数あるデータベースの中でも、MongoDBとMySQLは頻繁に比較されています。

MySQLのようなリレーショナルデータベースのデータベース管理システムでは、要件の変更に合わせてデータの管理・保存を行う際に、ある特定の問題が生じることがあります。開発途中に発生する問題を避けるべく、データベース選びに慎重になっている企業も多いはず。

また、金融アプリケーションの開発者も、現在使用しているMySQLを使い続けるか、それともリスクを承知でMongoDBに切り替えるかどうかで悩んでいる方もいるようです。

そこで、参考にしていただきたいのが今回の記事。MongoDBとMySQLを徹底的に比較して、この2つのデータベースの相違点、メリットとデメリット、そして用途別の適正度をご紹介します。あなたのプロジェクトに適したデータベースがどちらなのか、きっと分かるはずです。

それでは、始めましょう!

MongoDBとMySQLについて動画での解説もご用意しています。

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MongoDBとMySQLの概要

2つのデータベースを比較する前に、MongoDBとMySQLの特徴をそれぞれ簡単にご説明します。

MongoDBとは

 The MongoDB website with the words
MongoDB

MongoDBは、大容量データの保存に強さを発揮する無料オープンソース非リレーショナルデータベースシステムです。12年前の2009年に10gen社(現 MongoDB Inc.)によって、Server Side Public License(SSPL)でリリースされました。C++、PythonJavaScriptで記述されたNoSQLデータベースで、Windows、macOS、Linuxに対応。言語はPHP、Java、Ruby、Node.jsなどをサポートしています。

MongoDBが従来のデータベースシステムと異なる点は、そのデータの保存方法にあります。

MongoDBは、データを行と列で保存するのではなく、複数のJSONに似たドキュメントやコレクションでデータを表示する、ドキュメント指向データベースです。このドキュメントには、ネストされたドキュメントや配列などのタイプのキーと値のペアを使用し、ドキュメントごとに異なる構造をとることが可能です。

また、データ構造やスキーマを柔軟に変更できるだけでなく、セキュリティ、信頼性、効率性にも優れています。MongoDBは、高速かつストレージの要件も満たすデータベースだと言えるでしょう。

MongoDBの機能

では、MongoDBの主な機能をみてみましょう。

  • レプリケーション─レプリケーション(レプリカセット)を使ってデータのコピーを複数作成し、さまざまなサーバーに配置することが可能。この機能はデータのバックアップや災害対策にも有用で、サーバーに問題が発生しても、他のサーバーに保存されているコピーからいつでもデータを取り出すことができる。
  • インデックスの作成─ドキュメントのフィールドには、プライマリまたはセカンダリとしてインデックスを付けることができる。これにより、データベース内の検索パフォーマンスが向上し、ドキュメント全体ではなくインデックスに対して検索を実行できるようになり、検索速度が上がる。
  • アドホッククエリ─アドホッククエリとは、クエリ実行時に様々なリターンを出す一時的なコマンドのこと。MongoDBではレンジクエリ、正規表現(Regex)、フィールド検索が使用できる。また、クエリには定義したJavaScriptの関数も含まれ、特定のドキュメントフィールドを返すことができる。MongoDB Query Language(MQL)でアドホッククエリを即時更新することができ、企業のリアルタイム分析に便利。
  • シャーディング─シャーディングとは、大規模なデータセットを複数のデータコレクションに分散させる手法で、水平方向へのスケーリングが可能。シャードキー(単一または複数のレプリカを持つマスターキー)を選択して、コレクション内のデータ分散を決定し、シャード間でデータを異なる範囲に分割することができる。各シャードは個別のデータベースとして機能し、複数のシャードを用いて1つのデータベースを形成することで負荷分散につながるため、複雑なクエリを実行することが可能に。
  • ロードバランシング─同時並行性の管理が容易で、複数のクライアントからのリクエストを同時に様々なサーバーで処理することが可能。各サーバーの負荷を軽減し、一定のデータの稼働率と整合性を確保することで、拡張性の高いアプリケーションを実現。
  • ファイルストレージ─ファイルシステムGridFS(グリッドファイルシステム)が利用可能。GridFSには、データレプリケーションとロードバランシング機能があり、複数のコンピュータでファイルを保存することができる。また、GridFSには、MongoDBのドライバが含まれており、Nginxやlighttpd のプラグイン、または mongofilesユーティリティでアクセス可能。また、MongoDBでは、開発者によるファイルやコンテンツの加工も可能。
  • アグリゲーション─SQL句- GROUP BYの場合と似たような結果を得ることができる。集計の実行方法は以下の3種類。
    1. 集約パイプライン:ほとんどの場合はこの方法が最適。
    2. 単一目的の集約:1つのコレクションからドキュメントを集約。
    3. mapReduce():集計結果を得るバッチ処理に使用。map関数はデータをキーでグループ化し、reduce関数が処理を実行。
  • cappedコレクション─データの挿入順を処理するコレクションタイプであるcappedコレクションをサポート。

MongoDBの用途

MongoDBは、世界中の何千もの企業でデータストレージ、またはアプリケーションのデータベースサービスとして使用されています。その用途はさまざまです。

  • WordPressなどのコンテンツ管理システムでのコンテンツの入力、保存、編集
  • ウェブアプリケーションやモバイルアプリケーションのデータストレージ
  • SNS
  • 地理空間データや位置情報データの管理
  • ECサイトの商品カタログやアセットの管理
  • クラウド型システム
  • メインフレームからのワークロード移行
  • 高速リアルタイム分析
  • スケーラブルで高性能なゲームソフト
  • 決済システム構造の現代化とレガシーシステムのモダナイゼーション
  • データストレージ需要の高まりに応じたシステム(ロギングやキャッシュの高速化、設計の変更など)
  • ウェブ開発用のMEANスタック(頭文字のMはMongoDBから、その他のアルファベットは順にExpressJS、AngularJS、NodeJS)

Twitter、IBM、Oracle、Zendesk、Citrix、Sony、Intercom、HTCなど、さまざまな企業がMongoDBを使用しています。中でも、広く知られている使用事例をいくつかみてみましょう。

  • Aadhaar(アドハー)─インドの国民IDシステムで、世界最大の生体認証データベース。12億人以上の生体情報および人口統計データの保存にMongoDBが使用されている。
  • eBay─B2CとC2Cとして機能するアメリカのEC企業。サイト内検索のサジェスト機能、クラウド管理、メタデータ保存など、さまざまな用途でMongoDBを使用している。
  • Shutterfly─人気の写真共有プラットフォーム。MongoDBを使って60億枚以上の画像を保存・管理し、1秒に10万件のトランザクション処理を行っている。

