クラウド化を話題に挙げる企業は枚挙にいとまがありません。会議でのメイントピックになることも多々あるでしょう。

しかし、なんとなく「クラウド化」という言葉を使っている方も少なくないかもしれません。日本でどれだけクラウドへの移行が進んでいるのか、そして、業界でもトップレベルのサービスを使うことでどれだけの恩恵が受けられるのかご紹介します。

日本のクラウド市場概観

日本では、各社による急速なクラウド化が進んでいます。IDC Japanの調べでは、2021年の国内パブリッククラウドサービス市場規模は、前年に比べて28.5%増となる1兆5,879億円とのこと。これだけ巨大な市場を無視することはもはや不可能です。

同社によると、今後の堅実な成長も予測されており、5年後の2026年には3兆7,586億円に到達する見込みです。ちなみにこれは、2021年と比較すると2.4倍もの成長となります。

日本のクラウド市場の成長可能性

また、MM総研が国内企業3万3,922社の情報システム担当者を対象に実施したアンケート調査によると(拡大推計)2021年度のクラウドサービスの市場規模は、パブリッククラウドとプライベートクラウドの両方を合わせたところ、実に3兆5,723億円とされています。

以下のグラフからは堅調な市場の成長が見て取れます(尚、2022年からの数値はMM総研による予測です)。興味深いことに、パブリック、プライベートともに偏りのない伸びが観察され、クラウド全体の市場規模の拡大が理解できます。

パブリッククラウド/プライベートクラウド市場規模の推移(出典:MMRI

クラウド市場におけるPaaSとIaaSの立ち位置

中でも、PaaSやIaaSの伸びが特筆に値します。どちらも設備投資という面での負担が少ないことから、導入の障壁が少ないのが特徴です。要件に応じて柔軟に採用することができる点も、企業での加速度的普及を後押しする要因となっているのかもしれません。

各用語に馴染みのない方のために簡単に説明を加えると、以下のとおりです。

  • PaaS(Platform as a Service):クラウドコンピューティングのサービスモデルの一つで、アプリケーションを開発するためのプラットフォームを提供するサービスです。
  • IaaS(Infrastructure as a Service):物理的なコンピューターやネットワーク、ストレージなどのインフラストラクチャを、クラウド上で提供するサービスとなります。

前者の例には、アプリケーションの実行環境やデータベースがあります。これを利用することで、アプリケーション等の開発に集中でき、作業効率のアップが期待できます。一方で後者では一般的に、ハードウェアやOSなどのインフラストラクチャの管理や設定をユーザーが行うことになります。

総務省の発表したデータによると、クラウドサービスを利用する企業の割合は、2018年(58.7%)から2019年(64.7%)にかけて、6%の上昇を記録しています。

クラウドサービスの利用状況等(出典:総務省「通信利用動向調査」)

利用率の中身を見てみると、一部での利用に対する社内全体での利用率が年々高まっていることもわかります。

業界別には、普及具合に違いがあるものの、金融・保険、不動産、情報通信などの分野で広く導入されています。

  • 金融・保険業界:金融・保険業界では、厳格なセキュリティ関連の要件を満たす必要があり、クラウド導入により、セキュリティ強化策を実装しながら、柔軟でスケーラブルなシステムを構築することが可能になります。
  • 不動産業界:不動産業界では、物件情報や契約書類など、大量の情報を管理する必要があります。そこでクラウドを導入することで、情報の一元管理が可能となり、業務プロセスの合理化や効率化が期待できます。
  • 情報通信業界:顧客に対して、オンプレミスでは難しいレベルでの柔軟かつスケーラブルなサービス提供が可能になります。また、新製品の開発の際にもテスト(概念実証などを含む)の効率化が実現でき、市場投入までの時間を短縮できます。

日本の企業によるクラウドの用途

また、総務省の別のデータからも興味深い示唆が得られます。例えば、以下の通りです。

クラウドがどんな用途で活用されているのか(出典:総務省「通信利用動向調査」)

このグラフは、クラウドの用途を示したものです。ファイル保管・データ共有が最も一般的な目的となっています。社内情報共有・ポータルとあわせると、情報の共有という作業に対して頻繁にクラウドが活用されていることがわかります。

  • コスト削減:物理的なサーバーやストレージを所有する必要がなくなり、コスト削減に繋がります。各クラウドサービス事業者が柔軟なプランや価格を提供しています。
  • アクセス性の向上:クラウド上のデータがいつでもどこからでもアクセス可能になります。オフィス外からでも必要なファイルを閲覧、編集でき海外出張などでも問題なく業務を継続することができ、業務効率の向上につながります。
  • 分散化との親和性:ファイル共有や編集機能を利用することで、チーム全体で同じファイルを利用でき、バージョン管理も容易になります。リモートワークが普及するにつれて、このような分散型の仕事環境に対する需要はさらに高まるはずです。Kinstaでも完全リモートワーク体制を採用しています。

