Kinstaのアイデアはどのように生まれ、創業されたのか、そしてどのようにして今日の規模まで会社を成長させることができたのか、お客様からよく聞かれることがあります。企業やスタートアップには、それぞれの誕生秘話があるものです。個人的にも機会を見つけては積極的に伺うようにしています。と言うのも、どんなストーリーにも、隠れたヒントや教訓があり、自分たちのビジネスに応用することができるからです。

そこで今回は、Kinstaがブートストラップ方式(外部からの投資を受けずに自己資金で起業する手法)で事業を展開して手にした教訓、そして会社をゼロから収益7桁の企業にまで成長させた方法をご紹介しようと思います。私たちがこれまでに下した決断の中には、成功したものもあれば、結果的に費用と時間を無駄にしてしまったものもありますが、この記事で伝えたいのは、人脈やリソース、そして資金がなくても、収益性の高いSaaSビジネスを展開することは可能であるということです。

会社をイチから立ち上げて成功させた方なら、これからお話しする内容には多かれ少なかれ共感してくれるのではないかと思います。これから事業を立ち上げようとしている方には、ブートストラップ方式について、そのメリットとデメリット、そして私たちのリアルな経験をご紹介します。もしかしたら、あなたの事業に役立つヒントが隠れているかもしれません。

前置きとして、「誰も知らない驚きのヒント」や、「メディアですぐに取り上げられて何千人もの顧客を獲得できる方法」のようなものは期待しないでください。Kinstaが他の企業より優れているというわけでは決してありません。事業の成功は、あなた自身、そして成功したいという意志の強さにかかっています。

ゼロから数百万ドルの年間経常収益(ARR)を達成したことは、確かに成功を収めたと言えますが、一度これを達成した後は、すぐに次の目標を設定し、新規見込み顧客や新製品、サービス、アドオン、マーケティングチャネルについて考え始めます。そして次の目標は収益8桁達成、そしてそれを達成する方法を導き出すこと…というように移り変わっていきます。

ここで重要なのは、会社を経営することはお金を稼ぐだけではないということ。チームを構成し、日々継続的に問題に取り組み、イノベーションを推進し、雇用と解雇、責任、自己学習、自己管理などなど…多くのことが絡んできます。こういったことは、学校で学んだり、誰かに伝授してもらったりすることはできません。実践し、問題を解決し、ミスを犯して、失敗から学び、成長していくことが不可欠です。

この記事が、ブートストラップ方式の会社経営について理解を深め、起業するきっかけになれば幸いです。

はじめに

まずは、Kinstaの始まりについて少し触れておきます。

Kinstaは、Mark、Anita、Peter、私(Tom)の4名によって創設されました。2013年当時、私たちは中小企業向けにWeb制作やオンラインマーケティングのサービスを提供していたのですが、手応えを十分に感じられていなかったのと、その時のビジネスモデルが拡張性に乏しいことがわかり、伸び悩んでいました。収益を維持するため、毎月新たに顧客を見つけなければなりませんでしたが、リソースに限りがあり、成長に必要なプロジェクトを新たに立ち上げることもできず。この状況をなんとかして脱しなければ、と考えていました。

当時は、コンテンツ管理システムのWordPress一本でやっていました。というのも、無料のソフトウェアであり、何万もの拡張機能(プラグインやテーマ)を使ってあらゆるウェブサイトを効率的に構築できる点を買っていたからです。そしてプロジェクトを終えると、顧客からは決まってこんなことを尋ねられました。

WordPressサイトのホスティングサービスは提供していますか?システム管理者がいないので、サーバー周りのこともお願いしたいんです

これに対してはいつも「No」とお伝えしていたのですが、このような要望が20件ほど続き、ビジネスチャンスがあると確信した私たちは話し合いを重ね、最終的にホスティング業界への参入を決めました。

それから4年経った今。 Kinstaは、数千のWordPressサイトにホスティングサービス、さらにアプリケーションホスティングおよびデータベースホスティングを提供するまでに至りました。

今では、小規模な企業やブログサイトから、Inc.誌の「500/5000リスト」に選ばれる大企業まで、幅広い層のお客様にご利用いただいています。インフラ、サーバーの更新、サイトの保護、分析、読み込みの高速化、24時間年中無休のサポート体制など、マネージドソリューションをお届けしています。

ここまで辿り着くまでの道のりがどれほど過酷で、毎週、毎月どれだけの問題に直面し、成功のためにどれだけの犠牲が必要なのか、当時は全く想像することができませんでした。Kinstaは、完全ブートストラップ方式の会社です。2013年のKinsta創設時、法人銀行口座の資金はゼロ。それぞれが自己資金を投じました。

以前、ベンチャーキャピタル(VC)ではなくブートストラップ方式を選ぶメリットについても言及しましたが、Kinstaが設立されて以来、数々のVCからパートナーシップを打診されてきました(現在でも度々お声がけいただきます)。最初の数年間は、多少成長が遅れたとしても、会社を自分たちで100%所有したいと考え、外部からの投資は受けませんでした。決してベンチャーキャピタルに反対というわけではなく、さまざまなメリットがあり、欠かせない存在だということも理解しています。実際IT分野で事業を展開する会社の多くは、ベンチャーキャピタルがなければ、おそらく存在していなかったでしょう。

しかし、資金調達においては、メリットとデメリットを天秤にかけて、重要なことに優先順位をつけなければなりません。私たちの場合は、会社を自分たちで完全に所有することにこだわり、自己資金を投じたブートストラップ方式を採用しました。

スタートアップは、10社中9社が失敗に終わっていることをご存知でしょうか。この傾向は、おそらくビジネスの本質と言えます。これから起業される方には、この記事がスタートアップとして生き残り、事業を拡大するための肥やしになれば幸いです。それでは、前置きはこの辺にしておいて、早速私たちが学んだ16の大切な教訓をご紹介していきます。