MySQLとは

The MySQL website, showing a racecar and the words
MySQL

MySQLは、オープンソースで無料のリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)です。MySQLは、データを表形式に整理して保存し、データ型を関連付けた行と列を持っています。GNU General Public License(GPL)を採用しており、GitHubにリポジトリがあります。

このデータベースは、元々1995年にスウェーデン人のDavid Axmark、フィンランド人のMichael WideniusとAllan Larssonが創業したMySQL ABによって構築されました。その後、Sun Microsystems社がMySQL ABを買収しましたが、2010年にはSun Microsystems社がOracle社に買収されています。

MySQLという名前は、2つの用語が組み合わされてできています。

  • My: Michael Widenius氏の娘の名前
  • SQL: Structural Query Languageの略

SQLはドメイン固有のプログラミング言語で、データに対して作成、抽出、削除、変更などの関数を実行して、RDBMSのデータを管理します。

MySQLは、Windows、macOS、Linux、FreeBSD、OpenBSD、Solarisなど、ほとんどのOSで利用可能で、デバイスのストレージシステムにRDBMSを実装、ネットワークアクセス、ユーザー管理、データベース整合性テストのサポート、バックアップの作成などを行うことができます。C++とCで記述され、字句解析器を採用。SQLパーサーはyaccを使用しています。

MySQLは、操作しやすいインターフェースとその使用感で特に好評を得ています。性能面でも高速で安定性が高く、マルチスレッドとマルチユーザー環境のデータベースサーバーが特徴です。

オープンソースのCommunity Server版と、プロプライエタリのEnterprise Server版があり、後者はコードベースに変更を加えることなく、多くのサーバープラグインをインストールすることができます。

MySQLの機能

MySQLの主な機能もみてみましょう。

  • レプリケーションとクラスタリング─さまざまな同期タイプで、アプリケーションの拡張とパフォーマンスの向上に役立つレプリケーションとクラスタリングが可能。また、あるSQLサーバーから他のレプリカSQLサーバーにデータをコピーすることも。複数のデータベースにデータをバックアップすることで、データの損失を防ぐことができる。
  • パスワードの保護─データベースへのアクセス時に、ホスト名検証用のパスワードの暗号化が容易。これによってデータベースのセキュリティが強化され、許可されたユーザーのみがアクセスできるように。最新版のMySQL 8.0にはデュアルパスワードの機能があり、システムのダウンを懸念することなく簡単に開発者がパスワード認証情報を変更することができる。
  • パフォーマンススキーマ─アプリケーションのパフォーマンス、リソースの使用状況、およびサーバーイベントを監視。リソースの適切な割り当て、速度低下の検出時にアプリケーションのパフォーマンスを向上、不審なサーバーイベントの発生時に必要な対処を講じることが可能。
  • オンラインスキーマ─複数のオンラインスキーマに対応。データストレージの要件を満たし、柔軟性が増す。
  • 高可用性─MySQLがサポートするアプリケーションは障害に強く、問題発生時にも容易に対処可能。その結果、ウェブ、モバイル問わず、あらゆるタイプのアプリケーションで高いデータ可用性を実現。
  • トランザクションサポート─マルチレベル・分散トランザクション、無制限の行レベル・ブロッキング、ACID準拠のトランザクション対応。トランザクション処理には、ACID特性と呼ばれる4つの特性があり、Atomicity(原子性)、Consistency(一貫性)、Isolation(独立性)、Durability(永続性)の頭文字からきている。また、マルチバージョン同時実行制御や外部キー実装などの制約により、データベースのスナップショットや整合性を維持することが可能。
  • GUIのサポート─MySQLには数多くのGUIツールが用意されており、コマンドラインツールの作成、設計、管理の作業を簡素化して、時間を節約できる。データベース設計者、管理者、開発者は、GUIツールで作業を効率化できる。
  • 制限事項─水平方向のスケーリングが容易でない。何百万もの読み取りまたは書き込み処理がある場合にはデータベースのパフォーマンスに影響が出るほか、リレーショナルデータベースに共通するその他の制限も。

MySQLの使用方法

MySQLには20年以上の歴史があり、大量のデータを保存するデータベースとして世界中の企業に利用されてきました。次に、使用事例やMySQLを使用する代表的な企業をご紹介します。

  • コンテンツ管理システムとブログ
  • 商品点数の多いECアプリケーション
  • ロギングアプリケーション
  • データウェアハウス
  • ハイエンドのデータセキュリティが求められるアプリケーション(FacebookやInstagramなどのSNS)
  • InnoDB、MyISAM、Memory、CSV、Merge、Archive、Blackhole、Federatedなどのストレージエンジン
  • LAMPスタック(MySQLを構成要素の1つとして使用するウェブ開発用の技術スタックで、Linux、Apache、MySQL、PHP/Python/Perlの頭文字をとったもの)
  • Microsoft Azure、Amazon EC2、Oracle Cloudなどのクラウドプラットフォーム

Oracle Cloudは、MySQLをサービスの一部として提供しており、ユーザーはMySQLサーバーをインストールし、クラウド上に展開することができます。そのため、ローカルサーバーへのインストールが不要です。

MySQLを使用している有名な企業には、Airbnb、NASA、Sony、YouTube、Netflix、Pinterest、Drupal、Joomla!などがあります。以下が代表的な使用事例です。

  • Wikipedia─世界中に知識を広める無料百科事典。増加するユーザー数に対応できる高いスケーラビリティが必要。MySQLはコンテンツの更新、増加を続けるコンテンツや訪問者への対応、何千もの項目の追加や編集に貢献している。
  • Twitter─ツイートのストレージを一時的なシャーディングからT-birdを使用し、より分散した方法に移行。T-birdは、MySQLを採用するGizzardで構築されている。

一時的なシャーディングは費用が嵩み、ツイートを保存するためにさらに多くのマシンが必要。さらには、ロードバランシングの問題も発生し、データベースの管理者の悩みの種は尽きませんでした。T-birdをサポートするMySQLに移行してからは、この問題が解決されました。

以上がMongoDBとMySQLについての概要です。それでは次に、MongoDBとMySQLを比較して、あなたのアプリケーションにどちらが適しているかをみていきましょう。

MongoDBとMySQLの比較

ここからは、様々な要素に注目して、MongoDBとMySQLを比較してみましょう。

アーキテクチャ

A side-by-side graph of MongoDB and MySQL, comparing the architecture of each with flowcharts for server, query client, and backup client
MongoDBとMySQLのアーキテクチャ

