ビジネスに関する英語の略語が多すぎて覚えきれない…そう感じている方はたくさんいるはず。急速に進歩する技術とクラウドコンピューティングの誕生により、新たなカテゴリが次々と登場しています。XaaSもそのうちの一つです。
この分野に精通する方々の多くはSaaS (Software as a Service)、IaaS (Infrastructure as a Service)、PaaS (Platform as a Service)についてはご存知でしょう。しかし、XaaSはどうでしょうか…?
XaaS(Anything as a Service)は全てを網羅します。すなわち、「あらゆるもの」がサービスになるということ。
難しそうに思えるかもしれませんが、わかりやすくご説明しますので、ご安心ください。今回は、XaaSとは何かを明らかにするとともに、様々なタイプのXaaS企業をご紹介します。
XaaSとは?
XaaSは「Anything as a Service」の略です。
XaaSという言葉は、特定の技術やイノベーションがネットワーク上で繋がり、製品として統合されるようになってから、使われるようになりました。
XaaSでは、オンサイトのローカルソフトウェアではなく、クラウドコンピューティングを活用して様々なサービスを提供したり、顧客を獲得したりできます。これにより、データウェアハウスにおける、または、オンサイトに設置されたサーバーで事業を運営する際の柔軟性が高まります。
XaaSは進歩し続けており、今後も注目すべき分野です。XaaSがあらゆるビジネスのあり方を大きく変えていると言っても過言ではないでしょう。
事業の強化、成長のためにXaaSを利用する企業はますます増えています。世界のXaaS市場の現在の年間平均成長率は約26%で、専門家は少なくとも2025年まではこの傾向が続くと予測しています。
それではXaaSビジネスモデルとは具体的にどのようなものなのでしょうか?XaaS企業はどのように運営されているのでしょうか?また、ビジネスに適したモデルなのでしょうか?より詳しく見ていきましょう。
XaaSモデルとは?
XaaS企業ではクラウドコンピューティングを利用して、世界の何百万もの顧客にサービスを提供しています。
XaaS企業の代表的な製品は、利用者がいつでもログインできるオンラインプラットフォームです。利用者は、多くの場合、個人のブラウザに直接表示される、使いやすいワークスペースを利用することができます。
このワークスペースに変更を加えたり、ワークスペースからデータをダウンロードしたりすると、ブラウザはプラットフォームにリクエストを送信します。一般的に、プラットフォームはオンプレミスのサーバー、クラウドプロバイダー、またはウェブベースのネットワーク上で動作します。
XaaSプラットフォームでは、大規模なオンプレミスのストレージやウェブサービス、ハードウェア、カスタムソフトウェアを構築する手間が省けます。具体的な内容はお選びのXaaS企業が提供するサービスによって異なります。
全てを自社で構築する代わりに、XaaS製品の長期的なライセンスを購入することで、企業はその充実したインフラストラクチャを利用することができます。
ご希望のXaaS製品が利用可能であるかぎり、メリットは大きいと言えます。
とはいえ、「あらゆる」では幅が広いので、XaaS企業の概念が理解しづらいかもしれません。
XaaSビジネスについて十分に理解を深めるために、最も代表的なXaaSを10種類ご紹介します。
XaaSの例10選
世界で何百万もの顧客を抱えるXaaSビジネスには、いくつかの種類が存在します。中でも、最も人気の高いものを詳しく見ていきましょう。
1. SaaS (Software as a Service)
SaaSは「Software as a Service」の略で、非常に一般的なXaaSです。
企業はSaaS製品を自社の技術スタックに統合することで、一から開発することなくソフトウェアを使用し、ビジネスを合理化することができます。
時間とリソースの削減、従業員による本来の業務への集中が可能になります。
一般的な企業では137ものSaaSアプリが使用されています。これは、前年と比べて30%高い数字です。この数字からも、SaaSソリューションの統合が、あらゆる業種の企業で一般的になっていることがわかります。
注目すべきSaaS企業の例がHubSpotです。HubSpotはインバウンド・マーケティング、セールス、サービスプラットフォームとして機能するオールインワンのマーケティングソリューションとして機能します。
Kinstaを含め、何十万ものユーザーがこのソフトウェアを使用してマーケティング活動を行なっています。HubSpotは購読をベースとしたビジネスモデルを採用しています。他の大半のSaaS企業と同様に、HubSpotでもデータの保存と管理にクラウドコンピューティングを活用しています。
2. PaaS (Platform as a Service)
PaaSは「Platform as a Service」の略です。PaaS企業では、利用者がアプリ、ソフトウェアなどのエンジニアリングプロジェクトを独自に開発するのではなく、プラットフォームで作成できるクラウドベースのソリューションを提供しています。
PaaS企業はサーバー、ストレージ、データベースなど、あらゆるサービスを提供することができます。