1. 初日からブランドを確立する

ブルーオーシャン戦略、レッドオーシャン戦略(またはブルーオーシャン企業、レッドオーシャン企業)という言葉は聞いたことがありますか?「レッドオーシャン」とは、企業が互いにしのぎを削り、市場でより大きなシェアを獲得しようと競合する、今日の産業を意味します。激化する競争が「海を血のごとき赤に染め」上げ、わかりやすく例えるならサメの宴といったところでしょうか。競合他社が溢れる市場というのは、逆に言うと多くのユーザーがそのサービスや製品を求め、お金を払っていることを意味します。

レッドオーシャン戦略とブルーオーシャン戦略
レッドオーシャン戦略とブルーオーシャン戦略

これに対し、未開拓の市場で事業を展開し、急速な成長の機会を得ながら需要を起こしていくのが、ブルーオーシャン戦略(企業)。競合相手はほとんどいないか、全く存在しない可能性もあります。

新興企業がブルーオーシャン戦略をとれば、その業界を牽引し、ニッチな分野を支配することができる可能性は大いにあります。しかしブルーオーシャンは、需要が低いことを意味し、全く新たな分野を自分たちで開拓していなかければならない可能性があります。提供するサービスや製品にまだ需要がないことも考えられます。

レッドオーシャンでは、長年優位に立つ老舗企業と競合しなければならない可能性が高くなります。では、すでに安定した収益、顧客基盤、確立されたオンラインプレゼンス、そして多額のマーケティング予算を持つ企業と、どうすれば長期的に渡り合っていけるのでしょうか。唯一の方法は、自社のブランド力を最初から意識的に確立していくこと。潜在的なユーザー層に認識されるような、目を引く印象的なブランドです。

ブランド力があって初めて、競合他社と差別化することができます。最近では、michigandesigner.com、denverdesignagency.com、bestwphosting.comなど、ブランド化できない名前(一般用語/場所+キーワードなど)を使っている会社をよく見かけます。

このような一般的なブランド企業は、どんなに素晴らしいサービスを提供していても、信頼性に欠け、お金を落としてくれるユーザーは少ないでしょう。起業するのであれば、ブランド力を意識した名前を考案し、他社と差をつけましょう。

私たちは、「Kinsta」という会社名を導き出すまで、数週間を費やしました。24時間会議室にこもって検討したというわけではありませんが、他の作業をしながら、常に良い案を考えていました。ユニークで長すぎず、ブランディングしやすい名前を見つけてください。

2. 最初の顧客100名の獲得が最大の難関

ウェブサイトを立ち上げ(完璧でなくても公開するには十分な程度)、最初の顧客から問い合わせがあり、サービスを購入してくれるのを待つ。こんな具合でトントン拍子にいけば良いのですが、潜在顧客があなたの会社を知らなければ、当然サービスが目に留まることはありません。しかし、事業を展開し始めたばかりの状態で、顧客も、顧客からの評価も、実績もないのに、どのように信用してもらえばいいのでしょうか。Mozという会社は、優れたSEOツールを販売しています。Mozの創設者であり、コンテンツマーケティングのプロであるRand Fishkin氏は、自身の動画コンテンツ「Whiteboard Friday」で、以下のように語っています。

MozのWhiteboard Friday「実は、Mozでは、誰かが無料トライアルを利用するのに、平均して7.5回訪問していることがわかっています。つまり、初めてMozのウェブサイトに訪れ、今このWhiteboard Fridayを見ているあなたは、これからMozの無料トライアルを利用するまでに、平均してあと6、7回ウェブサイトに訪れることになります。それには、数ヶ月かかるかもしれません」(日本語訳)
MozのWhiteboard Friday「実は、Mozでは、誰かが無料トライアルを利用するのに、平均して7.5回訪問していることがわかっています。つまり、初めてMozのウェブサイトに訪れ、今このWhiteboard Fridayを見ているあなたは、これからMozの無料トライアルを利用するまでに、平均してあと6、7回ウェブサイトを訪れることになります。それには、数ヶ月かかるかもしれません」(日本語訳)

無料トライアルへの誘導には、平均7.5回もの訪問を要する。これは、有料会員になるのではなく、無料のトライアルを利用してもらうだけの回数です。Mozは、強力なブランド力があり、SEO業界では広く名の知れた企業にもかかわらずです。

2013年末から2014年初頭にかけての最初の数ヶ月間、Kinstaも全く同じ状況にありました。毎日誰かが訪れたかと思えば、全員がこぞって同じことを尋ねます。

実際の顧客の導入事例を教えてください。

XYZ業界からの利用者はいますか?

最初の顧客を探している私たちには、当然紹介できる導入事例はなく、非常に悔しい思いをしました。たとえ何百人もの友人や知り合いを持つ広い人脈を持っていても、サービスを購入してくれる最初の顧客を獲得するのは至難の業です。以下、私たちが最初の顧客獲得のために行なったことを一部ご紹介します。

