今日、ウェブサイトは「ビジネスの顔」と言っても過言ではありません。インターネット利用者の多くは、リンクやボタンをクリックすると、瞬時にコンテンツが表示されることを無意識に期待しています。ウェブページは2秒以内に読み込まれるのが理想とされており、たった1秒の遅れが収益の大幅な減少につながることもあります。
たった1秒の遅れが収益に影響を与えることを考えれば、サイトを稼働するサーバーダウンし、完全にアクセスできなくなってしまう状況は、想像しただけでゾッとします。サイトがダウンしている(または読み込みに時間がかかっている)間は、潜在的な売上や見込み客獲得のチャンスを逃すことに。これは、ビジネスにとって最悪とも言える事態です。
初めてサイトに訪問するユーザーだけでなく、既存の顧客もイライラを募らせて代替サービスへの移行を検討し始めるかもしれません。業界や販売商品を問わず、顧客が競合他社に流れてしまうのだけは避けたいもの。したがって、サイトのダウンは最大限に回避することが非常に重要です。
今回は、サイトのダウンがビジネスにどのような悪影響を与えるのか、技術的な原因、そしてサイト所有者として従うべきベストプラクティスをご紹介します。また、サイトのダウンを防ぐためのヒントも見ていきます。
サーバーダウンがサイトに与える影響
サイトのダウンは、月に1〜2時間発生する程度であれば深刻な問題にはならないだろうと考えている方もいるかもしれません。サイトが予期せずダウンすると、具体的にどのようなことが起こるかを掘り下げてみましょう。
信頼性の損失
度々クラッシュするサイトは、まず顧客や訪問者からの信用を失います。ウェブサイトは、ビジネスの第一印象を決定づける場所。サイトにアクセスできない状態が続けば、「自社のサイトさえ適切に管理できない企業」というレッテルを貼られ、ユーザーは離れてしまいます。
クロール率と検索順位の低下
サーバーが遅く、1つのURLを開くのに2秒以上かかる場合、GoogleがクロールするサイトのURLの数を制限する可能性があります。Googleは、高速なサイトやエラーのないサイトを評価しています。また、サイトがダウンしたりサーバーの応答時間が長いと、直帰率も高まります。ユーザーエクスペリエンスは、Googleの順位決定要因の1つであり、高い直帰率はユーザーエクスペリエンスの低さを意味します。
また、SEOにも悪影響を与えます。共用サーバーでは珍しくありませんが、ダウンしている状態が長く続くと、検索エンジンの順位が下がり、失ったGoogleの評価を取り戻すためには、多くの時間を費やして根気よく対処しなければなりません。
収益の減少
オンラインストアでの買い物は今や一般的ですが、いまだにウェブ上での商品の購入に警戒心を抱いているユーザーは少なくありません。そのため、ピーク時にサイトがダウンしたり低速になったりすると、売上に影響が出るのは明らか。また、ユーザーが商品の購入手続きを進めている最中にダウンすれば、ほぼ確実に収益を失うことになります。
Carboniteの調査によると、中小企業のサイトがダウンすると、1分につき平均137ドル〜427ドルの損失につながります。大企業を対象としたガートナー社の調査では、1分あたりの損失はなんと5,600ドル。Amazonでは、サイトがダウンすると1秒ごとに22万ドル以上の費用がかかると言われています。もちろん、損失額はサイトによって異なりますが、サイトが停止する恐ろしさは十分想像がつくはずです。
サイトがダウンする主な原因
ウェブサイトがクラッシュしたりダウンしたりする原因は複数あります。以下、一般的な原因をご紹介します。
格安レンタルサーバー
安価なホスティング(レンタルサーバーとも)は、サイトがダウンする原因になり得ます。サイトのデザインやUX、速度にどれほどこだわっても、ホスティングが安定しないとすべてが水の泡になります。
格安のものの多くは共用サーバーに分類されます。日本国内であれば、ロリポップ!、エックスサーバー、さくらインターネット、国外であればBluehostや HostGator、Siteground、GoDaddyのような企業がその商品ラインナップ内で提供しています。月額500円程度からと手頃な価格で利用できるのが特徴です。
