WooCommerceストアを運営する会社にとって、ブラックフライデーは1年で最も大きなセール期間の1つ。これは裏を返せば、最もストレスがかかる時期とも言えます。突然の買い物客の波により、サイトの読み込み時間の低下、決済時のエラー、さらにはサイトが完全にダウンしてしまう可能性があります。
トラフィックが急増する大事な時期に、より高価なサーバープランに乗り換える代わりに、KinstaのPHPパフォーマンスアドオンでPHPスレッドとメモリを増やすことで、サイトのパワーを一時的にスケールアップすることができます。
これにより、ストアはより多くの同時リクエストを処理し、プラグインをスムーズに実行し、トラフィックが急増時に決済のボトルネック発生を防ぐことが可能です。
今回は、ブラックフライデーのようなセール時期のトラフィックがWooCommerceサイトを圧迫する理由、そしてセール時期のサイト対策となるKinstaのPHPパフォーマンスアドオンについて、MyKinstaでスムーズに動作するための手順をご紹介します。
セール時期のトラフィックがサイトダウンを引き起こす理由
WooCommerceストアに訪問者が急増すると、まず不足するリソースはPHPスレッドとメモリの2つです。
PHPスレッドの制限
たとえば、PHPの各スレッドを「レジ」に例えてみます。1つのレジ(スレッド)は一度に一人の買い物客しか対応することができません。その対応が「カゴに商品を追加する」「プラグインの機能を実行する」「支払いを完了する」といったものであっても、同時に処理できるのは1つのみです。
もしアクティビティ(アクセスや操作)が急に増えた際、対応するレジの数が足りなくなれば、リクエストはどんどん溜まっていきます。その結果、処理待ちが長くなることで、決済が滞ったり、買い物客がイライラして離脱してしまったりします。
メモリの制限
テーマ、プラグイン、サードパーティの統合はすべてメモリを消費します。トラフィックが集中すると、その使用量は膨れ上がります。サイトが利用可能なメモリを使い果たすと、ページは遅くなり、リクエストはタイムアウトし、最悪の場合はサイトがクラッシュします。
これらのメモリ制限に達すると、以下のような問題が発生します。
- リクエストが完了しない500エラー
- 負荷でページが停滞するゲートウェイのタイムアウト
- チェックアウトフォームがフリーズしたり、送信できない
- サイトが応答しないため、買い物客がカートを置き忘れる
また、トラフィックの急増は数日しか続きませんが、ダメージは長引く可能性があります。チェックアウトが遅かったり故障していたりすると、即座に収益を失い、悪い印象を残して長期的な顧客ロイヤルティに悪影響を及ぼしかねません。
ブラックフライデーを乗り切るために、ホスティングプランを恒久的にアップグレードする必要はありません。一時的なスケーリングにより、本当に必要なときだけPHPスレッドとメモリを拡張することができます。
セール時期のトラフィック急増に対応するスマートな方法
このアドオンには以下のようなメリットがあります。
- PHPスレッドとメモリをオンデマンドで拡張:コントロールパネルMyKinsta上で数回のクリックで設定可能。より多くの同時リクエストを処理するためにPHPスレッド数を増やしたり、負荷がかかった際にプラグインや動的機能をスムーズに動作させるためにメモリ制限を引き上げたりすることができます。
- 必要時にだけ利用:セール期間や特別イベントの開催時にのみ利用して、終了後は元に戻すといったことが可能です。
- 使用した分だけ支払い:利用料金は日割りで計算されるため、使用した分のみの支払いが可能です。長期的なプランのアップグレードやリソースの無駄がなく、セール終了後に突然費用が発生することもありません。
このアドオンを利用すれば、恒久的な変更を行うことなく、繁忙期にサーバーの性能を高めることができます。WooCommerceストアにアクセスが殺到しても、迅速かつ手頃な価格でサイトの安定性が保たれます。
PHPパフォーマンスアドオンの使い方
PHPパフォーマンスアドオンは、MyKinsta上で簡単に利用することができます。複雑なサーバー設定を調整したり、サポートスタッフの対応を待ったりする必要はありません。
ステップ1. MyKinstaにログインしてサイトを選択
MyKinstaにログイン後、「WordPressサイト」を開き、PHPパフォーマンスアドオンを利用したいサイトを選択します。