  • 無料コンテンツや専門性の高いコンテンツを配信してアピールする ─まずはブログから始めて、人目を引くコンテンツを定期的に配信。その内容は専門性が高く、ターゲットオーディエンスの心を掴むものであることを心がけました。コンテンツマーケティングは、適切に行えば効果があり、必ずやコンバージョンにつながります。これについては、後ほどコンテンツマーケティングのセクションで詳しくご説明します。
  • 無料アカウントを提供する─これはかなり効果的がありました。いくつかの大手パブリッシャーと提携し、無料でホスティングサービスを提供するのと引き換えに、お客様の声ページに使用感や感想を寄せてもらいました。また、初期ユーザーとして、製品に対して貴重なフィードバックを得ることもできました。
  • 無料で使えるメールを最大限に活用する─初期の頃は、私がマーケティング担当だったのですが、コールドメールを通じて、多くのWordPress関連企業やブロガーと関係を築きました。今でもコールドメールを活用しています。最初の顧客の多くは、メールを通じて獲得しました。例えば、SEOのプロとして知られるMatthew Barby氏(現在はHubspot.comのマーケティング総括責任者)。彼のケーススタディが非常に参考になったので、彼に連絡を取り、お礼を伝えました。すると、ちょうど彼が利用するサーバーでは手狭になり、新たにホスティングプロバイダを探していることが判明したんです。

あれから3年以上経った今でも、Barby氏は私たちの大切なお客様の1人です。このような感じで、たった1通のシンプルなメールが顧客の獲得につながることも。

「サイトはすべてKinstaで運用してるんだけど(提携でなく)、KInstaの技術やチームは本当におすすめ。とにかく素晴らしいサービス」(ツイートの日本語訳)

十分なリソースを確保できなくても、打開策は必ずあります。頭を柔らかくすれば、自分で風を起こしてボールを転がすことはできるということ。最初の顧客を見つけたら、顧客の獲得は徐々に容易になっていきます。ただし、最初の10人を獲得するのは、最初の100人を獲得するのと同じぐらい根気が必要です。

3. 世界で人材を見つける(+経費の削減)

Kinstaは、世界各地の優秀な人材で構成されています。アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、そして日本、インド、インドネシア、ニカラグアなど。Kinstaがリモートのチーム構成を採用した理由をいくつかご紹介します。

サービスの性質上、どうしても顧客にいつでもすぐ対応できる24時間年中無休のサポート体制が必要でした。つまり、世界中にいる顧客のため、すべてのタイムゾーンを網羅しなければなりません。物理的に一箇所に集まるチームと働き、なおかつ24時間年中無休のサポートを提供する場合は、管理が難しくなる可能性がありますが、そうでなければ、募集範囲を世界に広げて従業員を採用するのは悪くないアイデアです。

例えば、開発者、DevOpsエンジニア、コンテンツマーケター、営業担当を探しているとします。拠点とする街、あるいは国単位だとしても、世界トップクラスの人材を見つけることは容易ではありません。見つけたとしても、1人か2人程度でしょう。以下のツイートは、部分的にリモートチームを持つことのメリットを端的に表していいます。

「私たちの会社が完全リモートな理由…
1.オフィスがいらない=経費の削減に
2.優秀な人材を世界レベルで発掘できる
3.顧客が世界中にいるなら、私たちも世界中にいるのが合理的
4.皆が好きな場所で仕事をできる
5.最新ツールでリモートでの仕事が容易
6.アメリカでの就労ビザの取得は困難」(ツイートの日本語訳)

IT業界の多くの仕事は、在宅で行うことができるため、リモートワークは今やごく一般的です。仕事ができる人はスケジュール管理も上手なもので、自宅で仕事をする方がかえって生産性が上がる可能性があります。また、中心地に物件を借りる必要もなくなり、経費を大幅に削減することができます。

さらに、給与の削減にもつながります。例えば、アメリカ西海岸の一流バックエンド開発者を採用するには、中央ヨーロッパ拠点の開発者の2倍かそれ以上の費用がかかります。従業員への給与は経費の中で最も大きな割合を占めます。給与を削減することができれば、年間どれだけの支出を減らすことができるかは容易に想像がつくでしょう。これによって捻出できた費用をさらなる優秀な人材の採用に投資したり、マーケティングや製品開発に充てたりすることができます。リモートで社員を雇うことは、経済的にも大きなメリットをもたらします。

会社を成功させるためのもう1つのアドバイスは、自分よりも優れた人材を雇うこと。あなたが開発や営業、採用を十分うまくこなせていても、その分野のトップに上り詰める才能や実力には欠ける可能性も。支配的にならず、自分より優れた人材にはどんどん仕事を任せて、効率的に会社を成長させてください。

4. MVPを開発して、早期に市場投入

MVP(Minimum Viable Product)は、日本語では「実用最小限の製品」と呼ばれ、製品の販売時に使われる用語です。基本的には、文字通り、初期ユーザーを満足させるのに十分な機能を備えた製品を意味します。完璧主義者には、なんとももどかしい考え方ですが、細部までこだわりすぎてしまうと、いつまでも製品の販売が先送りになり、締切や遅延が繰り返し発生することになります。加えて、貴重なフィードバック、市場を測るチャンス、収益、そして初期の利用者さえも逃してしまうことになります。

実用最小限の製品(左)と通常の製品(右)
実用最小限の製品(左)と通常の製品(右)

私たちも同じように、製品を完璧な状態でないまま提供することにかなりの抵抗がありましたが、その一方で、最初の6ヶ月では、計画しているすべての機能を提供することは不可能では、という不安もありました。

そこで、最終的にMVPの作成に至りました。競合他社に比べれば機能面で劣りましたが、起業して収益を出すには十分な質にもっていくことができました。当時は、ステージング環境、自動SSL、世界37箇所のデータセンター、プレミアムDNS統合、コントロールパネルの分析機能もありませんでしたが、最終的にはすべての機能を提供することができました。そして機能を追加していく間にも、毎日新たなお客様がサービスを購入してくれました。MVP作成を決断し、早期にサービスを提供し始めたのは、正しい判断でした。もし過去に戻ってやり直せるとしても、同じ戦略を立てるでしょう。

