新しいキャンペーンを開始すると、まずアクセス数の増加という形で反応が現れることがよくあります。しかし、しばらくしてデータを確認してみると、訪問者数は増えているのにコンバージョンが伸び悩み、サーバーのリソース使用量だけが想定以上に増加しているなんてことも。

その理由のひとつは、露出の増加によって集まるのが人間のユーザーだけではないためです。注目を集め始めたコンテンツやキャンペーンには、AIクローラやスクレイパー、監視ツールなどのボットも反応し、アクセスするようになります。

こうしたボットアクセスは、分析データ上では目立たないことも多く、その影響が常に大きいとは限りませんが、動的コンテンツやキャッシュされていないページへのリクエストが大量に発生すると、実際のユーザーによるアクセスに加えて、インフラに大きな負荷をかけることがあります。

この記事では、そのような現象が起こる理由や、キャンペーンによるトラフィック増加と成果が必ずしも一致しない理由、そして注目度の高いキャンペーンや製品ローンチ時に確認すべきポイントについて解説します。

トラフィックの急増が、そのまま成果につながるとは限らない

キャンペーンによるアクセス数の増加は、顧客の関心が高まっているサインのように思われます。しかし、トラフィックが増えたからといって、必ずしもエンゲージメントやコンバージョンの向上につながるわけではありません。これは、注目度が高まるにつれて、サイトを訪れるトラフィックの内訳も変化するためです。

分析データに表示されるアクセス数には、実際のユーザーによる訪問だけでなく、自動化されたリクエストも含まれている場合があります。その結果、トラフィックは増加しているにもかかわらず、コンバージョンの伸びが想定を下回ったり、インフラの利用量だけが予想以上に増加したりすることがあります。

こうした傾向は、ここ1年ほどでさらに顕著になっています。Kinstaが最近リリースした『AI・ボット時代におけるトラフィックの実態』レポートでは、自動化アクセスが急速に増加していることが明らかになっています。2025年末までにはウェブアクセスのおよそ31件に1件がAIボットによるものとなり、年初時点の約200件に1件から大幅に増加すると予測されています。

トラフィックそのものが問題なのではなく、そのすべてが人間によるものとは限らないという点が重要です。

キャンペーンがユーザー以外のトラフィックも呼び込む理由

キャンペーンは、想定しているユーザー以外にもさまざまな反応を引き起こします。ランディングページ、有料広告、プロモーション、SNSでの露出増加は、見込み顧客だけでなく、ウェブ上の変化を常に監視している自動システムにとっても、サイトを見つけやすくする要因になります。

ページが発見され、リンクされ、更新されるにつれて、自動化されたリクエストも増えていきます。その中には、変更を確認したりコンテンツをインデックスしたりする正規のシステムからのアクセスもあります。一方で、価格情報や稼働状況の監視、競合データの収集を目的としたツールからのアクセスも含まれます。多くの場合、こうしたシステムはユーザーの意図とは関係なく動作しますが、それでも実際のトラフィックとしてサイトに負荷を与えます。

キャンペーンへの注目度が高まるほど、こうしたシステムが人間の訪問者と同じページにアクセスする可能性も高まります。場合によっては、同じページへ繰り返し、大量にリクエストを送ることもあります。

すべての自動トラフィックが同じわけではない

自動トラフィックとひと口に言っても、その種類や目的はさまざま。すべてを同じものとして扱うと、実際に何が起きているのかを正しく把握できなくなります。一般的には、以下のようなカテゴリに分類できます。

  • 検証済みボット:検索エンジンなどの既知のクローラーで、自身を識別し、想定されたルールに従ってアクセス
  • 人間の可能性が高いトラフィック:完全には検証できないものの、人間のユーザーに近い行動パターンを示すアクセス
  • ボットの可能性が高いトラフィック:自動化された挙動が見られるものの、正体が確認されていないアクセス
  • 自動化されたシステム:監視ツールや連携サービス、スクリプトなどによる定期的・反復的なリクエスト
  • 悪意のあるトラフィック:スクレイピング、不正アクセスの試み、リソースの悪用を目的としたアクセス

