ウェブサイトのダウンは、収益、顧客の信頼、ブランドの信用の損失につながります。これを回避する最善の方法は、予期せぬリスクを想定して徹底した準備を整えておくこと。積極的なリスク管理を行うことで、どのような事態が発生してもサイトをオンライン状態に保ち、サイトの安全性を高めることができます。

DDoS攻撃やハードウェアの故障から、ソフトウェアの脆弱性や予期せぬトラフィックの急増まで、業務が停止するさまざまな脅威は日々発生しています。たった一度のセキュリティ侵害で機密情報が流出したり、トラフィック急増でサーバーに過負荷がかかったり、コンプライアンス上の不手際で多額の罰金が科されたりする可能性は大いにあり、実際に多くの企業が経験しています。したがって、最悪の事態に備え、最善の策を講じましょう。

重要なのは、被害に遭ってから対応するのではなく、適切な対策を講じて被害を未然に防ぐことです。明確に定義されたリスク管理の基本マニュアルを作成することで、潜在的な脅威を特定し、対応策を割り当て、事業に影響が及ぶ前に問題を軽減できるようチームの準備を整えることができます。

そこで今回は、サーバーに関連するリスクの分類、対応戦略の策定、明確な役割分担の確立、そして関係者全員に迅速に情報を共有するためのコミュニケーションルールの作成方法について掘り下げます。

サーバーに関連するリスクの分類と対応策の整理

サーバー関連のリスクは、DDoS攻撃のようなセキュリティ上の脅威を伴うものもあれば、インフラの障害やコンプライアンスの失策に起因するものまで様々です。効果的にリスクに備えるには、リスクを分類し、それぞれに明確な対応策を用意する必要があります。

サイトの稼働率とセキュリティに影響を与える一般的なリスク

サイトに影響を与えるリスクは、一般に以下の4つのカテゴリに分類することができます。

1. セキュリティリスク

サイバー脅威は、ウェブサイトの稼働率とデータの完全性に深刻な影響を与えるリスクです。DDoS攻撃、マルウェア感染、不正アクセスは、サイトのパフォーマンスに影響を与えたり、機密性の高い顧客情報を漏えいさせたりする可能性があります。徹底したセキュリティ対策なしでは、サーバーに悪意のあるトラフィックが流入したり、有害なコードが注入されたり、脆弱性を悪用して不正侵入されたりする恐れがあります。

2. パフォーマンスのリスク

ウェブサイトが遅いと、評判に影響を与えます。サイトの表示に時間がかかると、ユーザーはサイトを離脱してしまいます。最適化されていないデータベース圧縮されていない画像、貧弱なキャッシュ戦略、突然のトラフィック急増などはすべて、パフォーマンスの低下につながります。スケーラブルでないインフラストラクチャでは、予期せぬアクセスの急増がサイトを圧迫し、タイムアウトやクラッシュを引き起こすことがあります。

3. インフラのリスク

優れたサーバー構成であっても、ハードウェアの故障、データセンターの停止、ネットワークの中断により、サイトが予期せずダウンすることがあります。サーバーの設定ミスに起因することもあれば、データセンターで重大なハードウェア障害が発生し、複数のサイトが一度にオフラインになることも。よく整備されたインフラであっても、停電や冷却システムの故障を免れることはできません。

4. コンプライアンスのリスク

GDPR(EU一般データ保護規則)は代表的な規制コンプライアンス
GDPR(EU一般データ保護規則)は代表的な規制コンプライアンス

訪問者や顧客の個人情報を収集する企業にとって、規制コンプライアンスは無視できません。GDPRCCPAPCI-DSSなどの規則は、データプライバシーとセキュリティに関する厳格なガイドラインを定めており、適切にデータを保護しなかったり、アクセス制御を行わなかったりすると、法的措置や罰金、顧客の信頼喪失につながります。

リスクと対応策の整理

リスクを分類したら、続いては、それぞれの対処法を定義します。事前の対策が必要なものもあれば、迅速かつ連携した対応が必要になるものもあります。

先に挙げたリスクに合わせて、以下3つの対応タイプをご紹介します。

リスク回避

サイトをスムーズに運営するには、問題が発生する前に食い止めることが最善です。ファイアウォール、セキュリティ監視ツール、自動更新は、サイバー脅威に対する防御の第一線として機能します。