マーケティングは早くから始めて、まずは市場に製品を投入してみることです(テストマーケティング)。そして、早い段階でユーザーからのフィードバックを得て、そこから学ぶこと。製品にフィードバックを反映し、改良を加えてください。Steve Blank氏が述べたように、MVPとは単に安価な製品ではなく、賢く学ぶ機会です。また、以下のHiten Shah氏の助言も的を射ています。

Hiten Shah氏のSaaSビジネスに関する助言「SaaS業界では誰よりも先にたどり着いたり、最高のアイデアを思い付いたりすることが勝ちではない。問題点を解決し続けることが勝利のカギである」(日本語訳)
Hiten Shah氏のSaaSビジネスに関する助言「SaaS業界では誰よりも先にたどり着いたり、最高のアイデアを思い付いたりすることが勝ちではない。問題点を解決し続けることが勝利のカギである」(日本語訳)

事業の成功は、決して短期戦では決まりません。長期的な戦いに身を投じていることを忘れずに。製品は早期に発表して、購入してくれたユーザーの不満や要望に応え続けましょう。

5. 「Hire Slow Fire Fast」の原則に従う

日本ではあまり馴染みのないフレーズですが、日本語に訳すと「採用はじっくり、解雇は素早く」といったところです。これは一見当たり前なようで、実践している会社はあまりありません。社員は会社の心臓部。社員なしでは、最高のアプリケーションも最高のソフトウェアも構築できません。また、顧客と直接関わるのも従業員であり、会社を代表し、会社の継続的な成長に大きな責任を負っています。したがって、従業員は大切にしてください。

私たちの場合、新たに人材を採用する際、仕事内容をかなり細かく具体化し、いくつかのポータルサイト、オンライングループ、フォーラムに投稿しています。その後、優れた人材を発掘するため、50人、100人、あるいはそれ以上の応募が集まるのを待ちます。

その後、候補者を上位5名または10名に絞り込み、面接を複数回(通常は2~3回)行います。面接を経て、候補者を上位3名まで絞り込み、最終決定に移ります。このプロセスには時間がかかり、通常は数週間かかります。緊急で人材が必要になる場合を除き、人材は時間をかけてじっくり選ぶのが得策です。

また、多くの企業が経験することですが、私たちも過去に何度か採用で失敗してきました。その理由は明白で、上記で挙げたような丁寧な採用を行わなかったことにあります。当時、すぐに人手が必要だった時期には、完璧な候補者を見つけるために何週間や何ヶ月も費やすことができませんでした。当然ながら、決断を急げば、誤りの可能性が高まります。

bad employee

また、採用した人材がチームや企業文化に合わないことがわかれば、できるだけ速やかに雇用を取りやめ、次のステップに移ることをお勧めします。ここで言う「できるだけ速やかに」というのは、数日以内が目安です。第一に、限られた経費をチームに合わない社員のために割くことは非常に非効率です。また、社員の能力や態度、性格を変えようと何度も話し合いを繰り返すのは無駄というもの。早めに見切りをつけて、再度人材探しを始めてください。

6. 数字を把握して収益性を重視する

このステップは肝となります。自己資金で会社を経営するなら、最も重要な財務指標を常に把握していなければなりません。経費は前月の収益から捻出しなければならず、再度投資するための資金が外部から入ってくることはありません。資金の重要性はすぐに理解できるはずです。自分で生み出した収益を経費に充てるのは、他人からの資金(VCドルなど)を使用するのとは大違いです。

おそらく多くの人が、学生の頃に夏休みのアルバイトで稼いだお金は、おばあちゃんからもらったお小遣いよりも大事に使っていたはず。

ブートストラップ方式をとる以上、収益を上げなければ生き残れません。そうすると、資金繰りも自然と慎重になります。苦労して稼いだお金で会社を運営するということは、この点においてメリットがあります。収益を出して初めて、その資金の分配を考えることができます。

私たちの場合は、最大限再投資に充てています。新たなメンバーを雇い続け、コンテンツ制作と宣伝、そして有料顧客獲得に惜しみなく投資しています。「余った資金で何をするかは自分たち次第」というのもブートストラップ方式の魅力です。

KinstaのMRR(月次経常収益)
KinstaのMRR(月次経常収益)

月次経常収益(MRR)が増えると、より大きく再投資が行えるようになります。また、基本の金融用語は理解しておくこと。例えば、「チャーンレート(churn)」について尋ねられたら、回答する前に、「収益の話(revenue churn)なのか、それとも利用者数の話(customer churn)なのか」ということを尋ね返すのが妥当。この2つの指標の違いを知らない経営者や起業家は驚くべきほどたくさんいます。

Kinstaでは、Stripeと連携可能な分析ツールBaremetricsを利用しています。Stripe(およびその他の決済プラットフォーム)からのデータを処理する直感的な管理画面で、データをチャートや指標で確認することができます。データに基づいて重要な意思決定を行うのに有用です。Baremetricsには、無料トライアルがあるので、気になる方はぜひ使ってみてください。Kinstaが使用しているもう1つのおすすめツールは、Patrick Campbell氏によるProfitwell。こちらは完全無料で利用できます。

資金繰りは慎重に行い、できるだけ出費を抑えるように心がけることが、成功のヒントです。私たちは、業務の効率化のため、さまざまなSaaS製品を導入しています。そして定期的に使用している製品を見直し、本当に必要なものだけをふるいにかけています。会社の規模に関係なく、使用しないもの、お金を支払う価値のないものは、すべて解約してしまうことをお勧めします。

特に起業したばかりの頃は、予算に限りがあります。会社の経営にどうしても必要なサービスは、事情を説明し、ぜひ割引をお願いしてみてください。恥ずかしがる必要は決してなく、実はこれに対応してくれる会社は少なくありません。ビジネスにおいては、何事も交渉の余地があります。予算を超えてしまう場合には、共同プロモーションや、双方にとってメリットのあるパートナーシップを提案してみてください。

