KUSANAGIマネージドサービスとKinstaの比較
今回は、人気CMS実行環境であるKUSANAGIの「KUSANAGIマネージドサービス」とKinstaのWordPress専用マネージドホスティングの特徴や機能を掘り下げ、それぞれを比較していきます。
KUSANAGIマネージドサービスの概要
KUSANAGIは、ウェブサイトを高速運用するためのCMS実行環境であり、WordPressに最適化されています。現在では世界で累計稼働台数は9万台を記録しており、AWSやGoogle Cloud、Microsoft Azure、さくらのVPS、ConoHaなどの主要ホスティングサービスと組み合わせて利用することができます。同社は、自社のソフトウェア環境を利用した「KUSANAGIマネージドサービス」を提供しており、ビジネスサイト、文教サイト、メディアサイト向けに展開されています。
KUSANAGIマネージドサービスとKinstaの機能
KinstaのWordPress専用マネージドホスティングとKUSANAGIマネージドサービスを比較します。まずは主要な機能や特徴を表にまとめてみます。
Kinsta | KUSANAGIマネージドサービス | |
---|---|---|
プラン価格 | 5,333円〜/月(35ドル〜) [2024.11.5時点] | 15万円〜/月 (クラウド利用料含む) |
初期費用 | 無料 | サーバー構成 1台10万円〜 |
初月無料 | ✓ *1 | X |
返金保証 | 30日間 (新規お申し込みのみ) | 表記なし |
プランの種類 | 22(+カスタムプラン) | 3 (PV数に応じた基本プラン) |
無料カスタマーサポート | 24時間年中無休のライブチャット、メール | チケット制のメール、電話(平日営業時間内9:00〜18:00) |
コアインフラ | Google Cloud | KUSANAGI (+クラウド環境はAWS、Azure、Google、IBMなど) |
ネットワーク | Google Cloud プレミアムティアネットワーク | AWS、Google Cloud、Microsoft Azureなど |
Cloudflare統合 | ✓ | X |
SSH接続 | ✓ | ✓ |
グローバルデータセンター | 東京と大阪をはじめとする37箇所 (サイト毎に選択可能) | 表記なし |
帯域幅制限 | 制限なし(AUP内) | 表記なし |
コンテナ技術 | 100%のリソース分離 | 表記なし |
サイト移行 | 無料 (専任エンジニアによる移行) | 1サイト30万円 |
移行にかかる期間 | 8時間*2 〜最大2営業日 | 1ヶ月〜3ヶ月 |
ステージング環境 | ✓ | 8万円/月 (検証サーバー) |
無料のDDoS対策 | ✓ | 表記なし |
PHPバージョン | PHP 7.4, 8.0, 8.1, 8.2, 8.3, 8.4 | PHP 8.0, 8.1, 8.2(KUSANAIG 9/2024.8.23時点) |
CDN | 無料 (Cloudflare) | 有料オプション (Fastly) |
エッジキャッシュ | ✓ | 表記なし |
無料のプレミアムDNS | ✓ (Amazon R53) | 表記なし |
無料のSSL証明書 | ✓ (Cloudflare─ワイルドカード対応) | ✓ (Let’s Encrypt) |
稼働状況監視 | ✓ (3分ごと) | ✓ |
マルチサイト | ✓ (シングル65k以上/WP 2プラン以上) | ✓ |
無料APM | ✓ | X |
IPジオロケーション | ✓ | ✓ |
リバースプロキシ | ✓ (有料アドオン) | 表記なし |
Redis | ✓ (有料アドオン) | 表記なし |
日本語対応 | ✓ (多言語対応) | ✓ |
KUSANAGIマネージドサービスとKinstaの機能の解説
上記の表からまず気になるのは、両者の圧倒的な料金の違いでしょう。以下、両者の特徴をもう少し掘り下げてご紹介します。
- KinstaのWordPress専用マネージドホスティングの最安値のシングル35kプランは35ドル(約5,200円/2024.10.14時点)に対して、KUSANAGIマネージドサービスの最安値の基本プランは15万円からと圧倒的な差があります。基本プランには、同社のパートナーであるクラウド環境(AWS、Microsoft Azure、Google Cloud、IBM、ORACLEなど)の利用料、運用技術サポート、営業時間内のみの電話対応、サーバー保守作業、サーバー死活監視、月に1度のバックアップ、稼働率保証が含まれ、サイト管理に欠かせないより定期的なバックアップ、ステージング環境、CDN、WAF(導入と運用)、SSL証明書(取得と設置)などの機能は、すべて有料オプションとして追加する必要があります。このため、月間30万PV未満のサイトを運営している場合も、月額料金はほぼ確実に15万円を超えることが予想されます。この価格帯から、KUSANAGIマネージドサービスは、ある程度の予算を確保できる大企業向けのサービスです。
