WooCommerceストアは、他の種類のサイトにはない特有の要件や特徴があります。すべてのサイトに言えることではありますが、特にオンラインストアでは、サイトが常に稼働していることが非常に重要です。
WooCommerceストア用にステージング環境を確保することは、ECサイトのオンライン状態を維持しつつ、機能の改善や強化、アップデートを行うのに有用です。
ステージング環境(ステージングサイトとも)とは、簡単に言えば、一般公開されていない本番サイトのコピーです。ステージング環境があれば、本番サイトに影響を与えることなく、昨日の更新やデザインのテストなどを安心して行うことができます。
そこで今回は、WooCommerceストア用のステージング環境について掘り下げ、その必要性や作成方法を詳しくご紹介していきます。
ステージング環境とは
先に触れた通り、ステージング環境は「一般公開されていない本番サイト」のように使用することができます。本番サイトに変更内容を反映する前に、ステージングサイトに変更を加えるのは一見余計な手間にも思えますが、ステージング環境は、変更に誤りや不備がないかを確認するためのテスト環境になります。
プロセス全体にとって重要なのはこの概念で、多くの場合、本番サイトにはできるだけ変更を加えたくないものです。というのも、何か1つに手を加えるだけでも問題を引き起こす可能性があり、サイトが正常に機能しなくなったり、最悪の場合は停止してしまう可能性があります。結果として、顧客や訪問者、収益に悪影響を与えかねません。
一般的なプロセスとしては、データベースとともにサイトのファイルを複製します。これはワークフローに応じて、別のサーバー、ローカル開発環境、またはその両方に置かれます(これについては後ほど)。必要な作業を終えたら、ローカルからステージングサーバー、あるいはステージング環境から本番環境へと、更新内容を反映することができます。
この作業を行う間、本番サイトに影響を与えることはなく、ステージング環境で変更や更新をテストした上で、安全に本番サイトを更新することができます。
WooCommerceストアのステージング環境を作成する重要性
ステージング環境に馴染みがない方は、ここまで読んで面倒なワークフローに思えるかもしれません。しかし、WooCommerceストアのステージング環境を作成することは、非常に重要です。
ECサイト利用者は年々増加しており、近い将来にはごく当たり前の存在になることが予想されています。人気ECサイトとなれば、世界中から買い物客が集まります。つまり、24時間絶え間なくトラフィックを処理する準備が欠かせません。
つまり、ECサイトにとって、サイトの稼働率はビジネスの成功を左右します。
WooCommerceストア用にステージング環境を作成すると、必要な機能の拡張や変更を安全にテストしながら、本番サイトを常にオンライン状態に保つことができます。これには、数々の利点があります。
- サイトがダウンすることを心配せず、必要な部分に変更を加える時間を十分に確保できる。
- ステージング環境が本番サイトに影響を与えることがないため、ミスやエラーが発生しても大丈夫。
- エンドユーザーに影響を与えることなく、デザインの変更やユーザーインターフェース(UI)の更新をテストできる。
- 開発チームを抱えている場合はスムーズな分業が可能に。開発者がサイトのデザインや機能性に手を加えている間、その他の必要な作業に集中することで生産性が最大化される。
他にもオンラインストアの設定に応じて、多数の利点があります。ローカルサイト、ステージングサイト、本番サイトと分割することで、稼働率を高く保ち、収益を高めることができます。
WooCommerceストアのステージング環境の用途
WooCommerceストアのステージング環境の使い道はすでにいくつか触れましたが、もう少し掘り下げてみます。
単純な更新や微調整であれば、わざわざステージング環境を作成してテストせず、本番サイトに直接変更を加える方が簡単な場合も多くあります。とはいえ、基本的な変更こそが、ステージング環境を使用する最大の理由とも言えます。
WordPressのコア、テーマ、プラグインの更新は、死の真っ白画面(WSoD)のようなエラーを引き起こす可能性があります。ファイルに変更を加えて非互換性が生じると、サイトがオフラインになることも。
コアの更新がうまくいかない場合は、取り返しのつかないエラーが生じるかもしれません。なお、この場合には、以下のようなトラブルシューティングを行いましょう。
- 安全なファイル転送プロトコル(SFTP)を使用してサイトのサーバーにログインする
- 問題のあるテーマやプラグインを特定するため、すべてを一度無効化して個別に有効にしていく
- テーマやプラグインの機能を整理する(テーマはサイトが壊れたように見え、プラグインは必要な機能が消えてしまう可能性が高い)
テーマやプラグインの非互換性は、比較的簡単に修正できますが、頭痛の種になることに変わりはありません。サイトがダウンし、収益やトラフィックに打撃を与える可能性があります。
これはプラグインやテーマのインストールにも同じことが言えます。インストールと更新は異なる操作ですが、どちらもファイルの変更と追加に関係してます。新たにプラグインやテーマを追加したい場合は、まずはステージング環境にインストールすることで、本番稼動前にバグや非互換性を確認することができます。