限られた予算の中で賢くお金を使い、頭を柔らかくして問題解決方法を導き出す能力を身につけましょう。ブートストラップ方式では、初日から収益性の高い経営を強いられます。会社を成功させるには収益性を重視すること。

併せて、価格競争に翻弄されないことの重要性もぜひご覧ください。

7. 「できない」の文字はない

「解決できない」、「わからない」、「諦める」などの言葉は、辞書の中から削除してしまうこと。直面している問題や状況が、どんなに辛く解決不可能に思えても、必ず光はあります。時には数週間、数ヶ月、半年かかることもありますが、必ず解決策を導き出せるものです。膨大な労力を事業に捧げていて、「できない」の一言で片付けることはできません。

私たちもKinstaを創設して以来、何度境地に立たされたことかわかりません。一難去ってまた一難。で乗り越えたと思えば、気づけばまた同じ状況に陥るものです。

その一例をご紹介するなら、サービスの提供開始後のある日、何の通知もなく、管理外の不正行為が原因でStripeのアカウントが停止されたことがありました。Stripeのサポートに問い合わせると、定型文のようなメッセージで、私たちのアカウントは完全に閉鎖され、有効化も不可能である旨を通達されただけでした。

突然アカウントが凍結されたことから、クレジットカードによる決済や収益を回収することができなくなってしまいました。もちろん、すぐに代替サービスを探し始めましたが、新しい決済システムを既存のシステムに統合するのは、5分で済ませられる作業ではありません。それでも諦めずに解決策を模索し、スタートアップコミュニティにこの経験をブログ記事にして共有しました。この記事がすぐさまHacker NewsとRedditでトレンドになったことから、悪評を恐れたStripeが問題解決に動きました。こうして、解決不可能と思えた問題もわずか48時間以内に消え去り、再びビジネスを再開することができました。

8. 9時から5時まで働くだけじゃ足りない

語弊を恐れずに言えば、成功はそう簡単には手に入りません。結果を出すには、それなりの努力が求められます。1日に16時間コンピュータの前に座って、顧客からの問い合わせに対応し、潜在顧客に営業をかけ、契約を取る、なんてこともしばしば。起業して最初のうちは、土日や祝日などはないと思った方がいいでしょう。2015年12月、あるサーバープロバイダーが大規模なDDoS攻撃を受け、データセンター全体が2~3日間にわたってダウンしたことがありました。なんと、クリスマス時期の出来事です。

DDoS(画像出典:Linode status)
DDoS(画像出典:Linode status

これによって、私たちは最悪とも言えるクリスマスを迎えることに。

24時間コンピュータの前に座り、顧客からの問い合わせに対応しながら、できるだけ早く再稼働させるため、他のプロバイダへのサイト移行を不眠不休で行いました。これはなかなか強烈なクリスマスプレゼントとなりました。私たちはこの事件から教訓を得て、サービスをクラウドに移行することを決意しました。

ブートストラップ方式で運営する会社は、最初の数年間は特に厳しいものです。1日、あるいは1週間に数時間程度でビジネスをゼロから構築できる、と述べる起業家をよく見かけますが、私は賛同できません。所詮は綺麗事です。自分の力で起業することの大変さは、身をもって経験してきましたし、多くの方も同じように努力して会社を成功させたはずです。

work long hours

深夜12時(それより遅くなることも)に寝室に向かいますが、返信しなければならないメールがあり、その日に読めなかった業界ニュースや記事のタブは何個も開きっぱなし。完了すべきTrelloのカードも残っている。これに加えて、他にもやるべきことが山積み…なんていう状況は当たり前です。

私自身の生産性が低いとか、自己管理ができないとかいうことではなく、さまざまな役職をこなし、勤務時間内に完了しきれない量の仕事を抱えているというだけです。個人的にはこれを前向きに捉えていて、毎日が挑戦の連続という点では楽しく働いています。

自分の会社といえど長時間働くことに抵抗のある方は、ブートストラップ方式で起業しない方が良いかもしれません。いわゆる9時から5時の勤務スタイルを好むのであれば、それはそれでいいですし、メリットもあるでしょう。ただし、起業してイチから何かを立ち上げるには、他人の倍以上働かなければなりません。

9. 割ける時間はすべて会社に

参入する市場を決定し、自分のアイデアを形にする覚悟がきまったら、すべての力とリソースをそのアイデアに捧げてください。サイドプロジェクトや週末の趣味程度で扱ってはうまくいきません。失敗したとしても、なんてことありません。強いていえば、挑戦しなかったことを将来後悔せずに済みます。

2014年当時、ConvertKitの創業者であるNathan Barry氏もこの決断を迫られていました。ConvertKitは、ブロガー向けのメールマーケティングソリューションで、早期から軌道に乗り、有料顧客と初期のMRRを獲得したものの、計画していたほどの結果は出ていませんでした。ConvertKitをサイドプロジェクトとして運営していたBarry氏は、ConvertKitを閉鎖するか、本業として全力投球するかの二択の選択を迫られました。

ConvertKitの決断の時
ConvertKitの決断の時

最終的にはConvertKitに全力を注ぐことを決意し、他のすべてのプロジェクトを中断し、フルタイムでConverKitの事業に取り組み始めたました。その結果、会社は順調に成長し、現在MRRは80万ドルに達しています。Barry氏の決断に間違いはなかったようです。

