在庫管理は、ビジネスを運営する上で最も重要な仕事の1つ。しかし、ECストアを立ち上げたばかりの方は、WooCommerceの在庫管理ツールの重要性を過小評価しがちです。
優れたECプラットフォームたるもの、在庫の管理と更新が簡単に行えるもの。また、外部の管理ツールと柔軟に統合できるだけの拡張性を備えているものです。
では、WooCommerceはどうでしょうか。今回の記事では、WooCommerceの機能についてみていきましょう。
WooCommerceとは
ウェブサイトやオンラインストアを自分で設計することも可能ですが、その作業を簡略化し、作業効率を上げてくれるツールも数多く存在しています。ShopifyやBigCommerceなどがその一例で、聞いたことがある方も多いはず。
WooCommerceは、独立したECサイトCMSではなく、WordPressのプラグインです。WordPressのEC用プラグインとしては、圧倒的な人気を誇り、プラグインであるにもかかわらず、Shopifyのような本格的なプラットフォームに匹敵するほど優れた機能が揃っています。
また、WooCommerceは操作方法も習得しやすく、機能を増やす拡張機能が何百種類もあることでも知られています。さらに、WooCommerceとWordPressはどちらも無料。サーバー費用や有料プラグインの購入は必要になりますが、総合的にかかる費用と参入障壁はかなり低くなります。
WooCommerce在庫管理の仕組み
WooCommerceには、在庫を管理する機能が備わっています。その機能は圧倒的に優れているわけでも、特定の状況で強さを発揮するというわけでもありませんが、無料・有料のプラグインで簡単に拡張でき、一般的なECストアにとっては十分な機能を揃えることができます。
在庫は商品単位で管理でき、消費者の注文と出荷状況を管理する便利な機能も利用できます。
在庫、注文、出荷状況は、詳細な在庫レポートや分析データというかたちで確認可能です。これにより、過剰注文を防ぎ、いつ商品の仕入れが必要になるか、またどの商品が最も売れているかを把握することができます。
概して、WooCommerceの機能は、プラグインで自由に拡張することを前提とした、基礎的なものであると言えます。例えば、好きな在庫管理ソフトウェアと統合して、在庫を自動で更新したり、プラグインを追加して原料・素材の管理を行なったりすることができます。WooCommerce単体にも(機能の拡張なしでも)、ストア立ち上げにあたって最初に必要になる基本的な機能が備わっています。
WooCommerce在庫管理のメリットとデメリット
WooCommerceでできることをご説明する前に、その在庫管理システムのメリットとデメリットを押さえておきましょう。
メリット
- 無料かつ低価格
- 中小企業はもちろん大企業にも十分な高機能
- シンプルかつ優れた在庫管理ツール
- 全体または商品単位で在庫管理が可能
デメリット
- 原料、素材の管理ができない
- 全体での在庫管理のみで、場所やメーカー別には管理できない
- 在庫管理の自動化に非対応(在庫が増えるたびに商品情報の編集が必要)
- プラグインやアドオンによる拡張が必要(有料プラグイン購入のために初期投資が必要になる場合も)
WooCommerce自体は非常にシンプルであり、標準搭載の在庫管理機能は、大規模なECストアには不十分です。とは言え、WooCommerceの真の魅力は、想像し得る機能をすべて実現できる種類豊富なアドオンにあります。
今回は、WooCommerceの在庫管理を強化するプラグインをいくつかご紹介します。その前に、まずは、WooCommerceで利用できる機能の使い方を見てみましょう。
在庫の管理方法
まず最初に、WordPressの管理画面で在庫管理が有効になっていることを確認します。WooCommerceをインストールすると、サイドバーに「WooCommerce」が追加されます。「WooCommerce」にカーソルを合わせて、「設定」に進んでください。
設定ページの上部に複数のタブが表示されます。「商品」タブを選択し、そのすぐ下にある「在庫」をクリックします。
ここで「在庫管理を有効化」にチェックが入っていればOKです。在庫管理を有効化すると、自動的に在庫が減算されるようになり、在庫が欠品した際には在庫のステータスが変更されます。自分で処理を行いたい場合には、チェックを外してください。
また、以下のような詳細設定も行えます。
- 在庫保持(分単位)─未払い注文がキャンセルされるまでの在庫保持期間を設定。
- 通知─商品の在庫が減少、欠品時に対象の受信者にメールを送信する設定。商品低下、在庫切れを知らせる通知の変更も可能。