アーキテクチャとは、システムの基盤を形成し、すべての特徴や機能を導入するフレームワークを確立するものです。したがって、MongoDBとMySQLのそれぞれのアーキテクチャを理解した上で両者を比較すれば、自分のアプリケーションにとって、どちらがより良い選択肢になるかを判断することができます。

MongoDB

MongoDBは、設計思想としてNexusのアーキテクチャを採用しており、リレーショナルデータベースの機能性を兼ね備えています。高いスケーラビリティ、グローバルな可用性、柔軟なスキーマで、最新アプリケーションにも有用。設計の変更も簡単に行えます。

また、AWS、Azure、Kubernetesなどの主要な開発環境、JavaScript、Pythonなどのプログラミング言語、Djangoなどのフレームワークに対応した公式ドライバが用意されているのもMongoDBならではの特徴と言えます。

MySQL

一方、MySQLは、クライアント/サーバアーキテクチャを採用し、ストレージを最適化することで高いパフォーマンスとマルチスレッドを実現します。また、公式ドキュメントでは、SQLの測定値を微調整せずに設定のパフォーマンスを最適化するテクニックが紹介されています。

勝者: 両者互角

データ保存形式

A side-by-side comparison of MongoDB and MySQL data storage format, showing MongoDB's in a vertical bulleted list and MySQL's in a 3x2 table
MongoDBとMySQLのデータ保存形式

MongoDB

MongoDBのデータ保存形式は以下の通り。

{
Account Number: 1234567890
First Name: "Jon"
Last Name: "Doe"
Branch Name: "Los Angeles"
}

JSONのような形式で、データの変更を簡単に行うことができるため、データの追加、削除、変更に手間がかかりません。上記の例は、データベースに決まったスキーマがなく、柔軟性の高さがうかがえます。

MySQL

一方、MySQLのデータ保存形式は以下の通りです。

アカウント番号 名(ファーストネーム) 姓(ラストネーム) 支店名
12345678901 Jon Doe ロサンゼルス
12345678902 Jane Doe シアトル

この通り、MySQLでは行と列の形式でデータが整理されます。MongoDBと比べるとかなり整然とした構造です。行ごとに列があり、列ごとに行がある設計でないとスキーマに違反してしまうため、行や列の編集は容易ではなく、データの変更に時間がかかります。対照的に、MongoDBではデータの修正が容易です。

また、MongoDBとMySQLでは、用語に若干の違いがあります。

MongoDB MySQL
コレクション テーブル
ドキュメント 行数
フィールド カラム
リンクと埋め込み 結合
シャーディング パーティション
レピセット レプリケーション

勝者: MongoDB(データの変更が容易)

スキーマの柔軟性

データベースは、さまざまな用途に基づいて、データベースの設計やスキーマを柔軟に変更できるものが理想的です。柔軟性に欠けているデータベースは、要件に少しでも変更が生じた際に非常に厄介になります。

次に、スキーマの柔軟性を比較してみましょう。

MongoDB

MySQLは柔軟なスキーマを持っており、特にビッグデータアプリケーションの場合は、要件に応じて柔軟に設計を変更することが可能です。異なるタイプのデータを簡単に組み合わせて保存することができ、データの変更中にシステムがダウンすることもありません。また、非リレーショナルデータベースシステムであるため、関係性のない複数のドキュメントをコレクションに格納することができます(ドキュメントはスキーマを任意に設定できるJSONライクな形式)。

ただし、トランザクションや結合の処理がないため、アプリケーションのデータアクセス方法に応じて、頻繁にスキーマを最適化する必要があります。

MySQL

MySQLでは、行や列の形でデータを格納する前に、カラムとテーブルを明確に定義しなければなりません。すべてのフィールドが行と列で構成されているため、MongoDBのような柔軟なデータ保存は行えません。その結果、デプロイメントや開発作業も遅くなります。

ですが、アプリケーションのスキーマが決まっている場合には、MySQLを選ぶのが最適です。何度も設計を変更したり、無駄な時間を費やすことなく、データの整合性を保つことができます。用途が変化する場合には、MongoDBを使用するのが得策です。

勝者: MongoDB

使用するクエリ言語

データベースで使えるクエリ言語を把握しておくことも大切です。事前に知っておけば、インストール後に混乱したりすることがありません。

MongoDB

MongoDBは、SQLの代わりにMongoDB Query Language(MQL)を使用しています。MQLは表現方法に幅があり、データの作成、読み込み、更新、削除が可能なCRUD関数をサポートしています。また、データ集計、地理空間クエリ、テキスト検索なども容易に行えます。

データを要求する場合、期待される結果と一致するプロパティを持つドキュメントを定義しなければなりません。つまり、db.collection.find()のようにデータベースからデータを取得するためのクエリ操作が必要になります。通常、MongoDBは、JSONとリンクした演算子を使ってクエリを実行します。また、ブール演算子ORやANDのクエリも利用可能です。

MongoDBでは、結合は一切使用されておらず、他の同等な演算子を使用しています。

MySQL

MySQLは、他のリレーショナルデータベースと同様にSQLを使用しており、異なるテーブルからデータを取り込むことができる結合機能があります。これが、MySQLのようなリレーショナルデータベースを 「リレーショナル」たらしめる要素です。結合機能を使えば、クエリで複数のテーブルからデータをリンクさせることが可能になります。

SQLには以下のような言語が使用されています。

  • テーブルを作成、削除、変更するデータ定義言語(DDL)
  • コミットやロールバックなどの操作を行うデータトランザクション言語(DTL)
  • 行の挿入、削除、更新などのオプションを持つデータ操作言語(DML)
  • REVOKE、GRANTコマンドを含むデータ制御言語(DCL)

勝者: 両者互角

パフォーマンスと速度

A side-by-side comparison of MongoDB and MySQL's performance and speed by showing the clock and increasing graph with an increasing arrow on both sides
MongoDBとMySQLのパフォーマンスと速度

データベース選びにおいて、パフォーマンスと速度は見逃せない要素。どのような用途でどのようなメリットが期待できるかを事前に知っておきましょう。また、開発者や管理者のような日々多忙な職種であれば、時間を1秒も無駄にしたく無いはず。

生産性を高めるため、優れたパフォーマンスが期待できるデータベースを選びましょう。続けて、2つのデータベースのパフォーマンスと速度を比較していきます。

そうは言っても、MongoDBとMySQLはデータ保存のアプローチが異なるため、厳密に評価することはできません。SQLデータベースの場合は標準的なベンチマークで比較することができますが、非リレーショナルデータベースで同じことをするのは難しいところです。

