Kinstaのホスティングプラットフォームは、Google Cloud上に構築されており、高いパフォーマンスを実現しています。Googleのインフラストラクチャを利用するホスティング会社は他にもありますが、サーバーを設置しているGoogleの世界37箇所のデータセンターそれぞれで利用可能な最速の仮想マシンを提供しているサービスは、Kinsta以外にありません。

2024年初頭、WordPress専用マネージドホスティングをご利用のお客様のサイトを、利用可能なすべてのデータセンターで最新のC3D仮想マシンに移行しました。これは、2019年にGoogleのコンピューティング最適化C2仮想マシンを採用して以来の重要なアップグレードです。

当時、C2はウェブホスティングで最速の仮想マシンであり、移行後、Kinstaプラットフォームに劇的なパフォーマンス向上をもたらしました。現在もなお、ほとんどのGoogleデータセンターにおいて最速マシンです。今後、新たにデータセンターでC3D仮想マシンが利用可能になり次第、随時お客様のサイトをC3D仮想マシンに移行していく予定です。

C3Dマシンへの移行を行う前に、独自にラボテストを実施した結果、C3Dによりサーバーの応答時間が最大50%向上することがわかりました。

以下、実際のWordPressサイトで行ったテストの詳細と結果をご紹介します。

C3Dマシンの新機能

C3Dテクノロジーの詳細はこちらでご覧いただけますが、以下2つの機能がVMのパフォーマンスに劇的な影響を与えます。

  1. 周波数3.7GHzで動作し、最大360の仮想CPUと2,880GBのDDR5メモリをサポートする第4世代のAMD EPYC CPU(以前のコードネームは「Genoa」)
  2. ネットワーク性能とデータI/Oを向上し、CPUの負担を軽減するインフラストラクチャ・プロセッシング・ユニット(IPU)

これにより、サーバーサイドコードの解釈、データベースの処理、ネットワークインターフェースのデータ転送が高速化されます。以前のラボテストでは、MySQL/MariaDBのストレステストにおいて、データベースリクエストに対するレスポンスのタイムラグが、89ミリ秒(C2マシン)から0.9ミリ秒(C3Dマシン)に減少しました。

KinstaでホストするWordPressサイトは、Linux、NGINX、PHP、MariaDBなどのすべてのサポートソフトウェアを備えたコンテナで完全に隔離された状態で実行されるため、この恩恵を最大限受けることができます。

仮想マシンのパフォーマンス比較

C3DベースのVMのパフォーマンスを他のクラスのマシンと比較するため、同じ条件のWordPressサイトを3つ作成し、それぞれC3Dマシン、C2マシン、そしてN2マシンで稼働します(N2マシンは、Kinstaではあまり使用されていないが、多くの他社サービスで採用されているため比較対象として使用)。

各サイトのKinsta WordPressホスティング環境は以下のとおりです。

  • WordPress:バージョン6.5
  • PHP:バージョン8.2
  • Ubuntu:バージョン20.04.6
  • NGINX:バージョン1.25.2
  • MariaDB:バージョン15.1

テストサイトの高負荷を再現するため、HTTPサーバーのベンチマークツールであるApache Bench(ab)を使用します。

キャッシュされていないコンテンツのリクエスト

サーバー上のキャッシュメカニズム(特にページキャッシュ)をバイパスするコンテンツを配信する際のパフォーマンスを比較するため、サーバー上でキャッシュバイパスをリクエストするようにコード化されている、WooCommerceの買い物カゴページを利用します。

キャッシュされたコンテンツがない場合、リクエストごとにWordPressがデータベースに問い合わせ、ターゲットとなるページを構築しなければなりません。これは決して効率的ではありませんが、ECサイトの買い物カゴのように、各訪問者に固有のコンテンツは、基本的にキャッシュすることができません。

3つのテストサイトすべてで、デフォルトの買い物カゴビューは、235KBのHTMLページを生成しました。

したがって、Apache Bench(ab)のテストプロトコルは次のようになります。

  • ページサイズ:235KB
  • 同時ユーザー数:50
  • 実行時間:60秒

結果(成功したリクエスト数/秒)

  • C3D:207.72
  • C2:141.47
  • N2:89.93

結果、C3D VMは、C2よりも平均して46.8%多くのキャッシュされていないページを配信できることがわかりました。

キャッシュされていない(キャッシュバイパス)ページの速度テストの結果
キャッシュされていない(キャッシュバイパス)ページの速度テストの結果

キャッシュコンテンツのリクエスト

キャッシュを使用すると、WordPressサイトはワーカープロセスを起動してデータベースに問い合わせを行うことなく、ページを提供することができます。NGINXのインメモリキャッシュを使用すれば、一部のコンパイル済みコンテンツはディスクから読み込む必要すらなくなります。

キャッシュしたコンテンツとして、サイズが114KBの同じブログ記事を使用します。テストプロトコルは以下のようになります。

  • ページサイズ:114KB
  • 同時ユーザー数:50
  • 実行時間:60秒

結果(成功したリクエスト/秒)

  • C3D:19,722.58
  • C2:13,043.27
  • N2:7,861.23

I/Oが改善されたC3D VMは、他のマシンよりもはるかに多くのコンテンツを高速配信しました。C2マシンと比較しても51.2%多くキャッシュされたページを配信できることがわかりました。

キャッシュされたページリクエストの速度テストの結果
キャッシュされたページリクエストの速度テストの結果

基本的な処理能力

アップロードした画像のサイズを変更し、異なるサイズのコピーを作成することは、WordPressサイトで一般的に行われる処理です。ウェブページの配信以外のVMの処理をテストするため、画像処理も確認することにしました。

