進化を続けるウェブ開発の現場において、静的サイトジェネレーター(SSG)は、ウェブサイトを素早く効率的に構築する人気の選択肢です。HTMLやCSSで構築された、手作業で更新や修正を行う必要がある従来の静的ウェブサイトと、データベースやPHPなどのサーバーサイドスクリプト言語に依存する動的ウェブサイトとの橋渡しをする役割を果たします。
この記事では、2024年に人気のReact静的サイトジェネレーターに迫ります。また、記事の後半では、特定のプロジェクトの要件にあわせて最適なものを選択する方法にも触れたいと思います。
Reactベース静的サイトジェネレーターとは
Reactベース静的サイトジェネレーターとは、Reactコンポーネントをサイト構築の基盤として使用して静的なウェブサイトを生成することができるツールです。その前に、そもそも「静的サイト」と「静的サイトジェネレーター」についてもおさらいしておきましょう。
静的サイトとは、HTML、CSS、JavaScriptファイルで構成されたウェブサイトのことで、静的サイトジェネレーターによって生成されたのと同じようにユーザーに提供されます。これらのファイルは、ユーザーの操作や入力に基づいて変更されることはなく、サーバー側の処理も必要ありません。
静的サイトジェネレーターは、静的なウェブサイトの構築プロセスを自動化してくれるツールです。入力ファイル(Markdownファイル、HTMLテンプレート、Reactコンポーネントなど)を受け取り、ユーザーに対して直接提供できる静的なHTML、CSS、JavaScriptファイルを生成します。完全なウェブアプリケーションスタックを必要とせずに、素早く容易にサイトを構築することができます。
Reactベース静的サイトの特徴
静的サイトジェネレーターが今よりも浸透していない以前は、開発者はより手間をかけてサイト構築を行う必要がありました。例えば、HTMLとCSSを使ってウェブサイトの各ページを手作業でコーディングしていくといった具合です。このような方法には時間がかかり、エラーが発生しやすいため、大規模なウェブサイトの保守や更新が困難でした。
そこでReactベース静的サイトジェネレーターを使えば、複数のページで繰り返し利用できるテンプレートやレイアウトを作成でき、大規模なウェブサイトの更新やメンテナンスが非常に容易になります。その結果、時間と手間を大幅に削減し、ウェブサイトのパフォーマンスを向上させることができます。
Reactベース静的サイトジェネレーターを使用するメリットは以下の通りです。
- ウェブサイトのパフォーマンスとスピードの向上
- 保守・展開が容易
- 拡張性・柔軟性の向上
- SEOの強化
Reactベース静的サイトジェネレーターの具体的な使用例として、以下のようなものがあります。
- ドキュメントサイトの構築:閲覧や更新が容易なドキュメントサイトを構築するのに便利です。
- ブログの開発:更新、メンテナンス、ホスティングが容易な、高速で応答性の高いブログの作成にも使用できます。
- ECサイトの作成:優れたユーザー体験を提供する、高速でスケーラブルなECサイトの作成に使用可能です。この方法で構築することで、実質静的サイト(または部分的に)となるため、速度低下やクラッシュを心配することなく、大量のトラフィックを処理することができます。
おすすめのReactベース静的サイトジェネレーター6選
おすすめのReactベース静的サイトジェネレーターを確認する前に、静的サイトジェネレーターを使用して静的サイトを生成すると、サーバー側の処理を必要とせずにユーザーに直接提供できる静的ファイルが構築される、という点を理解しておくことが重要です。この静的ファイルをホストすることになります。
Kinstaは、アプリケーションホスティングを通じて、静的サイトに求められるスケーラビリティ、信頼性、セキュリティを提供しています。近日中に静的サイトに特化したホスティングサービスも展開予定です。
それでは、Reactベース静的サイトジェネレーターのおすすめをいくつか見てみましょう。Reactベースのサイトを作る際には是非とも検討したい選択肢です。
1. Next.js