10. コンテンツマーケティングとSEOへの投資は惜しみなく

ブートストラップ方式で起業したばかりの頃は、通常であれば、マーケティング予算が一切ないはず。全くないことはないにしても、かなり限られていることでしょう。

PPC広告キャンペーンを実施して、毎月1万ドルの予算を確保して、自社あるいは競合他社のキーワードを狙うというのは論外。また、Facebook広告に数千ドルを費やしたり、業界で有名なブログでインプレッション広告に投資したりなども、現実的ではありません。しかし、十分な予算を組むことがなくても、自社製品やサービスを広める方法はあります。

すでにこの記事でも数回挙げていますが、コンテンツマーケティングは、適切に行えば、確実にコンバージョン獲得につながるマーケティング手法です。

Kinstaは、他に策がなかったことから、創業初日からブログに力を入れました。以下は、Google アナリティクスのスクリーンショットです。トラフィックが何年もかけてどのように増えていったかを示しています。見て分かる通り、コンテンツの評価を受けるには、ある程度の時間が必要です。オーディエンスの確立には、さらなる時間と努力が求められます。最初の12~16ヶ月を過ぎれば、より早いペースでアクセス数が増えていきます。良質なオーガニックトラフィックを獲得するのは簡単ではありませんが、長期的に見れば最も大きな利益をもたらしてくれます。

オーガニックトラフィックの増加
オーガニックトラフィックの増加

また、早く始めれば始めるほど、結果が出るのも早くなります。Kinstaは量より質を重視し、深く詳細な解説記事を公開することに徹しています。毎日200万件のブログ記事が公開されていると言われていますが、そのほとんどが誰にも読まれず、共有されたり、リンクされたりすることがありません。ありきたりで短く、中身のないコンテンツにはほとんど価値がなく、時間とリソースの無駄になりかねません。

では、どうすればいいのか。例えば、週に500語の記事を5件書く代わりに、テーマについて調査し、共有してもらえる、真に価値があり質の高い5,000語の記事を1件投稿してください。あるいは、月に2件と決めて、徹底的に研究した業界トップクラスのコンテンツを配信するのも効果的です。この戦略で、Kinstaは13ヶ月でオーガニックトラフィックを571%増やすことができました。

ここで参考までに、Kinstaブログで最も読まれている記事を3つご紹介します。

【WordPressサイトのSEO】検索トラフィックを393%以上伸ばす61のコツ』(約5万2,000字)

ブログ記事の例1
ブログ記事の例1

Google Cloud Platformを利用する10のメリット』(約1万800字)

ブログ記事の例2
ブログ記事の例2

Google PageSpeed Insights—100点満点を獲得することの真実』(約1万9,800字)

ブログ記事の例3
ブログ記事の例3

上記それぞれのスクリーンショットで、各記事がさまざまなキーワードで上位表示され、毎日多くのシェアを獲得し、多くのオーガニックトラフィックが発生していることがわかります。ブログ記事には視覚的要素も盛り込まれており、わかりやすく的確な説明ですぐに解決策やヒントを実践することができるようになっています。このように、読者に価値のあるコンテンツを提供することが、業界で存在を示すことにつながります。そして何よりのメリットは、ブログの購読者が顧客になり、ニュースレターやプッシュ通知の登録者にもなり得るということです。

コンテンツマーケティングを早期から根気よく続けていけば、Google アナリティクスのリアルタイムサマリーは、1日の大半が以下のようになるはずです。

Google アナリティクスのリアルタイムの訪問者
Google アナリティクスのリアルタイムの訪問者

コンテンツマーケティングは長期戦になりますが、ターゲットを絞った、質の高いトラフィックを無料で大量に集めて、有料顧客につなげていきましょう。

もし、マーケティングに予算を充てられる場合、広告を利用すれば、すぐさまターゲットとするトラフィックを獲得することができますが、基本的に得られるものは1回限りのクリックであり、アクセス数を維持するには広告に継続的に投資し続けなければなりません。常に最新のコンテンツを定期的に配信するブログなどのプラットフォームを持つことは、ビジネスの拡大に非常に効果的です。例えば、Buffer、Copyblogger、Mozは、コンテンツだけで会社を成功させています。詳しくは、Bill Widmer氏のSEOケーススタディをご覧ください。

11. 重要な業務に的を絞って、とにかくこなす

物事を成し遂げるための最良の方法とは、とにかく机に向かって作業を始めること。別なことをしないといけないからと言い訳を作ったり、明日から始めると自分に言い聞かせたりしたくなる気持ちはよくわかります。しかし、あなたのビジネスを誰かが始めてくれることはありません。特に新たな価格設定、サーバー費用、利益率について何ヶ月もかけて考えなければならない時には、退屈でやる気が出ないものです。それでも、私は短期集中でなるべく早く終わらせるようにしています。

私からの助言としては、パレートの法則(80:20の法則)のように、本当に重要なことだけに専念すること。例えば、ウェブサイトのデザインなら、初期の頃であれば、価格ページの「今すぐ購入」ボタンの色を緑から淡い緑に変えたり、背景画像を変えたり、トップページにアイコンを追加したりするのに、何時間も費やす必要はありません。

と言うのも、ほとんどの人がそのような細部は気にしていないからです。私たちも実際にこのような変更を何度か加えたのですが、結果として変化が見られたことはありませんでした。この理由は明白です。

1日の訪問者数が100人の小規模なサイトでは、コンテンツの量がまだあまりにも少ないからです。それよりも、1日1,000人の訪問者を獲得することに時間を充て、ウェブサイトの拡大とともに変更を加えていくのが賢明です。十分なコンテンツを配信できるようになったら、CRO(コンバージョン率最適化)テストを実施しましょう。