その安さの理由を理解して「自サイトで許容できるか」検討することが重要です。共用サーバーでは、「共用」という名の通り、1つのサーバーを複数の利用者で共有することになります。サーバーは過密状態になる傾向にあり、実は200以上の利用者とリソースを共有していることも珍しくありません。同じサーバーを利用していることから、他のサイトで発生した問題も波及し、サイトのパフォーマンスと稼働率が損なわれることがあります。
また共用サーバーは、収益の確保するためにアップセルとアドオンに依存していることも懸念点です。格安WordPressレンタルサーバーの罠についてはこちらで詳しくご紹介しています。
トラフィックの急増
バイラルコンテンツは誰もが生み出したいもの。しかし、どのようなコンテンツがいつ「バズる」かは予測が困難です。アカデミー賞で司会を務めたエレン・デジェネレスが投稿した有名俳優陣とのセルフィーは今でも記憶に新しく、24時間以内に300万回以上もリツイートされ、Twitter(現X)をクラッシュさせました。史上最もリツイートされた投稿となりました。
If only Bradley's arm was longer. Best photo ever. #oscars pic.twitter.com/C9U5NOtGap
— Ellen DeGeneres (@EllenDeGeneres) March 3, 2014
アクセスやアクティビティが極端に増加すると、500エラーを引き落としたり、最悪の場合はサイト全体がクラッシュしたりする可能性があります。Kinstaの顧客であるDARTDronesのサイトもまた、テレビ出演後にアクセスが殺到(導入事例はこちら)。しかし、Kinstaのインフラストラクチャを利用して、数千の同時接続にも難なく対応することができました。
多くの共用サーバーは、サーバープロセス、接続数、CPU使用率、メモリ、データベースクエリなどを制限しています。トラフィックが急増しこの制限を超えると、ホスティング会社がサイトを停止することがあります。というのも、他の利用者のサイトを保護するために、このような措置を取らざる終えなくなります(これが共用サーバーの欠点)。結果として、サイトがダウンするたびに収益が失われることになります。
Kinstaでは、ウェブサイトがビジネスにとって大きな収益源となることを理解し、問題が検出された時点で即座にお客様に連絡。アクセスの殺到は大きな成功であり、それを支えるのがKinstaの使命です。Kinstaでは、ワーカープロセスにのみ制限を設けています。
ワーカープロセスは、サイトが一度に処理できる同時リクエスト数を決定します。サイトへのキャッシュされていないリクエストは、ワーカープロセスによって処理されます。
ブログや静的WordPressサイトを運営していて、主にキャッシュからサービスやコンテンツを提供している場合は、多くのワーカープロセスが必要になることはありません。ECサイトや会員制サイト、コミュニティサイトなどは一般にリソースの消費が多く、キャッシュできないコンテンツが多数あります。このようなサイトでは、ワーカープロセスの数が非常に重要になります。詳しくは、WordPressの会員制サイトをホスティングする際の注意点をご覧ください。
ハッキングの試みやマルウェア
すべてのアクセスが「善」であるとは限りません。悪質なボットやプロキシトラフィックがサイトをクロールしていることで、訪問数が急増している可能性もあります。
分散型サービス拒否(DDoS)攻撃もまた、大量のトラフィックを与えてサイトをクラッシュさせる悪質な攻撃です。悪意あるユーザーによる攻撃を受けて、サイトが利用できない状態になってしまうこともあります。
WordPressは常に最新バージョンを利用し、新たなバージョンがリリースされたらすぐにプラグイン(およびPHP)を更新するなどして、予防策を講じることが重要です。また、常に強力なパスワードを使用して、定期的に変更してください。WordPressのセキュリティに関するヒントはこちらをご覧ください。
Kinstaは、IPジオロケーションブロック、6回以上ログインに失敗したIPの自動ブロック、ハードウェアファイアウォールなど、多くのセキュリティ機能を備え、ハッカーの侵入を防いでいます。万が一サイトがハッキングの被害に遭った際には、無料でサイトの復旧をお手伝いしています。
