世界のモバイルアプリ市場は急速に拡大しており、2023年末には9,390億ドルに達することが予想されています。
市場が日々大きくなる一方で、有能なモバイルアプリ開発者は一握り。何百万というソフトウェア開発者の中から、優れた人材を見つけ出すのは至難の業です。
そこで今回は、モバイルアプリ開発者を雇用するにあたってのヒントをご紹介します。開発者の給与や雇用方法、考慮すべきスキル等を把握しておきましょう。
モバイルアプリ開発者を雇用するメリット
モバイルを活用したプロジェクトには多大な労力がかかります。APIの構築、サードパーティツールの統合、ワークフローの自動化はもちろんのこと、高レベルのソフトウェアコードの維持も必要です。
そのため、モバイルアプリの構築には開発者を雇用するのが一般的です。専任の開発者を確保することで、手間と費用の削減できるだけでなく、以下のようなメリットも享受できます。
プロジェクトの推進
モバイルアプリ開発者を確保することで、チームメンバーがそれぞれの業務に専念できるように。
CRMの問題を解決したり、クラウドコンピューティングや統合などの業務を任せたりすることもできます。
専門知識を取り入れる
モバイルアプリ開発者の経験、専門知識、そしてスキルは、開発プロジェクトのライフサイクルを通じて非常に有益になります。
すべてのプロセスに関与してもらうことで、問題が発生しても迅速に解決することができます。ひいては、ボトルネックへの対処に余計な時間と費用充てる必要がなくなり、時間通りかつ予算内でよりスムーズなオペレーションを実現可能です。
競合他社に負けない競争力
テクノロジーは常に変化し、絶えず進化していくもの。
2022年には2,550億ものモバイルアプリがダウンロードされたことを考慮すれば(2016年比80%増)、消費者のアプリケーションに対する需要が高まっていることは明らかです。
アプリのダウンロードの数の多さは、アプリ業界の競争の激化を意味します。競合他社と差をつけ、競争力を維持するには、最新の変化に対応できるアプリ開発者が必要不可欠。最新の機能を実装し、ユーザーに適切で安全なアプリケーションを提供することができます。
ソフトウェア開発とエンジニアリングに関する統計データはこちらでご紹介しています。
プロジェクト完了後のメンテナンス
採用するモバイルアプリ開発者のタイプ(これについては次のセクションで詳しく)にもよりますが、ローンチ後のサポートもお願いすることができます。
これには、機能の更新や追加、バグ修正などが挙げられます。このようなメンテナンスを行なってくれる人材を確保できれば、プロジェクト完了後も安心です。
モバイルアプリ開発者の雇用形態
モバイルアプリ開発者の採用方法には、いくつかの選択肢があります。
1. 正社員
最も一般的なのは、正社員として採用すること。すでに自社に開発部門を構えている場合、モバイルアプリに特化した人材が必要になった場合には、その特定のポジションに人材を調達することで、必要な労働力を補完できます。
なお、開発プロジェクト全体が管理しやすくなる一方、その分費用がかかることは念頭におきましょう。他にも、以下のようなメリットとデメリットがあります。
正社員の長所
- エンゲージメントが高くなる
- 会社への忠誠心が高まる
- 企業文化に溶け込ませることができる
- 業務の流れやプロセスをより深く理解してくれる
- チーム全体をコントロールできる
- コミュニケーションが円滑
正社員の欠点
- 採用プロセスが長くなる
- フルタイムの給与を支払う
- 確定拠出年金などの福利厚生費がかかる
- ツール、ハードウェア、ライセンスなどの経費がかかる
- (出社を求める場合)地元採用に限られる
2. フリーランス
フリーランスのモバイルアプリ開発者を採用する手もあります。
フリーランス市場はここ数年で驚異的な成長を遂げており、2022年の米国におけるフリーランス人口はなんと7,040万人。2028年までには9,000万人に到達すると予測されています。
その分母の多さから、有能なフリーランス開発者を見つけられる可能性は十分あり、通常正社員よりも安価に雇用できます。ただし、プロジェクトの管理が難しくなる可能性もあります。フリーランス開発者の採用には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