プラットフォームはすべて企業側が所有します。利用者はプラットフォーム上で製品を構築し、ハードウェアを独自に購入、保管するコストを削減することができます。
PaaS企業の一例がAWS Elastic Beanstalkです。
AWS Elastic Beanstalkは企業が「使い慣れたサーバーにウェブアプリケーションやサービスを展開し、拡張」できるサービスを提供しています。
PaaSは起業家や事業主がクラウドベースのインフラストラクチャ上で製品を作り、それを一般に販売するための基盤となります。
3. IaaS (Infrastructure as a Service)
IaaSは「Infrastructure as a Service」の略です。IaaS企業はインフラストラクチャをネットワークベースのソリューションやストレージの形で提供します。一般的には、製品を開発、実行、拡張するためのコンピューティングパワーが利用できます。
企業がアプリやソフトウェアを構築する際に使用するのがPaaSプラットフォームであれば、それを強化、成長させるのに使用するのがIaaSです。
IaaS企業は従量課金モデルを採用しており、利用者は一定期間に使用したサービス分だけ支払うことになります。
IaaSを利用する大きなデメリットは、実質、企業のインフラストラクチャの一部を構成することになるため、IaaS企業に全面的に依存してしまうという点です。事業の良し悪しは、完全にIaaS企業の信頼性とアップタイム次第となります。インフラストラクチャが不安定になれば、会社自体も不安定になります。
IaaS企業の一例がMicrosoft Azureです。
Microsoft Azureは「アプリケーションをどこでも構築、管理、展開できる柔軟性」を提供しています。利用者は、あらゆるプログラミング言語やフレームワークを使用して、製品や企業をスケールアップすることができます。
4. AaaS (Analytics as a Service)
AaaSは「Analytics as a Service」の略です。あらゆる企業がデータを分析し、ビジネス上の決定を下すのに役立てています。デジタルソリューションへの移行に伴い、各社はAaaS製品を利用して、主要なビジネスの指標を追跡するようになりました。
2019年のAaaS業界の市場価値はおよそ50億ドルにのぼりました。専門家は2027年までに、年平均成長率は25%を超えると予想しています。
データ分析をしっかりと行うことで、今後、企業が直面する可能性のある障害に備えることができます。
AaaS企業の一例がOutlierです。
Outlierのソフトウェアは企業のデータを取り込み、独自のテクノロジーを用いて分析します。データは実用的でなければ意味がありません。このソフトウェアは膨大なデータを分析する方法が分からない企業にとって有用です。
5. DaaS (Desktop as a Service)
DaaSは「Desktop as a Service」の略です。DaaSは、ウェブブラウザから安全に従業員を管理するためのソリューションとして活用できます。例えば、出勤時間に個々の場所からブラウザを使ってログインするといった具合です。
安全性が重視されたサービスであり、外出先からも必要なファイル、プログラム、ソフトウェアに容易にアクセスできます。
多くの企業がリモートワークに移行する中、DaaS製品の需要は高まっています。DaaS市場は2023年までに107億ドル以上にまで成長すると予想されています。
柔軟性と信頼性に優れたDaaS製品の使用により、企業における独自のアクセスシステムや管理画面を構築する必要がなくなります。
DaaS企業の一例がCitrixです。
Citrixは、あらゆる場所からの作業を支える製品を誇ります。同社のCitrix Workspaceは、すべてのアプリやソフトウェアを一つのセキュアな空間に統合。様々なデバイスやプラットフォームからより効率的に作業ができるようになります。
6. FaaS (Functions as a Service)
FaaSは「Functions as a Service」の略です。アプリやサービスに用いる関数を一から記述することなく実行したい。そんな時に便利なのがFaaSです。
FaaSを使えば、アプリを独自に開発せずとも、特定の関数を利用できます。
FaaSの市場はどんどん拡大しており、現在その規模は約77億ドルと推定されます。
FaaS企業の一例がGoogle Cloud Functionsです。
Cloud FunctionsはGoogle Cloudの提供する、従量課金方式のスケーラブルな製品です。これを利用すれば、「サーバーを一切管理せずにコードを実行」できます。
その他、セキュリティ、ハイブリッドクラウド/マルチクラウドオプション、デバッグ機能も組み込まれています。
7. STaaS (Storage as a Service)
STaaSは「Storage as a Service」の略です。全てのデータを社内で保管するのはコストも手間もかかります。そこで、ストレージにSTaaSを利用するのが便利です。
信頼できるSTaaS企業にデータの一部の保管を任せることで、社内のリソースを開放し、コストを削減することができます。