  • ウェブアプリケーションファイアウォール(WAF):悪意のあるトラフィックをフィルタリングし、DDoS攻撃や悪意のあるユーザーがサイトに到達する前にブロック。
  • リアルタイムの監視ツール:脆弱性、不審なアクティビティ、パフォーマンスの問題をスキャンし、大きな問題になる前に特定。
  • ソフトウェア、プラグイン、サーバー環境を常に最新の状態に保つ:古いシステムは攻撃者の格好の標的となるため、更新作業を適切に管理するシステムを導入することで、既知のセキュリティ上の欠陥が修正可能になり次第、すぐにパッチを適用することができる。

インシデント対応

強力なリスク回避策を講じても、問題が発生することがあります。万が一問題が発生した場合には、迅速で構造化された対応が被害を最小限に抑える鍵になります。例えば、主要サーバーがダウンした際にトラフィックをバックアップサーバーに切り替える自動フェイルオーバーは、サイトのダウンを阻止してくれます。定期的なバックアップは、データの紛失や漏洩が発生した場合に、サイトの迅速な復元を保証します。

また、手動による介入も重要です。自動化されているシステムで問題を解決できない場合、事前に用意しておいた明確な対応手順に従って、エンジニア、セキュリティ部門、またはサーバー会社が効率的に介入できるようにします。

長期的なミティゲーション

より良いリスク管理戦略は、迅速な解決にとどまらず、長期にわたり残余リスクを低減することです。定期的なセキュリティ監査とパフォーマンス評価により、サーバー構成の弱点を特定し、障害につながる前に対処できるようにします。

システムやインフラの冗長性を確保するための計画もまた重要な役割を果たします。これには、地理的に分散したサーバーやクラウドベースのフェイルオーバーソリューションを使用して、不測の事態に備えることなどが挙げられます。あるデータセンターで障害が発生しても、別のデータセンターがサービスを引き継ぐことができれば、サービスが停止することはありません。

また、コンプライアンスチェックにより、サイトを最新のセキュリティおよびデータ保護規制に沿った状態に保つことができ、高額な法的損害や風評被害への対策になります。

リスクの種類と緩和策

どのような脅威がどのリスクに分類され、どのような対応策を導入すれば良いかを以下の表にまとめてみます。

リスクカテゴリ 主な脅威 対応策
セキュリティリスク DDoS攻撃、マルウェア、不正アクセス ウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)、リアルタイム監視、セキュリティパッチの自動適用
パフォーマンスのリスク トラフィックの急増、読み込み速度の低下 スケーリング、キャッシュ、CDN統合、データベース最適化
インフラのリスク ハードウェア障害、データセンター停止 冗長サーバー、クラウドベースのフェイルオーバー、稼働率保証(SLA)
コンプライアンスのリスク GDPR違反、データ漏洩 データ暗号化、アクセス制御、定期的なコンプライアンス監査

リスク軽減タスクの責任分担の明確化

どれほど強力な対応策を計画しても、オーナーシップ(責任分担)を明確にしなければ失敗する可能性があります。深刻な問題の場合は、責任の所在が不明確だと対応に時間がかかり、事態が悪化することが考えられます。したがって、事前に役割分担を決めておくことが重要であり、計画通りに解決が進まない場合に何をすべきかを全員が正確に把握できるようにしましょう。

対応チームを適切に構成すれば、連絡漏れを防ぎ、当て推量をなくし、迅速で連携した対応を行うことができます。オーナーシップが明確に定義されていなければ、セキュリティの脅威に対処できず、トラフィックの急増でサーバーが圧倒され、コンプライアンス上の問題が見過ごされてしまうかもしれません。これは後になってより大きな問題につながるのが一般的です。

