世界中に何百ものアプリで溢れ、さらに増え続ける今日では、アプリの収益化に対する効果的な戦略が求められます。

もちろん、すべてのアプリが収益を生み出すことを目的にしているわけではありませんが、シンプルなアプリであっても、収益化することは可能です。例えば、無料の電卓アプリで小さなバナー広告を表示したり、高度な健康管理アプリで有料会員コンテンツを用意したりなど。

とは言え、アプリの収益化戦略はアプリの数ほど無数に存在します。そこで今回は、アプリの収益化の基本をご紹介し、収益化の方法の比較や、収益を伸ばすためのヒントをご紹介していきます。

アプリで収益を生み出すには

アプリの収益化は、単にユーザーにアプリを購入してもらうだけに留まりません。実は、無料アプリは収益性が非常に高いことをご存知でしょうか。

しかし、無料アプリで何千ドル、何百万ドルの大きな収益を上げるには、どうすれば良いのでしょうか。

2023年、世界のアプリ売上は9億3,000万ドル以上に達すると予想されている(出典: Tekrevol)
2023年、世界のアプリ売上は9億3,000万ドル以上に達すると予想されている(出典: Tekrevol

その答えは、優れた収益化戦略にあります。アプリを収益化する方法としてまず思いつくのは、おそらく利用開始時に利用料金を請求することでしょう。しかし、他にも効果的な戦略が数多くあります。

まずは、アプリの収益化について見てみましょう。

アプリの収益化とは

アプリの収益化とは、アプリの利用者から収益を得るプロセス。

収益化に成功しているアプリの多くは、複数の収益化戦略を組み合わせています。正しい戦略を講じるには、ユーザーがどのように、そしてなぜアプリを使用するのかという心理、そしてアプリの目的を真に理解することが重要です。

多くの場合、アプリの収益化には広告の存在が欠かせません。

アプリ内での広告表示は効果的な収益化の手法(出典: Creatopy)
アプリ内での広告表示は効果的な収益化の手法(出典: Creatopy

例えば、画面上部にバナー広告を表示したり、ポイントを得るのと引き換えに動画形式のCMを表示したり、あるいはサードパーティの広告ネットワークが分析や今後のマーケティングキャンペーン用にユーザーデータを収集したりすることで、多くのアプリが収益を生み出しています。

また、本質的に収益化されるアプリも存在します。例えば、個人向けのショッピングアプリや、既存のECサイト(eBayやAmazonなど)のモバイルアプリなど。

また、アプリ内課金やサブスクリプションによって収益を上げるのも一般的です。しかし、特にモバイルアプリは、モバイル端末に留まらず、テレビ、自動車、スマート家電などにも展開しているため、定番の収益化戦略にもさまざまな形態があります。

したがって、アプリの収益化には、スマートフォンやモバイル端末の枠を超えて戦略を練るのが賢明です。今後しばらくは、モバイル端末に最も多くのエンゲージメント(収益化)の機会があると予想されますが、特定の製品、サービス、または体験においては、他の端末の方が優れている可能性も否めません。

いずれにしても、アプリの収益化には適切な戦略が必要です。続いて、どのぐらいの収益が望めるかを見てみましょう。

無料アプリでどの程度収益を生み出せるのか

一言で言えば、アプリによりけりです。

年間数百万ドルの収益をゆうに生み出す無料アプリは多数あるものの、通常これは例外的です。とは言え、何千もの無料アプリが、毎月少なくとも数千ドルの収益を上げているというのもまた事実。

では、通常はどのくらいの収益を期待できるのでしょうか。

実際の数字は、アプリによって大きく異なり、同じアプリの収益化モデル(クリック単価、CPM)を採用しても、アプリのジャンル、ユーザー数、使用デバイス、国によって異なります。

一般的には、アプリ側も広告主も、インプレッションベースの収益を決定する重要な指標としてeCPM(effective Cost Per Milleの略:1,000回のインプレッションで発生する費用)を採用しています。

国別・デバイス別の世界平均eCPM(出典: Appodeal / Business of Apps)
国別・デバイス別の世界平均eCPM(出典: Appodeal / Business of Apps

アプリ内の広告表示では、どの程度の収益を見込めるのでしょうか。

2020年、米国におけるモバイルアプリのバナー広告の平均eCPMは、Androidアプリで0.37ドル、iPhoneアプリで0.46ドル。つまり、1日あたり5,000インプレッションを受けるバナー広告を表示する米国ベースのiPhoneアプリは、1日平均2.30ドルの収益を生み出すことを意味します。

