WordPressでウェブサイトを作ると決めたら、まず最初のステップは、ホスティングサービス探しです。
WordPressは、世界トップクラスのコンテンツ管理システム(CMS)です。ソフトウェアは無料で使用できますが、稼働にはサーバーが必要になります。ホスティングプロバイダーは多数存在しているため、自分に合ったものものを見つけるのは簡単ではありません。
有料のホスティングサービスでは、通常、契約するサービスの種類に応じて月額料金が発生します。
とは言え、WordPressサイトを立ち上げたばかりなら、まずは無料のレンタルサーバーを利用できた方が便利。きっとあなたも、そう思うはず。
一部のレンタルサーバーでは、期間の制限なく利用できる無料のWordPress用ホスティングプランを提供しています。いきなり投資することなくホスティングサービスを試すことができ、必要になったら有料プランにアップグレードできます。
一見、申し分ない選択肢です。
しかし、無料のレンタルサーバーには、いくつも見過ごすことのできない落とし穴があります。この記事で詳しく見ていきましょう。
無料のWordPress用レンタルサーバー
WordPressサイトに使用できる無料のレンタルサーバーは存在します。WordPressソフトウェアは、WordPress.orgからダウンロードして無料で使用できます。しかし、コンテンツを保存し、ウェブサイトを公開するにはウェブサーバーが必要です。
WordPress.orgでは、ホスティングプランを利用して、自己ホスティング型ウェブサイトを構築することができます。
WordPress.orgアカウントのセットアップは複雑だと思われがちですが、そんなことはありません。WordPressをインストールするには、通常データベースを作成し、スクリプトインストーラを使用することになりますが、多くのサーバーで、契約後、ワンクリックで簡単にWordPressをインストールできます。
専門知識がなくても、無料のウェブサイトビルダーを使えば、必要な設定を自動で行うことができます。
WordPressを運営するAutomattic社は、WordPress.comというプラットフォームでウェブサイトビルダーが一体となったサービスを提供しています。
WordPress.comは言うなれば、WordPress.orgのソフトウェアをベースに構築された「サービスとしてのウェブサイト」です。
自分でWordPressをダウンロードし、サーバーを選んで料金を支払う代わりに、WordPress.comのアカウントを作成するだけでサイトを開設することができます。
WordPress.comなら、無料でウェブサイトを運用でき、(ある程度まで)必要な処理を行なってくれます。
WordPress.comの優れた機能は以下の通り。
- 無制限の帯域幅
- 3GBのストレージ容量
- 無料のSSL証明書
他にも以下のようなメリットがあります。
- 簡単なセットアップ
- 管理画面とサイトの編集が可能(何百もの無料WordPressテーマ、テンプレート、プラグイン)
- モバイルアプリとデスクトップアプリ
しかし、以下のようなデメリットも。
- プラグインのインストールに制限あり
- 無料プランではcomのサブドメインのみ使用可能
- サーバーに直接アクセスできない(コントロールパネルからFTPファイルマネージャへの接続、データベース管理が不可)
無料のWordPress用レンタルサーバーを選ぶ理由
有料プランではなく、無料のWordPresホスティングを選択する理由には、以下のようなものが挙げられます。
- 費用をかけずにまずは試してみたい
- 小規模なサイトを運用するため無料プランで十分
- 頻繁に利用しないためサーバー費用を削減したい
技術に精通しておらず、単にコンテンツを共有したいだけのユーザーにとっては、無料のレンタルサーバーは良い選択肢となり得ます。しかし、SSDストレージの仕様を重視し、サーバーやMySQLデータベースに直接アクセスすることがある中級〜上級者にはお勧めできません。
また本格的なサイトや、アクセス数の多いサイトにもお勧めしません。この点については後ほど詳しくご説明します。
WordPress用のレンタルサーバーが無料で利用できる理由
収益の観点から考えると、無料でレンタルサーバーを利用できる理由が気になります。レンタルサーバーは、どのように利益を得ているのでしょうか。
一部のレンタルサーバーでは、ベータテストの一環としてWordPress用ホスティングプランを無料で提供しています。これによって、正式にサービスをリリースする前に、ユーザーテストを無料で実施することができます。
あるいは、WordPress Foundationが所有するWordPressのように、多くのユーザーに利用してもらう目的で、無料でホスティングサービスを提供している場合もあります。
また、ビジネス戦略の一部として提供している企業も。新興企業では、しばしばフリーミアムビジネスモデルが採用されています。サービスを無料で提供することで自社製品を多くの人に宣伝し、顧客ベースを構築することが狙いです。
その後、顧客が無料サービスをすっかり使い慣れたところで、ドメインの登録、追加ストレージ、検索エンジン最適化(SEO)サービスなど、中核となる事業から外れた高度な機能をアップセルすることで収益を上げるといった具合です。
無料のWordPress用レンタルサーバーに付帯する主な機能
ウェブサーバーは、ディスク容量と帯域幅を提供します。
