AWS市場シェア─収益と成長、競合との比較

Amazon Web Services(AWS)は2006年に設立された、サービスとして現代のクラウド基盤を提供した最初の企業です。設立以来、AWSは特にホスティングとデータストレージの両方の分野を牽引しています。

AWSとは

Amazon Web Services(AWS)は、Amazon独自のインフラと経験を活かしたクラウドサービスプロバイダー。AWSは、MicrosoftのAzureのような企業の一部門ではなく、Amazonの子会社です。

AWSは、基本的なホスティングやデプロイメントからアナリティクス、ブロックチェーン、機械学習など、様々なクラウドサービスを提供しています。

様々なクラウドコンピューティング製品を提供するAWS
様々なクラウドコンピューティング製品を提供するAWS

すべてのストレージとコンピューティング資源は、世界各地に分散したデータセンターのネットワークから供給され、レイテンシが少なく、エンドユーザーにより良いユーザーエクスペリエンス体験を提供します。

ホスティングとAmazon Simple Storage Service、通称「Amazon S3」と呼ばれるストレージサービスのほか、エラスティックブロックストレージなどを提供しています。

ウェブホスティング市場におけるAWSの現在のシェアは6%

まずは最もわかりやすいデータとして、ウェブホスティング業界におけるAWSの市場シェアを見てみましょう。

W3Techsによる、世界のウェブホスティングサービスにおける、最新のクラウド市場シェアの数字は以下のとおりです。

ウェブホスティング市場シェア(出典:W3Techs)
ウェブホスティング市場シェア(出典:W3Techs)

Amazonは6%のシェアで1位を獲得しています。Googleは、ドメインホスティング事業をSquarespaceに突如売却したことから、1.9%で5位から13位に順位を下げています。Microsoftは、商用およびプライベートのウェブホスティングをあわせてもわずか1.2%で、大幅に遅れをとっています。

AWSはホスティング会社ではありませんが、すでにEndurance Group(格安共用サーバー、大手BluehostとHostgatorを含む)を追い抜き、クラウド大手上位3社の中で明確なリードを確立しています。

「6%」と聞くと、大したシェア率でないように思えます。そこで、この数字がどのような意味を持つのかもう少し掘り下げてみましょう。

AWSを利用するウェブサイトはおよそ5,000万件

ウェブホスティング市場では、わずか数パーセントという数字が大きな意味を持ちます。これを裏付けるため、AWSでホストされている稼働中のウェブサイト数を見てみます。

BuilWithの最新データによると、現在推定4,996万3,267件のウェブサイトがAWSでホストされています。

Amazonの利用統計

2012年から2023年までのAmazonの利用統計(出典:BuiltWith)
2012年から2023年までのAmazonの利用統計(出典:BuiltWith)

このおよそ5,000万という数は、スペインの全人口以上。

AWSは、Netflix、Airbnb、3Mなど、多くのグローバル企業や有名企業に選ばれているホスティングサービスです。

データ量の多い動画を配信するNetflixだけでも、ストレージとコンピューティングの要件に10万台以上のサーバーインスタンスを使用しており、他にも多くの大手企業がウェブサイトやデータのホスティングにAWSを利用しています。

上位サイト10万件のクラウドホスティングの利用分布

クラウドホスティングを利用するウェブサイトのプロバイダー統計

上位サイト10万件のクラウドホスティングの利用分布(出典:BuiltWith)
上位サイト10万件のクラウドホスティングの利用分布(出典:BuiltWith)

上位サイト10万件のクラウドホスティングプロバイダーの利用状況においては、Amazonが34%を占めており、大手3社の中で明らかな存在感を示しています。

対するGoogle Cloudは12%、Microsoft Azureはわずか8%と、AWSに大きく引き離されています。

もちろん、IaaS市場はウェブホスティングだけではありません。とある調査では、技術者の47%がAWSで重要な作業を行なっていると回答しています。また、デプロイメント用のAmazonのPaaS(Platform as a Service)製品も市場をリードしています。