12. 弱点をチャンスに

顧客基盤が小さく、リソースもない初期段階のスタートアップには、競合他社に踏み潰されてしまうという不安が常につきまとうもの。

しかし、自分の会社が他社よりも小規模であるという状況は、考えようによっては非常に有利です。大手の競合他社は、すでに何千もの顧客を抱え、堅牢なインフラを持っていますが、同時に多くの面で規制があり、何か変更を加える際には、従わなければいけないルールがあります。

適応し、素早く動く(画像出典: VG 24/7)
適応し、素早く動く(画像出典: VG 24/7

新機能の導入やUIの変更、多くの顧客が利用するアドオンの実装には、通常数ヶ月、あるいはそれ以上かかります。これに対して、まだ小さな新興企業では、企業ポリシーや大規模なインフラに縛られることなく、必要に応じて柔軟に素早く変更を加えることができます。

これの例として、PHP 7の最初の製品版がリリースされた際、私たちは数日以内に顧客に提供を開始することができました。業界のニュースでPHP 7へのアップグレードのメリットばかりが取り上げられている頃、私たちのプラットフォームではすでに利用可能な状態になっていたのに対し、ほとんどの大手企業では、PHP 7の提供までに1年以上かかりました(ちなみに、未だ多くの企業がPHP 7に対応していない、もしくは上位プランのみに制限してサポートしています)。

例えば、ボタンのワンクリックでPHP5.6から7に切り替えられるような小さな工夫を加えるだけで、多くのビジネスチャンスにつながります。

MyKinstaではWordPressサイトのPHPバージョンをワンクリックで変更可能
MyKinstaではWordPressサイトのPHPバージョンをワンクリックで変更可能

小さな機能が、会社を大きく成長させることがあります。豊富なポートフォリオを持つあるWeb制作会社は、私たちがトレンドに合わせて必要な変更を素早く適用し、便利な機能を顧客に提供していたのを知り、大手競合他社からKinstaに乗り換えました。このように、見方を変えれば小さいからこそのメリットもあるものです。

13. 他人を助けながら積極的に人脈を広げる

業界を問わず、交友関係を築きたいスペシャリスト、インフルエンサー、ブロガーはたくさんいます。そんなコミュニティの一員となり、できる限り人脈を広げることが大切です。業界の最新のトレンドについて意見を交換したり、問題解決を助け合ったり、ツールやマーケティング手法、サービス、人材などを推薦し合ったりすることができます。

悲しいことに、他社を助けるというのはそれほど一般的ではありません。私たちは皆、独自の目標があり、一日一分一秒を争うほどハードなスケジュールをこなしています。しかし、それでも他人を助けて関係性を築いていくことは大切です。自社の知識やノウハウを共有し、精通している分野について助言を与え、可能ならリソースやデータを共有して、他社のコンテンツをSNSで共有したり、ニュースレターに掲載したりしましょう。このような善行は、いつかきっと何倍にもなって返ってきます。

私たちは皆、自分の運命の設計者。自分の運は自分で切り開いていくものです。例えば、ターゲットを絞ったコールドメールを20通送る予定だったものを、今週は30通送ってみてください。そして来週は40通。例えば、1週間にSNSで1人のインフルエンサーとつながるなど、毎週1%ずつでも全体的な生産性を向上させることができれば、年末には大きな成長を遂げているはずです。また、Twitterを積極的に活用して、同業界の関連ブログにコメントを残したり、連絡を取ったりして、存在を知ってもらいましょう。

Gary Vaynerchuk氏は、もう何年も前に退職し、余生をゆっくり楽しめることもできたはずなのに、むしろ以前よりもさらに忙しく活動しています。かなり頻繁にSNSを更新し、毎日YouTubeのVlog動画とポッドキャストを投稿し、積極的に悩み相談を受け、ツイートを返し、メディア会社などのベンチャー企業を経営しています。さらに、日曜日の夜遅くになっても働いているから驚きです。

「ここだけの話…現在日曜の夜10:59。まだ仕事してます」(ツイートの日本語訳)

このツイートに補足は不要でしょう。

14. とにかく自動化

会社を次のレベルに拡大する際の重要なポイントの1つは、サービスや問い合わせの増加にどのように対処するかということ。幸い、小規模なチームであっても、巨大なユーザーベースを管理できる優れたツール、アプリ、サービスは今日多数存在しています。

Kinstaでは、作業を効率化するためにさまざまなSaaSツールを使用しており、社員の作業負荷を軽減するために、さまざまなタスクの処理に多くのサードパーティサービスを統合しています。単調なタスクであれば、機械が完璧にこなしてくれます。私たち人間のように、ミスを犯すことはほぼなく、処理の完了が高速化され、費用対効果も高まります。ただし、まずは処理や問題を自分たちの手で解決してから、どのように解決すべきかを考察することが重要です。

今回の記事では紹介しきれないほど、私たちは長年にわたってさまざまな作業を自動化してきました。以下は、ほんの一部です。

  • ウェルカムメッセージとオンボーディングメッセージの送信(Intercom)
  • 決済失敗時のメール送信
  • クレジットカードの有効期限を知らせるメール送信
  • 年間プランの更新時期を知らせるメール送信
  • 送信されるトランザクションメールの量を確認し、問題が発生するとシステム管理者に通知を送信
  • サーバー負荷のチェック
  • ウェブサイトのステージング環境の作成、本番環境への反映、SSLの作成と更新、管理画面でのエラーログの照会などのサポートが増えがちなタスク
  • その他、2017年だけで42の処理を自動化

サービスを購入してくれる顧客は、生身の人間との対話を好むため、すべてを自動化すればいいというわけではありませんが、コードベースやプログラム可能なソリューションで完了できる作業は、すべて自動化してしまいましょう。そうすることで、サービスの質を維持するためにエンジニアやサポート担当者を雇うより前にユーザーベースの方が先に成長してしまっても、対応することができます。