このように計算すると、バナー広告に高い収益性があるとは決して言えませんが、あくまでユーザー体験を収益化する手法の1つに過ぎません。動画リワード広告などの他の広告では、より高いeCPMをもたらしますが、モバイルアプリ開発者は、より強力な収益源を得るため、有料、フリーミアム、サブスクリプションモデルの採用を検討するのが一般的です。

無料、有料、フリーミアムアプリの比較

単にユーザーに課金すれば収益を上げることができるところ、あえてアプリを無料提供するメリットとは何でしょうか。

無料アプリはダウンロード数が増えてもエンゲージメントが増えるとは限らない(出典: CleverTap)
無料アプリはダウンロード数が増えてもエンゲージメントが増えるとは限らない(出典: CleverTap

アプリを無料でリリースすることには、さまざまなメリットがあります。まず1つは、より多くのダウンロードを集めることができ、支払いが不要なことから、より評価の高いレビューを受ける可能性が高い点。

無料アプリをダウンロードして使用してくれるユーザーが増えることで、余分なトラフィックを利用して、異なるタイプのユーザーに基づく複数の収益源を確保することができます。例えば、無料でアプリを利用するユーザーにはデフォルトで広告が表示され、有料会員になると広告が非表示になり、さまざまな機能が利用できるようになるなど。

無料アプリの収益化においては、工夫を凝らした収入源の確保だけでなく、収益の不安定性や全体的に低いユーザーエンゲージメント率にも対処しなければなりません。さらに、利用可能なアプリの大半がすでに無料であるため、数あるアプリに差をつけて、アプリストアで上位に表示されるのは至難の業です。

フリーミアムモデル(無料と有料の融合)は、このような懸念点を解消するのに効果的な方法の1つです。

フリーミアムモデルと有料モデルはシナリオによってどちらも効果的(出典: CleverTap)
フリーミアムモデルと有料モデルはシナリオによってどちらも効果的(出典: CleverTap

フリーミアムモデルとは、アプリの基本機能を無料提供し、その後より高度な機能には有料で利用できるようにする仕組みです。フリーミアムモデルは、幅広く採用されており、ゲーム内課金から有料のサブスクリプションまで、さまざまなものがあります。

フリーミアムアプリは、利用しやすく、潜在的な市場規模が大きいのが特徴です。すべてのユーザーに気に入ってもらえるシンプルで基本的なサービスを提供しながら、さらなる機能を求めるユーザー向けに追加機能を用意して、追加の収入を確保することができます。

無料と有料の両方のメリットを提供できるフリーミアムモデルは、すべてのアプリに理想的なモデルとは限りません。

専門的で、特定の需要を持つニッチなアプリには、有料アプリが適しています。ニッチな分野に特化したアプリは、競合が少なく、それを求めているユーザーは、すでに必要だとわかっている有料機能に先行投資する傾向にあります。

とは言え、もちろんアプリが単一のモバイルアプリの収益モデルや価格戦略に固執する必要はありません。以下のセクションでご紹介する、モバイルアプリに有用な実証済みの収益化戦略を参考にしてみてください。

アプリの収益化戦略10選

アプリ収益化の基本やアプリの種類を押さえたところで、早速アプリの収益化に効果的な手法を見ていきましょう。

ほぼすべてのアプリにはビジネスモデルがある(出典: Itobuz)
ほぼすべてのアプリにはビジネスモデルがある(出典: Itobuz

ほぼすべてのアプリには、それぞれ適したビジネスモデルや収益化戦略があります。以下、特に一般的なものをご紹介していきます。

1. フリーミアムモデル(有料機能の提供)

先にも触れましたが、無料と有料の機能を提供するフリーミアムモデルは、非常に人気の高い収益化戦略です。

Spotifyはフリーミアムアプリの成功例
Spotifyはフリーミアムアプリの成功例

アプリ利用者の立場に立って考えてみてください。世界中に数えきれないほどのアプリが存在する(しかも同じ機能を持ったアプリが複数ある)中で、1つのアプリを選んでいきなり購入する前に、そのアプリを「お試し」することができれば、より気軽に使用することができます。

アプリの無料版は、いわゆる「無料お試し期間」と言えます。ほとんどの利用者が、無料版の機能で十分と感じたとしても、一定数のユーザーが有料版を購入することで、安定した収益を確保できる可能性があります。例えば、フリーミアムアプリのSpotifyは、2022年に120億ドル以上の収益を上げています。

2. 有料アプリ

広告表示なしでアプリを収益化する方法を検討されている方もいるはず。その1つの答えは、アプリの有料ダウンロード化です。

有料アプリは必ずしも良い印象を与えることはないものの、そのアプリが本当に必要な機能を持っている、またはユーザーから高い評価を受けているものであれば、多くの人は購入に二の足を踏むことはありません。