今回は、MongoDBとMySQLを共通の操作に基づいて比較していき、大量のデータを扱う際のパフォーマンスをみてみましょう。

MongoDB

MongoDBは大量の非構造化データを保存し、ドキュメント指向のストレージアプローチをとっているため、MySQLよりも比較的高速に動作します。つまり、MongoDBは、1つのエンティティに対して1つのドキュメントでデータを保存し、データの読み取りや書き込みを高速化してくれます。これには、レプリケーションなどの機能が大きく貢献しています。また、JSONライクなオブジェクトストレージを搭載しているおかげで、オブジェクトを扱う際にもパフォーマンスが向上します。

さらに、MongoDBは特定のベンダーに依存することがないため、満足できないサービスがあれば、代替サービスを用いてパフォーマンスを向上させるなど、自由度が高いのも特徴です。

MySQL

一方、MySQLは膨大な量のデータを扱う際に、パフォーマンスが低下する場合があります。これは、テーブルを正規化して保存しているのが原因です。データを変更・抽出する場合、多くのテーブルを経由してデータの書き込みと読み込みを行う必要があるため、サーバーの負荷が高まり、結果としてパフォーマンスに影響を及ぼします。ただし、トランザクション処理に関しては、MySQLが優勢です。

データベースにデータを追加するには、明確なデータ構造が必要になるため、非構造化データの保存には適していません。また、複雑なデータを扱う場合にも、適切なスキーマの設計が困難になる場合があります。

勝者:  MongoDB

セキュリティ

Comparing Security for MongoDB and MySQL, by showing two punching hands opposite to each other and a security sign on the upper middle
MongoDBとMySQLのセキュリティ

近年、世界中でサイバー攻撃が増加しています。今回のMongoDBとMySQLの比較において、当然セキュリティも重要な基準の1つに挙げられます。どちらのデータベースを使用する方が安全性を確保できるかも押さえておきましょう。

MongoDB

MongoDBはロールベースアクセス制御を採用しており、ユーザーやデバイスに対して柔軟な権限を設定できます。すべてのユーザーが役割を持ち、それに基づいてデータへのアクセスや操作など特定の権限を付与します(例えば、シニアレベルの社員が高い権限を持てるように高いクリアランスレベルを与える等)。

これは、不正なユーザーや攻撃によるデータベースの悪用を防ぐ1つのセキュリティ強化策として機能します。また、TLS(トランスポート・レイヤー・セキュリティ)SSL(セキュア・ソケッツ・レイヤー)のセキュリティプロトコルも促進し、高い安全性を確保することが可能です。さらに、マスターキーで暗号化されたドキュメントをデータコレクションに書き込むことで、保存状態のデータも暗号化することができます。

MySQL

MySQLでは、権限ベースのアクセス制御が可能です。そして、MongoDBのような暗号化機能もあり、認可、認証、監査などの認証モデルも同様に搭載されています。ユーザーに役割や権限を付与することで、データセットや操作に対してのアクセスを制御することが可能です。また、TLSやSSLを適用すれば、さらに安全性を確保することも可能です。

最新バージョンでは、デュアルパスワード機能も登場し、データアクセスの安全性をより一層高めています。

セキュリティに関しては、両者とも互角に思えますが、優れたデータの整合性と信頼性を持つ強固なアーキテクチャとスキーマを考慮すれば、MySQLの方が優勢と言えます。

勝者: MySQL(柔軟性に欠けることが悪いこととは限らない)

スケーラビリティ

A side-by-side comparison of MongoDB and MySQL's scalability, by showing three persons working happily under MongoDB and a single person working on different screens under MySQL
MongoDBとMySQLのスケーラビリティ

ユーザーベースやトラフィックの増加によってアプリケーションが成長すれば、増加する需要に対応できる高いスケーラビリティが求められます。アプリケーションにスケーラビリティがなければ、クラッシュ、遅延、システムダウンなど、アプリケーションのユーザー体験に大きな影響を与えかねません。そのようなシステムは決して好ましくなく、今すぐにではなくても、他のデータベースへの切り替えを検討するべきです。

アプリケーションのスケーラビリティは重要な要素で、データベースの選択も関係してきます。次に、MongoDBとMySQLをスケーラビリティの観点から比較してみましょう。

MongoDB

MongoDBは優れたスケーラビリティを持っています。これが、成長中のウェブサイト、CMS、ECストアの多くで使用されている最大の理由の1つです。シャーディングと呼ばれる手法を使って、水平方向にスケーリングすることができます。シャードとは、データベースの一部で複数のコレクションやマシンにデータを分散させる技術です。より高いスループットの運用や大規模なデータセットを扱うシステムの導入が可能になります。

高いスケーラビリティを持ち、要件に応じてデータベースにサーバーを追加していくことで、複数のサーバークラスタを簡単に作成することができます。データセットのレプリカを、高い書き込み・読み取り性能を持つシャード型クラスタに格納し、あらゆる規模のアプリケーションをサポートすることが可能です。また、サイバー攻撃や災害などの緊急事態でも、データのバックアップを確保してくれるため、データの損失を防ぐことができます。

負荷やデータセットを複数サーバーに分散することで、高価で高性能なハードウェアが必要なサーバーで全データを処理するのと比べれば、言うまでもなく低予算で運営することができます。シャーディング機能のもう1つのメリットは、ディスク容量を最大化し、動的なロードバランシングを確保できる点です。

さらに、MongoDBには、レンジ型のシャーディングやデータパーティショニング、クエリの透過的なルーティング、データ量の自動的な分散などの機能もあります。

MySQL

一方、MySQLはスケーラビリティに制限があります。アプリケーションの拡張には、リードレプリカの作成、または垂直スケーリングの2つの方法があります。データレプリケーションやクラスタリングによる垂直スケーリングが可能で、さまざまな同期タイプによってアプリケーションのスケーラビリティとパフォーマンスの向上が可能です。

注目すべき違いが、MySQLが垂直スケーリングを行うのに対し、MongoDBは柔軟性の高い水平スケーリングを行う点です。垂直スケーリングは、1台のサーバーだけでCPUやRAMのスペックを上げて、上限を決めて負荷を高めることができる仕組みです。

レプリケーションを行いたい場合には、リードレプリケーションを使えば簡単です。追加できるレプリカの総数には制限がありますが、データベースの読み取り専用のコピーを作成し、別のサーバーに追加することができます。しかし、この制限によって、データベースを定期的に読み書きする(あるいは書き込みが多い)アプリケーションの場合は、問題が発生する可能性があります。

MySQLにはマルチメインレプリケーションが導入されていますが、MongoDBの機能に比べるとその実装は限定的です。書き込みスケールを増やすことはできますが、別々のアプリのみで、それぞれが様々なメインに書き込み、拡張性を確保するといった方法になります。