XaaSのカテゴリーの中でも、STaaS市場規模はとりわけ大きいのが特徴です。2027年には、STaaS業界全体で1000億ドルを超えると言われています。STaaSソリューションを使用して事業を拡大する企業が増えていることから、この数字は今後数年で飛躍的に伸びることが予想されています。
STaaS企業の一例がHPE Greenlakeです。
Hewlett Packard Enterpriseグループを親会社に持つHPE Greenlakeは、「あらゆるワークロードのストレージに最適なクラウドサービス」です。
このデータプラットフォームは、個々のユーザー専用のサービスとして機能するので、必要に応じてスケールアアップ、スケールダウンすることができます。
8. CaaS (Containers as a Service)
CaaSは「Containers as a Service」の略です。全てのソフトウェアのコードが「コンテナ」にパッケージ化されており、どこでも読み込んだり実行したりできます。コード、ライブラリ、依存関係が全てコンテナ内にあるので便利です。
他のXaaS利用方法と大きく違わず、コードライブラリを保管するためのコンテナを一から作るのが手間であれば、CaaSサービスを利用することができます。CaaS業界は来年までに41億円規模に成長すると予想されています。
CaaS企業の一例がPortainerです。
Portainerは「コードを書くことなく誰もがコンテナをデプロイ、管理できる」コンテナ管理ツールです。コンテナの開発を任せられる委託先を探している企業にとっては、時間とコストを大幅に節約できるサービスとなるでしょう。
9. DBaaS (Database as a Service)
DBaaSは「Database as a Service」の略です。DBaaSソリューションを使えば、適切なユーザーが簡単にアクセスし、データを取り出せるよう、顧客データを整理、フィルタリング、保管することができます。
DBaaSソフトウェアにより、データベースを一から構築する必要が無くなります。信頼に足るDBaaSソリューションさえあれば、専用のデータベースをクラウド上でカスタマイズしたり、作成したりできます。
DBaaS製品の一例がOracle Databaseです。
Oracle Databaseは「世界有数のコンバージド・マルチ・モデル・データベース管理システム」です。インメモリデータベース、NoSQLデータベース、MySQLデータベースを一元化してくれます。
Oracle Databaseを利用すると、部門を横断したデータベースを構築し、データベースの運用に割く時間や労力を削減可能です。
10. AaaS (Authentication as a Service)
AaaSは「Authentication as a Service」の略です(ご覧のとおり、特定の略語にはいくつかの意味があることがあります)。複数のビジネスモデルを指すことのできる略語の場合、どれを意味しているのか確認することが重要です(同じ略語の例として、「Analytics as a Service」など)。
AaaSにより、自社プラットフォームにおけるアクセス制御の実装が簡単になります。様々なデバイスやネットワークから、特定のユーザーのみが製品にアクセスできるように管理可能です。
AaaS業界は2026年までに24億ドルに成長すると予想されています。
AaaSビジネスの一例がDuo Securityです。
Duo Securityは「全てのユーザー、デバイス、アプリケーションを保護する最新のアクセスセキュリティ」を提供しています。Duo Securityの製品を使用すると、二要素認証、他要素認証を有効にできます。
これにより、許可されていないユーザーがアカウントに侵入できないよう、様々な方法によりログインを検証可能です。
さて、様々なXaaSの種類を理解したところで、多くの企業がこのモデルを採用している理由をご紹介します。
XaaSモデルのメリットとは?
XaaSモデルには、柔軟なプラン、無駄のないオペレーション、充実の技術サポート、スケーラビリティなど様々なメリットがあります。
購読方式で支払いが可能
XaaSはエンドユーザーにとってコスト効率の良いサービスです。多くが購読方式を採用しているため、個々のニーズに応じて柔軟にサービスを利用できます。
サービスの利用停止や調整の際でも、問題ありません。XaaSの利用方法を自由に変更できます。企業による機敏な事業拡大を後押しする選択肢です。
社内でサーバーを構築したり、事業拡大の担当者を多大な費用をかけて採用したりする必要はありません。インフラストラクチャ、さらには事業全体の成功に関わる大きな役割を、XaaS企業に一任することができます。
無駄を省ける
スタートアップも成熟した企業も、高価なハードウェアやインフラストラクチャに費用を注ぎ込んだり、製品の構築や開発のために膨大な数の正社員を雇ったりする必要がなくなります。
XaaSサービスを利用し、既存のビジネスに統合してしまうのが便利です。特に自己資金で起業した企業の場合、必要に応じた方向転換における柔軟性は重要でしょう。
これにより、データウェアハウスの構築、サーバーの管理、大規模なIT部門の設置などから解放されます。優秀な従業員を会社に留めておきながら、XaaS企業をパートナーとして活用するのも一つの手です。
充実の技術サポートを受けることができる
サーバーの問題やデータセットのエラーを社内で解決できないことがある─そんな経験はお持ちでしょうか?