対応チームの構成

さまざまなタイプのリスクに明確なオーナーシップを割り当てることで、問題発生時に担当者がすぐに対応できるようになります。

セキュリティ部門とDevOpsがセキュリティインシデントに対応

サイバー脅威には、セキュリティ部門とDevOpsエンジニアが連携して対応する必要があります。前者は不正なIPアドレスのブロック、脆弱性のパッチ適用、ファイアウォールの強化など、攻撃の特定と軽減に注力し、DevOpsはインフラストラクチャの安定性を確保します。

DevOpsとインフラチームはトラフィックの急増を管理

予期せぬトラフィックの急増は、サーバーを圧倒することがあります。DevOpsチームはリソースの使用状況を監視し、スケーリングソリューションを導入します。インフラチームは、バックエンドシステム、ロードバランサー、CDNによって、トラフィックを効果的に分散し、パフォーマンスを維持できるようにします。

専任のコンプライアンス担当者または法務部門はコンプライアンス問題を管理

顧客の個人情報を扱う場合、GDPRのような厳格な規制ガイドラインに従うことは必要不可欠です。コンプライアンス担当者は、セキュリティポリシーがこれらの規制に従っていることを確認し、定期的な監査を実施します。違反が発生した場合は、法務部門が介入し、報告要件を処理して、法的リスクを軽減します。

サーバー会社とIT担当者はデータ損失やハードウェア障害の軽減に対応

ハードウェアの故障やデータの損失が発生した場合、サーバーはサービスの復旧において重要な役割を果たします。多くのマネージドサーバーには、自動バックアップ、フェイルオーバーシステム、緊急サポートが含まれており、サイトのダウンを最小限に抑えることができます。一方で社内のIT担当者は、業務への影響を評価し、必要に応じて失われたファイルを復元したり、長期的なインフラの安定性を確保したりすることになります。

社内コラボレーションのベストプラクティス

このようなタスクの担当者を決めることは、リスク管理の最初の一歩。チーム間で効率的なコミュニケーションおよびコラボレーションを行えるようにすることで、インシデント発生時のスムーズな対応が可能になります。これには、以下のベストプラクティスを実践してください。

Jiraはリスク管理タスクの追跡に便利
Jiraはリスク管理タスクの追跡に便利
  • インシデント管理ツールの導入JiraOpsgenieのようなプラットフォームは、効率的に問題を追跡し、問題をスムーズに引き継ぐのに役立つ。
  • 明確な対応の引き継ぎ経路を確立:問題が自分たちの対応範囲を超えたり、上長を必要としたりする場合に、全員が誰に通知すべきかを把握する必要がある。
  • 定期的なインシデント対応訓練の実施:実際のシナリオを再現し、チームがプレッシャーのもとで効率的に行動できるように訓練する。
  • すべてを文書化する:過去のインシデント、対応措置、およびその結果を記録しておくことは、将来の対応戦略を改善するのに役立つ。

強力なオーナーシップ構造を確保することで、対応の遅れや混乱を解消することができ、リスクへの耐性が高まります。

インシデント発生時の対応手順とコミュニケーションルール

サーバー関連の問題が発生した場合、対応に遅れが出たり混乱したりすると、小さな障害が大規模な停止に発展する可能性があります。整理された対応手順とコミュニケーションルールがあれば、担当者が迅速に通知を送信し、社内チームと顧客の両方に情報を共有することができます。

明確な対応手順は、チームが迅速に対応し、サイトのダウンを最小限に抑え、顧客の信頼を維持するのに役立ちます。明確な計画がなければ、誰が次に何をすべきかを検討するのに貴重な時間を費やさなければなりません。以下の手順を踏んで、問題発生時に迅速かつ連携した対応ができるようにしておきましょう。

ステップ1. 問題の早期発見

問題を早期に検出できればできるほど、迅速に解決することができます。New RelicDatadogUptimeRobotなどの監視ツールを利用すると、サイトのパフォーマンス、稼働率、セキュリティの脅威を24時間常に監視可能です。サーバーの停止、トラフィックの急増、セキュリティ侵害の可能性など、何か異常が発生すると、即座に通知が送信されます。