- 在庫切れの表示─在庫切れ時に商品を非表示にする設定。
- 在庫表示形式─ 在庫の残数を正確に表示、在庫僅少のみ表示、在庫表示を完全に非表示、などの設定が可能。
在庫ごとに設定を行いたい場合には、個別の商品在庫設定を活用しましょう。「商品」>「すべての商品」に移動し、該当する商品の「編集」をクリックします。「商品データ」セクションまでスクロールして、「在庫」を選択してください。
個別の在庫設定を管理したい場合は、「商品単位での在庫管理を有効にする」にチェックを入れましょう。その他の設定は以下の通り。
- SKU─商品のSKU(最小の管理単位)を設定。
- 在庫数─その名の通り、在庫数を設定。
- バックオーダーを受け付けますか?─在庫切れの商品の注文を許可する設定。
- 在庫低下を知らせる数値─全体設定画面で設定されている在庫低下を知らせる数値から商品ごとに変更可能。
- 個別販売─買い物客が一度に1点しか購入できないようにする設定。
在庫管理の自動化
WooCommerceでは、商品が購入されるたびに自動的に在庫が差し引かれるように設定することができます。
まずは、「WooCommerce」>「設定」>「商品」>「在庫」で、「在庫管理の有効化」にチェックを入れましょう。商品の個別設定については、各商品の「編集」ページで「商品単位での在庫管理を有効にする」にチェックを入れて、在庫数を設定します。
すると、商品が売れるたびに在庫数が変動し、適宜、自動的に在庫低下や在庫切れに変更されます。
ただし、商品在庫を追加する場合には、自分で数字を更新する必要があります。WooCommerceのデフォルトの機能では、在庫数の減算を自動化することはできますが、増やすことはできません。
アドオンを追加すれば、商品数の加算も自動化することが可能です。
在庫状況の管理方法
在庫状況は、全体でも商品単位でも変更することが可能です。
「WooCommerce」>「設定」>「商品」>「在庫」で、在庫低下、在庫切れを知らせる数値の設定、在庫切れ商品の表示・非表示の設定、ストア上での在庫状況の表示方法などの設定が行えます。
各商品の「編集」ページでは、在庫低下を知らせる数値を設定し、在庫の有無を個別に変更することが可能です。「商品単位での在庫管理を有効にする」にチェックが入っている場合は、自動的に処理されます。
全体の設定で「在庫管理を有効化」にチェックが入っていない場合は、商品在庫の有無のみを更新することができ、自動で在庫管理が行われることはありません。
また、色やサイズなどのバリエーションのある商品の在庫状況も変更可能です。バリエーションの設定後、「バリエーション」タブで各バリエーションに移動し、在庫数、ステータス、在庫低下を知らせる数値を変更しましょう。
その他の在庫管理機能
WooCommerceに組み込まれているその他の在庫管理機能もみていきましょう。
一括編集
個別に商品の在庫管理を有効化したり、在庫ステータスを更新したりするのには時間がかかりますが、一括編集の機能を使えば簡略化することができます。
「商品」>「すべての商品」から、チェックボックスをクリックして複数の商品を選択するか、一番上のチェックボックスをクリックしてすべての商品を選択します。「一括操作」のドロップダウンを「編集」に変更し、隣にある「適用」ボタンをクリックしてください。
表示された一括編集画面で、「在庫を管理しますか?」のドロップダウンメニューから「管理する」を選択すると、すべての商品で個別の在庫管理が可能になります。
一度在庫管理を有効化すると、「在庫数」の設定を一括して変更することができるようになり、正確な数値に変更したり、一定量だけ増減させたりすることが可能です。
在庫低下を知らせる数値
在庫低下を知らせる数値は2箇所で設定することができます。
まず、「WooCommerce」>「設定」>「商品」>「在庫」で、全体設定を行うことができます。加えて、商品の在庫が低下した際に在庫数を表示するかどうか、商品が在庫低下を知らせる数値に達した際に誰に通知を送信するかなどの設定も行えます。
商品ごとに設定を行う場合は、該当商品の「編集」画面に移動し、「在庫」タブまでスクロールします。「在庫を管理しますか?」にチェックが入っていることを確認し、「在庫低下を知らせる数値」を設定します。
個別販売
1点ものの商品など、1回の注文に対して1回しか購入できなくする設定が必要な場合は、該当商品の「編集」ページの「在庫」画面で「個別販売」にチェックを入れます。この場合は、「商品単位での在庫管理を有効にする」にチェックを入れなくてもOKです。
また、先ほどご紹介した「一括編集」画面でこの設定を有効にすることも可能です。
在庫状況の確認方法
WooCommerceでは商品在庫状況の詳細な分析とレポートを確認することができ、在庫管理に便利です。