有料モデルでアプリを成功させるには、熱心な顧客ベースを持つニッチな分野を狙いましょう。特定の需要を満たすソリューションを提供できれば、有料化はそれほど大きな問題ではなくなります。

評判がまだ確立していなければ、限定的な無料トライアルを提供してユーザーを集め、有料モデルに移行することも可能です。

3. アプリ内課金

フリーミアム同様、無料アプリにアプリ内課金を行うことは、収益を上げるのに非常に効果的です。

アプリ内課金はモバイルゲームの収益源として人気が高い(出典: Intego)
アプリ内課金はモバイルゲームの収益源として人気が高い(出典: Intego)

アプリ内課金といえば、ゲームアプリ。この手法は定番の戦略で、ユーザーは、ゲーム内の架空通貨や特別な戦利品、能力などの仮装アイテムを購入することができます。世界的に人気なパズルゲーム「キャンディークラッシュ」は、このモデルを利用して2022年だけで収益6億ドル以上を達成しています。

アプリ内課金は、ゲーム以外のアプリにも適用可能です。ただし、デフォルトのアプリ体験を損なわない「追加コンテンツ」として機能します。

4. 有料サブスクリプションモデル

ユーザーのニーズは多様です。したがって、さまざまなサブスクリプションモデルを用意して、あらゆるユーザーの要望に応えるというのも賢い戦略です。

Spotifyの有料サブスクリプション
Spotifyの有料サブスクリプション

多様なユーザーに対応する機能豊富なアプリの多くは、よりパーソナライズされたユーザー体験を提供するために、サブスクリプションモデルを採用しています。中には、契約前に一定期間の無料トライアルを提供しているアプリもあります(ニュースアプリなら、一定数の記事を無料で読むことができるなど)。

サブスクリプションモデルは、特に適切な価格を設定すれば、ユーザーが長期的に利用してくれる可能性が高くなります。

5. アプリ内広告とスポンサーシップ

アプリ内広告は、何らかの形でほとんどのアプリで採用されています。

フルスクリーンのポップアップや広告はほとんどのアプリで見られる(出典: GermaniaVid)
フルスクリーンのポップアップや広告はほとんどのアプリで見られる(出典: GermaniaVid

シンプルなバナー広告からフルスクリーン広告、動画リワード広告まで、あらゆる形とサイズ、そしてさまざまな収益形態があります。

モバイル広告ネットワークは、アプリ、ユーザー、関連製品に応じて、ユーザーに広告を表示し、様々なインセンティブを提供します。Google 広告のキャンペーンを作成すれば、どのくらいの収益を見込めるかを簡単に確認することができます。

また、多くのアプリでは、先行的に収益を生み出す手段として、企業との提携やスポンサーシップも行っています。リリースされたばかりのアプリがスポンサーシップを獲得できれば、必要な評判と権威を得ることができます。

6. メールリスト

2023年、メール利用者は43億7,000万人に達すると言われています。したがって、アプリの利用者からメールリストを作成することは、複数の収益源を構築、デジタルマーケティング戦略の強化につながります。そして、多くの人はメールアドレスを変更せず、定期的に受信トレイをチェックしている傾向にあります。

メールアドレスを集めるには、アプリでのアカウント登録時にメールアドレスの入力を促しましょう。あとは、セール情報や、アプリをさらに利用してもらうようリマインドを送信するなど、メールマーケティングを活用する方法を探すだけです。

7. EC

EC(eコマース、電子商取引とも)は、さまざまなアプリに無理なく採用できる収益化戦略です。

ECアプリはより良いショッピング体験を提供できる(出典: Dribbble)
ECアプリはより良いショッピング体験を提供できる(出典: Dribbble

ECモデルを採用するアプリは、基本的にオンラインマーケットプレイスになります。複数の小売店から商品を検索できるようにするなど、より広範な商品検索結果を提供することも可能です。ECアプリは、アフィリエイトでも人気があります。

8. SMSマーケティング

アプリは通常、スマートフォンに搭載されているため、SMSマーケティングは、エンゲージメントを高める良い戦略になります。

SMSマーケティングはモバイルユーザーに効率的にアプローチできる(出典: Mayple)
SMSマーケティングはモバイルユーザーに効率的にアプローチできる(出典: Mayple

もちろん、ユーザーにメッセージを送信するだけで収益を上げることはできませんが、リマインダーや更新、警告、プロモーションをユーザーに素早く共有するのに効果的です。

また、新たなコンテンツへのアクセス(および広告の表示)、セール商品の閲覧(および購入)、限定機能のプレビュー(および購入)など、収益につながる形で、ユーザーにアプリの利用を促すこともできます。