Datadogはサイトのサーバーとパフォーマンスを24時間体制で監視
Datadogはサイトのサーバーとパフォーマンスを24時間体制で監視

このようなツールで問題を早期に発見することで、大きな問題に発展する前に対策を講じることができます。

ステップ2. 重大性の評価と必要に応じたエスカレーション

すべてのインシデントに対して同等の対応が必要になるわけではありません。そのため、通知を受け取った後は、問題の深刻度を迅速に判断することが重要です。

  • 軽微なパフォーマンスの低下や小規模な設定エラーのような深刻度の低い問題は、通常、緊急対応を担当するエンジニアや自動リカバリーシステムで対応可能。
  • サイト停止、セキュリティ侵害、または大規模なインフラ障害のような深刻度の高いインシデントでは、DevOps、セキュリティ部門、または経営層にすぐエスカレーション(報告・引き継ぎ)する必要あり

エスカレーションツールを使用することで、担当者に遅滞なく通知が届き、ワークフローに従ってスムーズな対応を行うことができます。

ステップ3. 社内対応チームの関与

チームが通知を受け取ったら、直ちに調査を開始し、問題解決に向けた以下のような措置を講じる必要があります。

  • 根本原因を特定するため、システムログとサーバーの状態を確認する
  • バックアップシステムやフェイルオーバー環境を起動し、サービスを復旧する
  • 問題がセキュリティ関連の場合は、悪意のあるトラフィックをブロックする

過去に発生したインシデントの明確な文書化と対応マニュアルを作成することで、このプロセスは高速化されます。

ステップ4. 外部との調整が必要かどうかの判断

インシデントの中には、外部パートナーの支援が必要なものもあります。いつ、どのように外部パートナーに協力を依頼するかを知っておくと、事態が深刻化した際に役立ちます。具体的には以下のようなシナリオが考えられます。

  • DDoS攻撃:攻撃を軽減するため、CDNサービスと調整を行う。
  • サーバーやデータセンターの障害:利用中のサーバーに連絡して障害の状況を確認し、フェイルオーバー手順を実行する。
  • セキュリティ侵害:セキュリティサービスと連携して脆弱性の調査、パッチ適用、コンプライアンスの徹底を行う。

このような外部パートナーとのコミュニケーションチャネルを事前に確立しておくことで、対応を効率化し、サイトがダウンしている時間を短縮することができます。緊急事態が発生する前に、必ず連絡先を把握しておきましょう。

社内チームと顧客とのコミュニケーション戦略

チーム内外のすべての人に情報を提供し続けることは、問題の解決そのものと同じくらい重要です。透明性のあるコミュニケーションは信頼を築き、期待値の管理に役立ちます。

以下、関係者全員に情報を継続的に共有する3つの方法があります。

1. 社内通知

明確で迅速なコミュニケーションを取ることで、問題発生時に適切なチームがすぐに対処できるようにします。SlackやMicrosoft Teamsのようなツールを使用すると、即座に通知を受け取ることができますが、すべての通知が同等の緊急性を持つわけではないため、軽度の問題と大規模な障害の通知は差別化するのが理想的です。一元的なインシデントログを残すことで、繰り返し発生する問題を追跡し、パターンを発見して、時間をかけて対応戦略を微調整することができます。

2. 顧客への連絡

顧客がサイトのダウンやパフォーマンスの問題に遭遇した場合、積極的にコミュニケーションを取ることによって、問題への対処が進行中であるという安心感を与えることができます。例えば、Statuspageが提供する専用ステータスページは、サポートチームに負担をかけることなく、リアルタイムの最新情報が表示されます。

Statuspageはサイトの状況をリアルタイムで表示
Statuspageはサイトの状況をリアルタイムで表示

サイトがダウンした状態が長引く場合は、メールやアプリ内の通知で、解決予定時間と必要な回避策を提示することが重要です。SNSも顧客への情報共有手段として効果的です。問題を早期に認識することで、顧客の憶測を防ぎ、積極的に問題に対処していることを伝えることができます。

3. インシデント後の評価

インシデントが解決した後は、何が起こったかをしっかりと振り返ることで、次回以降の対応に活かすことができます。主要メンバー間で事後報告を行い、何が問題で、何がうまくいき、何が改善されたかを確認します。遅滞や連絡ミスがあった場合は、ミスの繰り返しを避けるためにマニュアルを更新しましょう。