「アナリティクス」>「在庫」ページでは、個数や在庫状況の概要を確認することができます。商品/バリエーション、SKU、ステータス、在庫をクリックすると、各値でソートされ、再度クリックすると表示順序が逆になります。
また、「表示」のドロップダウンメニューを使用すると、在庫切れの商品、バックオーダーを受け付けている商品など、特定の種類の商品を絞り込んで素早く在庫状況を把握することもできます。
商品タイプ
WooCommerceには、デフォルトで4つの商品タイプがあります。
- 基本的な商品─その名の通り、最も基本的な商品のタイプ。バリエーションやグループ化のない、個々で出荷可能な商品。
- バリエーションのある商品─機能的には基本的な商品と類似しているが、色やサイズなどのバリエーションを持つ商品。各バリエーションには在庫番号とSKUがあり、親商品の下にグループ化される。
- グループ化された商品─複数の商品がセットで販売されている商品。セットになっている商品は個別に購入することもでき、1つでも在庫切れになれば無効になる(したがって、WooCommerceの機能を使って在庫状況を把握しておくことが重要)。なお、アップセルやクロスセルの商品とは区別される。
- 外部/アフィリエイト商品─コミッションを得て、その一部が他の企業にいくなど、完全に自社のものではない商品。これに特化したサイト上で販売促進、宣伝されるのが通例。
また、配送の必要がないダウンロード商品も販売することができ、このタイプの商品については在庫管理を心配しなくていいでしょう。
おすすめのWooCommerce在庫管理プラグイン16選(2024年)
さて、WooCommerceの在庫設定についてはこれでお分かりいただけたことと思います。これを踏まえて、自分のストアに合わせて機能を追加しませんか?これからご紹介する16の無料・有料プラグインは、WooCommerceの機能をさらにパワーアップしてくれます。
おすすめWooCommerceプラグインについて動画での解説もご用意しています。
実店舗の在庫も扱いたい場合、原料や在庫を特定の場所で管理したい場合、そしてシステム全体を見直したい場合。さまざまな用途に有用になるプラグインをみていきましょう。
ATUM Inventory Management
ATUMは、WooCommerceの在庫管理機能を次のレベルに引き上げます。ストア運営に欠かせない高度な在庫管理機能がすべて揃っており、さらに無料で利用可能。追加機能にお金を払う必要も一切ありません。
とは言え、有料のアドオンを使用すれば、自動エクスポート、複数の場所またはメーカー別の在庫管理、部品表管理なども可能になります。
WooCommerceの内蔵機能よりもさらに強力な機能をお求めの場合は、ATUMをチェックしてみてください。
Multi Locations Inventory Management
WooCommerceでは多拠点・海外発送は可能ではあるものの、複数箇所での在庫管理においては十分な機能が備わっていません。Multi Locations Inventory Managementは、不十分な機能を補ってくれると同時に、特定の場所での出荷と注文をより細かく管理することが可能です。
無料のプラグインをお探しの方は、Stock Locations for WooCommerceの使用を検討してみてください。
Katana
Katanaは、在庫を完全管理できるように設計された強力なメーカー向けエンタープライズツールです。
あらゆるビジネスやプラットフォームで使えますが、WordPressストアと同期するWooCommerceプラグインがあり、在庫を常に最新の状態に保ちながら、原料や定番商品を管理することができます。
また、他の何百ものビジネスツールとの統合や、独自の統合を行うためのAPIが付属。もちろん、Katanaの在庫管理機能もすべて利用できます。
WooCommerce Cart Stock Reducer
WooCommerceでは、ユーザーが実際に購入するまで商品の在庫数は減算されません。しかし、誰かがその商品をショッピングカートに入れた時点で在庫数を一時的に減らして、最終的に購入がなければ減算を無効にする、という設定が必要な時もあるはず。そんな時には、WooCommerce Cart Stock Reducerを使用すればOKです。
Product Import Export
Product Import Export for WooCommerceは、WooCommerceの商品インポート、エクスポート機能を追加してくれます。もちろん、商品の画像やカスタマーレビュー、属性やタグなどをCSVファイルでインポート・エクスポートすることも可能です。唯一の欠点として、無料版ではバリエーションのある商品に対応していません。