AWSの過去と現在の収益

AWSの過去10年間の四半期報告書や年次報告書を見ると、驚異的な成長を遂げていることがわかります。

わずか7年間で、収益は25倍以上に増加しています。

2013年から2022年までのAWSの年間収益

2013年から2022年までのAWSの年間収益成長率(出典:Statista)
2013年から2022年までのAWSの年間収益成長率(出典:Statista)

2013年の31億ドルから2019年に800億ドルを超えるまで、AWSの収益成長は控えめに言っても着実に進んでいます。将来クラウドプラットフォームは、10億ドル規模のビジネスになるだけでなく、数十億ドル、もしかすると1,000億ドル規模のビジネスにもなり得ることを示唆しています。

AWSはクラウド市場でシェアを拡大し続けるのか

まず、パブリッククラウド市場全体の予想成長率を見てみましょう。Gartnerの専門アナリストによると、パブリッククラウド全体の収益は、2022年の4,910億ドルから2024年には約7,250億ドルに成長すると予測しています。

世界パブリッククラウドサービスの収益予想(百万米ドル単位)

世界のパブリッククラウドの収益予測(出典:Gartner, 2023年4月)
世界のパブリッククラウドの収益予測(出典:Gartner, 2023年4月)
※四捨五入により合計収益が合わない場合があります。

IaaSは、前年同期比24%の驚異的な成長率で劇的に伸びると予測されおり、IaaSとPaaSの市場を合わせると、今後数年間で580億ドル以上の収益増加が見込まれています。

次に、AWSの成長率を見てみましょう。初期には爆発的な成長率を記録し、その後2019年には減速の兆しが見えましたが、近年になって再び急速に成長しています。

AWS quarterly revenue growth from Q1 2014 to Q3 2022.
AWSの四半期収益成長率(出典:Statista)

Synergy Research Groupのデータによると、AWSの成長率は2019年に市場全体と比較して鈍化し始め、Microsoft、Google、Alibaba、Tencentといった主要な競合企業はシェアの拡大を続けました。

クラウドプロバイダーの位置関係(出典:Synergy Research Group)
クラウドプロバイダーの位置関係(出典:Synergy Research Group)

例えば、Microsoft Azureは、2019年第4四半期に前年同期比62%増を記録し、平均成長率を大きく上回って、市場リーダーの地位を確立しました。

 他のクラウドソリューションが成熟した中、AWSはもはや明確な革新者でも、市場のリーダーでもありません。

さらに多くの大企業は、単一のクラウドプロバイダーへの依存を好まず、AWSの一部優良顧客が他社に移り始めており、Appleは、4億〜6億ドルのクラウド利用をGoogle Cloud Platformに移行しました。

全体として、AWSは継続的に成長を続けているものの、市場のパイが大きくなるにつれ、AzureやGoogleのような、より速いペースで成長している競合にシェアを奪われる可能性が高いでしょう。

AWSの安全性

AWSは、顧客のために安全でコンプライアンスを遵守するプラットフォームの維持に専念しています。ユーザーはクラウド上で処理、保存する、あらゆる機密データに対して、スケーラブルなアクセス制御と暗号化を利用できます。

AWSのセキュリティ機能
AWSのセキュリティ機能

セキュリティ上の脅威を継続的に監視することで、潜在的な脅威が実際の問題につながる前に、リアルタイムに検出して対処できます。とは言え、どれほど安全なシステムを構築しても、ユーザーによるエラーを完全に回避することはできません。

注目を集めたCapital Oneのケースも、不満を持った元社員がサイトのファイアウォールを不正に設定したことが原因で発生し、脆弱性につながりました。

ユーザーが自分でウェブサイトやシステムを設定する場合、設定ミスによる個々のアカウントやウェブサイトの脆弱性は避けられません。

AWSとGoogle Cloud Platformの比較

以上がクラウドコンピューティングやサービスにおけるAWSの一般的なシェアについて。ここからは、競合他社との比較をご紹介します。

まずはAWSとGoogle Cloud Platformについて掘り下げ、さまざまな観点から、どちらが優位に立つかを見ていきます。

まず、ウェブホスティングの市場シェアから。両社がどのような位置関係にあるかをW3Techsのデータで見てみましょう。

ホスティング会社利用統計の傾向

ウェブホスティング会社の利用状況(出典:W3Techs)
ウェブホスティング会社の利用状況(出典:W3Techs)