PHPのImageMagickを使用して、35MBのJPEG画像を約29KB(7,362 x 4,702ピクセルから640 x 408ピクセル)に縮小します(resizeImage()関数とBesselフィルターを使用)。

その結果、各仮想マシンの平均処理時間は以下のようになりました。

  • C3D:1.484秒
  • C2:2.090秒
  • N2:2.305秒

画像のリサイズは、すべてのサイトで比較的に高速に処理されましたが、C3DマシンはC2マシンよりも30%ほど高速でした。

画像処理の速度テストの結果
画像処理の速度テストの結果

利用中のデータセンターでまだC3Dがサポートされていない場合

C3Dマシンは、WordPressサイトに確実にパフォーマンスの利点をもたらします。特にキャッシュできないコンテンツが多いサイトの場合は、C3Dマシンが利用可能なデータセンターに移行する価値があるかどうか、一度検討することをお勧めします。

コンテンツの多くがキャッシュ可能な場合は、Kinstaが無料で提供するエッジキャッシュCloudflare統合に含まれる機能の1つ)を使用して、世界中に高速配信することができます。

エッジキャッシュは、C3Dマシンが現在サポートされていないデータセンターでサイトをホストしている場合、最高のパフォーマンスソリューションになり得ます。

世界各地に設置されたCloudflareデータセンターに分散されたエッジキャッシュ可能なコンテンツの場合、さまざまな場所からTTFB(Time To First Byte─最初の1バイトを受信するまでの時間)を測定した結果、各サイトの応答時間はいずれのマシンでもほぼ同じ数値となりました。

エッジキャッシュを有効にした場合の各マシンのTTFB
エッジキャッシュを有効にした場合の各マシンのTTFB

ただし、エッジキャッシュを利用しても、C3Dマシンで稼働するサイトの方がキャッシュの更新が高速になるため、平均応答速度はC3Dマシンの方が若干高速になる可能性があります。

C3Dマシンの使用方法

C3Dマシンは、現在以下10箇所のGoogle Cloudデータセンターでご利用いただけます。

  1. Mumbai, India (asia-south1)
  2. Jurong West, Singapore (asia-southeast1)
  3. Sydney, Australia (australia-southeast1)
  4. St. Ghislain, Belgium (europe-west1)
  5. Frankfurt, Germany (europe-west3)
  6. Eemshaven, Netherlands (europe-west4)
  7. Council Bluffs, Iowa, USA (us-central1)
  8. Moncks Corner, South Carolina, USA (us-east1)
  9. Ashburn, Virginia, USA (us-east4)
  10. Las Vegas, Nevada, USA (us-west4)

MyKinstaで、WordPressサイトを追加する際、「データセンターの所在地」ドロップダウンメニューを展開すると、C3Dマシンが利用可能なデータセンターには「ブースト」のタグが表示されます。

「ブースト」タグのあるデータセンターではC3Dマシンが利用可能
ブースト」タグのあるデータセンターではC3Dマシンが利用可能

GoogleがまだC3Dマシンをサポートしていないデータセンターをご利用の場合は、C3Dマシンが利用可能なデータセンターに移行することも可能です。ご希望のお客様は、カスタマーサポートまでその旨をお知らせください

以下のデータセンターでは、現在コンピューティング最適化C2 VMが最速マシンとなります。

  1. Changhua County, Taiwan (asia-east1)
  2. Hong Kong (asia-east2)
  3. Tokyo, Japan (asia-northeast1)
  4. Osaka, Japan (asia-northeast2)
  5. Seoul, South Korea (asia-northeast3)
  6. Mumbai, India (asia-south1)
  7. Delhi, India (asia-south2)
  8. Jakarta, Indonesia (asia-southeast2)
  9. Sydney, Australia (australia-southeast1)
  10. Melbourne, Australia (australia-southeast2)
  11. London, United Kingdom (europe-west2)
  12. Frankfurt, Germany (europe-west3)
  13. Zurich, Switzerland (europe-west6)
  14. Montréal, Canada (northamerica-northeast1)
  15. Toronto, Canada (northamerica-northeast2)
  16. São Paulo, Brazil (southamerica-east1)
  17. Columbus, Ohio, USA (us-east5)
  18. The Dalles, Oregon, USA (us-west1)
  19. Los Angeles, California, USA (us-west2)
  20. Salt Lake City, Utah, USA (us-west3)
  21. Las Vegas, Nevada, USA (us-west4)

まとめ

独自に実施したテストを通じて、Googleの新しい高速C2D VMにより、キャッシュできないコンテンツを配信するサイトのパフォーマンスが大きく改善されることが明らかになりました。

これまでは最速であったC2マシンと比較しても、C3Dマシンの性能の高さは明らかです。

  • キャッシュされていないページリクエストで約47%パフォーマンス向上
  • キャッシュされたページリクエストで約52%改善
  • 画像のリサイズなどのタスクの処理速度が30%向上

なお、KinstaはGoogle Cloudの高速仮想マシンだけでなく、低レイテンシのプレミアムティアネットワークもすべてのプランに採用しています。

さらにデフォルトで付帯するCloudflare統合により、エッジキャッシュに加えて、超高速CDNコード圧縮Early Hints画像最適化などの機能も追加料金なしでご利用いただけます。

サイト管理を楽にする機能満載のWordPress専用マネージドホスティングをぜひ一度お試しください。

Steve Bonisteel Kinsta

Kinstaのテクニカルエディター。救急車や消防車を追いかける記者としてキャリアをスタート。1990年代後半からインターネット関連の技術情報を担当している。