9. ホワイトラベル

新進気鋭のアプリ開発者と大手ブランドの連携には、大きなメリットがあります。

ホワイトラベルは開発者が自分のアプリを別のブランドに販売する手法(出典: FourWeekMBA)
ホワイトラベルは開発者が自分のアプリを別のブランドに販売する手法(出典: FourWeekMBA

画期的なアプリ開発のアイデアがあっても、適切なサポートや後ろ盾がなければ、軌道に乗せるのが困難になる可能性があります。

その場合、モバイルアプリ開発会社は、アプリを企業に販売して、企業に自社ブランドとして展開してもらうことができます。これによって、開発会社は確かな収益源を確立でき、企業はより良い製品を顧客に提供できるため、ウィンウィンの関係に。

10. データライセンス

アプリ利用者は優れた収益源になりますが、特に重要になるのが、そのユーザーデータです。

多くの人気アプリはユーザーデータを第三者に販売している(出典: PCMag)
多くの人気アプリはユーザーデータを第三者に販売している(出典: PCMag

データがあらゆるものを動かしている今、ユーザーデータを入手するために多額の資金を支払う企業が増えています。モバイル端末は行動データの重要ソース。人気のあるアプリは、多くの企業がトレンド調査を行うための宝庫になり得ます。

ただし、これについては慎重に行ってください。第三者にアプリのユーザーデータを提供する場合は、ユーザーにデータ所有権を付与する契約に署名してもらうことが必須になります。

効果的な収益化戦略の選び方

ざっとご紹介した通り、アプリを収益化する方法は多数あります。では、自分の開発したアプリに適した戦略は、どのように見極めれば良いのでしょうか。

アプリの収益化戦略の選択は意外と難しい(出典: Mind Inventory)
アプリの収益化戦略の選択は意外と難しい(出典: Mind Inventory

どのような戦略が効果的であるかどうかは、アプリと利用者に与える価値によって異なります。明確な正解・不正解はありませんが、以下の点を考慮することで、より良い手法を見極めることができます。

他のアプリにはない価値を見出す

アプリの目的とユーザーに提供する価値は、収益化戦略を選ぶ上で、最も重要な要素です。

例えば、シンプルな電卓アプリの場合、利用者に前払いで課金するのは得策ではありません。邪魔にならない程度のバナー広告や、電卓メーカーや教育リソースからのスポンサーシップを利用して収益化するのがベストプラクティスです。

一方、高度なグラフ電卓アプリの場合は、価格に見合うだけの優れた機能を提供することができれば、前払いの課金は妥当でしょう。

利用者を分析する

ユーザーが求めているものと行動を的確に理解することも非常に重要です。

ユーザーによって収益化戦略に対する反応が異なる可能性も(出典: CleverTap)
ユーザーによって収益化戦略に対する反応が異なる可能性も(出典: CleverTap

実際、アプリの特性から適していると判断した収益化の手法も、実際の利用者との相性が悪ければ、うまくいかない場合も。例えば、画面が小さいスマートフォンユーザーは、延々と表示されるポップアップ広告を煩わしく思うかもしれません。また、Androidユーザーは、iPhoneアプリのコンテンツ統合にお金を支払いたくない可能性もあります。

また、ユーザーの消費行動も考慮すること。例えば、お得な食品を探すアプリには、有料の追加コンテンツは不要でしょう。

成功事例から学ぶ

迷ったときには、類似のアプリを調査し、どのように成功しているかを分析しましょう。これによって、競合やモバイルアプリ市場の動向を詳しく把握することができ、アプリの価値や収益化戦略を適切に調整することができます。

また、ユーザーの実際の経験や不満を理解することができる、ユーザーレビューも有益です。例えば、煩わしい広告や価格に釣り合わない機能に対して、1つ星のレビューを残しているユーザーがいるかもしれません。反対に好意的なレビューは、ユーザーがどのようなものに反応してくれるかをやすいかを教えてくれます。

複数の戦略を組み合わせる

成功したアプリの多くは、1つの収益化の手法に固執しているわけではありません。というのも、多くの場合、1つの戦略を講じるだけでは、十分な収益を上げることは困難だからです。

複数の戦略を取り入れることで、無限の可能性を生み出すことができます。例えば、フリーミアムアプリの場合は、無料版で広告を表示し、アプリ内課金や有料コンテンツも提供。また、SMSやメールユーザーに情報を提供したり、第三者にデータ販売したりすることもできます。

まとめ

今回は、アプリの収益化について詳しくご紹介しました。アプリの収益化は簡単ではないこと、そして戦略を柔軟に取り入れることが重要であることがお分かりいただけたはずです。

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Jeremy Holcombe Kinsta

Kinstaのコンテンツ&マーケティングエディター、WordPress開発者、コンテンツライター。WordPress以外の趣味は、ビーチでのんびりすること、ゴルフ、映画。高身長が特徴。