多くのXaaSは、通常であれば企業が社内で対処しなければならない問題に対して、技術サポートを提供しています。XaaSが社内の技術部門をしっかりバックアップしてくれるというのは、非常に大きなメリットです。
XaaSサービスのサポートスタッフに、ソフトウェアや事業運営上の機能全般に関する問い合わせをすることもできます。事業成長のための「資産」として、XaaSの専門性を活用しない手はありません。
XaaS製品によりスケールが容易に
XaaSのプランを変更するだけで、簡単に業務をスケールアップまたはスケールダウンすることができます。
これまでスケールアップには計画を練り、何ヶ月にもわたる準備が必要だったところを、XaaSサービスの活用により、ほんの数分での実装も可能です。
しかし、数々のメリットがある一方で、XaaSにはマイナス面も存在します。
XaaSモデルのデメリットとは?
XaaSモデルにはセキュリティの問題、パフォーマンスの低下、不明瞭な料金の発生など、いくつかのデメリットがあります。
セキュリティ上の問題が起きる可能性
XaaSサービスの利用によってセキュリティの脆弱性が高まる可能性があります。つまり、会社の評判や機密データをサービス提供会社に委ねることになります。
利用されているインフラストラクチャによっては、セキュリティ上の問題が発生し、ハッキングされる可能性もあります。XaaSを選ぶ際は、全面的に依存するのではなく、きちんとリサーチを行う必要があります。
利用するXaaSを評価する際は、セキュリティ認証と評判を慎重に確認しましょう。過去にデータ漏洩がなかったか、セキュリティ上の懸念事項の報告はなかったかなどを確認してください。些細なことのようですが、最適な選択をする上で非常に重要なステップです。
パフォーマンスの問題や停止が起きる可能性
事業の特定の機能をXaaSに委任する。これはつまり、顧客へのサービス提供をXaaS企業のサービス稼働に依存するということです。XaaS企業のサービスが停止した場合、復旧を待つほかありません。
XaaS企業のサービス停止はあなたの事業を妨げ、運営の停止につながる能性もあります。各XaaSプラットフォームの平均アップタイムを確認し、定期メンテナンスが行われるタイミングを把握しておくことが重要です。
サービスの中断や停止は、どこかのタイミングで必ず起こります。重要なのは、その弱点を予め把握し、対処方法を考えておくことです。緊急時の対策やお客さんとのコミュニケーションの基本指針を実行することで、影響を最小限に抑えましょう。
隠れた料金やユーザーライセンス料がかさむ
登録前に契約を隈なく確認し、どのような料金が発生するかきちんと理解しましょう。
XaaSの利用により、独自のサーバーを所有したりデータを自社で保管したりするよりもコストは削減できますが、隠れた料金や高額なライセンス費用を支払うことになる可能性があります。
スケールアップに際して、従業員分のユーザーライセンス費用や様々な経費が嵩んでしまうことがあります。現状必要なもの、今後必要になるものを見極めて、それに応じてプランを吟味しましょう。後から切り替えるとコストがかかってしまうことがあるので、最適なXaaSを慎重に選ぶことです。
ビジネスの重大な局面でのサービスの移行は、事業の成長を妨げる可能性があります。XaaSを選ぶ際に将来的な展望を見据えることは、会社の成長にとって非常に重要です。
まとめ
XaaSサービスの人気はますます高まっており、世界中で多くの企業が利用しています。「Anything as a Service」の業界の勢いは今後しばらくとどまることはないでしょう。
XaaSモデルは柔軟な価格帯、無駄のない構造、充実のサポートが特徴です。
しかしその一方で、ハッキングへの脆弱性、パフォーマンスの低下、隠れた料金などのデメリットもあります。
XaaS企業の仕組みを理解することで、ご自身のビジネスでの活用が有効かどうか判断することができるはずです。
あなたが愛用しているXaaSサービスはなんですか?その理由とともにコメント欄で是非お聞かせください。
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