フリーランスの長所
- 費用対効果が高い
- 柔軟性が高い
- 高度な専門知識を持つ人が多くいる
- 採用プラットフォームが充実していて有能な人材を見つけやすい
- さまざまなスキルを持つ開発者が見つかる
- ツールやハードウェアなどを購入する必要がない
- 世界中の人材を厳選できる
フリーランスの欠点
- オンボーディングプロセスが複雑になる
- プロセスや仕事スタイルなどの管理が制限される
- 忠誠心と長期的なコミットメントに欠ける
- 中小企業向け(大企業には向かない)
- (世界中から採用する場合)言語の壁が生じる可能性がある
- プロジェクトを途中放棄される可能性もある
3. アウトソーシング
IT企業に開発を委託してしまうというのも選択肢の一つ。ITアウトソーシングによって、モバイルアプリ開発に役立つ高いスキルを持ち、実績のある人材を確保できます。
ただし、外注先の会社の管理に余計な時間がかかることも考えられます。また、外部の会社に大きく依存することから、プロジェクトの舵を取られてしまう可能性も。
アウトソーシングの長所と欠点には、以下のようなものがあります。
アウトソーシングの長所
- コアとなる業務に集中できる時間が増える
- 効率性が高まる
- 費用対効果あり
- 確かなスキルを持つ有能な人材を確保できる
アウトソーシングの欠点
- プロジェクト全体を完全管理することができなくなる
- コミュニケーションがスムーズにいかない可能性が高い
- 柔軟性に欠ける
モバイルアプリ開発者の雇用にかかる費用
モバイルアプリ開発者の給与は、開発者のタイプ、場所、経験、スキルなどの要因によって様々です。
参考までに、BLSによれば、ソフトウェア開発者の平均時給は約52.50ドル(2023年12月時点で約7,600円)です。
開発者のタイプ別に詳しく見てみると、Android開発者の平均時給は54.50ドル、iOS開発者の平均時給は57ドルとなっています。
オレゴン州、カリフォルニア州、ニューヨーク州などを拠点とするAndroid開発者の収入は、平均より15%~24%高くなっており、ユタ州、ケンタッキー州、アーカンソー州の開発者の場合は平均より25%低くなります。
アプリ開発者の給与についてはこちらをご覧ください。
考慮しておきたい点は、アプリ開発にかかる時間数。アプリの開発には、時に数ヶ月かかることがあります。スコーピング、UI/UXデザイン、開発、テスト、デプロイメントなど、さまざまなフェーズがあり、場合のよっては全体の開発コストが増加します。
モバイルアプリ開発者は、プロジェクトの全行程を担当するわけではありませんが、大部分に携わることになり、技術的な問題のトラブルシューティングが必要になることもあります。
モバイルアプリ開発者を雇用する際の注意点
モバイルアプリ開発者を雇用する際は、以下のようなスキルや特徴を考慮することをお勧めします。
開発アプローチ
プロジェクトや会社に適したアプリ開発者を見つけるには、その開発アプローチを考慮することが大切です。これには、どのように仕事を割り振り、どのように複数のタスクに充てる時間を調整するかなどが含まれます。
これによって、開発者が社内のチームとうまく連携し、決められたプロセスに従うことができるかどうかを見極めることができます。また、適切な期限や中間目標を設定し、決められた期間内にプロジェクトを完了できるかどうかの指標にもなります。
技術
候補者が得意とする技術に注目することも重要です。例えば以下のように、プロジェクトに必要なスキルを持っているかどうかを確認しましょう。
- 使用してもらうプログラミング言語
- ウェブベースのアプリケーションかどうか
- 精巧なユーザーインターフェースが必要になるか
- クロスプラットフォーム開発が必要になるか
- データベースサーバーのセットアップ方法
上記のような項目を検討することで、応募者を絞り込みやすくなります。
モバイルアプリの開発経験
市場で高い競争力を持つ優れたモバイルアプリを作るなら、モバイルアプリ開発の経験を持つ人を採用したいところ。これは履歴書、ポートフォリオ、推薦状などで確認できます。