WooCommerce Attribute Stock
Attribute Stockは、WooCommerceの在庫管理機能を強化してくれるプラグインです。内蔵の機能だけでは、特定の状況に対応できないと感じている方には、おそらくこのプラグインが答えです。複数の商品で属性を管理し、在庫を共有することが可能です。
例えば、ネックレスを販売しているショップでこのプラグインを使用すると、チェーンとペンダントの数を別々に管理することができます。つまり、あるチェーンが欠品した段階で、すべてのネックレスの在庫を欠品にすることができます。
StockUpp Inventory Management
在庫管理にERPのようなものをお探しの場合、大規模なストアでなければ、StockUppを試してみてください。比較的手頃な価格で、使い勝手も良く、包括的な在庫管理、サプライヤーの管理、ロット管理などの貴重な機能が備っています。
Smart Manager for WooCommerce
このプラグインは、在庫管理だけでなく、ストア全体の管理に有益です。Excelのような画面ですべての商品と在庫を管理できます。また、作業効率を上げる一括編集メニューもあるため、大幅な時間の節約も期待できます。
Integration for WooCommerce and Zoho CRM
Zohoは、Zoho CRMからZoho Inventoryまで、複数のエンタープライズツールを束ねるサービスです。このプラグインを使用すれば、そのすべての機能をWooCommerceに統合することができます。簡単な設定ですべてが完全に同期、自動化されます。
Stock Manager for WooCommerce
すべての在庫を1つの画面で管理して、並べ替え、編集、エクスポートしたければ、Stock Managerが有用です。無料版ですべての機能が利用できます。
WooCommerce Quickbooks Connector
Quickbooksの会計ソフトは企業に人気があるため、WooCommerceとの統合にはメリットがあります。このプラグインを使えば、2つのプラットフォーム間ですべてが双方向に同期されます。また、他の様々な在庫管理プラグインとの互換性もあります。
Stock Synchronization for WooCommerce
サプライヤーから提供された外部CSVファイルを使用して在庫を管理している場合は、Stock Synchronizationが理想的な選択肢かもしれません。在庫を同期しておいてくれるため、商品が入荷するたびに自分で数字を更新する必要がなくなります。
Advanced Notifications
WooCommerceは在庫状況に関する基本的な通知システムを備えていますが、十分な機能とは言えません。Advanced Notificationsを使用すると、第三者へのメール送信や、第三者が通知を受ける商品の設定など、より詳細な管理が可能になります。
Central Stock for WooCommerce
複数のストアを立ち上げて、すべての在庫を1つの倉庫に置く場合は、多くの課題が生じがちですが、Central Stockを使えば一件落着です。同じネットワーク上の複数のサイト間で在庫を同期できるようになります。
WooPOS
実店舗とオンラインショップを併設している場合は、在庫の同期が複雑になることも。WooPOSは、POSシステム、CRMであり、強力な在庫管理ツールです。すべてが1つに集約され、複数の実店舗とオンラインショップにまたがって機能します。
Bulk Table Editor for WooCommerce
商品数が、数百または数千になり、ストアが大きく成長した際、一括編集への投資は賢い選択。このプラグインを使えば、在庫とSKUの管理が容易になります。
まとめ
WooCommerceは一見シンプルなツールですが、数えきれないほどの拡張機能が利用でき、予想以上にパワフルです。
WooCommerceには、基本的な在庫管理機能が組み込まれており、アドオンを使えばほぼ無敵に。プラグインの追加には投資が必要な場合もありますが、WooCommerce自体は類似のEC用CMSとは異なり、無料で利用することができます。
WooCommerceデフォルトの在庫管理機能は、Shopifyのような類似プラットフォームと比較すると劣りますが、アドオンを活用すれば、自動化された簡単かつ効率的なシステムを構築することができます。
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