また、MySQLにはシャーディングの標準的な実装がありません。MySQL Fabric(シャーディングフレームワーク)と自動シャーディングの2つの機能がありますが、多くの問題や制限があり、一般的に使用されていません。Facebookのような企業は、独自のシャーディングフレームワークを採用しています。

シャーディングをスケーラビリティのために活用する場合は、シャードキーを間違えるとシステムの柔軟性が失われる可能性があるため、必ず正しいキーを選択してください。例えば、シャードキーを変更すると、アプリケーションやノードのトランザクション、ロケーションに影響を及ぼす可能性があります。また、シャードの変更が不完全な場合は、データの整合性などの問題が表面化する恐れもあります。

このように、MySQLを使用する際には、スキーマの変更やデータパーティション、シャードキー、ノード、データベース間のマッピングなどの要素を考慮し、慎重に正しい判断を下さなければなりません。

勝者: MongoDB。MySQLには制限が多く、特定の処理が正しく行われない場合は不整合や問題を引き起こす可能性がある。

トランザクション特性─ACIDとBASE

データベースを選ぶ際に、もう1つ重要になる要素が、トランザクションの特性です。データベースがどのようにデータを保存、操作、整理するかを決定するためのルールで構成されます。

以下の2つの特性が一般的です。

  • ACID(Atomic: 原子性、Consistent: 一貫性、Isolated: 独立性、Durable: 永続性)
  • BASE(Basic Availability: 基本的な可用性、Soft State: 柔軟な整合性、Eventual Consistent: 最終的な一貫性)

CAP(Consistency: 一貫性、Availability: 可用性、Partition: 分断耐性)定理によれば、分断耐性のある分散システム、つまり、一時的に通信が途切れても機能し続けるシステムでは、可用性と一貫性の両立は不可能とされています。

ACIDとBASEのデータベースの違いは、この制限の扱い方にあります。ACIDのデータベースは、より整合性のあるシステムを持ち、BASEのデータベースでは可用性がより重視されています。

では、MongoDBとMySQLはどの特性に準拠しているのでしょうか。

MongoDB

MongoDBはBASE特性に準拠しています。トランザクションが常に行える可用性を保証し、以下のような特徴があります。

  • 基本的な可用性─即時の一貫性を強制する代わりに、データベースクラスタ内の異なるノードにデータを複製・分散させることで、データの可用性を確保。
  • 柔軟な整合性─データ値には即時の整合性がなく、時間の経過に伴い変化することが考えられる。この特性は、整合性を強制するデータベースの概念を覆し、その整合性は開発者に委ねられる。
  • 最終的な一貫性─BASEでは即時の整合性は強制されないものの、必要に応じて強制することが可能。強制する場合であっても、データの読み込みは行える。

MongoDB以外のBASEを採用するデータベースには、RedisやCassandraなどがあります。BASEは、アプリケーションでセンチメント分析が必要な場合に最適な選択肢です。

カスタマーサービスやマーケティング企業の場合は、SNSの調査に便利で、大量のSNSフィードデータを処理することが可能です。

MySQL

MySQLはACID特性に準拠しています。トランザクションの整合性を保証します。データウェアハウス(DWH)のようなオンライン分析処理や、金融機関のようなオンライントランザクション処理を扱うビジネスに適しています。あらゆるスケールの小規模な同時トランザクションを管理するデータベースが必要な企業に有用です。ACIDには以下のような特徴があります。

  • 原子性─データがデータベース全体で有効であることを保証するため、すべてのトランザクションは、適切に実行されるか、または完全に停止し、初期状態に戻る。
  • 一貫性─データベースの構造的な整合性が損なわれることはない。
  • 独立性─処理中に他のトランザクションに干渉されることはなく、データベース内の整合性が保たれる。
  • 永続性─完了したトランザクションに関連するデータは、電力やネットワークが停止しても持続可能。たとえトランザクションが失敗しても、データには影響がない。

高いセキュリティとトランザクションが保証されることから、金融機関は専らACIDのデータベースを使用しています。ACIDの原子性により、安全に送金を行うことができ、中断されたトランザクションは即終了されるため、エラーを防ぐこともできます。

MySQL以外のACID準拠リレーショナルデータベースには、PostgreSQL、SQLite、Oracleなどがあります。また、非リレーショナルデータベースでも、Apache CouchDBやIBM Db2など、ある程度ACIDに準拠したものもあります。

肝心なのは、どちらのトランザクション特性が優れているかということですが、ユースケースやプロジェクトによって優劣が異なるため、明確な答えはありません。ACID準拠データベースは、その構造化された性質から、整合性、信頼性、予測可能性を要するプロジェクトに向いています。

一方、BASE準拠データベースは、高い柔軟性と容易なスケールアップを重視するプロジェクトにお勧めです。

勝者: 両者互角

使いやすさ

A side-by-side comparison of MongoDB and MySQL ease of use, showing a girl working under MongoDB and a boy working with different tools under MySQL
MongoDBとMySQLの使いやすさ

そのデータベースの操作性もデータベース選びに大切な要素です。使いづらければ当然生産性が低下し、リソースと時間を割いてその操作を習得しなければなりません。

続いて、操作性の観点から比較してみましょう。

MongoDB

MongoDBのデータ保存作業は非常にシンプルで、プログラミングの知識があれば、誰でも理解することができます。データは非構造化フォーマットでコレクションに保存されるため、柔軟性があります。データベースのプロでない開発者でも、アプリケーション開発に使用することができるデータベースです。

様々なスキーマを持つMongoDBは、MySQLのようなリレーショナルデータベースの機能が必要ない開発者のために、柔軟なインターフェースを備えています。例えば、構造的スキーマに依存しないウェブアプリを開発するのにも有用です。

開発チームの全員がMongoDBのようなNoSQLデータベースに精通する必要はありませんが、馴染みがない場合には多少の学習は必要になります。更新、挿入、削除などの一部のクエリは、SQLデータベースのそれとはまったく異なります。

MySQL

MySQLは、基本的なプログラミングの知識があれば、誰でも容易に理解できるように設計されています。学習と操作が簡単で、初めてのデータベースにMySQLやその他のSQLデータベースが選ばれることが多いのはそのためです。

MySQLを熟知していなくても、他のSQLデータベースを使った経験があれば、比較的すぐに操作できるはずです。

また、MySQL、SQLite、Oracle、PostgreSQLなどのSQLデータベースでは、SELECTやJOINなどのクエリを簡単に実行できます。

厳密で複雑なデータ構造と、大量のテーブルを持つスキーマが必要なアプリケーションの開発には、MySQLが適しています。また、一流のセキュリティが必要なアプリケーションや、頻繁なトランザクションを伴うアプリケーションの開発にもお勧めです。