クラウド利用の際には、サードパーティと企業レベルで契約を結ぶことにより、大幅なコスト削減を実現しながら共有の柔軟度を高めることも可能です。

メールを含め、どのサービスを利用するにしても、企業の大事なデータを保管できるだけのセキュリティが重要視されます。そんな状況を物語るかのように、データバックアップという用途にも堅実な需要が確認できます。

日本のクラウド市場のこれまで

総務省の調べからわかるとおり、歴史的に、日本は(米国、ドイツなどの西欧諸国に比較すると)クラウド導入に際して、認識の面で遅れを取ってきたという事実があります。

各国のクラウド導入に対する見方を比較したグラフ(出典:総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」)

興味深いことに、クラウドサービスに対して具体的な課題が判明しているわけではなく、そもそも認識自体が及んでいない、という状況が続いてきました。

日本におけるクラウドコンピューティングの導入は、他の先進国に比べて一般的に遅れていると言われています。これは、日本の企業文化やITシステムの運用方法が、クラウド導入に理想的なかたちとは少し異なるためです。

歴史的に見ると、日本の企業各社は、情報セキュリティの問題やプライバシーの懸念から、社内システムの構築を第一に考えることが多く、自社内でのITインフラ管理に注力してきました。また、日本の企業文化として、垂直的な組織構造(タテ社会とも)を取ることが多く、意思決定が遅れがちな傾向があることも、クラウド導入の遅れにつながっています。

一方、海外では、クラウドコンピューティングが普及し、ビジネスの効率化やコスト削減、スケーラビリティの向上など、多くのメリットがあることが認識され、急速に導入が促進されてきました。

とは言え、最近では、日本でもクラウドコンピューティングの導入が進んでいます。政府も、クラウドサービスの利用促進策を打ち出し、日本企業の間でも、徐々にクラウドに対する理解が深まってきています。特に、中小企業はクラウドサービスの導入に積極的であり、今後もクラウド導入が加速していくことが予想されています。

クラウド移行の留意点

パロアルトネットワークス株式会社の実施した調査によると、クラウド運用における関心事として、包括的なセキュリティの確保(53%)が最も高い注目を集めていることがわかります。

これに対する対処を明確化することで、クラウド特有の利便性や予算削減、業務効率化を進めることができるでしょう。セキュリティに力を入れたホスティングサービスを使うことで、不安を一気に解消するのが得策かもしれません。

というのも、サーバー周りの安全性確保は、一朝一夕に成し遂げられるものではなく、日々の保守管理が必要になります。

上記の懸念は必ずしも、クラウドにおけるセキュリティの質そのものを説明するものではなく、各社における意識を反映したものです。セキュリティ強化の話となると、具体的には、以下のような項目を精査する必要があります。

  • データの保護:クラウドサービスにおけるセキュリティ強化策や暗号化の有無を確認し、必要に応じてセキュリティ強化策を検討することが重要です。
  • アクセス制御:クラウドサービスを利用するユーザーのアクセス権限を適切に設定し、不正アクセスを防止する必要があります。
  • バックアップの実施:クラウド上に保存されるデータを定期的にバックアップすることで、不測の事態であってもデータを復旧できる
  • 監視と検知:クラウド上での不審な行動や攻撃を早期に検知し、素早く対応する監視システムを導入することが欠かせません。

同調査で、脆弱性を可視化することの重要性も浮き彫りになっています。社内での導入の際には、往々にして、そこから得られる効果や課題について、社内での共有(ひいては説得)が必要になるものです。

その際には、安心感を確保するための手段として情報の見える化が重要な意味を持つはずです。

また、すでに業界で安定した実績と知名度を誇る第三者サービスを利用するのも効果的です。社内でのリソースが十分でない場合には特に、導入後のメンテナンスに伴う手間も考え、保守管理まで丸ごと任せられるソリューションを選択することをおすすめします。

Kinstaは、あらゆるビジネスのクラウドホスティングにまつわるご要望にお応えしています。WordPressサイトのホスティングはマネージドでご利用いただけ、その他、あらゆる技術、言語、フレームワークを利用したアプリケーションデータベースのホスティングにも対応しています。

KinstaではCloudflare統合を標準で実装することで、すべてのお客様に、通常であれば膨大な時間や費用の投資が必要となるレベルのセキュリティや性能をお届けしています。

クラウド化とKinsta x Cloudflare

クラウド市場を牽引するCloudflare(クラウドフレア・ジャパン株式会社)の執行役員社長である佐藤知成氏にお話を伺いました。

Q. 現在の日本のクラウド市場をどのように見ていますか?

「オンプレミスからクラウドへのシフトは、日本においてもすでに定着しており、この流れは基本的には変わらないと思います。AWS中心のクラウドから、GCPやMicrosoft Microsoft Azureなどパブリッククラウドも多様化しており、またアプリケーション分野におけるSaaS型のソリューションも拡大してきており、各企業は、業務上必要な機能をクラウド型のソリューションから選択する方向性は確立されてきていると思います。