テーマのインストールに関しては、サイトを再設計する場合に行うことになりますが、これはまさにステージング環境が役立つ用途であり、サイトの一新には必ず使用したいところです。
バックアップとして使用する
また、本番サイトをステージング環境にコピーすることで、サイトの完全なバックアップとして使用できる可能性もあります(実際にはもっと複雑ですが)。
確かに最悪の事態に備えて、サイト全体を別の環境で利用することができるようになりますが、この「バックアップ」は、過去のサイトのスナップショットに過ぎません。
本番サイトでエラーが発生することを予測してステージング環境を作成するというのは、実際のところほぼ不可能です。また、ステージング環境で常に最新のデータベースが使用されるとは限りません。ステージング環境から本番サイトにデータベースを反映することは基本的にありません。
これは、1分間に何度も売上が発生し得るWooCommerceストアには特に該当します。ステージング環境に本番サイトを取り込み、それからしばらくしてエラーが発生した際、ステージング環境を本番サイトに反映しても、数百件の注文が消えてしまうかもしれません。
WooCommerceストアのステージング環境を作成する方法
経験豊富なウェブビジネスオーナー、ホスティング会社、そして開発者は、一般にステージング環境がほとんどのサイトにとって重要であることを理解しています。そのため、サイトのステージング環境を作成する方法は多数あり、WordPressを使用している場合はとても簡単です。
- 多くのWordPressホスティングには、ステージング環境を作成する機能が組み込まれている。別の管理画面やインターフェースに移動する手間が省けるため、これが一番便利。
- WP StagecoachやWP Stagingなどのプラグインを使用する。一部でDuplicatorのようなプラグインが勧められているが、ステージング環境と全く同じ機能は持たない。
- 技術的な知識が十分にある場合は、自分でステージング環境を作成することも可能。多くのユーザーにとっては難易度の高い選択肢だが、高性能な環境を実現できる。
また、現在使用しているツールやソフトウェアの機能を見直してみることをおすすめします。利用中のホスティングサービスで簡単にステージング環境を作成できるかどうかも確認してみましょう。
ステージング環境を作成できるホスティングが便利な理由
自分で作業を行うことには、要件に応じてより柔軟に制御できるという利点もありますが、WooCommerceストアのステージング環境を作成する場合は、ホスティング会社の機能やユーザービリティをある程度利用できる方が効率的です。
ホスティングのステージング機能を使用するメリットは多数あります。
- エコシステムの一部にステージング環境が組み込まれているため、サーバーとの接続を心配する必要がない。
- サーバーのセットアップ方法を熟知しているため、より良いステージング環境を作成できる。
- ホスティング会社のインフラを使って本番サーバーをより良く複製可能(同じ仕様、ソフトウェア、最適化)。
- 管理画面やインターフェースを切り替える必要がないため、ユーザビリティの観点からも有用。多くのホスティング会社が簡単に利用できるステージング環境を提供しており、サーバー間で変更を反映したり取り込んだりするものを選択することも可能。
Kinstaでは、数回のクリックで簡単にステージング環境を作成することができます。
KinstaならWooCommerceストアのステージング環境を簡単に作成可能
Kinstaの機能群の中には、WordPressサイトごとに無料で作成可能なステージング環境があります。WooCommerceストアにももちろん作成することができ、現在は51,000のステージング環境が稼働しています。
ステージング環境のセットアップ、更新、削除、および管理が可能で、数回のクリックで実行できます。本番環境とステージング環境間のデータやファイルの反映と取り込みは数秒で完了します。
さらに、Kinstaのローカル開発ツール「DevKinsta」を使用すると、より効率的なワークフローを確立できます。
DevKinstaは、開発したローカルサイトをKinstaのステージング環境に反映できる完全無料のツールです。サーバーのリソースを消費することなく開発作業を行い、変更をステージングサーバーでテストすることが可能になります。
Kinstaのステージング環境の詳細はこちらでご覧いただけますが、今回の記事では、基本的な情報をいくつかご紹介します。
また、WordPressサイトにより高度なステージング環境を最大5つ追加できるプレミアムステージング環境アドオンもご用意しています。WooCommerceストアのようなリソースを大量に必要とするサイトのテストや開発に適しています。
WooCommerceストアのステージング環境を作成する方法(KinstaとDevKinstaを使用)
ここからは、Kinstaの機能とDevKinstaの両方を使用してWooCommerceストアのステージング環境をセットアップする方法を見ていきます。