少なくとも、数年の経験を積んでいる開発者を探すことをお勧めします。新卒の開発者でも高いスキルを持っているかもしれませんが、実務経験が浅いと、問題が発生した際に対処しきれない可能性があります。
コードの著作権
これは特にフリーランス開発者を採用したり、アウトソーシングサービスを利用したりする場合に当てはまります。
中には、一部のコード著作権を求める会社や開発者もいるため要注意です。コードを会社で保有する場合は、外注のIT企業やフリーランスの開発者に依存し続ける必要がなくなります。したがって、コードは会社に帰属することを明確に伝え、同意してもらうことが重要です。
モバイルアプリ開発者を探せるおすすめサイト
開発者探しに適切なプラットフォームは、正社員、フリーランス、またはアウトソーシングの選択肢によって異なります。
以下、正社員、フリーランス、アウトソーシングそれぞれにおすすめのプラットフォームをご紹介します。
正社員
- Indeed
- Glassdoor
- SimplyHired
- Dice
フリーランス
- Toptal
- Guru
- Upwork
- Freelancer
- Fiverr
- Youteam
- Guru
- Behance
アウトソーシング
- Slingshot
- Clutch
- QBurst
- GoodFirms
- IT Firms
- 99 Firms
- Intellectsoft
あるいは、IT関連のイベントに参加するのも方法です。ITやソフトウェア業界のビジネス向けカンファレンスなどは、業界の最新情報やプロセス、ツールについて、最新の発見などの情報をB2BおよびB2Cの参加者に提供したり、セミナーを行ったりすることを目的としています。
IT関連のイベントは毎年数多く開発されています。世界的に人気の高いイベントには、以下のようなものがあります。
- Droidcon:Android開発者のためのイベントで、ロンドン、ニューヨーク、ベルリンなど、世界各地で開催。他の開発者と交流しながら、ワークショップなどに参加できる。
- Appdevcon:アムステルダムを拠点とする、Android、iOS、クロスプラットフォームのアプリ開発者向けのミートアップ。
- Code Conference:Vox Media Eventsによる技術カンファレンス。メディア、技術、ECなどの業界で活躍する人たちの集いの場となっている。
- Techspo:世界各地で開催され、ビジネスと技術に精通したプロフェッショナルが集まり、イノベーションを起こすことを目的としたイベント。
- THAT Conference:米国テキサス州とウィスコンシン州で開催。多様な技術背景や専門知識を持つ人たちが集まり、学びながらコミュニティを形成するイベント。
日本国内やお近くのカンファレンスをお探しの場合は、Googleなどの検索エンジンで「ITイベント(お住まいの地域名)」で検索すると、さまざまなイベントが見つかるはずです。FacebookやLinkedInのようなSNSプラットフォームでもイベント情報を探すことができます。
モバイルアプリ開発者を雇用するまでの流れ(6つのステップ)
採用プロセスを始める前に、まずはアプリ開発の目標と予算を明確化しておきましょう。どのようなタイプのアプリを構築したいのか、いつまでにローンチしたいのか、そして段階別にいくらまで予算を引き上げることができるのか等々。
この点をはっきりさせておくことで、余計な費用や手間をかけずにプロジェクトを遂行できる候補者やチームを見つけることができます。
注意点として、履歴書で好印象を抱いた人物が、必ずしもプロジェクトに適しているとは限りません。書類だけではわからない考慮すべき点も多数あることをお忘れなく。以下、6つのステップに分けて雇用の流れをご紹介します。
1. 知り合いや同僚に紹介を頼む
知り合いや信頼できる人に人材を紹介してもらうことで、人材探しにかかる時間を大幅に短縮することができます。
何百件という条件に満たない応募者の履歴書に目を通し、ふるいにかける必要がなくなり、信頼できる人が推薦する質の高い候補者に集中することができます。