こうしたトラフィックの中には、必要不可欠なものもあります。一方で、単なるノイズに過ぎないものもあれば、明確な脅威となるものも存在します。

重要なのは、これらはすべてトラフィックとして計測される一方で、必ずしもビジネス成果につながるわけではないという点です。

新たなインフラ負荷を生み出すAIクローラー

従来の自動トラフィックに加え、近年はAIクローラーが新たな負荷要因として存在感を増しています。AIクローラーは従来のボットと比べてリクエスト頻度が高く、動的コンテンツやキャッシュされていないページへアクセスする傾向があります。

この違いは、キャンペーン期間中に特に顕著になります。新規ページやアセット、コンテンツの更新が公開されると、AIクローラーはそれらのリソースに早い段階から繰り返しアクセスすることがあります。その結果、実際のユーザーによるアクセス増加に加えて、さらなるインフラ負荷が発生する可能性があります。

KinstaのAIボットアクセスに関するレポートで紹介したCloudflareのデータによると、2025年後半にはAIクローラーが同社ネットワーク上のHTMLリクエストの平均4.2%を占めており、その割合は短期間で2.4%から6.4%の間で変動しています。

単体では大きな割合に見えないかもしれませんが、他の自動トラフィックと重なることで、その影響は無視できなくなっていきます。特に、キャッシュされていないページやリソース消費の大きい処理に対するリクエストが増えると、想定以上の負荷につながる可能性があります。

トラフィックが増えても成果につながらない理由とは?

キャンペーンによってアクセス数が大きく増加しても、それに見合う成果が得られるとは限りません。トラフィックの量と質は必ずしも一致せず、自動化リクエストが増えるほど、その差は大きくなります。

KinstaのAIボットアクセスに関するレポートでは、AIクローラーによるアクセスの約80%は、検索結果の表示やユーザーからの問い合わせではなく、AIモデルの学習を目的としたものであることが明らかになっています。

その結果、訪問者数は増えているにもかかわらず、コンバージョンやエンゲージメント、収益が思うように伸びないという状況が生じます。自動トラフィックそのものがパフォーマンス低下の直接的な原因とは限りませんが、既存の課題を増幅させ、データの分析や状況判断を難しくする要因になり得ます。

分析ツールごとに見えるトラフィックは異なる

こうした状況がわかりにくい理由のひとつは、利用するツールによってトラフィックの計測方法が異なることです。

ブラウザベースの分析ツールは、ユーザーのブラウザ上で実行されるスクリプトをもとにデータを収集します。そのため、リクエストがスクリプトを実行しなければ、分析レポートに表示されないことがあります。一方、サーバーサイドの分析ツールは、ブラウザとのやり取りの有無にかかわらず、サーバーに届いたリクエストを記録します。

この違いは、自動トラフィックが増えるほど顕著になります。ボットの中にはクライアント側のスクリプトを実行しないものもあれば、人間のユーザーと同じように振る舞うものもあります。その結果、同じトラフィックの急増でも、分析ツールによって表示される数値が大きく異なることがあります。

「非人間によるアクセス」がキャンペーンにもたらす真のコスト

キャンペーン期間中に発生する自動トラフィックの影響は、分析データが複雑になるだけではありません。インフラコストやサイトのパフォーマンス、さらにはキャンペーン成果の評価にも影響を及ぼす可能性があります。

Kinstaでは、既知のボットによるアクセスはプランの使用量計算から除外されますが、大量の自動トラフィックが制御されないまま発生すると、サイトのパフォーマンスに影響を与えることがあります。実際、KinstaのAIボットアクセスに関するレポートでは、30日間で5億5,000万件ものリクエストがルールによってフィルタリングされた事例を紹介しています。

既知のボットが使用量計算から除外されていても、自動トラフィックはパフォーマンスやサーバー帯域幅、分析データの解釈に影響を与える可能性があります。そのため、キャンペーン期間中や終了後には、次のような疑問が生じることがあります。