優れたセキュリティやトランザクションの保証、整合性が求められる銀行のアプリケーションでは、機密情報を含む大規模なデータセットの保存に役立つでしょう。

勝者: MySQL(よりシンプルで理路整然とした構造)

全文検索の可用性

MongoDB

MongoDBには、最近、全文検索機能が追加されています。これは、文字列の配列に特定のインデックスタイプを用いて実行されます。また、用語検索とフレーズ検索も可能で、誰でも簡単に探しているものを見つけることができます。

また、フレーズ検索と用語検索の両方を用いたブーリアン検索もサポート。一定の制限はあるものの、使用方法は非常に簡単です。なお、全文検索を行う際にサブセットのフィールドを指定する操作はできません。一致するすべてのフィールドを対象にして結果が表示されます。

MySQL

MySQLには、長年、全文検索機能が備わっています。特別なインデックスタイプが使用され、フレーズ検索、用語検索、ブーリアン検索もあり、スムーズに検索を実行できます。

ただし、クラスタ化されたデータベースにはまだ全文検索機能がないため、制限があると言えます。

勝者: MongoDB

データレプリケーション

データレプリケーションは、データベースの重要な機能であり、データのコピーを作って他のデータベースサーバーに保存します。アプリのスケーラビリティやパフォーマンスの向上だけでなく、万が一に備えバックアップを作成することも可能です。さらに、データへのアクセスも効率化してくれます。

MongoDBとMySQLのレプリケーション機能を比較してみましょう。

MongoDB

MongoDBのレプリケーションには、マスター/スレーブ方式(プライマリとセカンダリ)が採用されています。複数のセカンダリノードが利用でき、単一のデータベース内で実行される操作が制限されるかたちになります。

プライマリでは書き込みと読み出しの両方が可能であり、読み出し専用のセカンダリやサーバーを入れた構成も可能です。データはプライマリからセカンダリへ非同期で複製されます。この手のレプリケーションは通常より高速ですが、信頼性が高いとは言えません。

MongoDBのプライマリ/セカンダリレプリケーションをもとに、データのレプリカセットを構成し、冗長性を下げることができます。また、プライマリとセカンダリの構成をレプリカセットに変換する機能があります。レプリカセットを使うと、データの様々なコピーを作成でき、レプリカセットの各メンバーには、処理中にプライマリかセカンダリのどちらかの役割が割り当てられます。

読み取りや書き込みは、デフォルトでプライマリで行われ、それをセカンダリに複製することができます。レプリカセットは非常に安定しており、本番環境での使用に適しています。

MySQL

単一のレプリケーション手法を持つMongoDBとは異なり、MySQLでは、非同期(プライマリ/プライマリ)レプリケーションと準同期(プライマリ/セカンダリ)レプリケーションの2種類があります。マルチソースレプリケーションでは、簡単に別々のプライマリから並行してデータを複製することができます。

非同期レプリケーションは準同期と似た動作をしますが、両方のノードが同時にレプリカでありプライマリであるという点で異なります。つまり、ノード間に循環レプリケーションが存在することになります。MySQLでは、書き込みと読み込みの要求を受けるために複数のプライマリノードを用意することが可能です。また、各プライマリに対してセカンダリを複数持つこともできます。

非同期を使うメリットは、複数のサイトで構成されるネットワーク全体にプライマリを分散させることができる点です。非同期の構成では、各ユニットが完全なデータセットを持つため、近年求められる要件に適していると言えます。つまり、いずれか一つが故障しても、他でサービスを引き続き提供することができます。デメリットは、通信のレイテンシが発生することです。

これとは別に、MySQLでは、マルチメインクラスタやグループレプリケーションなど、他の手法も使うことができます。

勝者: MySQL(MongoDBに比べ、信頼性の高いレプリケーションの方法を複数備えているため)

インデックスの最適化

インデックスは、データベース内のデータ検索に使えます。インデックスの最適化は、MongoDBとMySQLに共通する機能ですが、アプローチが異なるため、両者の利便性を確認しておくことが重要です。

それでは、インデックスの最適化の観点から比較してみましょう。

MongoDB

インデックスを見つけられない場合、コレクション内の各ドキュメントをスキャンしてクエリ文にマッチするドキュメントを見つけなければならず、やや面倒です。また、格納されるデータの構造が決まっていないため、余計に時間がかかります。

MySQL

インデックスが定義されていない場合、データベースの検索エンジンはテーブル全体のスキャンを開始し、関連するレコードが検出されます。整然とした構造を持つリレーショナルデータベースであるため、検索クエリが効率的に実行され、MongoDBよりも素早く結果を得ることができます。

勝者: MySQL

言語ドライバ

MongoDB

制限はほとんどありません。MongoDBのドライバとAPIは、使用するプログラミング言語にネイティブで準拠している必要があります。

MySQL

MySQLは、複数のSQL機能が重なっており、JSONデータを扱う機能は限られます。また、多くの制限があるため、大きなオーバーヘッドを伴う可能性があり、綿密な計画と実行が必須です。慣用的なAPIを使っての作業が求められる場合には、特に面倒かもしれません。

勝者: MongoDB

コミュニティサポートとデプロイメント

初心者であっても、熟練した開発者であっても、問題に直面する可能性は常にあります。そんな時には、データベースの開発者コミュニティを活用しましょう。他の開発者から問題解決のヒントを得たり、学習やコミュニティに貢献する機会を得ることができます。

同時に、どのデータベースがどのプラットフォームで動作するのかも知っておきましょう。プロジェクトの要件や使用するその他の技術に基づいて、どちらのデータベースを選択すべきかが見えてくるはず。

では、コミュニティサポートとデプロイメントの観点から両者を比較してみます。

MongoDB

MongoDBは、MongoDB Inc.が所有・管理しています。MongoDBはNoSQLのデータベースで、NoSQLユーザーは現在急増しています。非の打ちどころのない機能とオープンソースという特性のおかげで、頼りになる強力なコミュニティが存在しています。

デプロイについては、MongoDBはWindows、Linux、macOS、FreeBSD、Solarisなど様々なOSで簡単に使用・デプロイ可能で、ウェブ、クラウド、SaaSアプリケーションで利用できます。

MySQL

MySQLは、現在Oracle Corporationが所有・管理していますが、当初はSun Microsystems、それ以前はMySQL ABの傘下にありました。その20年以上の歴史から、世界中に幅広いユーザー層が存在し、その結果、コミュニティのサポートは充実しています。MySQLの大きなコミュニティの一員になることで、データベースに関する知識を深め、学びながらスキルを磨くことができます。