一方、KinstaのWordPress専用マネージドホスティングは、先に挙げた定期的なバックアップ、ステージング環境、CDN、WAF、SSL証明書のような、サイト管理に必須機能がすべてのプランにデフォルトで付帯しています。一般的なホスティングサービスと比較して、およそ約44,800円相当(300ドル/2024.10.14時点)の機能がプランに無料で含まれることを意味します(プランに付帯する機能の詳細はこちら)。最安値のシングル35kプランであっても、これらの機能を追加料金なしで利用することができるため、ホスティング費用を抑えながらサイトの運営環境を最適化することができます。また、個人サイトから大学・教育機関、大規模なECサイト、フォーチュン500企業サイトまで、あらゆる要件に適した幅広いプランが用意されています。
- KUSANAGIマネージドサービスは、一般的なマネージドホスティングと比較して非常に高価であり、その理由が気になるところ。同サービスは、KUSANAGI開発元であるプライム・ストラテジーがWordPressをはじめとするCMSからミドルウェア、サーバーまでを一貫体制で保守管理するサービスです。保守管理を自社のKUSANAGI Business EditionおよびPremium Edition上で行うことで、高速かつセキュアな状態を維持できることを強みとしています。また、基本料金にサーバー利用料と通信費が含まれるため、毎月の料金が突然変動するということはありません。
また、WAF、IPS/IDS、SELinux対応、TLS 1.3、TLS1.1以下の無効化、脆弱性スキャンツール、WordPressコア、プラグインやテーマの自動更新などのKUSANAGI環境のセキュリティの高さという恩恵も受けることができます。また、事業継続計画(BCP)やディザスタリカバリ(災害復旧)対策も整っているので安心です。このような点が、高額な利用料金の理由として挙げられます。ただし、多くのサービスと機能が有料オプションであることは念頭に置いておきましょう。必要な機能を追加していくと、あっという間に利用料金が膨れ上がる可能性があります(例えば、プラグインとテーマの定期アップデートは毎月5万円〜)。
- Kinstaのセキュリティはというと、積極的かつ受動的なセキュリティ対策により、57億もの悪意のあるリクエストを自動処理。毎月90以上のDDoS攻撃の緩和に成功しています。Google CloudのIPベースのファイアウォールとCloudflareのエンタープライズレベルのファイアウォールにより、サーバー到達前にあらゆる攻撃をブロック。また、Google Cloudのプレミアムティアネットワークのみを採用し、プロビジョニングの整った低レイテンシのGoogleグローバルネットワーク上でトラフィックを配信し、データの安全な伝送を実現しています。また、隔離コンテナ技術にLinuxコンテナを採用。ソフトウェアやハードウェアのリソースは、たとえ自分のサイト間であっても共有されることはありません。
その他、マルウェアの除去、ハッキング対処、SSH接続、3分ごとの稼働状況監視、二要素認証、自動バックアップ、IP制限、SOC 2報告書受領、ISO認証取得、GDPRおよびCCPAへの準拠など、セキュリティに真剣に取り組み、あらゆる策を講じています。これらはすべて、全プランデフォルトの機能です。
- カスタマーサポートに関しては、Kinstaでは24時間年中無休のライブチャットサポートおよびメールサポートを提供しています。ライブチャットはコントロールパネル「MyKinsta」からワンクリックで利用でき、初回応答時間は2分以内を記録しているため、不測の事態が祝日や真夜中に発生しても安心です。階層型は採用しておらず、WordPressに精通したエンジニアに直接質問や相談を行うことができます。さらに自動翻訳ツールを有効にすると、日本語でメッセージを入力できるのはもちろん、エンジニアからの返答も日本語で受け取ることができます。
KUSANAGIマネージドサービスでは、チケット制のメールおよび電話サポートを提供しています。電話サポートは平日の営業時間内(月曜から金曜/9:00〜18:00)に利用できます。問い合わせが必要になる事態は、平日の営業時間内に起こるとは限らないため、技術サポートを重視する場合には不安が残ります。24時間365日利用できるコンタクトデスク障害1次対応は、有料オプションとして追加可能です。
