WordPressとDrupalはどちらが優れているのか、気になる方は多いはず。KinstaではWordPressホスティングを提供していますが、ウェブサイトを構築するならWordPress一択、と考えているわけではありません(WordPressにメリットが多いのは事実ですが)。

過去にSquarespaceとWordPressの比較記事を公開していますが、今回はもう1つの人気コンテンツ管理システム「Drupal」とWordPressの違いを見ていきます。

WordPressとDrupalの比較

両者を比較する前に、それぞれの概要を見ておきます。どちらもコンテンツ管理システム(CMS)であることはお分かりでしょう。その名の通り、サイト上のコンテンツを作成、管理するための自己ホスティング型ソリューションです。

では、コンテンツ管理システムとして、両者はどのような位置付けなのでしょうか。

WordPress

WordPressは、世界で最も広く使用されているコンテンツ管理システムです。2003年にブログプラットフォームとして登場しましたが、現在では全ウェブサイトの43.5%を支え、CMS市場で62.5%をシェアを占めています。

WordPressを採用している有名企業には、以下が挙げられます。

  • ホワイトハウス(Whitehouse.gov)
  • ソニーモバイルコミュニケーションズ
  • ワシントン大学
  • メルセデス・ベンツ
  • TechCrunch
  • The New Yorker

Drupal

Drupalの歴史はWordPressよりも古いものの、市場シェアはWordPressには到底及びません。2000年にリリースされたDrupalは、全ウェブサイトの2.3%で使用され、CMS市場でのシェア率は4.6%にとどまります。

Drupalを採用する代表例は以下の通りです。

  • コロラド大学ボルダー校
  • コロラド州
  • The Economist
  • Dallas Cowboys
  • NASA
CMS市場シェア
CMS市場シェア

Google Trendsを2004年まで遡って見てみると、両者とも知名度は一気に高まり、その後現在は低迷気味です。しかしこれはCMS全体で見られる傾向で、市場シェアの伸びを見ると、どちらも着実に成長しています。

WordPressとDrupalの成長率
WordPressとDrupalの成長率

主な特長

WordPressとDrupalの比較を調べると、両者それぞれに多くの支持者がいることがわかります。まずは、両者のメリットを見てみましょう。

WordPressのメリット

  • 使いやすい─非常にユーザーフレンドリーで、開発知識を持たないユーザーでも使用できる。
  • 拡張性─サードパーティ製テーマとプラグインが豊富にあるため、カスタム開発が不要。機能を容易に拡張できる。適切なツールを使えば、Drupalでできることはすべて実現可能と主張する支持者もいるほど。
  • 世界規模の巨大コミュニティ─問題に直面しても、すぐに必要な情報やサポートを得ることができる。
  • 開発コストを抑えることができる─WordPressは即座に使用できるソリューションであり、WordPress開発者は通常、Drupal開発者よりも安価に雇うことができる。

Drupalのメリット

  • カスタムコンテンツタイプとビュー─WordPressはカスタム投稿タイプよりも柔軟性に優れていると言われている。
  • アクセス管理とユーザー権限─WordPressのシングルサイトには5種類のユーザー権限しかないのに対し、Drupalにはアクセス管理システムが組み込まれているため、個別のアクセス権を持つユーザー権限を自分で作成可能。
  • 多言語サイトのコアサポート─WordPressではプラグインが必要だが、Drupal 8には多言語機能が標準搭載されている。
  • 大量のデータを扱うタクソノミタクソノミシステムはWordPressよりも柔軟で、大量のコンテンツを扱う場合に理想的。
Drupalのカスタムコンテンツタイプ例
Drupalのカスタムコンテンツタイプ例

使いやすさ

使いやすさという観点からは、WordPressが圧倒的に優勢です。

WordPressの使いやすさ

WordPressでは、ゼロから見栄えの良い機能的なウェブサイトを構築するのが非常に簡単です。

シンプルなサイトであれば、ニッチに特化したテーマを見つけて、半日で完成させることもできてしまいます。

さらに、WordPressのインターフェースはシンプルで、経験の浅いユーザーでもすぐに理解できます。WYSIWYG(画面の通りに出力されるシステム)のテーマカスタマイザーやGutenbergブロックエディターを利用すれば、オリジナリティのあるコンテンツを容易に作成可能です。

WordPressのテーマカスタマイザー
WordPressのテーマカスタマイザー

Drupalの使いやすさ

Drupalは、WordPressとはほぼ正反対で、テーマは存在するものの、Drupalサイトには、独自にコーディングされたテーマ、少なくとも高度にカスタマイズされたテーマが使用されるのが一般的です。つまり、見栄えの良いサイトを構築するには、開発者の協力が必要になります。

また、Drupalのインターフェースは複雑で、一般ユーザーどころか、開発者であっても習得に時間がかかります。これは一般的なユーザーの評価というわけではなく、Drupalも自社のユーザビリティページで、以下のように述べています。

Drupalは、コンテンツ作成において、一般に期待されるレベルの優れたユーザーエクスペリエンスは提供しておらず、CMSの標準と考えられる機能の多くも搭載されていません。(英語原文の日本語訳)

例えば、Drupal 7のコアエディターの外観は、以下のようになっています。

Drupal 7.Xのコンテンツエディター
Drupal 7.Xのコンテンツエディター

基本的なレベルでは機能的と言えますが、WordPressのTinyMCEエディター(およびGutenbergエディター)と比較すると、とてもユーザーフレンドリーとは言えません。