Next.jsは、過去数年で、広くウェブ開発コミュニティに浸透した、人気のReactベースのフレームワークです。現在では優れたReactベース静的サイトジェネレーターの1つとされています。
Next.jsは、静的サイトを構築するのに便利で、さまざまな機能と利点があります。例えば、自動でのコード分割や読み込み遅延にも対応しており、各ページで読み込む必要のあるコードの量を減らすことで、ウェブサイトのパフォーマンスを向上させることができます。
Next.jsでは、ECサイトのショッピングカートの状態を管理するRedux、ECのAPIから商品情報を照会して商品一覧ページに表示するGraphQL、ウェブサイトの美しいレスポンシブデザインを可能にするMaterial UIなど、人気のReactライブラリやフレームワークを容易に統合することができます。このような柔軟性と統合のしやすさが、開発者や企業に広く採用される要因となっています。
Next.jsは、HuluやTikTokなどの有名なウェブサイトで活用されています。
ポートフォリオサイト、ブログ、ランディングページなど、多様な静的サイトの作成に活用できる柔軟性の高い静的サイトジェネレーターです。詳細はNext.jsの公式ドキュメントでご確認ください。
KinstaでNext.jsの静的サイトをデプロイする方法
このポートフォリオプロジェクトリポジトリをフォークして情報を調整し、Kinstaのアプリケーションホスティングにデプロイすることで、ものの数分で、Next.jsポートフォリオサイトができあがります。
2. Gatsby
Gatsbyは、Reactで構築されたGraphQL搭載の静的サイトジェネレーターです。2015年にリリースされ、ウェブ開発コミュニティで大きな支持を集めています。
Gatsbyは、React、GraphQL、Webpackといった最新のウェブ技術の力を結集して、高速かつ高性能なウェブサイトの構築を支援してくれます。
Gatsbyでは、Reactコンポーネントを使用して静的ページを構築することができます。例えば、ブログ記事を表示するためのReactコンポーネントを作成し、Gatsbyを使用してブログ記事ごとに静的なページを生成することが可能です。
Gatsbyは、NikeやAirbnbを含む多くの著名なウェブサイトで利用されている、高い柔軟性を持つ静的サイトジェネレーターです。ブログ、ドキュメントサイト、ポートフォリオサイト、ランディングページなど、さまざまなタイプの静的サイトの構築に使用できます。詳しくは、Gatsby公式ドキュメントをご覧ください。
KinstaでGatsbyの静的サイトをデプロイする方法
Kinstaでは、Gatsbyの静的サイトを簡単に利用可能です。クイックスタートの例をフォークして、Kinstaのアプリケーションホスティングにデプロイすることで、すぐに静的サイトが構築できます。
3. Docusaurus
Docusaurusは、ドキュメントサイトの構築に特化した、Reactベースの静的サイトジェネレーターです。
Meta社によって作られたオープンソースのツールで、Reactコミュニティと密接に連携する開発者チームによって維持管理されています。
Docusaurusは、ドキュメンテーションサイトを構築する開発者に多くのメリットをもたらします。その一部は以下の通りです。
- 簡単なセットアップと使用:シンプルで直感的なセットアッププロセスなのですぐに使いこなせます。
- カスタマイズ性と柔軟性:カスタマイズ性が高く、テーマ、プラグイン、スタイルなど、さまざまなオプションがあります。
- 大規模なプロジェクトに向いている:ドキュメントを複数のセクションやページに簡単に整理できるため、大規模なプロジェクトにぴったり。
- コラボレーションと相性がいい:バージョン管理システムを内蔵しており、複数のユーザーが同じドキュメントサイトに対して、コラボレーションをすることが可能です。
- SEOに強い:検索エンジン最適化(SEO)を意識した静的ウェブサイトを生成することができます。
- レスポンシブデザイン:さまざまなデバイスや画面サイズでの閲覧に最適化されたレスポンシブデザイン機能を搭載しています。