MySQLは、デプロイメントも簡単です。GitHubにあるソースコードを用いてビルド・インストールすることもできます。特別な編集が必要ない場合は、バイナリパッケージからインストールすることも可能です。

MySQLは、MongoDB同様、ウェブ、クラウド、SaaSアプリケーションで利用でき、Windows、macOS、Linux、Solaris、FreeBSDなど複数のOSに対応しています。また、Microsoft Azure、Oracle Cloud、Amazon EC2などのクラウドプラットフォームでも実行可能です。パッケージマネージャを使用してMySQLをダウンロードし、さまざまなLinuxディストリビューションに簡単にインストールすることができます(インストール後、最適化とセキュリティの設定を行う必要がある場合も)。

勝者: MySQL(コミュニティの規模、使いやすさ、デプロイのしやすさから)

市場シェアと人気

MongoDBとMySQLは、どちらもデータベース業界のビッグネーム。ですが、どちらの方が人気があるのでしょうか。そしてその人気の秘密と世界市場シェアもみていきましょう。

MongoDB

MongoDBは圧倒的人気を誇る非リレーショナルデータベースで、データベース市場全体でも高い評価を得ています。

Datanyzeによると、MongoDBはデータベース全体で7位、市場シェアは4.5%となっています。また、世界中の7000以上の企業がMongoDBを使用していることも注目に値します。

Showing MongoDB's market share by mentioning different values for different areas
MongoDBの市場シェア

その人気の秘密は、柔軟性とスケーラビリティ。近年高まりを見せるユーザーの需要を満たすために、アプリケーション開発者が注目しています。これによって、データの操作やクエリの実行、有用な情報を見つけ出すことが容易になります。

さらに、GitHubには17.7万以上のリポジトリ、92.3万以上のコミットがあります。

MySQL

MySQLも、世界で最も人気のあるデータベースの1つです。単体で使うことも、MongoDBやPostgreSQLなどの他のデータベースと組み合わせて使用することも可能です。

Statistaの調査によれば、2021年6月の時点で、MySQLはOracleに次いで世界で2番目に人気のあるDBMSです。その理由はいくつも挙げられますが、端的に言えば、無料のオープンソースであり、優れた機能が揃っている点にあります。MySQLは、スケーラビリティ、可用性、セキュリティに優れており、現代のウェブプロジェクトとうまく調和します。さらに、巨大なオンラインコミュニティの存在と操作性の高さも、多くのユーザーを魅了する秘密です。

別の調査によると、MySQLの市場シェアは約46.83%で、14.4万人以上が現在利用していることが明らかになっています。

Showing MySQL's Market Share by mentioning different values in a horizontal way for different areas
MySQLの市場シェア

さらにMySQLは、GitHub上で22.2万以上のリポジトリ、700万以上のコミットを誇ります。

勝者: MySQL

用途

MongoDBとMySQL、どちらにも、メリットとデメリット、得意と不得意があります。そのため、用途によってどちらのデータベースを選ぶべきかが異なります。

MongoDB

MongoDBは、データの可用性を高めたい場合や、高速かつ自動でデータの復元を行いたい場合に有用です。優れたスケーラビリティが強みであることから、需要が高まっている(またはそれが予想される)アプリケーションやサイトを開発する場合には、MongoDBの使用を検討することをお勧めします。

データベースを持たない小規模な企業の管理者がMongoDBをフル活用する、というシナリオも考えられます。ただし、長期的な成長を目指す場合は、これは永続的なソリューションとは言えません。概して、スキーマの移行に伴う費用を削減したい場合にも、MongoDBは有力な選択肢です。

提供サービスの多くをクラウドで運用している場合にも便利です。MongoDBはシャーディングなどのスケーラビリティを備えた構造になっているため、水平方向のスケーリングやビジネスの俊敏性の実現にも対応してくれます。

MySQL

一方、MySQLは、今すぐに拡張する必要のない立ち上げ段階のベンチャー企業に向いています。将来的にもあまりスケーラビリティが求められないプロジェクトの場合も、MySQLの使用を検討するといいでしょう。また、MySQLはセットアップやメンテナンスが簡単です。

もしくは、構造化されたデータ、固定のスキーマを使用し、将来的に変更が不要であるプロジェクトにもお勧めです。また、費用を抑えつつ高いパフォーマンスが欲しい場合には、MySQLが有用です。

金融業界での利用や、高いトランザクション率を伴うプロジェクトの構築にも、優れた選択肢です。高いセキュリティが強みのMySQLを使用すれば、アプリケーション、データの悪用やサイバー攻撃を、効率的に防ぐことができます。

勝者: ※どちらも異なる用途で有用

メリットとデメリット

続いて、MongoDBとMySQLのメリットとデメリットをみてみましょう。

MongoDB

MongoDBのメリットは、以下の通りです。

  • 高い適応性を持ち、変化する業務要件や状況に柔軟に対応可能。
  • スケールアップやスケールダウンが簡単。
  • ドキュメント内のクエリやリターンフィールドが使用可能。
  • データの複製機能があり、コピーが保存されるため、データの損失がない。
  • 技術スタックに影響を与えることなく、サイズの異なるさまざまな種類のファイルを保存。
  • インデックスを作成して検索性能を向上。
  • 複数のサーバーを利用してデータの複製とロードバランシングを行うため、ハードウェアの障害時にも動作。
  • BASE特性に準拠し、高いデータ可用性を実現。
  • 使い勝手が良い。

デメリットは以下の通り。

  • 他のデータベースシステムと比較するとBASE特性は強力ではない。
  • ストアドプロシージャ機能がなく、リレーショナルデータベースとは異なり、データベースレベルでビジネスロジックを実装できない。
  • トランザクションが複雑、または安全でない場合がある。
  • 最初の学習と操作の習得にやや時間がかかる可能性がある。
  • ドキュメント構成の質が低い。
  • メモリ消費量が多く、JOINやビルトイン分析ができない。

MySQL

一方、MySQLには以下のようなメリットがあります。

  • 非同期、準同期、スケールアウト、グループレプリケーションなど、レプリケーションの手法が複数ある。
  • ユーザーフレンドリーなインターフェースで、操作・インストールが簡単。さらに、書籍、ドキュメント、ブログなどの様々なソースを活用すれば、学習や問題解決が容易に。
  • 大量のデータの保存から操作まで全て管理可能。
  • ストレージエンジンに関連するオーバーヘッドが少ない。
  • 安全性の高い権限ベースの認証を使用。
  • グローバルなデータ配信やレポート機能など、さまざまな形や規模のアプリケーションに対応可能。
  • 頻繁に使用するテーブルを見つけるメモリストレージエンジン機能がある。

