プラグインを多用するアーキテクチャ、数千規模の同時ユーザー、そして安定したパフォーマンスを求めるクライアント。こうした条件を満たすWordPressサイトの管理は複雑です。企業クライアント向けに高トラフィックなサイトを数十件運用するようになると、従来のサーバー基盤では限界が見えてきます。
Kinstaでは、このような高負荷を処理する開発者主導の企業向けに構築されたインフラを提供しています。この記事では、コンテナ技術を採用するサーバー、高度な開発者向けツール、および強力なクラウドインフラが、サーバー管理の手間を増やすことなく、Web制作会社による高度なサイト運用をどのように支えているのかを紹介します。
一般的なサーバーでは処理できないWordPressサイト例
以下のようなWordPressサイトは、標準的なサイトとは異なる特定の特徴があります。
- 数千の商品とカスタムタクソノミーを持つWooCommerce ストア
- 数万人のユーザーにサービスを提供する会員制プラットフォーム
- 月間数百万ページビューを処理するコンテンツサイト
このようなサイトは、多くのプラグイン、大規模なカスタム投稿タイプ、時間ごとに変化するトラフィックパターンに依存するのが一般的です。サイトを高速かつ安定的に維持するには、予測可能なパフォーマンスと、開発ワークフローを完全に制御しなければなりません。
多くのマネージドサーバーは、必須の開発者ツールを省略してプラットフォームを簡素化しています。これは初心者には有効かもしれませんが、SSHアクセス、WP-CLI、Gitベースのデプロイメント、またはカスタムキャッシュルールに依存するWeb制作会社には制限が生じます。開発者ツールが使えない場合、機能開発に集中できず、プラットフォームの制約を回避する作業に時間を取られてしまいます。
共用サーバー環境には、予測不可能なパフォーマンスという別の課題があります。複数のサイトが同じリソースを共有するため、あるサイトのトラフィックが急増したり、リソースを大量に消費したりすると、サーバー上の他のすべてのサイトの速度が低下する可能性があります。この「ノイジーネイバー(うるさい隣人)問題」により、価値の高いクライアントに対して一貫したパフォーマンスを保証することが困難になります。
サーバーの自社管理と適切なツールの欠如がもたらす問題
上記のような共用サーバーの制限を回避するため、多くのWeb制作会社が仮想プライベートサーバー(VPS)を採用しています。VPS環境では完全なコントロールを実現できますが、メンテナンス作業が増えるため、結果として開発作業の妨げになり得ます。
例えば、サーバーを最新の状態に保ち、SSL証明書を更新し、データベースを最適化し、セキュリティパッチを適用し続ける必要があります。こうした作業は時間の経過とともに技術的負債となり、設定ミスなどのリスクを高めていきます。
また開発者は、SSHやWP-CLI、Git連携、ステージング環境といったツールを、日常的なワークフローの一部として利用できることを前提にしています。これらのツールを手動でインストールしたり、個別に設定したりする必要があると、開発スピードが落ち、ミスが発生する可能性も高まります。サーバーの保守に時間をかけるほど、クライアントに成果を届けるための時間は減っていきます。
Kinstaの開発者向けツールとは?
KinstaのWordPress専用マネージドクラウドサーバーでは、制限や手間のかかる設定なしで、さまざまな開発者向けツールが標準提供されます。
SSHとWP-CLI
SSHアクセス対応により、WordPressをコマンドラインでコントロール可能です。

