウェブアプリケーション開発において、Nestの人気が高まるのは納得です。
Nestを使用する前提条件
インストールに入る前に、Nestのインストールと使用に必要になる前提条件を理解しておきましょう。
Nestは、経験値を問わず、さまざまな開発者が利用できるように設計されていますが、フレームワークを最大限に活かすには、ある程度の知識がある方が求められます。具体的には、以下の技術に精通しているのが好ましいです。
- JavaScriptまたはTypeScript─Node.jsとTypeScriptの上に構築されているため、いずれかの基礎知識を持ち合わせていれば、より効率的に操作できます。
- Node.jsとnpm─Nestとその依存関係のインストールと管理には、Node.jsとそのパッケージマネージャーであるnpmの知識が必要になります。
- バックエンド開発の基本─Nestはサーバーサイドの開発に重点を置いていることから、基本的なバックエンド開発の知識(RESTful API、データベースとのやりとりなど)を理解していると便利です。
システム要件
Nestは、主要オペレーティングシステムと互換性があり、ハードウェア要件も最小限。プラットフォームを問わない点も使用しやすい理由です。
- 対応OS:Windows、macOS、Linux
- ハードウェア要件:Node.jsに依存(通常は最小限の要件のみ)。ハードウェアの互換性については、Node.jsの公式ドキュメントを参照してください。
- Node.jsのインストール:まずはNode.jsがインストールされていることを確認してください。ターミナルで「node -v」を実行すること確認可能です。インストールされていない場合は、Node.js公式サイトの手順に従って実行してください。
バージョン
安定版と最新版があります。プロジェクトの要件や、他のライブラリやNode.jsのバージョンとの互換性に応じて選択してください。
- 安定版と最新版:ほとんどの場合は、安定版が推奨されます。安定版は広範にテストが行われており、バグや互換性の問題が少ない傾向にあります。最新機能やアップグレードを試したい場合には、最新版を選択してください。ただし、安定性が低く、解決が必要な問題に遭遇する可能性があることを念頭に置いてください。
- 互換性の確認:他のライブラリや使用しているNode.jsのバージョンとの互換性を必ず確認してください。これによって、潜在的なエラーを回避し、スムーズに統合を行うことができます。Nestの公式ドキュメントと、使用予定のライブラリのリポジトリで確認することができます。
前提条件を押さえたところで、早速各OSへのインストール手順を見ていきましょう。
Nestのインストール方法
ここから、3つのオペレーティングシステム、Windows、macOS、LinuxにNestをインストールする方法を順を追って見ていきます。
WindowsにNestをインストール
Windowsへのインストールは比較的容易です。以下の手順に従って、インストールしていきます。
- Node.jsをダウンロードする
- Node.jsをインストールする
- インストールされたNode.jsを確認する
- npmを使用してNest CLIをインストールする
- プロジェクトを作成する
- アプリを起動する
- localhostでテストする
1. Node.jsをダウンロードする
上でも触れましたが、Nestをインストールする前に、Node.jsをインストールしなければなりません。Node.jsの公式ダウンロードページで、LTS(Long Term Support)バージョン(ほぼすべてのユーザーに推奨)のWindowsインストーラーをダウンロードしてください。
2. Node.jsをインストールする
ダウンロードしたNode.jsインストーラーを実行し、画面の指示に従って、Node.jsをシステムにインストールします。また、Nest CLIのインストールに使用するnpm(Node.jsのパッケージマネージャー)もインストールされます。
3. インストールされたNode.jsを確認する
Node.jsとnpmが正しくインストールされたことを確認するには、コマンドプロンプトを開いて、以下のコマンドを実行します。
node -v npm -v
これで、インストールされたNode.jsとnpmのバージョンがそれぞれ表示されます。バージョン番号が表示されれば、正常にインストールされています。
4. npmを使ってNest CLIをインストールする
Node.jsとnpmをインストールしたら、Nestアプリケーションの作成と管理のプロセスを簡素化するために、Nest CLI(コマンドラインインターフェース)をインストールします。コマンドプロンプトで以下のコマンドを実行しましょう。
npm install -g @nestjs/cli
これでNest CLIがシステム上にグローバルインストールされ、どのディレクトリからでもアクセスできるようになります。
5. プロジェクトを作成する
Nest CLIをインストールしたら、Nestプロジェクトを作成しましょう。プロジェクトを作成するディレクトリに移動して、nest-appをプロジェクト名に置き換え、以下のコマンドを実行します。
nest new nest-app
パッケージマネージャー(npmまたはYarn)を選択するように促されます。選択後、Nestプロジェクトが新規作成されます。
6. アプリを起動する
コマンドプロンプトを使って、作成したプロジェクトディレクトリに移動します。
cd nest-app
以下のコマンドを実行して、アプリケーションを起動しましょう。
npm run start
このコマンドによって、開発サーバーが起動し、ファイルの変更が確認され、更新が行われると自動的にアプリケーションを再読み込みされます。
7. localhostでテストする
ウェブブラウザを開いて、「http://localhost:3000」にアクセスします。すると、Nestアプリケーションデフォルトの「Hello World」メッセージが表示されます。
以上が、WindowsマシンにNestをインストールし、Nestアプリケーションを作成する手順です。Nestの優れた機能を使って、サーバーサイドアプリケーションの構築を始めましょう。
macOSにNestをインストール
macOSにNestをインストールする手順は、ほぼWindowsと同じになります。以下の順でインストールしていきます。
- Node.jsをダウンロードする
- Node.jsをインストールする
- インストールしたNode.jsを確認する
- npmを使用してNest CLIをインストールする