効果的なリスク管理の実例

サーバーに関連するリスクの管理は、形式的なものでは不十分です。特に収益維持をサイトの稼働率に依存するビジネスには非常に重要です。

以下、大きな課題に対処し、サイトの運営を維持した企業の実例をいくつかご紹介します。

大型セール開催時の大規模なトラフィック急増への対応

EC事業では、年末年始の大きなセールやブラックフライデーのようなイベント開催時に、トラフィックをスムーズに管理することが成功を左右します。2024年、IRP CommerceのECプラットフォームを利用する小売業者のトラフィックが10倍に増加しました。

ECツールを提供するIRP Commerce
ECツールを提供するIRP Commerce

IRP Commerceは、クラウドベースの自動スケーリング機能を導入しているため、利用店舗はトラフィックの急増に難なく対応することができました。サイト速度も維持され、決済処理も滞りなく処理されて、記録的な売上を達成しています。

予測可能なトラフィックの急増に備えるということは、サーバーの処理能力を上げることを意味しますが、パフォーマンスとコストのバランスを取る賢いスケーリング戦略を用いることが重要です。

大規模なDDoS攻撃からの防御

DDoS攻撃は、適切な防御策を講じなければ、数分で致命的な損害を引き起こす可能性があります。Cloudflareは、2024年10月に記録されたものの中で最大級のDDoS攻撃を阻止しています。

毎秒5.6テラビットの大規模な攻撃が発生しましたが、Cloudflareの重層的なセキュリティ対策により、サービスを停止させることなく影響を吸収。リアルタイムの脅威検知と自動化されたトラフィックフィルタリングの組み合わせにより、攻撃を無効化しながら顧客サイトへのアクセスを維持しました。

DDoS攻撃は、「起こるかどうか」ではなく、「いつ起こるか」の問題です。先を見越したセキュリティ対策に投資する組織は、大規模な攻撃にも耐えることができます。

大規模なトラフィックにも対応するKinstaのサポート体制

Kinstaで稼働する高トラフィックのサイトは、KinstaのグローバルCDN、スケーリング機能、および積極的なセキュリティ対策によって、サイトのスムーズな運営を維持しています。

Kinstaは、予期せぬトラフィック急増への対応、サイバー脅威の撃退、重要事の稼働率の確保などにより、多くのビジネスを支援しています。最先端のサーバー技術と経験豊富なエンジニアによるサポートの標準提供により、お客様はサイトへの予期せぬ負荷や攻撃を心配することなく、事業の成長に集中することができます。

サーバー関連リスク管理の基本マニュアルの作成方法

サーバー関連のリスク管理マニュアルの作成は、サイトをオンライン状態に保ち、スムーズに運営するのに役立ちます。潜在的なリスクを概説し、担当者を明確化し、構造化されたエスカレーションプロセスを確立することで、問題が発生した際にチームが効率的に対応できるようになります。綿密に計画されたマニュアルがあれば、サイトのダウンを最小限に抑え、ビジネスを守り、サイト訪問者の信頼を維持することができます。

マニュアルでは、以下4つの分野を網羅するようにしましょう。

  • リスクの分類:稼働率とセキュリティに対する最大の脅威を特定する
  • インシデント対応の役割とオーナーシップ:迅速な対応を行うために責任者を明確化する
  • エスカレーションとコミュニケーションルール:問題の報告、エスカレーション、解決の方法を確立する
  • 定期的なテストと訓練:実際のインシデントを再現して対応時間を短縮する
  • 更新:マニュアルを定期的に更新する

以下、各分野を掘り下げてみます。

ステップ1. リスクの分類と対応策の定義

最初のステップとして、ウェブサイトをダウンさせる可能性のある脅威を特定します。先に触れた通り、このリスクは以下4つのカテゴリに分類することができます。

  • セキュリティリスク
  • パフォーマンスのリスク
  • インフラのリスク
  • コンプライアンスのリスク

各リスクに対して、対応策を定義します。

  • ファイアウォールやオートスケーリングの使用、定期的なアップデートの実施などの予防策
  • リアルタイム監視や自動通知などの検知方法
  • セキュリティチームの参加、バックアップの有効化、トラフィックの迂回などの対応策