また、SucuriやCloudflareのようなエンタープライズレベルのウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)を利用することをお勧めします。Kinstaでは、CloudflareのWAFをすべてのプランで提供しています。WAFは、サイトとサーバー間に設置され、悪質なトラフィックをブロックします。これにより、サイトの高い稼働率を保ちながら、プランの上限訪問数を不本意に超過することを防ぐことができるため、費用対効果も高まります。
プラグインやテーマの問題
何千ものテーマやプラグインの中から、好きなものを簡単に利用できるのはWordPressのメリットですが、時にはそれが弱点となることも。
WordPressのバージョンやホスティングで使用されている技術と互換性がないテーマはプラグインは、利用することができません。プラグインがどれほど優れていても、たった一回の誤った更新が、WordPressサイトをダウンしてしまうことがあります。
その際、死の真っ白画面や500エラーはよく発生するエラーです。変更を加えた後は、必ずエラーが発生していないかどうかを確認するようにしてください。多くの場合は、更新やインストールは問題なく実行されますが、不具合が生じる可能性もゼロではありません。
Kinstaでは、毎日の自動バックアップ、手動、システム生成、そしてダウンロード可能なバックアップを提供しています。また、サイトごとにステージング環境も付属し、ワンクリックで本番サイトをステージング環境に複製可能です。ステージング環境であれば、プラグインの更新などの変更を安全にテストすることができます。その後、問題がないことを確認したら、本番環境にワンクリックで変更を反映します。
あるいは、アップデートを実行する前に手動でバックアップを作成しておけば、万が一の時もすぐに復元できて安心です。
なお、プラグインやテーマの更新は、最新バージョンのリリース後、少し時間を置いてから実行することをお勧めします。また、変更履歴をチェックし、セキュリティに関するものがないかも確認しましょう。リリース直後にセキュリティアップデートが行われることがあります。
新たなバージョンや更新は、このような問題を引き起こすだけでなく、パフォーマンスに関する問題の原因になる可能性もあります。例えば、プラグインが外部サービスに問い合わせを行ってタイムアウトしたり、プラグインが適切にコーディングされていなかったりなどは良くあること。WordPressサイトのサードパーティのパフォーマンス分析に関する詳細はこちらをご覧ください。
サイトのサーバーダウンへの対処法
ここまでですでに様々なヒントをご紹介していますが、最大限サイトの可用性を確保するため、サイトのダウンを未然に防ぐ方法をもう少し掘り下げます。
死活監視
死活監視ツールは無料・有料を問わず数多く存在します。これらを使用してサイトを監視すると、サイトがダウンした際に通知を受け取ることができます。これにより、素早く対策を講じることが可能です。Kinstaでは、すべてのサイトで3分ごとに稼働状況監視を行います。サイトが稼働していないことが検出された場合は、弊社サポートエンジニアが即座にサイトの復旧作業にあたります。Kinsta以外のホスティングを利用していて、死活監視の機能がない場合には、以下のようなツールがお勧めです。
- updown.io
- downnotifier.com
- Uptime(パフォーマンスも監視可能)
- Pingdom(パフォーマンスも監視可能)
- Uptime Robot
- Freshping
- StatusCake(パフォーマンスも監視可能)
- ManageWP(パフォーマンスも監視可能)
またKinstaでは、Kinstaサイト、MyKinsta、そしてホスティングプラットフォームに影響を与えるシステムの中断を自動的に通知するため、システム状況を確認できるページ(外部でホスティングしているため、万が一のシステム中断時にも確認可能)をご用意しています。右上の「Subscribe To Updates」して、メールやSNSで通知を受け取ることができます。
サイトダウン時に表示するページの作成
メンテナンスなどでサイトを一時的に停止する場合、まだサイトにアクセスできる場合には、専用のページを作成しましょう。単に真っ白な画面を表示するのと、復旧の目処や理由を表示するのでは、訪問者への印象が大きく変わります。