ReactでDocusaurusを使用する主な利点の1つは、Reactの強力な機能を活用できることです。例えば、繰り返し使えるコンポーネントは、ドキュメントサイトを構築する際に大きな手間の削減になります。
ドキュメントサイトを構築する際に、カスタマイズに対応した便利なツールが必要であれば、Docusaurusが優れた選択肢でしょう。
Docusaurusを使って作られた人気のサイトには、React Native、Algolia DocSearch、Ionicなどがあります。詳しくは、Docusaurusの公式ドキュメントをご覧ください。
KinstaでDocusaurusの静的サイトをデプロイする方法
こちらのDocusaurusサンプルサイトをフォークしてKinstaのアプリケーションホスティングにデプロイすることで、ブログ機能付きのDocusaurus静的サイトを簡単に作成(+好みに応じてカスタマイズ)することができます。
4. Astro
Astroは、モダンで柔軟な静的サイトジェネレーターです。様々な要件に合わせて使えるテーマや統合が豊富で、設定やカスタマイズがしやすいように設計されているため、Reactベース静的サイトジェネレーターの中でもトップクラスの選択肢となっています。Astroで利用できる統合には、以下のようなものがあります。
- MDX統合
- 画像最適化
- Tailwind統合
Astroを使う大きなメリットとして、Reactの強力なコンポーネントモデルを活用することで、開発者がすでに慣れ親しんでいるであろうReactの構文を使って複雑なUIを構築できます。
Astroが使用される例としては、以下のようなものがあります。
- 複雑なUIや動的なコンテンツを必要とする静的サイトの構築
- 高度に整理され、検索可能なドキュメントサイトや知識ベースの作成
- パフォーマンスとコンバージョンを最適化したランディングページやマーケティングサイトの構築
- 高速読み込みとレスポンシブUIを必要とするECサイトやその他アプリケーションの開発
Astroは、The Guardian Engineeringのような多くの人気ウェブサイトで使用されています。Astroの詳細や、AstroプロジェクトにReactを統合する方法については、公式のドキュメントをご覧ください。
KinstaでAstroの静的サイトをデプロイする方法
GitHubにあるKintaのhello-worldクイックスタートをフォークすることで、簡単にAstroウェブサイトをセットアップすることができます。そして、Kinstaのアプリケーションホスティングにデプロイすると、固有の公開用URLが手に入ります。
5. Qwik
Qwikは、高速かつ軽量のReactベース静的サイトジェネレーターで、パフォーマンスの高いウェブサイトを素早く簡単に構築する方法を探している開発者にとって、見逃すことのできない選択肢です。
Qwikを利用したサイトでは、静的なHTMLとJavaScriptのページが生成されるため、高速に読み込むことが可能です。サーバーサイドのレンダリングや実行時のJavaScriptの実行は必要ありません。Qwikは、Webpack、Babel、TypeScriptなど、他のウェブ技術もしっかりとサポートしています。
プリレンダリングとキャッシュを使用して、サーバーへのリクエストを最小限に抑え、ページ読み込み速度を高速化することで、Qwikで構築したサイトは、低速または信頼性の低いネットワーク上でも、光速パフォーマンスを発揮します。
一般的に、Qwikには以下のような他にはない利点があります。
- 高速かつ効率的なシステム
- 開発ワークフローがシンプルで直感的に操作できる設計になっている
- 様々なニーズに対応できるよう、幅広いプラグインやオプションを用意し、高い柔軟性とカスタマイズ性を備えている
- メタデータタグや構造化データをサポートし、SEOに配慮した設計
Qwikは、ショーケースにあるように非常に多くのウェブサイト構築に使用されており、ポートフォリオウェブサイトやランディングページなど、あらゆる形式の静的サイトを構築することができます。詳細は公式ドキュメントでご確認ください。
KinstaでQwikの静的サイトをデプロイする方法