ステップ2. 役割とオーナーシップの割り当て

サーバー関連の問題が発生した場合には、迅速な対応が重要になります。オーナーシップが明確でなければ、誰が介入すべきかを決定するのに貴重な時間を費やさなければなりません。混乱を避けるため、インシデントの種類ごとに誰が責任者となるかを明確にし、緊急アクションのチェックリストも添付しましょう。

関係者全員が自分の役割と何をすべきかを把握できるようにすることが大切です。

ステップ3. 対応手順とコミュニケーションルールの確立

迅速で効果的なコミュニケーションは、問題の深刻化を避けるための鍵になります。マニュアルには、以下のような点を定義しておきましょう。

  • インシデントの報告方法
  • 誰に通知する必要があるのか
  • 顧客への通知方法

優先度の高いインシデントの場合は、顧客への連絡テンプレートを用意しておくと、伝達ミスを防ぎ、関係者全員の透明性を確保することができます。

ステップ4. 定期的なテストと訓練の計画と実施

マニュアルは、プレッシャーのかかる状況下での実行方法を知っていてこそ役に立ちます。したがって、定期的にテストを行うことが重要です。少なくとも、以下のような計画は立てておきましょう。

  • 四半期に一度、さまざまなタイプのサービス停止を想定したインシデント対応訓練を実施する
  • 年に一度のセキュリティ監査で、潜在的な攻撃に対するサイトの防御力をテストする
  • 実際のインシデントを分析して、今後の対応時間を短縮する

各訓練や実際のインシデントから学んだ教訓を文書化し、徐々にマニュアルを改良していきましょう。

ステップ5. マニュアルの定期的な更新

サーバー関連のリスクは時間とともに変化する可能性があるため、マニュアルは常に最新の状態に保つことが重要です。定期的に更新することで、対応戦略を常に適切なものに保つことができます。少なくとも、以下のようなタイミングで更新しましょう。

  • 四半期ごとに見直して更新:新たなリスクを追加し、対応手順を改善して、必要に応じて役割を調整
  • 重大なインシデントの発生時:成功した点と反省点を文書化し、それに応じてルールを更新
  • 年に一度:徹底した監査を行い、マニュアルが最新のセキュリティおよびコンプライアンス基準に適合していることを確認

一度作成して放置するのではなく、ウェブサイトの回復力を維持する継続的かつ先を見越したリスク管理戦略を策定しましょう。

まとめ

サーバー関連のリスクを後回しにすることは、ビジネスにとって非常に危険です。たった一度の障害で、売上が途絶え、顧客の信頼が損なわれ、復旧に多大な費用が発生します。稼働率の維持は運ではなく、徹底した備えにかかっています。

サーバー関連のリスク管理マニュアルを用意して、セキュリティ脅威、トラフィックの急増、サーバー障害、コンプライアンス上の課題に対処するための手順を確立しましょう。責任の所在を明確化し、エスカレーションルールを整理しておけば、問題発生時にも混乱することなく、チーム一丸となって迅速に対処することができます。

適切なインフラもリスク軽減に大きな役割を果たします。Kinstaのようなマネージドサーバーは、リアルタイム監視、グローバルCDN、先を見越した積極的なセキュリティ対策などの組み込みの保護機能を提供しており、サイトをダウンさせることなく、高トラフィックや予期せぬ問題に対処できるよう支援します。

すべての問題を完全に防ぐことはできませんが、対応方法を管理することは可能です。綿密なマニュアルを作成し、パフォーマンスとセキュリティを重視するサーバーを選択することで、ビジネスに重要なサイトを常にオンライン状態に保ち、顧客を満足させることができます。

Steve Bonisteel Kinsta

Kinstaのテクニカルエディター。救急車や消防車を追いかける記者としてキャリアをスタート。1990年代後半からインターネット関連の技術情報を担当している。