ただ、企業によっては、多種多様のクラウドを活用することへの技術的な課題や、複数の基盤をサポートする体制の問題などが発生しています。

さらに、異なるアーキテクチャー、異なるコンセプトのクラウドが混在することにより、それぞれのクラウドを連携させるための、ネットワーク構成の在り方や、マルチクラウドに対して、同じレベルの高度なセキュリティーを導入するなどの課題も発生しています」

Q. 日本のクラウドホスティング市場の将来はどうなると予想していますか?

「さらに、日本政府が、中央官庁におけるシステムの導入をクラウドを前提として検討する方針を打ち出したことで、民間企業におけるシステムの方向性も同様にクラウド型が定着してくると思います。

ただし、何十年にも及んで開発されてきたアプリケーションのすべてをクラウドにシフトするには、中長期におけるシステムの方向性や経営業の必要不可欠となる機能の整理、さらには、将来にわたって急速に変化するニーズに耐えられるシステム基盤としての柔軟性が求められています。

各企業は、どの部分を自社特有の仕組みとして、場合によってはオンプレミス環境として存続させ、その部分をクラウドにどのように移行させるのか、について頭を悩ませている事と思います」

Cloudflareを利用するメリット

クラウドホスティングのKinstaでは、標準でCloudflare統合とそれに伴う数々の機能や性能をご提供しています。

クラウド化を推し進めるあらゆる企業にとって、Kinstaのホスティングサービス、そして、Cloudflareのソリューションが有用です。続いては、具体的に、Cloudflareのどのような点が事業の成長を後押しするのかご紹介します。

Q. 日本のユーザーにとって特に有益なCloudflareの強みは何だと思いますか?

「Cloudflareの強みは、世界で最もインターネットを知り尽くしている点にあります。すでに世界100ヵ国以上、280都市に、PoP(Point Of Presence)を設置しており、世界のどこにおいても同じソリューションを同じ高度な品質で提供する事が出来るようになっています。

オンプレミス、パブリッククラウド、そしてSaaS型のアプリケーションが混在する中、各企業におけるサーバーセキュリティーのあるべき姿をデザインする作業も大変重要になっています。クラウドフレアのZero Trustソリューションは、オンプレミス、クラウドに関わらず、お客様のシステム環境とは独立しており、インターネットに密に配置されたクラウドフレア自身が運営するデータセンターに機能が展開されていますので、お客様のシステム資源を使うことなく、高速かつ安全な環境を提供することができます。

また、他社が提供するセキュリティ機能の多くは、守るべきシステムの直前でサイバーの脅威を遮断するのに対して、クラウドフレアは、サイバーの脅威が発生した地点の最も近くにあるPoPが、サイバーの脅威を遮断することにより、お客様のシステム環境には、サイバーの脅威を近づけることすらしない状況を作り上げることができます」

Q. 2024年にクラウドホスティングの活用方法について、企業が知っておくべきことは何でしょうか?

「ホスティングやクラウドホスティングは、ここ数年で急速に進化しており、多くのアプリケーションがサーバーレスプラットフォームと互換性のある言語で書かれたり書き直されたりしています。

オブジェクトストレージやデータベースなど、必要なコンポーネントはすべてクラウドプラットフォーム内のネイティブサービスで実行され、クラウド環境で実行されるネイティブアプリケーションに大きくシフトしています。

もし企業がクラウド移行に取り組むのであれば、仮想マシンをある環境から別の環境に移すのではなく、より現代的なアプリケーションの提供方法に適応することに注力すべきです。これは一見大変な作業に見えますが、将来的にはより多くの俊敏性を提供し、明らかにより優れたユーザー体験をもたらします。

例えばCloudflareは、企業が自社のアプリケーションをEdge Platformにネイティブに展開することで、よりスマートな方法で問題を解決することを可能にしてきました」

まとめ

現代社会で事業運営をする上で、もはやクラウド化という言葉は避けて通れません。それどころか、クラウドに対応していることは大前提として、その後の効率的な事業展開が議論されるケースの方が多くなることが容易に予想されます。

とはいえ、クラウド化に伴う手間が完全に解消されたとは言えず、対応に頭を悩ませることも少なくないはずです。一口にクラウドサービスと言ってもその中身は多岐にわたり、PaaSやIaaSの成長には特に目を見張るものがあります。

これからクラウド化に力を入れる場合には、未来まで見据えて計画を練ることが重要です。一般的にクラウドの性質上、スケーリングや事業展開との相性は高いとされていますが、サードパーティを利用するのであれば、各種要件や上限についての理解を深めておくのが得策です。

また、事業の安定には安心のセキュリティが欠かせません。日常的な保守から高度なサイバー攻撃に対する守りの確保まで、すべてを自社スタッフでまかなうのは簡単ではないでしょう。だからこそ、データを保管、共有、配信する場所としてだけでなく、実務の簡素化に貢献するクラウド環境を目指すことが重要です。

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Shunya Ohira