こちらのクイックスタートプロジェクトをフォークし、Kinstaのアプリケーションホスティングにデプロイすることで、Qwikの静的サイトを作成することができ、ものの数分で静的サイトの公開URLが表示されます。
6. Cuttlebelle
Cuttlebelleは、柔軟で動的な静的ウェブサイトを迅速かつ容易に構築できるReactベースの静的サイトジェネレーターです。
再利用可能なコンポーネントを作成し、簡単なドラッグ&ドロップのインターフェースで、ページ、セクション、さらにはウェブサイト全体を構築することができます。
また、Cuttlebelleは、マークダウン、JSON、YAMLを含む幅広いコンテンツタイプをサポート。これにより、シンプルなランディングページから複雑なウェブアプリケーションまで、コンテンツが豊富なサイトを簡単に作成可能です。
Cuttlebelleは新しい静的サイトジェネレータで、GatsbyやNext.jsのような定評のある選択肢に比べるとGitHubでの認知度は低いものの、静的サイト作成への独特のアプローチを評価する開発者により指示されています。
詳しくはCuttlebelleの公式ドキュメントをご確認ください。
KinstaにCuttlebelleの静的サイトをデプロイする方法
こちらのクイックスタートプロジェクトをフォークし、アプリケーションホスティングにデプロイすることで、Cuttlebelleの静的サイトを作成することができます。これにより、数分で静的サイトの公開URLが提供されます。
どのReactベース静的サイトジェネレーターを選ぶべきか
多くの選択肢があることを考えると、Reactベース静的ウェブサイトジェネレーターの選定は簡単ではありません。
そこで、Reactベース静的サイトジェネレーターを選択する際に考慮したい大事なポイントをご紹介します。
- ニーズを理解する:Reactベース静的ウェブサイトジェネレーターを選択する前に、ウェブサイトの要件を理解する必要があります。たとえば、セットアップとメンテナンスが簡単なウェブサイトが必要な場合は、シンプルで直感的なユーザーインターフェースを持つジェネレーターを選ぶのが確実です。一方、高度にカスタマイズ可能で拡張性のあるウェブサイトが必要であれば、より高度なジェネレーターを検討してみてください。
- コミュニティサポート:Reactベース静的サイトジェネレーターの選定において、コミュニティサポートも重要な要素になります。サポートを提供し、ヒントやコツを共有できる開発者のコミュニティがあるジェネレーターを選ぶのが理想です。
- 柔軟性をチェック:特定の目的に適ったReactベース静的サイトジェネレーターを選択する必要があります。たとえば、ブログの作成に向いているものもあれば、ドキュメントサイトの作成に適したものもあります。
- パフォーマンスを評価する:ウェブサイトのパフォーマンスは非常に重要です。読み込みの速いウェブサイトを構築できるReactベース静的サイトジェネレーターを選択しましょう。中には、読み込み遅延の原因であるコードの肥大化を招くものもあります。効率的なコードを生成できるジェネレーターに狙いを定めましょう。
- 使いやすさを分析する:複雑なジェネレーターの使い方を理解するのに膨大な時間を費やしたくはないはず。だからこそ、Reactベース静的サイトジェネレーターは、使いやすく、優れたドキュメントを備えたものを選ぶべきです。また、セットアップの利便性を考え、テンプレートやテーマが付属しているジェネレーターを探すようにしましょう。
まとめ
動的サイトと比較しいくつもの利点があることから、静的サイトの人気は高まりを見せています。ブログ、ポートフォリオ、企業サイトなど、ユーザーとのインタラクションがほとんどないサイトに向いています。
速度、セキュリティ、コストの面では、サーバーサイドの処理やデータベースを必要としない静的サイトは、通常、より速く、より安全で、費用対効果に優れています。
KinstaのアプリケーションホスティングでReactベース静的サイトのホスティングを無料からお試しください。お求めやすいホビープランのご利用も可能です。
次のプロジェクトでReactベース静的サイトジェネレーターの利用を検討していますか?または、すでに現場で活用中でしょうか?以下のコメント欄でお聞かせください。
コメントを残す