- プロジェクトを作成する
- アプリを起動する
- ブラウザでテストする
1. Node.jsをダウンロードする
Node.jsの公式ダウンロードページで、LTS(Long Term Support)バージョン(ほぼすべてのユーザーに推奨)のWindowsインストーラーをダウンロードしてください。
2. Node.jsをインストールする
ダウンロードしたNode.jsインストーラーを実行し、画面の指示に従って、Node.jsをシステムにインストールします。また、Nest CLIのインストールに使用するnpmもインストールされます。
3. Node.jsのインストールの確認
Node.jsとnpmが正しくインストールされたことを確認するには、コマンドプロンプトを開いて、以下のコマンドを実行します。
node -v npm -v
最初のコマンドは、インストールされたNode.jsのバージョン、2番目はインストールされたnpmのバージョンを表示します。バージョン番号が表示されれば、正常にインストールされています。
4. npmを使用してNest CLIをインストールする
Node.jsとnpmをインストールしたら、Nestアプリケーションの作成と管理のプロセスを簡素化するため、ターミナルで指定のコマンドを実行し、Nest CLI(コマンドラインインターフェース)をインストールします。
npm install -g @nestjs/cli
これでNest CLIがシステム上にグローバルインストールされ、どのディレクトリからでもアクセスできるようになります。
5. プロジェクトを作成する
Nestプロジェクトを作成するには、以下のコードを実行します。
nest new nest-app
パッケージマネージャー(npmまたはYarn)を選択するように促されます。選択後、Nestプロジェクトが新規作成されます。
6. アプリを起動する
ターミナルで、作成したプロジェクトディレクトリに移動します。
cd nest-app
以下のコマンドで、アプリケーションを起動しましょう。
npm run start
7. ブラウザでテストする
ウェブブラウザを開いて、「http://localhost:3000」にアクセスします。すると、Nestアプリケーションデフォルトの「Hello World」メッセージが表示されます。
以上が、macOSデバイスにNestをインストールし、Nestアプリケーションを作成する手順です。Nestの優れた機能を使って、サーバーサイドアプリケーションの構築を始めましょう。
LinuxにNestをインストール
LinuxにNestをインストールする場合も、Windows、macOSとほぼ同じ手順になります。手順は以下の通り。
- Node.jsをダウンロードする
- Node.jsをインストールする
- インストールしたNode.jsを確認する
- npmを使用してNest CLIをインストールする
- プロジェクトを作成する
- アプリを起動する
- ブラウザでテストする
1. Node.jsをダウンロードする
はじめに、コンピュータにNode.jsがインストールされていることを確認してください。Node.jsの公式ダウンロードページで、LTS(Long Term Support)バージョン(ほぼすべてのユーザーに推奨)のWindowsインストーラーをダウンロードしてください。
または、apt(Debianベースのディストリビューション用)やdnf(Fedoraベースのディストリビューション用)のようなパッケージマネージャーを使用して、インストールすることも可能です。例えば、UbuntuのようなDebianベースのシステムでは、以下のコマンドでパッケージリストを更新すれば、インストールすることができます。
sudo apt update sudo apt install nodejs
その他のディストリビューションやパッケージマネージャーについては、各Linuxディストリビューションの公式のNode.jsインストール手順をご覧ください。
2. Node.jsをインストールする
Linuxバイナリをダウンロードした場合は、アーカイブを解凍して、READMEファイルに記載されているインストール手順に従ってください。
パッケージマネージャーを使用した場合は、すでにシステムにインストールされているはずです。
3. インストールしたNode.jsを確認する
Node.jsとnpmが正しくインストールされたことを確認するには、ターミナルウィンドウを開いて、以下のコマンドを実行します。
node -v npm -v
4. npmを使ってNest CLIをインストールする
Nestアプリケーションの作成と管理のプロセスを簡素化するため、Nest CLIをインストールします。Node.jsとnpmがインストールされていることを確認したら、ターミナルで以下のコマンドを実行し、Nest CLIをインストールしてください。これで、Nest CLIがシステム上にグローバルインストールされ、どのディレクトリからでもアクセスできるようになります。
npm install -g @nestjs/cli
5. プロジェクトを作成する
Nest CLIがインストールされたら、Nestプロジェクトを作成しましょう。以下のコマンドを実行し、nest-appをプロジェクト名に置き換えます。
nest new nest-app
パッケージマネージャー(npmまたはYarn)を選択するように促されます。選択後、Nestプロジェクトが新規作成されます。
6. アプリを起動する
ターミナルを使用して、作成したプロジェクトディレクトリに移動します。
cd nest-app
以下のコマンドで、アプリケーションを起動しましょう。
npm run start
これで、開発サーバーが起動されます。
7. ブラウザでテストする
ウェブブラウザで「http://localhost:3000」にアクセスすると、Nestアプリケーションデフォルトの「Hello World」メッセージが表示されます。
以上でインストール完了です!
まとめ
今回は、Node.jsのプログレッシブフレームワークであるNestを、Windows、macOS、Linuxにインストールする手順をご紹介しました。この記事を参考に、Nestをインストールし、開発環境を整えたら、アプリケーション開発に取り掛かりましょう。
また、Nestをしていく中で、豊富なリソース、活発なコミュニティ、そして開発作業を後押ししてくれるさまざまなドキュメントも上手に活用してみてください。
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