このようなアクセスにより、開発者が求めるワークフローを支えます。具体的には、カスタムスクリプトの実行、セキュアな接続を通じたファイル管理、そしてウェブベースの管理画面に頼ることなくメンテナンスタスクを実行することが可能になります。
WP-CLIは事前にインストールされているため、SSHで接続した瞬間からすぐに利用できます。そのため、他のサーバー環境でWP-CLIをインストールする際に発生しがちな、セットアップの手間や互換性の問題は回避できます。
またWP-CLIには、個々のサイト管理における日々のタスクを効率化する強力なコマンドがあり、以下のような操作を実行できます。
# 単一のサイトのすべてのプラグインを更新
wp plugin update --all
# 更新可能なプラグインをチェック
wp plugin list --update=available
# 特定のプラグインを更新
wp plugin update woocommerce akismet
# WordPressコアファイルの整合性を確認
wp core verify-checksums
# すべてのキャッシュをクリア(要Kinsta MUプラグイン)
wp kinsta cache purge --all
複数のサイトで操作を実行したい場合は、WP-CLIのコマンドラインスクリプティングによる一括操作が役立ちます。Kinstaをご利用の場合は、MyKinstaの一括操作機能でより簡単に操作を実行可能です。
最新のデプロイワークフローに対応したGit連携
Gitサポートも組み込まれています。SSHを使ってサイトに接続し、GitHub、GitLab、Bitbucketなど、任意のGitサーバーでホストするリポジトリからプルすることができます。
プライベートリポジトリの認証および二要素認証は、Gitの一般的な認証フローを通じて行われます。Gitプラットフォーム上でSSHキーまたは個人アクセストークンを生成し、Kinstaでホストするサイト上で設定します。このアプローチにより、デプロイプロセスを複雑化することなく、セキュリティを維持することができます。
ローカル開発とサイト同期に役立つDevKinsta
DevKinstaを使用すると、本番環境のインフラ構成をそのまま再現した、ローカルのWordPress開発環境を構築できます。PHPバージョンやデータベース設定、サーバー構成を本番と揃えたローカルサイトを簡単に立ち上げることが可能です。
ローカル環境と本番環境間の一貫性が保たれることで、設定の違いによって発生するデプロイの問題が軽減されます。
また、開発やテストの目的でローカルマシンに本番サイトを取り込むことも可能です。ローカルで変更を加え、期待どおりに動作することを確認し、デプロイメントワークフローを通じて変更を反映。このアプローチにより、新機能の開発や問題のトラブルシューティングを行っている間も、本番環境の安定性が保たれます。
複雑なWordPressサイト向けのパフォーマンスツール
複雑なWordPressサイトには、開発者向けツールだけでなく、高負荷時にもパフォーマンスを維持するツールが必要です。
データベースを多用するサイト向けのRedisオブジェクトキャッシュ
オブジェクトキャッシュは、WordPressサイトが繰り返しデータベースクエリを行う場合に重要になります。たとえば、何千もの商品クエリを提供するWooCommerceストアは、商品情報の表示、在庫レベルの確認、価格の計算のために、常にデータベースへのクエリを行います。
Redisキャッシュは、クエリの結果をメモリに保存することで、データベースの負荷を軽減します。WordPressが情報を取得する必要がある際、Redisはデータベースに問い合わせるのではなく、キャッシュから情報を提供します。このデータベースクエリの削減により、応答時間が短縮され、パフォーマンスを低下させることなく大量のトラフィックに対応できるようになります。
Kinstaは、WordPressに直接統合するアドオンとしてRedisを提供しており、MyKinstaのアドオン画面から利用可能です。
Redisオブジェクトキャッシュを使用するサイトでは、WP-CLIの以下のコマンドを使って、キャッシュパフォーマンスを監視することができます。
# Redisキャッシュ使用状況を表示
wp redis info
# キャッシュのHIT率を確認
wp redis status
このコマンドは、キャッシュの使用状況を確認し、パフォーマンスを最適化するのに役立ちます。
遅いクエリとプラグインの特定に役立つAPMツール
KinstaのAPM(アプリケーションパフォーマンス監視)は、サイトの動作が遅い原因を特定するのに役立ちます。このAPMツールは、MyKinstaに組み込まれており、外部サービスやNew Relicの定期購入なしで機能します。