スケーラビリティ

WordPressとDrupalのどちらでも、アドオンを使用して機能を拡張することができます。

  • 機能の拡張:WordPressでは「プラグイン」、Drupalでは「モジュール
  • 外観の変更:WordPressとDrupalのどちらでも「テーマ」

WordPressのプラグインとテーマ

プラグインとテーマの数が、本質的なWordPressの性能を意味するわけではありませんが、サードパーティのWordPressエコシステムの規模と重要性を示す良い指標になります。

WordPressのプラグインとテーマは、以下のような規模感です。

  • 5万3,000以上の無料プラグイン、および数千以上の有料プラグイン
  • 5,000以上の無料テーマ、および数千以上の有料テーマ
WordPress.orgのプラグインディレクトリ
WordPress.orgのプラグインディレクトリ

Drupalのモジュールとテーマ

Drupalの公式ディレクトリにも、豊富なモジュールとテーマが揃っています。

  • 3万9,000以上のモジュール
  • 2,500以上のテーマ

ただし、このうちDrupal 8.xと互換性のあるものは以下に制限されます。

  • 4,000以上のモジュール
  • 250テーマ

セキュリティ

WordPressもDrupalも比較的安全なシステムではありますが、ユーザーの更新習慣やサードパーティソリューションへの傾倒を考慮すれば、Drupalの方が安全性に優れていることが多いです。

この差は、WordPressコアの欠陥にあるというよりも、ヒューマンエラーに起因していることは念頭に置いてください。

WordPressのセキュリティ

WordPressのコア自体はセキュアですが、巨大なサードパーティのエコシステムは、Drupalサイトにはない数々の危険性があります。

Wordfenceの調査によれば、悪意あるユーザーの既知のエントリーポイント(侵入口)の55.9%は、プラグインの脆弱性にあります。また、Sucuriが調査したハッキングされたウェブサイトのうち、74%がWordPressサイトでした。

WordPressのシェア率を考慮すれば、この数字が高くなるのは必然的ですが、WordPressの市場シェアは59.8%に過ぎず、Sucuriが調査したハッキングされたサイトの74%がWordPressサイトという事実は、予想以上に高い数値です。

WordPressは適切に使用すれば安全なCMSですが、サードパーティの拡張機能に大きく依存していることから、Drupalよりも脆弱です。

Drupalのセキュリティ

Drupalのセールスポイントは、隔離されたセキュリティにあり、これこそが政府機関やその他のセキュリティ意識の高い大手企業がDrupalを選ぶ理由です。WordPressとは対照的に、Sucuriが調査を行ったハッキングされたサイトのうち、Drupalサイトは2%しかなく、市場シェアの4.7%を大きく下回ります。

ハッキングされたサイトの内訳(出典: Sucuri)
ハッキングされたサイトの内訳(出典: Sucuri

エンタープライズレベルのセキュリティだけでなく、Drupalは詳細なセキュリティ報告書も公開しており、WordPressよりもセキュリティに関する透明性が高いのもメリットです。

DrupalからWordPressへの移行

現在Drupalを使用していて、WordPressに移行する方法をお探しなら、WordHerdをチェックして見てください。WordHerdはKinstaの公式パートナーであり、あらゆるCMSからWordPressにデータを移行するサイト移行サービスを提供しています。

WordHerd
WordHerd

中小企業から大企業まで、あらゆる規模のサイト移行に対応しており、CMSの移行に加え、CRMデータの移行もサポートしています。

自分でデータ移行をお考えの場合は、以下のWordPressプラグインを使用してください。

WordPressとDrupalのどちらを使用すべきか

WordPressとDrupalのどちらが優れているかという問いに対する答えは、構築しようとしているウェブサイトによって異なります

つまり、どちらが優れているかという見方を変えて、「どちらがプロジェクトに適しているか」を吟味してみてください。

Kinstaでは、WordPressホスティングを提供していますが、客観的に考えて、複雑なデータ構成を持ち、カスタマイズと柔軟性が必要になるプロジェクトでは、Drupalを使用する方が得策かもしれません。ただし、Drupalを使用する前提条件として、以下のいずれかが必須になります。

  • 自分が開発者である(または社内に開発チームがある)
  • 開発者を雇う予算がある

WordPressは以下のような理由から、ユーザーを選ばない標準的なCMSです。

  • ユーザーフレンドリーで、開発知識なしで簡単に機能を実装できる。
  • 魅力的で機能性の高いウェブサイトをすぐに立ち上げ可能。
  • 人気の高さからコミュニティによるサポートやリソースが豊富で問題解決が容易。

WordPressがすべての状況でベストなツールというわけではありません。しかし、Drupalが提供する機能の中に利用したい特定のものがなければ、WordPressを選ぶ方が、サイト構築と管理が楽になるでしょう。

WordPressとDrupalについてどう思いますか?ぜひ以下のコメント欄でぜひご意見をお聞かせください。

※Drupal™はDries Buytaertの登録商標です。

Brian Jackson

Brianの最大の情熱の一つは10年以上使用してきたWordPressです。複数のプレミアムプラグインさえ開発しています。Brianの趣味はブログや映画やハイキングなどです。TwitterでBrianとつながりましょう。