コンバージョンが増えていないのに、帯域幅使用量が急増したのはなぜ?
トラフィックには実際の訪問者だけでなく、あらゆるリクエストが含まれます。1回の訪問で複数のリクエストが発生することもあり、自動システムによるアクセスはそれをさらに増幅させます。そのため、コンバージョンが横ばいでも帯域幅だけが増加することがあります。

キャンペーン公開時にサーバー負荷が高まったのはなぜ?
サーバーはすべてのリクエストを処理する必要があります。実際の訪問者に加えて自動トラフィックも増加すると、特にキャッシュされていないページや処理負荷の高いページでは、サーバー負荷が大きくなります。

トラフィックが多いのに、サイトが遅く感じるのはなぜ?
すべてのアクセスが同じ価値を持つわけではありませんが、消費するサーバーリソースは同じ。自動トラフィックが頻繁にアクセスしたり、キャッシュされていないコンテンツを集中的にリクエストしたりすると、実際のユーザーの表示速度に影響を与えることがあります。

ツール間で数値が一致しないのはなぜ?
ツールによって計測対象が異なります。サーバーサイドの分析ツールはリクエスト数を記録しますが、ブラウザベースの分析ツールはスクリプトの実行やフィルタリングルールに依存します。特にボットが関与するトラフィック急増時には、その差が大きくなることがあります。

トラフィックが多いのに成果につながらないのはなぜ?
すべてのアクセスが購入意欲や関心を示しているわけではありません。キャンペーンは人間の訪問者だけでなく、自動システムからのアクセスも集めます。その違いを考慮しなければ、アクセス数だけを見て誤った判断をしてしまう可能性があります。

キャンペーン開始時に事後対応だけでは不十分

インフラ側で問題を検知して対処する仕組みは重要ですが、それだけですべての問題を防げるわけではありません。悪意のあるトラフィックへの対策が講じられる前にアクセスが集中した場合、実際のユーザーはページの表示速度低下や応答遅延などの影響を受ける可能性があります。

トラフィックの急増やパフォーマンスの低下、不審なアクセスが確認された場合は、保護レベルを引き上げることをおすすめします。自動トラフィックは使用量の計算から除外されていても、サイトのパフォーマンスには影響を及ぼす可能性があるためです。

これは特にキャンペーンや製品ローンチの期間中に重要になります。重要なのは、すべてのリクエストを無条件に受け入れることではありません。価値のある訪問者のアクセスを維持しながら、サイトに負荷を与えるだけの自動トラフィックの影響を抑えることです。

Kinstaの検証ベースの保護機能は、この考え方に基づいています。すべてのアクセスを一律に許可またはブロックするのではなく、検証によって正当なユーザーと自動トラフィックを判別し、実際の訪問者がスムーズにサイトを利用できるようにします。

キャンペーンに強いサーバーに求められる条件

キャンペーンや製品ローンチに対応するサーバー環境には、少なくとも次の4つの要件が求められます。

  • トラフィック急増時でも安定性を維持すること:実際の訪問者の体験に影響が出る前に、不要なトラフィックや悪意のあるアクセスによる負荷を軽減できる必要がある。トラフィックが急増した際にボット保護を強化するのはそのため。
  • トラフィックの種類を区別すること:すべてのアクセス増加を同じ需要として扱うのではなく、トラフィックが実際のユーザーによるものなのか、ボットの可能性が高いものなのか、検証済みのボットなのか、自動システムによるものなのか、あるいは悪意のあるアクセスなのかを把握できる必要がある。
  • 重要度の低いトラフィックをフィルタリングまたは検証こと悪意のあるトラフィックを標準でブロックし、必要に応じてより強力な制御へ移行できる仕組みが求められる。たとえば、対策レベルを引き上げて自動トラフィックをブロックしたり、検証したりしたうえでアクセスを許可したりすることができる。
  • プラグイン任せにせず調査・対応できること:トラフィック制御の問題に対処するためにWordPressプラグインへ依存するのではなく、実際にトラフィックが処理されるサーバーレベルで状況を把握し、対応できる必要がある。