- 初期費用に関しては、KUSANAGIマネージドサービスではサーバー構成1台につき10万円〜かかります。また、他社からのサイト移行には1件につき30万円がかかるため、初期費用は少なくとも40万円になります。Kinstaでは、初期費用はかからず、サイト移行サービスもサイトの種類や数を問わず無料で提供しています。さらに、シングル35kおよびWP 2プランは初月分無料で利用できるため、「まずはKinstaのホスティングサービスをお金をかけずに試してみる」ということも可能になります。
- Kinstaの無料サイト移行は、最短または日付指定のいずれかを選ぶことができます。前者を選ぶと、通常は1営業日、遅くとも2営業日以内に移行が行われます。プラグインなどは使用せず、すべて専任のエンジニアが担当します。また、お急ぎの場合には、アドオンを利用して8時間以内にサイト移行を完了させることも可能です。KUSANAGIマネージドサービスのサイト移行は、通常1ヶ月〜3ヶ月かかるため、余裕を持った契約が必要になりそうです。
- Kinstaでは、各サイトに1つのステージング環境が無料で付帯します。更新や開発のテストに有用です。また、必要に応じて最大5つまでプレミアムステージング環境を作成可能です。KUSANAGIでは、有料オプションでステージング環境を追加できます。
- KUSANAGIマネージドサービスのバックアップ機能に関しては、月1回のバックアップ(2世代保持)と緊急時のリストア対応が基本サービスに付帯しています。週1回のバックアップ(2世代保持)はインスタンスごとに毎月2万円、毎日のバックアップ(4世代保持)は毎月4万円で追加可能です。
Kinstaでは、毎日の自動バックアップに加えて、手動、システム生成、ダウンロード可能バックアップがすべてのプランに無料で付帯しています。バックアップは最短で14日間保存されます。ECサイトなど頻繁に更新が行われるサイト向けには、時間単位(1時間または6時間ごと)のバックアップアドオン、また万が一のセキュリティレイヤーとなる外部バックアップアドオンも用意されています。
- 最後に、KUSANAGIマネージドサービスはLet’s Encrypt、KinstaはCloudflare(ワイルドカード対応)のSSL証明書を無料提供しています。KUSANAGIでの独自SSL証明書の取得と設置は、有料で依頼可能です。
Kinstaの高性能ホスティング
2013年創業に創業したKinstaは、WordPress専用マネージドホスティング、静的サイトホスティング、およびアプリケーション&データベースホスティングを提供しています。Google Cloud最速のC3DおよびC2仮想マシンを採用し、業界最高水準の速度、パフォーマンス、拡張性にこだわったインフラストラクチャが強みです。受賞歴を誇る高性能コントロールパネル「MyKinsta」や、世界37箇所のデータセンター、高性能CDN、エンジニアによる24時間年中無休体制のカスタマーサポート、高度なセキュリティ保持誓約など、サイト運営の負担を軽減する数々の機能を追加料金なしでご利用いただけます。
また、Kinstaは堅牢なセキュリティ手順を確立し、長期にわたってこれに遵守していることを証明するSOC2報告書の受領、およびISO認証の取得を行っています。Kinstaのセキュリティおよび信頼性の詳細はこちらをご覧ください。
まとめ
今回は、KUSANAGIマネージドサービスとKinstaのWordPress専用マネージドホスティングの比較をご紹介しました。いずれのソリューションも、ハイパフォーマンスと高いセキュリティを手にして本業に集中したいと考えている場合に良い選択肢になりそうです。
両者の大きな違いは、価格にあります。予算を十分に確保できる大企業であれば、KUSANAGIマネージドサービスを検討してみても良いかもしれません。KUSANAGIマネージドサービスは、ビジネス、文教、メディアサイト向けと3種類のプランがあるのに対し、Kinstaのホスティングでは、個別プランを除いて21種類あり、あらゆる要件に応えるプランが用意されています。サイトのパフォーマンスとセキュリティの最大化に必要な機能一式がプランにデフォルトで含まれているため、最終的にはホスティング費用の削減につながります。24時間常に利用できるエンジニアによるサポートを活用しながら、ビジネスに集中することができます。
KUSANAGIマネージドサービスか、KinstaのWordPress専用マネージドホスティングの間でお悩みの場合は、まずは後者の初月無料キャンペーン、30日間の返金保証および無料のサイト移行サービスを利用して、Kinstaの性能を実際に試してみるという方法もあります。
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