デメリットは以下の通り。

  • ストアドプロシージャのキャッシュがない。
  • システムカタログを使用したトランザクションは、ACID特性に準拠していない。
  • トリガーまたはプロシージャ用のMySQLテーブルは、ほとんどが事前にロックされている。
  • システムクラッシュでシステムカタログ全体が破損する可能性がある。
  • SQLに全面的に依存。
  • PythonやJavaとの統合はサポートされていない。

勝者: ※それぞれにメリットとデメリットあり

利用プランと価格

MongoDBとMySQLは、どちらもオープンソースであり、無料で利用できますが、さらに優れた機能が搭載された有料版もあります。

MongoDB

無料と有料の両方にいくつかのプランがあり、無料版は、共用クラウド上に展開する小規模なアプリケーションにお勧めです。バージョンには以下の3種類があります。

  • MongoDB Community Server:無料(Windows、OS X、Linuxで使用可)
  • MongoDB Enterprise Server:商用利用可能
  • MongoDB Atlas:GCP、Azure、AWS上で動作する、フルマネージド型のオンデマンドクラウドデータベース

また、クラウドの種類、セキュリティ基準、ストレージの種類に応じて以下の3つのプランから選択することができます。

  • Shared(共用):無料
  • Dedicated(専用):57ドル/月から
  • Serverless(サーバーレス):読み込み操作数100万回につき0.30ドル

MySQL

無料版とは別に、以下の有料版があります。

  • MySQL Standard Edition:2,000ドル/年から
  • MySQL Enterprise Edition:5,000ドル/年から
  • MySQL Cluster CGE:10,000ドル/年から

勝者: 両者互角

類似点と相違点

A Venn diagram showing the similarity overlap between MongoDB and MySQL along with their logo
MongoDBとMySQLの類似点

MongoDBとMySQLの主な類似点には、以下のようなものがあります。

類似点

  • オープンソースで無料のデータベース
  • 強力なクエリ言語を使用
  • フレーズ検索と用語検索による全文検索機能
  • フレーズ検索やテキスト検索によるインデックス検索が可能
  • 数千人の有識者による強力なコミュニティサポート
  • インデックスの最適化
  • プライマリ/セカンダリ構成によるデータレプリケーション

相違点

今度は、MongoDBとMySQLの違いをみてみましょう。

項目 MongoDB MySQL
種類 MongoDB Inc.が開発したオープンソース非リレーショナル(NoSQL)データベースシステム MySQL ABが開発し、現在はOracle所有のオープンソースリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)
構造 JSONライクのドキュメントとコレクションでデータを保存。スキーマは様々で、修正も容易。 行と列を持つ表形式構造でデータを格納。
アーキテクチャ Nexusを採用。柔軟性と可用性が高い。 クライアント/サーバーアーキテクチャを採用(ストレージパフォーマンス最適化、マルチスレッド)。
スキーマの柔軟性 スキーマの柔軟性が高く、ダウンなしで設計変更が簡単。 スキーマに柔軟性がなく、変更が複雑。
クエリ言語 CRUD関数を備えたMongoDB Query Language(MQL)を使用。表現の幅が広い。 SQLを使用。結合機能を使って他のテーブルからデータを取得。
パフォーマンスと速度 MySQLよりも高速。迅速かつ容易な読み取りと書き込みが可能。 表形式でデータを保存するため、大容量データの処理ではMongoDBと比べると遅い。
セキュリティ 決まった構造がなく、不整合やデータセキュリティの問題が発生する可能性がある。 一貫性のあるデータ構造を持ち、高いセキュリティを確保。
言語ドライバ 開発者向けの制限が少なく、公式ドライバや使用プログラミング言語と同様のAPIをサポート。 SQLの機能が多数重なっているため、JSONを扱う機能は限られる。
スケーラビリティ 高いスケーラビリティ。シャーディングによる水平スケーリングが可能。 スケーラビリティに制限あり。リードレプリカや垂直スケーリングが可能。
トランザクション特性 BASE特性。可用性が高い。 ACID特性。整合性が高い。
使いやすさ シンプルで簡単。 定義された理解しやすい構造で誰でも操作が簡単。
用語 コレクション、フィールド、ドキュメント、リンク、埋め込みドキュメント テーブル、カラム、レコード、ジョイン

MySQLからMongoDBへの切り替え

MongoDBは、MySQLの代わりになり得るのか。一言で言うなら、なり得ます。

MySQLをMongoDBに置き換えることは、ある特定の用途や状況においては賢明な判断になりますが、そうでなければ、得策とは言えません。圧倒的な柔軟性、スケーラビリティ、多くの優れた機能のおかげで、MongoDBは非常に高速です。

eBayやTwitterのような世界的に有名な企業は、データストレージと管理の要件を満たすのにMongoDBを使用しています。したがって、以下のような場合には、MySQLからMongoDBに切り替えるのが得策かもしれません。

  • 大規模なデータを扱う場合(MySQLは適切なスキーマがない大規模なデータを処理する際に問題が発生する可能性あり)
  • データベース化できないような複雑なデータを扱う場合
  • スケールアップやデータ分割を容易に行いたい場合
  • 市場価値の低い重いデータをオープンソースで展開したい場合

金融業界や銀行のような用途で、安全なアプリケーションを構築したい場合には、MySQLを使い続けることをおすすめします。また、マーケティングや分析用のアプリケーションを構築したい場合にも、他のユースケースと比較してMySQLの方が優れています。

まとめ

MongoDBとMySQLは、互いに異なるアーキテクチャと機能を持ち、それぞれ別の用途でベストな選択肢になり得ます。今回の記事では、両者のメリットとデメリット、そしてどのような用途にどちらが適しているのかをご紹介しました。

結論として、万能な答えはなく、MongoDBとMySQLのどちらが優れているかは一概に決められません。比較要素を合算して引き分けだった、というわけではなく、用途によって両者の適正度が異なるということです。

MongoDBは柔軟性とスケーラビリティが強みです。業務要件が変化するアプリや、規模を拡大していくアプリに向いています。一方、MySQLの強みはセキュリティと一貫性にあります。そのため、トランザクション処理を伴うものや金融系のアプリなど、頻繁にデータを変更する必要のない用途に適しています。

MongoDBとMySQLのどちらかに決める際には、プロジェクトに必要な要素とその優先順位を整理した上で、より要件に合う方を選んでください。

MongoDBとMySQLについて、何かご不明点はございますか?下のコメント欄でぜひお聞かせください。

Durga Prasad Acharya