これこそが、キャンペーンや製品ローンチ時に目指すべき基準です。トラフィックを受け止めるだけのサーバーでは十分とは言えません。本当に重要なのは、価値のあるアクセスを維持しながら、不要なトラフィックの影響を抑えられることです。

Kinstaが不要なトラフィックからキャンペーンを守る仕組み

こうした課題へのアプローチのひとつが、パフォーマンスや分析データに影響が及ぶ前に、インフラレベルでトラフィックを制御することです。Kinstaでは、キャンペーン期間中にすべてのトラフィックを一律に扱うのではなく、その種類に応じて対応できる仕組みを提供しています。

ボット対策機能のレベルには「ボットを検証」があり、悪意のある自動トラフィックをブロックすると同時に、ボットの可能性があるトラフィックや未分類のトラフィックに対して検証を行い、正当なアクセスかどうかを確認できます。

MyKinstaボット対策のレベルを変更
MyKinstaボット対策のレベルを変更

これは、不要な負荷を抑えながら、実際の訪問者のアクセスを維持することが求められるキャンペーンや製品ローンチ時に特に重要です。

また、Kinstaでは必要に応じてAIクローラーをブロックすることもできます。AIクローラーによる頻繁なアクセスがパフォーマンスの低下や帯域幅の消費につながっている場合に有効です。

MyKinstaでAIクローラーをブロック
MyKinstaでAIクローラーをブロック

これらの設定は、キャンペーンや製品ローンチ期間中の保護を強化し、不要な負荷を抑えながら、実際の訪問者が快適にサイトを利用できる環境を維持したい場合に特に有効です。

また、より細かな制御が必要な場合は、通常のWordPressの自動処理を許可したり、カスタム例外を設定したりすることもできます。利用可能な設定や対策レベルの詳細については、ボット対策機能に関するドキュメントをご覧ください。

次のキャンペーン開始前に確認しておきたいポイント

新しいキャンペーンを開始する前や運用期間中は、次のポイントを確認しておくことをおすすめします。

  1. キャンペーン開始前に想定されるトラフィック量を確認し、人間の訪問者だけでなく、自動トラフィックにも対応できる環境を整えておく。
  2. キャンペーン開始後は、サーバー側のトラフィックデータとブラウザベースの分析データを比較し、リクエスト数と実際のユーザー行動との違いを把握する。
  3. 有料広告やランディングページの公開など、アクセス増加が見込まれる場合は、事前にボット対策機能の対策レベルを見直しておく。
  4. コンバージョン数だけでなく、パフォーマンスやリソース使用状況も継続的に監視する。
  5. キャンペーン開始前のトラフィック量、コンバージョン率、リソース使用状況を記録しておき、異常が発生した際に変化の原因を特定しやすくする。

キャンペーン成功の鍵は、価値のあるトラフィックを守ること

優れたキャンペーンは注目を集めるだけでなく、実際の訪問者がスムーズにページへアクセスし、快適に利用して、コンバージョンにつながる環境を維持することも重要です。

アクセス数の増加は、必ずしも需要の高まりを意味するとは限りません。すべてのリクエストを同じ価値を持つものとして扱うと、リソース使用量の増加やパフォーマンスの低下、分析データの解釈を難しくする原因になることがあります。

Kinstaでは、ボット対策機能によるブロック、検証、フィルタリングに加え、必要に応じてAIクローラーをブロックする機能も標準提供しています。自動化トラフィックによる不要な負荷を抑えながら、実際の訪問者への対応を維持できます。

キャンペーン期間中のトラフィックを適切に管理したい場合は、KinstaのWordPress専用マネージドクラウドサーバーをぜひお試しください。

Joel Olawanle Kinsta

Kinstaでテクニカルエディターとして働くフロントエンド開発者。オープンソースをこよなく愛する講師でもあり、JavaScriptとそのフレームワークを中心に200件以上の技術記事を執筆している。