併せて、「SaaSマーケティングにおける7つの重要な原則」もご覧ください。

15. 見出しに騙されるな

TechcrunchやVentureBeat、TNWなどの記事を読んでいると、起業は案外簡単に思えるかもしれません。「X社が数百万ドル調達」、「Z社がY社に買収」、「XZ社が過去12ヶ月で収益と顧客を倍増」などという見出しは、数えきれないほど目にします。

私もサクセスストーリーを読み、それを共有するのが好きですが、忘れてはならないのは、記事になっているような話は通常、最終的な結果や達成した数字にのみ焦点が当てられているということ。膨大な労働時間、再投資された利益、プライベートでの犠牲、眠れない夜、燃え尽き症候群、健康面での問題など、その成功の背後にある長年の努力については、ほとんど言及されません。

また、メディアでは一方的な報道も多く、ゼロから起業するのは簡単だという印象を与えかねません。もちろん、会社を立ち上げるのは簡単ですが、起業してからが本番です。何度となく浮き沈みがあるものもですが、努力は必ず報われるもの。以下のイラストは、起業家の人生をよく表しています。

起業家の人生(画像出典: Baremetrics)
起業家の人生─左から「皆が思い描くイメージ」「実際の様子」「毎日の実際の様子」(画像出典: Baremetrics

成功への道は、まっすぐ伸びているわけではありません。以下は、有名なマーケターで起業家のNoah Kagen氏のツイートです。一攫千金を目論むのではなく、長年地道な努力を重ねることが重要なのです。

「お金持ちになる簡単な方法:アイデアを見つけて、10年極めること。これだけ」(ツイートの日本語訳)

16. 本気の趣味を見つける

一日の大半をコンピュータの前で過ごしていると、あっという間に燃え尽きてしまいます。数ヶ月後にはやる気も失せ、作業効率も落ちている自分に気がつくはず。自分のビジネスに情熱を注いでいる人は、次のアイデアや機能、マーケティングキャンペーンを24時間休むことなく考えているものです。きっと夢の中でも会社を大きくしようと働いていることでしょう。

時には仕事脳を休ませ、仕事とは関係のないことをして気分転換を行ってください。ウェブサイトと違って、脳には時々クールダウンが必要です。

downtime

趣味の時間を作ることで、脳が充電され、研ぎ澄まされます。そして最高のアイデアは、いつも仕事以外の場面でふと降ってくるものです(例えば、シャワーを浴びている時とか)。

すでに熱中できる趣味があれば、趣味の時間を程よく確保しましょう。趣味がない方は、何か見つけてみてください。どんな趣味でも構いません。何か定期的に行えるようなものであれば、仕事との差別化もできて楽しめるはずです。脳の休養は、生産性や注意力を高め、創造性を刺激してくれます。

個人的には、16歳の頃から古書を集めるのが趣味です。例えば、100部しか印刷されていない120年前の本を見つけるのは、非常に困難なのですが、見つけて自分のコレクションに加えることができた時には、かなりの達成感があります。

Kinstaに関わるすべての方へ

私たちは、すべてのお客様に心から感謝しています。皆様のサポートがなければ、今日のKinstaは存在しません。

そして、WordPress開発者とコミュニティの皆様がいなければ、優れたウェブサイトを構築することはできませんでした。そして、私たちの大切なパートナーであるGoogle Cloud Platformは、長年にわたって確立され、日々改善が行われている一流のグローバルプラットフォームを提供してくれています。新たなデータセンターや機能は、すぐにお客様に届けることができています。

売上を回収し、優れた支払い処理を提供してくれている、Stripeにも感謝です。

また、サポートのライブチャットシステムで、Kinsta創設初日から私たちとお客様をつないでくれている、Intercomにも感謝しています。

そして何より、私からKinstaの社員全員に感謝の気持ちを伝えます。Kinstaのサービスが多くのお客様に愛されるのは、あなたたち一人ひとりのおかげです。

過去に戻ってやり直すなら

強いて言えば、もっと早期からアフィリエイトプログラムを立ち上げるべきだったかなと思います。紹介プログラムは、会社の大きな成長につながります。過去1年間はベータ版で招待制をとり、有名ブロガーと密に連携して、可能な限り多くのフィードバックを集めていました。

アフィリエイトをすぐに一般公開しなかった理由は簡単で、開発する時間がとれなかったためです。当時は、インフラや機能の構築に専念していました。

アフィリエイトプログラムは、特別な要件がなければ、サードパーティツールですぐに立ち上げることができます。私たちの場合は特別な要件があり、1回限りの報酬に加えて、紹介相手がサービスを利用し続ける限り発生する、継続的な報酬も提供しています。これは競合他社のアフィリエイトにはない強みと自負しています。

ご興味のある方はぜひ、後半編「SaaS企業の成長─最初の顧客1,000人を獲得するには」もご覧ください。

まとめ

ここまでお読みいただき、ありがとうございました 😄 ブートストラップ方式の会社経営は、高い収益性と絶え間ないイノベーションがカギとなります。成功への道中、数えきれないほどの問題に直面しても、努力と一貫性、そして創造性を大事にすれば、必ずや実現できるはずです。

私たちと同じような状況に直面したことはありますか?どのように解決しましたか?また、起業する上で最も苦労したことはなんですか?以下のコメント欄でぜひお聞かせください。

Tom Zsomborgi Kinsta

Tom is the Chief Business Officer at Kinsta. He is responsible for accounting, forecasting, and internal audits. He has a sharp analytical mind and a zeal for data. You can always count on him to come up with strategic ideas for the team and smart ways to spread our brand and services worldwide. He is a big fan of extreme sports and cars. Connect with Tom on Twitter.