重要な機能の1つが、コンテンツの保管領域となるディスク容量です。保管領域がなければ、写真、動画、コード、テキストなどのデジタルファイルを格納できません。
WordPressのサーバーは、ウェブサーバーの物理ネットワークやクラウドストレージ上にコンテンツを格納します。
ホスティングサービスのもう1つの重要な機能が帯域幅、すなわちサイトやユーザー、およびサーバー間で転送できるデータ量です。
無料レンタルサーバーでは、ディスク容量と帯域幅に制限があります。また、サイトに広告が挿入されたり、自分のサブドメインが使用できなかったりすることも。
WordPress用サーバー(無料・有料)を選ぶ際に注意したい10のこと
無料のレンタルサーバー最大のメリットは、費用がかからない点です。無料でサービスを試し、煩わしい契約もないため、満足いかなければすぐに利用をやめることができます。
しかし、WordPressサイトのホスティングプランを選択する前には、必ず調査を行いましょう。公平なサイトやフォーラムでレビューをチェックし、利用規約(TOS)と細則に目を通して、コンテンツの管理に制限がでないかを必ず確認すること。優れた無料のレンタルサーバーを見つけたと思っても、法律上、サイト上のコンテンツを所有できなくなる恐れがあります。
以下の10の要素を考慮して、賢くサーバーを選びましょう。
1. 永続性
有料サービスを提供するレンタルサーバーは、比較的長く存続する傾向にあります。無料のレンタルサーバーを利用する際には、この点に注意が必要です。今日存在したサーバーが、明日にはサイトのデータとともに消えている可能性はゼロではありません。
例えば、Yahoo!が運営していたGeoCitiesは、2009年にサービスを終了しました。GeoCities Japanも当時は残ったものの、結局2019年に閉鎖されています。
永続性は、ホスティングサービスの終了だけに留まらず、サイトが突然削除されたり、アーカイブされたりする可能性も意味します。
000webhostのサポートフォーラムでは、ウェブサイトが突然アーカイブされた事例が報告されています。
ほとんどの無料レンタルサーバーでは、リソースの削減のため、頻繁に更新が行われていないサイトを定期的かつ大規模に削除しています。また、更新が行われているサイトであっても、このような処理の影響を受ける可能性があります。
また、リソースを削減する別の方策として、メモリや処理能力の制限を超えたウェブサイトを自動的に一時停止することもあります。さらに、サードパーティや利用者の報告でサイトを停止することも。
有料のホスティングサービスもサイトを一時停止できますが、処理に余計な費用がかかることから、実行される可能性が低く、より安全にデータを保持することができます。
2. パフォーマンス
複数のウェブサイトがサーバーリソースを共有すると、パフォーマンスが低下します。あるサイトでアクセス処理のために利用可能な帯域幅を超えるリソースが必要になれば、他のサイトに割り当てられていた帯域幅が使用されます。
こうした状況は、帯域幅に制限があり、誰でも利用できる無料のレンタルサーバーで顕著に見られます。
パフォーマンスが安定せず、断続的なサイトのダウン、自動でのWordPressのバックアップやメール配信の失敗、ネットワークエラーが発生することも予想されます。
有料のウェブホスティングでは、PHPの最新バージョンのような、最新の機能を利用することができます。効率的なサイト管理を支援する、標準コントロールパネルの代替品などもその1つです。
3. サーバーのレスポンス
有料ホスティングサービスを提供する会社には、無料レンタルサーバーとは違い、無制限のディスク容量、十分な帯域幅を誇る堅牢なサーバーを購入できるだけの資金力があるものです。
無料のレンタルサーバーでは、複数のウェブサイトで共有される限られたリソースを利用することになります。そのため、WordPressのプラグインやテーマのインストールに必要なディスク容量や帯域幅を確保できないことがあります。
信頼できるWordPressホスティングサービスにお金がかかるのには理由があります。ホスティングプランの料金内訳を見ると、30%がデータセンターのサーバー料金に使用されており、残りはマーケティングや従業員の給与など、その他費用に充てられています。
4. ウェブサイトの速度
無料のレンタルサーバーは、他の利用者と限られたリソースを共用するため、ウェブサイトの速度は低速にならざるを得ません。サーバー上に複数のウェブサイトがあればなおのこと。
有料のホスティングサービスでは、容量と帯域幅の面で様々な選択肢が設けられ、サイトの表示速度は高速です。一方、無料のホスティングプランの場合、選択の余地はなく、速度を最適化することはできません。
5. セキュリティとデータプライバシー
セキュリティとデータプライバシーは、非常に重要です。
セキュリティ侵害は、ここ数年で67%増加しており、アメリカ人の約半数がデータ侵害によって個人情報が漏洩した経験があると回答しています。
WordPressはプラットフォームとしては安全ですが、その人気ゆえに度々データ侵害の標的になっています。
セキュリティを強化する方法の1つが、信頼できるウェブサーバーの選択です。有料のホスティングプランには通常、サイトを安全に保つ機能が組み込まれています。
無料のレンタルサーバーでは、割り当てられるリソースが少ないため、DDoS対策、ファイアウォール、プラグインの脆弱性チェックなどのセキュリティ関連機能が付帯していない可能性があります。