APMツールは、ページの読み込み時間に影響を与える遅いデータベースクエリ、プラグインの競合、およびテーマの非効率性を識別するため、実行時間を最も消費する特定の関数、完了までに最も時間がかかるクエリ、遅延を発生させる外部API呼び出しを確認できます。この可視性により、トラブルシューティングを素早く的確に行うことが可能です。
柔軟なスケーリングを実現するクラウドインフラ
Kinsta上のすべてのWordPressサイトは、専用のCPU、メモリ、システムリソースを備えた隔離コンテナ内で実行されます。これにより、ノイジーネイバー問題が解消され、予測可能なパフォーマンスが保証されます。
Kinstaのサーバーは、高速グローバルルーティング、オートスケーリング、および強力なリソース分離を提供する強力なクラウドインフラによって支えられています。Web制作会社はサーバー管理に手を焼くことなく、エンタープライズグレードのパフォーマンスを実現することができます。
複雑なWordPressサイトを扱う制作会社のNeuralabは、このスケーラビリティを活用することで、従来のサーバー環境と比べて読み込み速度を改善し、他のサーバーアーキテクチャを上回るパフォーマンスを実現しています。
スケーリングとPHPパフォーマンス
複雑なWordPressサイトには、高負荷と突然のトラフィック急増の両方に対応できるインフラが必要です。Kinstaは、各サイトで利用可能なリソースを増やす垂直スケーリングモデルでこれをサポートします。
垂直スケーリングは、より多くのCPU、メモリ、およびPHP処理能力をサイトのコンテナに追加するため、画像処理、大規模なインポート、リソース集約型プラグイン、データベースを多用する操作などのタスクに役立ちます。
PHPパフォーマンスアドオンを使用して、PHPスレッドとメモリの割り当てを増やすことも可能です。PHPスレッドを増やすことで、より多くの同時PHPリクエストを処理できるようになり、WordPress自体のアーキテクチャを変更することなく、高トラフィック時のパフォーマンスを高めることができます。

Kinstaの基盤となるインフラは、WordPressサイトが複数のロードバランスされたコンテナを使用していない場合でも、パフォーマンスを低下させることなくトラフィックの急増を吸収できる十分な余力を備えています。
プレミアムステージング環境と選択的プッシュ機能
Kinstaには、2種類のステージング環境があります。すべてのサイトには1つの標準ステージング環境が付属し、必要に応じてアドオンでプレミアムステージング環境を追加できます。
標準ステージング環境は、テーマの変更、プラグインの更新、およびコンテンツの修正をテストするのに適しています。プレミアムステージング環境には、本番環境と同様の条件下でのパフォーマンステストが必要な場合や、開発ワークフローに大量のリソースを必要とする自動テストの実行が含まれる場合に便利です。複雑な構成や価値の高いクライアントサイトには、プレミアムステージング環境がおすすめです。
環境間には、選択的プッシュ機能を使って、特定のファイルやデータベーステーブル、またはすべてを本番環境に反映できます。これにより本番環境に移行する変更内容を正確に制御できるため、意図しない更新が本番サイトに影響を与えるリスクを低減できます。

MyKinstaとKinsta APIによるポートフォリオの管理
MyKinstaの機能には、複数のクライアントサイト管理に役立つものがあります。例えば、一括操作機能により、個々のWordPress管理画面にログインすることなく、複数のサイトで共通のタスクを実行できます。
プラグインとテーマの更新は、各サイトにインストールされているものを正確に把握できるため、どの更新を適用するかについて十分な情報を得た上で決定することが可能です。また、競合を引き起こす可能性のあるサイトでのプラグインの更新を避けることができます。

数十または数百のサイトを管理する制作会社にとって、この機能は反復作業の効率化に役立ちます。
MyKinstaが提供する以上の自動制御が必要な場合は、Kinsta APIを活用できます。独自の一括操作ツールを構築するためのエンドポイントが多数あります。Kinstaを利用する制作会社のStraight Out Digitalは、カスタム社内ダッシュボードと数百のサイトを管理するワークフローの自動化にKinsta APIを利用しています。
まとめ
複雑なWordPressサイトには、最新の開発者ワークフローをサポートし、高速でスケーラブルで信頼性の高いインフラが必要です。Kinstaでは、コンテナ技術、高度なパフォーマンスツール、メンテナンスの負荷を排除する強力なクラウド基盤を通じてこれを提供しています。
Kinstaにご興味がありましたら、開発者主導のWeb制作会社向けプランの詳細をぜひご覧ください。