Dockerは、コンテナ化アプリケーションの構築とデプロイを支援するプラットフォームです。アプリケーション管理のための軽量な仮想化環境を確保することで、オペレーティングシステムの互換性の問題を解決することができます。
Dockerの主要なコマンドラインインターフェース(CLI)は、コンテナを扱う開発者にとっての強力なツールです。基本コマンドdocker
を始めとして、CLIは60近くのサブコマンドをサポートしており、そのほとんどがタスク実行の効率化を支援するコマンドライン引数を受け取ります。
Docker CLIを使いこなす
実際にお使いのDocker環境は、オープンソースのDocker Engineかもしれませんし、Docker DesktopのユーザーフレンドリーなGUIインターフェースにもなり得ます。Docker Engine環境ではCLIが主なインターフェースになりますが、Docker Desktopをインストールすればコマンドラインツールも利用できるようになります。
Docker Desktopのユーザーであっても、少なくともこの20の必須コマンド(docker
)に慣れれば、CLIを使いこなすことができるはずです。
知っておくべきDockerコマンド
それでは、おすすめのDockerコマンドを一挙ご紹介します。
1. docker system
docker system
コマンドはDocker環境の検査と管理に役立ちます。特定の管理関連タスクを実行するコマンドライン引数をサポートしています。
df
:ディスクの使用状況を表示するprune
:使用していないネットワーク、コンテナ、イメージ、ボリュームを削除info
:システム関連情報を表示events
:システムイベントのログをリアルタイムで表示
以下は、docker system prune
を実行した後の最初のプロンプトです。
2. docker context
このコマンドは、さまざまなコンテキストをナビゲートし、設定するのに有用です。Dockerでは、コンテキストには名前、トランスポート層のセキュリティ情報、エンドポイントの設定、オーケストレータが含まれます。
docker context
引数の一部を以下にご紹介します。
ls
:デフォルトのコンテキストの詳細を表示inspect [CONTEXT}
:指定したコンテキストを検査create [CONTEXT]
:新しいコンテキストを作成use [CONTEXT]
:コンテキストを切り替える
以下はdocker context ls
からの出力例です。
3. docker pauseとunpause
docker pause
コマンドは、コンテナで有効になっているプロセスを一時停止します。これを実行するには、以下のようにコンテナ名を指定します。
docker pause [CONTAINER]
以下は、コンテナを一時停止した後の出力の例です。
docker unpause
コマンドは、一時停止したコンテナプロセスを再開することができます。前のコマンドと同様に、以下のようにコンテナ名を指定します。
docker unpause [CONTAINER]
以下は、コンテナの一時停止を解除した後の出力の例です。
4. docker rm
このコマンドはコンテナ、ボリューム、ネットワークを削除します。属性に基づいて削除するコンポーネントを選択できます。例えば、実行中のコンテナや指定したすべてのコンテナを強制的に削除することが可能です。
docker rm [CONTAINER]
は、名前が指定されたコンテナを削除します。このコマンドの出力は以下の通りです。
5. docker rmi
このコマンドを使用してイメージを削除できます。単一のイメージを削除することも、複数のイメージを一度に削除することも可能です。削除するイメージは短いIDか長いIDで指定します。このコマンドはホストノードをクリーンで効率的に保つために重要です。
イメージ削除のコマンドは以下のような構造になっています。
docker rmi [IMAGE ID]
以下がその出力例です。
6. docker volume
このコマンドを使うと、Dockerでボリュームを管理できます。ボリュームの作成、削除、一覧表示、検査に使用できます。
docker volume
の引数には以下のようなものがあります。
create [OPTIONAL NAME]
:新しいボリュームを作成する(ボリューム名を指定するか、Dockerにランダムな名前を生成させることができます)ls
:利用可能なボリュームを一覧表示するinspect [NAME]
:ボリュームの詳細情報を表示rm [NAME]
:Dockerからボリュームを削除
以下はボリューム作成後の出力の例です。
7. docker search
このコマンドを使うと、Docker Hubからイメージを検索し、それを自分のマシン上でコンテナとして実行できます。ウェブサイトにアクセスすることなく、Docker Hubのレジストリイメージにアクセス可能です。
コマンドは、docker search
のような構造になっています。検索するイメージの名前を指定したり、フィルタを作成したりできます。
クエリと出力例を以下に示します。
docker search --filter is-official=true --filter stars=500 mysql
8. docker push
docker push
コマンドを使うと、Docker Hubレジストリやプライベートリポジトリでイメージを共有できます。
コマンドの構造は以下のようになります。
docker push [OPTIONS] NAME[:TAG]
[OPTIONS]
を使って-disable-content-trust
を設定できます。
デフォルトで値はtrueであり、この値を含めることは必須ではありません。
NAME[:TAG]
を使用するには、レジストリ名、リポジトリ名、イメージタグを使用する必要があります。
以下はdocker push
からの出力例です。
9. docker pull
このコマンドは、プライベートまたはパブリックレジストリのリポジトリからDockerイメージをダウンロードします。
コマンドは次のように機能します。
docker pull [OPTIONS] NAME[:TAG|@DIGEST]
このコマンドにより、コンテナ型アプリケーション作成時にはいつでも、新しいイメージを作成する代わりに既存のイメージを使用することができます。
以下の例は、docker pull
コマンドの出力を示しています。
10. docker ps
デフォルトでは、このコマンドは実行中のすべてのコンテナの一覧を表示します。ただし、ディスク使用量サイズ、リンクしているコンテナ、ラベルなどの属性に基づいてコンテナを一覧表示するフラグを追加可能です。