安全なホスティングインフラの確保には費用がかかるもの。したがって、無料のレンタルサーバーでは、最も重要なセキュリティ強化策が軽視されている傾向があります。
6. 最新の技術
WordPressのプラグイン、テーマ、コアを更新して、ウェブサイトのセキュリティを確保し、サイトでの最新の技術の使用を確認することも重要です。
例えば、PHP 5.6、7.0、7.1、7.2では、セキュリティ面での修正がリリースされないため、WordPressサイトを安全に保つには、PHP 7.3以上が必要です。
残念ながら、無料レンタルサーバーのほとんどは、PHP 7.0以降をサポートしていないため、サイトを潜在的な危険に晒すことになります。
7. カスタマーサポート
新米サイト所有者であれば、サイトのセットアップに手厚い技術サポートがほしいもの。しかし、無料レンタルサーバーでは、質の高いカスタマーサポートを期待できません。
ヘルプやトラブルシューティングが必要であれば、有料のホスティングプランをお勧めします。有料プランでは、メール、電話、チャットなど、さまざまなチャネルでカスタマーサポートを利用することができます。また、わかりやすい動画での解説や記事を満載した知識ベースを提供するサーバーもあり、ユーザー思いのサイトを構築するヒントを得ることができます。
8. 広告とサブドメイン
フリーミアムモデルで収益を手にする一般的な方法としては、広告が挙げられます。無料のレンタルサーバーを利用すると、すべてのウェブページに広告が挿入され、訪問者に敬遠されてしまいます。
デザイン的な問題もさることながら、サーバー側で挿入される広告の種類には注意が必要です。競争相手の広告や、好ましくないコンテンツが表示される可能性があります。
時にはサイバー犯罪者が広告ネットワークから広告スペースを購入し、マルウェアの仕込まれた画像を送信することもあります。
無料レンタルサーバーには、通常、「mysitename.wordpress.com」のような形式の無料サブドメインが付帯しますが、サイトの信頼性を高めるには、別途ドメインを購入することをお勧めします。
ドメインの購入は重要です。独自ドメインがなければ、サーバーを利用する予算がないのか、ちゃんとしたサービスを提供しているのか、などと訪問者に不審に思われる可能性があります。
有料のホスティングプランには、ドメイン登録やメールアカウントの作成を無料で行うことができるものがあり、サイトに広告が表示されることもありません。
9. SEO
無料のレンタルサーバーは、パフォーマンス、セキュリティ、速度のデメリットに加えて、SEOにも悪影響を与えます。
- 低速なサイトは、キャッシュの問題やページ読み込みの遅延、ユーザー体験に悪影響を与えます。
- サブドメインでサイトを運営するとドメインオーソリティ(DA)の数値が低下します。
- 保護機能の欠如によるセキュリティの問題で、Googleの検索クローラーがサイトにアクセスできなくなる可能性があります。
10. 移行しやすさ
乗り換えを検討する際、評判の良いサーバーであれば、他社への移行が簡単に行える様、データ転送のサポートがあるはずです。
無料のレンタルサーバーでは、こういった機能がない可能性が高いです。先ほども触れましたが、利用者のサイトに挿入した広告で収益を得ていることを考えれば、納得です。
有料ホスティングプランへの切り替え方法
上記の注意事項を踏まえた上で、問題がなければ、無理に有料サーバーに移行する必要はありません。
ただし、将来、アクセス数の増加に応じてサイトの機能を拡張する予定があるなら、Kinstaのような有料ホスティングプランの利用をご検討ください。
Kinsta提供のサービスの中でもWordPress専用マネージドホスティングは、WordPressサイト向けに特別に設計されています。熟練したWordPress開発者で構成されるKinstaの開発部門が、クラウドホスティングが実現する速度と拡張性の強みをすべて詰め込んだホスティングサービスをご用意しました。
Kinstaのホスティングプランには、広告の掲載がないことはもちろん、以下のような開発者向けの機能が揃っています。
- WordPressの無料インストール
- 無料で使えるSSL証明書
- Cloudflare Enterprise統合
- DDoS対策
- ステージング環境
- 無料で使えるCDN
- 毎日のバックアップ
- 24時間年中無休の稼働状況監視
- カスタマーサポート
- 知識ベースと解説記事
- 稼働率保証
エックスサーバー、さくらのレンタルサーバ、ヘテムルなど、他社からKinstaへの移行には、無料のサイト移行サービスをご利用ください。
まとめ
結論として、優れた無料レンタルサーバーは、ほとんど存在しません。
ブログやEC事業で無料レンタルサーバーを使っての費用削減をお考えなら、要注意。セキュリティやパフォーマンス、サイト全体の信頼性に関わる問題が発生し、解決のために、多くの手間と費用を費やすことになるでしょう。
WordPressサイトを成功させるなら、有料のホスティングプランを利用するのが賢明です。毎月のわずかな投資で、使いやすさ、優れたパフォーマンスとセキュリティ、そして安心感を得ることができます。
WordPress用マネージドホスティングを選ぶにあたって、まだ懸念材料はありますか?以下のコメント欄で、ぜひお聞かせください。
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