驚くべきことに、この1年間で、AWSは2022年と比較して0.2%減と、わずかながらも市場シェアを落としています。

稼働中のサイトに関するBuiltWithのデータでは、以下のようになっています。

上位クラウドホスティング利用分布
上位クラウドホスティング利用分布

AWSは4,780万件、Google Couldは4,540万件のサイトで利用されており、120件のMicrosoftのような他のIaaSプロバイダーに圧倒的な差をつけています。

IaaS、PaaS、プライベートクラウドサービスからなる完全なクラウドの収益に関しては、AWSがGoogleよりもはるかに大きなシェアを占めています。

これは収益に反映されており、AWSは2023年の景気後退にもかかわらず、今年初めに年間850億ドル、Google Cloudは予想を上回る年間320億ドルを記録しました。

Synergy Research Groupの調査では、AWSと競合他社の間には依然として大きな差がありますが、Microsoftとの差は縮まりつつあります。

IaaS、PaaS、プライベートクラウドの市場シェア成長率(出典:Synergy Research Group)
IaaS、PaaS、プライベートクラウドの市場シェア成長率(出典:Synergy Research Group)

2023年の市場シェアは、AWSが32%、Microsoftが23%、Googleが10%で3位についています。

ホスティングやクラウドサービスにおいては、市場シェアだけでなく、信頼性も重要な指標です。

Google Cloud PlatformとAWSは、稼働率に関しても業界をリードしており、両者とも、サーバーのダウンは2018年5月から2019年5月までの合計で約300時間しか報告されていません。

AWS、Azure、GCPのサーバーダウン合計時間(出典:NetworkWorld)
AWS、Azure、GCPのサーバーダウン合計時間(出典:NetworkWorld)

AWSの方がわずかに信頼性に優れ、サーバーがダウンした合計時間は338時間、Google GCPは361時間でした。

AzureとGoogle Cloudの間には大きな開きがあり、1,500時間以上の差があります。

Google CloudとAWSのより詳しい比較はこちらをご覧ください。インフラやサービス、セキュリティ、ネットワーク、レイテンシなどの違いを徹底比較しています。

AWSとMicrosoft Azureの比較

AmazonとMicrosoftは、現在クラウド市場における2大巨頭であり、AWSとAzureは比較するに値します。

しかし、ウェブホスティングの観点からは別の話。W3Techsの最新データを見てみます。

Amazonは6%のシェアを持つ最大のホスティング会社であるのに対し、Microsoftはわずか1.2%で、ページビルダーのWixやSquarespaceのような小規模なサービスにも劣っています。

BuiltWithの最新データによれば、アクセス数の多い上位1万件のウェブサイトを見ても、AWSが大きくリードしています。

上位サイト1万件におけるにクラウドホスティングの利用状況(出典:BuiltWIth)
上位サイト1万件におけるにクラウドホスティングの利用状況(出典:BuiltWIth)

Amazonの市場シェアは36%であるのに対し、Microsoft Azureはわずか8%。

収益に関して言えば、MicrosoftはAzure単体の収益の数字を公表していません。しかしある情報によれば、最近の裁判所に提出された資料では、2022年のMicrosoft Azureの総収益が340億ドルであると報告されています。

一方、AWSはAzureの2倍以上で、2022年には800億ドルの収益を上げています。

Microsoftは、AzureとSurfaceを使用して顧客にパーソナライズされた体験を提供するため、NBAと複数年契約を結び、再び注目を集めました。

AWSではなく、Microsoftがこの注目のパブリッククラウド契約を結んだことで、Microsoftの成長率が加速する可能性が高まっています。

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