コマンドは以下のような構造になっています。
docker ps [OPTIONS]
引数には以下のものがあります。
-a
:実行中および終了したコンテナの一覧を表示-s
:各コンテナのディスク上のサイズと仮想サイズを表示
この2つは、次のように一緒に使うことができます。
docker ps -as
以下は、docker ps
コマンドの出力例です。
11. docker tag
このタグを使って、バージョンなどのメタデータをイメージに追加できます。タグは通常、イメージのビルド時に作成されますが、docker tag
コマンドを使えば、後からタグを追加することができ、実質的にターゲットイメージのエイリアスを作成することが可能です。
このコマンドは次のような構造になっています。
docker tag SOURCE_IMAGE[:TAG] TARGET_IMAGE[:TAG]
以下の例では、「redis」という名前のイメージを列挙しています。イメージにバージョン番号(「2.0」)をタグ付けした後、新しいエイリアスと元々タグ付けされていたイメージが一覧として表示されます。
12. docker rename
コンテナの名前を変更するには、このコマンドを使用します。複数のコンテナがあり、目的に応じて区別したい場合に便利です。
このコマンドは以下のような構造になっています。
docker rename [OLD_NAME] [NEW_NAME]
以下は、docker rename
コマンドの前後の出力例です。
13. docker commit
このコマンドを使うと、コンテナのファイルを変更した後に新しいイメージを作成できます。インタラクティブなシェルを使ってコンテナをデバッグできるようになるため、重要な機能です。
このコマンドは以下のような構造になっています。
docker commit [CONTAINER_ID] [name-of-new-image]
docker commit
コマンドの例と出力は以下の通りです。
14. docker network
これはネットワーク管理コマンドであり、サービスとコンテナを接続することで強力なアプリケーションの作成に活用できます。
コマンドは以下のような構造になっています。
docker network [OPTIONS]
引数には以下のものがあります。
connect
:コンテナをネットワークに接続create
:新しいネットワークを構築disconnect
:実行中のコンテナをネットワークから切り離すrm
:単一または複数のネットワークを削除
以下は、docker network create
コマンドの出力例です。
15. docker history
このコマンドを使うと、指定したイメージのサイズを含む履歴が表示されます。イメージがどのように作成されたかなどを理解するのに有用です。
コマンドは以下のような構造になっています。
docker history [IMAGE]
以下は、redis:latest
というイメージに関連する履歴です。
16. docker update
このコマンドでコンテナの設定を変更できます。コンテナがDockerホストリソースを消費しすぎるのを防ぐのに有用です。コマンドの書き方は以下の通りです。
docker update [OPTIONS] [CONTAINER]
オプションには次のようなものがあります。
--restart
:コンテナ再起動ポリシーを更新する--memory
:コンテナのメモリ制限を設定する--cpus
:割り当てCPU数の設定
以下は、docker update
コマンドの出力例です。
17. docker plugin install
このコマンドでプラグインを管理できます。Dockerホストの設定を変更することなく新しい機能を追加できるため、必要不可欠です。
docker plugin
の引数には以下があります。
create
:新しいプラグインの作成enable
:インストール済みのプラグインを有効にするinstall
:新しいプラグインをインストールrm
:単一または複数のプラグインを削除ls
:プラグインの一覧を表示
以下では、docker plugin install
を使ってプラグインを環境に追加しています。次に、docker plugin ls
を使ってプラグインの状態を表示します。
18. docker container
このコマンドでコンテナを管理できます。特にコンテナの作成、kill、削除などのアクションを実行するのに便利です。
docker container
で利用できるオプションは以下の通りです。
create
:コンテナの作成commit
:コンテナの変更後に新しいイメージを作成exec
:実行中のコンテナ内でコマンドを実行kill
:実行中のコンテナを停止ls
:Dockerホスト内のコンテナ一覧を表示restart
:コンテナの再起動run
:イメージからコンテナを作成して実行rm
:Dockerホストからコンテナを削除
以下はdocker container
コマンドの出力例です。
19. docker logs
このコマンドはコンテナからログを取得します。コンテナの操作に関する洞察を得ることができ、デバッグ時に不可欠な選択肢です。
以下はdocker logs
コマンドからの出力例です。
20. docker swarm
このコマンドは、Docker Swarm─Dockerを実行し、クラスタで一緒に動作するように構成されたマシン(仮想または物理的)のグループ─の管理を支援します。このコマンドを使えば、Swarmを簡単にセットアップして活用できます。
以下はdocker swarm
のオプションには以下のようなものがあります。
init
:Swarmを開始join
:Swarmに参加leave
:Swarmから離脱update
:Swarmを更新
以下は、docker swarm init
コマンドの例です。
まとめ
Dockerはコンテナ型アプリケーションを構築・管理するのに効果的なツールです。CLIの分かりやすいコマンドを使って、複雑なアプリケーションの作成と操作を簡単に行うことができます。
上記の20のコマンドをマスターすることで、コンテナ化を用いたアプリケーションの開発をスピードアップできるはずです。
Kinstaでは、多くのWordPress専用マネージドホスティングのお客様がDocker-DesktopベースのツールであるDevKinstaを使用してウェブサイトの開発とデプロイを行っています。
これに加えて、Kinstaのアプリケーションホスティングでは、Dockerと好みのGitサービス(Bitbucket、GitHub、またはGitLab)を使用して、ソースコードのバージョン管理とコンテナ型アプリケーションの高速デプロイを行うことができます。
コメントを残す