ステップ2. PHPパフォーマンスアドオンを選択
サイトを選択後、「情報」画面で「PHPパフォーマンス」セクションにある「変更」をクリックします。

または、「アドオン」画面の「PHPパフォーマンス」セクションの「変更」をクリックしてもOKです。

ステップ3. スレッドとメモリを調整
アドオンの設定ウィンドウで、PHPスレッドとメモリを増やすことができます。スライダーを使って想定されるトラフィックを考慮してバランスを調整します。

各プールサイズごとのスレッドとメモリの配分の詳細はこちらをご覧ください。
ステップ 4. 変更の保存と確認
「続行」をクリックすると、調整内容がすぐに反映されます。この際、サイトが停止することはありません。
ステップ 5. 繁忙期終了後にロールバック
ブラックフライデーなどの大事なセール時期が終了したら、同じ設定に戻り、アドオンを削除します。元のリソースに戻り、課金も終了します。

このように、複雑なサーバー設定を行ったり、無駄な費用をかけたりすることなく、大量のトラフィックに柔軟に対応することができます。
WooCommerceストアの例
例えば、通常1時間に50件の注文を処理するWooCommerceストアを運営しているとします。ブラックフライデーなどのお得なセールを開始すると、その数は簡単に3倍、あるいはそれ以上に膨れ上がります。突然、何百ものユーザーが同時に商品を閲覧し、買い物カゴに追加し、決済を行うことになります。
したがって、トラフィックが「急増する前に」スケーリングしておかなければ、以下のような問題が生じる可能性があります。
- PHPスレッドの上限に到達:新規の決済リクエストが順番待ちとなり、店頭でレジに並ぶかのように処理が滞る
- ページの速度低下または停止:リクエストが溜まることで、買い物客がページ読み込みの低下や遅さやタイムアウトエラーを経験
- エラーの発生:500エラーや固まった決済画面が購入の流れを中断し、注文が完了したのかどうか買い物客に不安を与える
- 売上の損失:イライラした買い物客がカゴ落ちし、競合サイトへ移動することで売上を取り逃がす
事前にスケーリングを行うことで結果は全く異なります。
- 追加したPHPスレッドが急増を吸収:より多くの決済リクエストを同時に処理できることから、”レジに並ぶ”買い物客の列が滞らない
- メモリ増加による安定性の強化:支払いゲートウェイ、送料計算、ロイヤルティプログラムなど複数のプラグインが同時に動作していても、サイトがリソース不足に陥ることなし
- スムーズな決済体験を維持:買い物客は商品ページから支払い完了まで、遅延や中断なしに進めることができる
- 売上の向上:より多くの注文が正常に処理されるため、買い物客の満足度が高まる
それぞれの特徴を挙げてみましたが、結果はまさに天と地の差。サイトのダウンやエラーの発生を心配する代わりに、注文の処理と大きなセール期間を最大限に活用することに集中できます。
KinstaのWooCommerceサイトを運営する顧客、DARTdronesは、米国の人気テレビ番組「Shark Tank」出演後、サイトのトラフィック急増しましたが、わずか6時間で100万ページビューを処理し、1分もダウンすることなく30万ドル(およそ4,600万円)の売上を達成。Kinsta上でPHPスレッドを増やし、インフラを最適化したことで、ページの読み込み時間を50%短縮し、極端な負荷下でもスムーズな決済プロセスを維持することができました。
PHPパフォーマンスアドオンを利用することで、スピード、信頼性、そして売上を損なうことなく、WooCommerceストアが繁忙期の突発的な需要に対応させることができます。
まとめ
まもなく到来するブラックフライデー、そして年末年始に向けた繁忙期には、どんなに最適化したWooCommerceストアも圧倒されるほどのトラフィックをもたらす可能性があります。PHPのスレッドやメモリが限界に達すると、エラー、読み込みの遅延、決済画面の停止などの問題が続々と発生します。そしてこれらはすべて売上の損失に直結します。
KinstaのPHPパフォーマンスアドオンは、こういったピーク時の需要に備えるストレスを解消します。スレッドとメモリを一時的に増強できるため、大事な期間にもサイトの応答性を維持することが可能です。必要時にだけアドオンを利用し、トラフィックが通常に戻ればアドオンを削除して、使用した分だけ支払うことができます。
年に数回しかない売上のチャンスをサイトのダウンが台無しにすることのないよう、サイトを万全に備え、スピードを維持して決済リクエストをスムーズに処理しましょう。
まずはブラックフライデーの備えに、KinstaのPHPパフォーマンスアドオンをぜひご利用ください。