とはいえ、いくら知人から紹介された有力な候補者でも、プロジェクトに適任であるかどうかはわかりません。プロジェクトの要件などを常に考慮し、ベストな選択を心がけましょう。
2. 採用サイトで候補者を探す
友人や仕事仲間からの紹介が得られなかった場合(あるいは紹介された候補者が適任でなかった場合)、先ほど取り上げた採用サイトを利用してみてください。
例えば、Fiverrでフリーランス開発者を探す場合は、サイトにアクセスして「mobile app developer(モバイルアプリ開発者)」と入力し検索するだけ。
検索結果に表示される候補者の中から、適任な開発者を見つけられない場合は、他のプラットフォームも覗いてみてください。
正社員雇用の場合は少し手順が異なり、IndeedやGlassdoorのようなサイトに求人情報を掲載し、応募者を募るのが一般的です。あるいは、LinkedInに企業ページを作成して、求人を掲載することも可能です。
アウトソーシングの場合は、99FirmsやSlingshotのようなプラットフォームを利用するか、IT関連のイベントに参加してみてください。
3. ポートフォリオ、お客様の声、技術について調査する
候補者を絞り込んだら、ポートフォリオや推薦状を見ていきましょう。特に過去のクライアントからの評価に注目してください。
また、開発スキルや経験を確かめるための質問もリスト化しておきましょう─プロジェクト遂行までに要した時間、アプリの完成度、プロセスが効率的であったかなど。
また、具体的なスキルがプロジェクトに必要なものと合致していているかどうかも忘れずに確認しましょう。
4. 習得スキルや提供サービスを確認する
アプリケーション開発者の中には、デザイン、プロジェクト管理など、不要なサービスを提供している人もいます(特にアウトソーシングの場合)。
もちろん、追加のサービスはあるに越したことはありませんが、費用が高くなる可能性が高いです。プロジェクトの予算などによっては、必要なスキルやサービスだけを提供してくれる開発者や会社を探すのがベストでしょう。
5. 企業文化を考慮する
個人の開発者を雇う場合は、現在の職場環境に溶け込むことができる人柄であるかどうかを判断することも重要です。アウトソーシングの場合は、その会社の社風を調査し、自社と合っているかを判断する必要があります。
例えば、外注先のIT企業は、開発者のクリエイティブな側面を尊重している社風かもしれません(もちろん自分たちもそうであれば問題はありませんが)。あるいは、1人でプロジェクトを進めることに慣れているフリーランス開発者は、チームワーク力に欠けるかもしれません。
この点は、対面またはオンラインで面接で擦り合わせることができます。価値観や目標、典型的な仕事の進め方などを直接聞いてみてください。
面接では、性格や仕事に対する姿勢、価値観、期待することが合致するかを確認します。
6. コミュニケーションを重視する
リモートで人材を雇用する場合は、コミュニケーションの取り方を工夫しなければなりません。地球の裏側にいる開発者と仕事をすることは可能ですが、時差によって業務に支障が出る可能性も否めません。
地理的に離れた場所を拠点とする開発者を雇う際には、そのような課題を考慮した上で採用する価値が本当にあるのか、また必要なコミュニケーションツールがあるのかどうかを検討しなければなりません。
例えば、日本の会社で東欧在住のフリーランス開発者を採用した場合、8時間の時差が生じます。つまり、開発者が午前9時に始業する頃には、日本はすでに午後5時と、ほぼ終業時間になります。
基本的には同じ地域(少なくとも時差のない場所)にいる開発者を採用するほうが楽になります。会議や共同作業を行う場合にも、簡単に時間を調整することができます。
まとめ
モバイルアプリ開発者の雇用は簡単ではありません。
今回ご紹介したステップを参考に、プロジェクトや会社に適した開発者を見つけてみてください。
特定の技術や能力を持つ人材をお探しの場合、候補者のスキルと開発アプローチに注目することをお忘れなく。また、ポートフォリオや推薦状、クライアントからの評価などを確認し、プロジェクトに適任かどうかを見極めましょう。
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