「サイトのメンテナンス中です」や「一時的にサービスをご利用いただくことができません」などの短いメッセージを添え、状況を把握していることを示すことで、信頼性の回復につながります。以下、いくつか例をご紹介します。
Ahrefs
Mailchimp
または、Statuspage.ioようなサードパーティのサービスを利用することもできます。メンテナンスモードを拡張する方法はこちらをご覧ください。
SNSの活用
何らかの問題、特にサイトのサーバーダウンが発生した際、多くのユーザーがまず確認するのがSNS。したがって、SNSで速やかに状況説明などを行うことも重要です。緊急時に不安を募らせたユーザーを安心させるのは、SNSマネージャーの大切な任務です。
またXのDMや、その他のSNSプラットフォームを通じて謝罪し、支援を申し出るのも効果的です。
We're sorry, our website is down. If your need is immediate please DM your policy # and along with your contact info so we may assist you. Thank you. Tenora
— Travelers (@AskTravelers) August 1, 2018
ご迷惑をおかけしており、大変申し訳ございません。現在弊社ウェブサイトがダウンしています。お急ぎの場合は、お客様番号とご連絡先をダイレクトメッセージでお送りいただけましたら、対応させていただきます(原文の日本語訳)
いずれにしても、サイトのダウン時には常に透明性を保ち、真摯に謝罪しましょう。SNSでの隠蔽や嘘はすぐにバレてしまうのが落ちです。
信頼できるホスティング選び
先に述べた通り、格安レンタルサーバーでサイトが定期的にダウンするというのは往々にしてあります。
特に専門知識に不安があったり、技術的な問題に対処する専任のウェブマスターがいない会社は、マネージドホスティングを選ぶことを強くお勧めします。事業用のサーバーやクライアントの保守となればなおさらです。
時は金なり。優れたホスティングは、サーバーサイドの問題に対処してくれるだけでなく、技術サポートが迅速に問題を特定し、すぐに解決策を提示してくれます。
KinstaのWordPress専用マネージドホスティングは、コンテナ技術を用いたインフラストラクチャ、専任チームによる先を見越した負荷管理、Cloudflare統合、そしてGoogle Cloud最高クラスのC2およびC3Dマシンを採用。高い柔軟性を確保しながら、SLAに裏打ちされた99.9%の稼働率を保証しています。従来のサーバーとは一味違います。
サイトの速度と読み込み時間の改善
ユーザーエクスペリエンスとコンバージョンの最適化には、毎秒が重要になります。サイトの稼働率を限りなく100%に近づけながら、サイト速度の改善にも取り組まなければなりません。
サイトの読み込みに10秒以上かかる場合、訪問者の大半は離脱してしまうため、サイトはダウンしたも同然です。
サイト速度を改善する方法は、WordPressサイト高速化のヒントをご覧ください。また、10のヒントを盛り込んだ電子書籍『WordPressサイトを高速化する方法』もぜひお読みください。無料でダウンロード可能です。
定期的なバックアップ
万全を期しても、時にサイトが停止してしまうことがあります。不測の事態は起こるもの。したがって、定期的にバックアップを取るようにしましょう。
WordPressではバックアップを簡単に作成することができます。多くのホスティングサービスがバックアップ機能を提供しており、プロセスを自動化するWordPressバックアッププラグインも多数存在します。
バックアップがあれば、すぐにサイトを復旧することができます。
まとめ
サイトのダウンは、時として避けられません。だからこそ、できる限り迅速に復旧できるよう、適切なツールやサービスを用意し、もしもの時に備えておくことが重要です。これにより収益の損失を防ぎ、訪問者や潜在顧客に与える全体的な印象を改善することができます。
他にも役立つヒントや対策をご存知でしたら、以下のコメント欄でお聞かせください。
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