まずは実行に移る前に、どのようなワークフローを作成するかを検討しましょう。
1. ワークフローを決定する
すでに触れていますが、ステージング環境は、変更をテストするために別のサーバーでホスティングするというだけではありません。サイト開発における全体的なアプローチと考えてください。したがって、まずはワークフローを決定することが大切です。
先に述べたとおり、以下3つの環境を確保することをおすすめします。
- ローカル環境:自分のコンピュータ上でストレスなく開発を行える環境。ただし、ローカルでの設定と実際に稼働している本番環境の間で完全に一致した動作や設定を得ることはほぼない。
- ステージング環境:ローカル環境で加えた変更をテストするためのオンライン環境。
- 本番環境:公開サイト。デザインの変更や更新を実施する間、最も重要な存在。
これにより、ホスティングリソースに負荷をかけることなく自分のペースで作業を進行し、デザインが形になるにつれてサイトを拡張していくことができます。なお、これに加えて、以下のような側面も考慮する必要があります。
- データベースの同期:WooCommerceストアのステージング環境で行うべき大きな懸念事項。多くの場合、ローカル環境とステージング環境に本番のデータベースを移動するが、そのデータベース全体を再び本番環境に戻すことはない(これが良いステージング環境とマイグレーションツールの違い)。
- ファイルの同期:データベース同様、作業を行ったファイルをどのように本番サイトに同期させるかを検討する必要がある。すべてを反映することもできれば、変更したファイルのみを反映することもできる。
開発者によっては、Gitが重要な仲介役になることもあります。Gitはテーマやサイトのファイルを「プッシュしてデプロイ(push-to-deploy)」の方式でホスティングするのに適しています。これにより、ローカルサーバーでの作業後、Gitにファイルをプッシュして、マクロやスクリプトを設定し、ステージング環境や本番環境にファイルをデプロイすることができます。
サーバーにできるだけ直接触れないようにすることで、ワークフローの各ステップで問題が発生する可能性を低減することができます。これがステージング環境を導入するもう一つの利点と言えます。
2. ステージング環境を作成する
Kinsta内でステージング環境を作成するのは非常に簡単です。まずは、MyKinstaにログインし、ステージング環境を作成したいサイトを選択します。
次に、右上の「ジャンプまたは検索…」をクリックすると、以下のようなウィンドウが表示されます。「新規環境の作成」をクリックします。
以上で完了です。数分後、ステージング環境が確立されます。SSL(セキュアソケットレイヤー)設定は自動的に引き継がれるため、追加の設定は不要です。
3. ステージング環境で作業を行う
Kinstaのステージング機能は、ほぼすべての開発環境で動作します。DevKinstaを併用すると、WooCommerceストアのステージング環境を使用するプロセスがより簡素化され、便利な機能も手にすることができます。
DevKinstaを起動して、「サイトを追加」ボタンをクリックし、以下の画面から「Kinstaからインポート」を選択します。
あとは開発作業を行うのみ。作業を終えたら、ステージング環境に変更を反映します。
4. ステージング環境の変更を本番環境に反映する
DevKinstaにサイトをインポートするのと同じ要領で、変更を戻すことができます。DevKinstaの「サイト情報」パネルを開いて、「同期」ドロップダウンから「Kinstaに反映」を選択します。
これだけで完了です。
変更をステージング環境に反映したら、サーバー上にあるテストを徹底的にテストしましょう。ローカル環境では見つけられなかった非互換性などを特定することができます。
テストを終えたら、変更を本番環境に移します。
MyKinstaでステージング環境を開き、右上にある「別の環境に反映する」ドロップダウンを選択します。「次に適用する→Live」を選択すると、本番環境に変更を反映することができます。
このとおり、非常にシンプルな手順になります。その他、選択的プッシュ機能などより詳しい情報はこちらをご覧ください。
まとめ
サイトを常にオンライン状態に保つことは、特にWooCommerceストアのようなオンラインショップには非常に重要です。ユーザーに常に商品を販売できるよう、可能な限りサイトを稼働したいもの。ステージング環境を確保すれば、本番サイトに影響を与えることなく、安全にストアの機能拡張、拡大、再設計、最適化を行うことができます。
今回は、WooCommerceストアのステージング環境を作成することの重要性と、作成方法をご紹介しました。ステージング環境を設定する方法は他にも多数ありますが、ホスティング会社の機能を利用するのがベストです。Kinstaは、標準ステージング環境に加えて、DevKinstaによるローカル環境、そしてプレミアムステージング環境アドオンも提供しています。サイトのエコシステム全体をKinstaのアプリケーション内に保持することで、より高い稼働率を確保することができます。
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