Shopifyの市場シェアと利用状況
世界のEC業界にとって、2020年は記録的な年となりました。閉鎖や規制により、企業は進化を遂げ、オンラインモデルの採用を余儀なくされました。2020年の世界的EC事業の売上高は25.7%増の4.2兆ドル。そして、2022年には5.5兆ドルに達すると予想されています。
一言で言えば、ECサイトを用いた商品販売の可能性は無限大。誰もが、この恩恵にあずかりたいと思っているのではないでしょうか。
このブームの素晴らしい点は、ECストアの構築が容易になったことです。実際には、さまざまな方法があります。例えば以下の通りです。
- コーディングするなどしてWordPressでオンラインストアを構築する
- AmazonやeBayのようなマーケットプレイスで出店・販売する
- ShopifyやBigCommerceのようなECサイト構築サービスを使用する
数ある中でも、今回の記事ではShopifyに焦点を当てます。Shopifyは、ものの10分もあればオンラインストアを構築できるECサイト構築ソリューションです。
Shopifyを使用すると、以下での販売が可能になります。
- Facebook、Twitter、Instagram、Pinterest、TikTok、WhatsApp、Messenger などのSNS
- Amazonマーケットプレイス、eBay、Etsy、Googleショッピングなどの販売チャネル
- そして、もちろん自分で構築したオンラインストアや実店舗
Shopifyは、そのシンプルさ、多機能性、使いやすさから、ローンチ以来、着実にシェアを伸ばし続けています。それでは、その魅力に迫ってみましょう。
そもそもShopifyとは
Shopifyは、オンラインストアの構築、管理、成長を助けるSaaS(Software-as-a-Service)プラットフォームです。2006年にTobias Lütke氏、Daniel Weinand氏、Scott Lake氏の3人がオタワでスノーボード用品のオンラインストアを開こうとしたのが始まりです。プログラマーであったLütke氏は、Ruby on Railsを使って2ヶ月でオンラインストアを自力で構築。これが、現在のShopifyに至ります。
現在、Shopifyはニューヨーク証券取引所(NYSE)およびトロント証券取引所(TSE)に上場しています。2015年5月20日に新規株式公開(IPO)が行われ、5月21日に取引が開始されました。
Shopifyの事業内容には、サブスクリプション(購読)、決済、POS(Point of Sales)端末、さらには融資などがあります。
Shopifyは、2018年にLAに初の実店舗を、2021年には、ニューヨークのSoHo地区に起業家を対象としたコミュニティスペース(注釈:ワークショップなどを開催)を開設し、オンラインにとどまらず実世界でも存在感を示しています。
オタワ(カナダ)に本社を置くShopifyは、175カ国でのECサイト運営を支援、20以上の言語をサポートし、1万人以上の従業員を抱えています。
Shopifyは、Nestle、Pepsi、Unileverといった定評あるブランドから信頼を得ています。それ以外にも、Kylie Cosmetics、Vogue、Gymsharkなど、人気のライフスタイル、ビューティー系ブランドもShopifyを使用中。
Shopifyのプラン、テーマ、アプリ
Shopifyの人気の秘密は、その手頃なサブスクリプションモデルにあります。
プランには、ECサイトの運営を始めるのに必要なすべての要素が組み込まれています。また、いつでも好きな時にプランを変更、キャンセルできます。
Shopifyの料金プランについてですが、新規および成長段階にあるビジネス向けには月額29ドルから、もう少し規模の大きいビジネス向けには月額2,000ドルからの専用プラン「Shopify Plus」が用意されています。
また、Shopifyは、アプリやテーマを使ってオンラインストアを好みに合わせて変えていける点も注目に値します。
Shopifyアプリストアには、8,000以上のアプリが用意されています。Store Leadsによると、Product Reviews、Klaviyo、Shopify Inboxが使用率トップ3とのこと。
一方、Shopiyテーマストアには、90以上の無料・有料テーマがあり、豊富な選択肢がずらりと並んでいます。
ECプラットフォーム市場シェア
BuiltWithによると、2022年6月現在、全世界で公開されているウェブサイト上位100万件(アクセス数)のうち25.5%(25万5,577件)がECサイトとのことです。そのうち20%のサイトがShopifyを利用しており、WooCommerceに次いで2番目となっています。
Shopifyを利用している上位サイト(世界)の統計データは以下の通りです。
- 上位1万サイトのうち400サイト
- 上位10万サイトのうち2,548サイト
- 上位100万サイトのうち2万422サイト
アメリカにおけるShopifyの市場シェア
BuiltWith社によると、2022年6月現在、世界には2,620万以上のECサイトがあり、そのうち920万(36.4%)がアメリカのサイトです(※ちなみにBuiltWith社のデータに中国は含まれていません)。
アメリカ、イギリス、オーストラリア、ドイツ、ブラジルが、ECサイト数の多い上位5カ国として名を連ねています。
Shopifyに関しては、アメリカが66.8%のシェアで最大の市場に。そのほか、Shopify本拠地であるカナダもトップ5に入っています。
アメリカでは920万件のECサイトのうち、28.51%(260万件)がShopifyを利用しています。その多くはカリフォルニア州にあり、7万以上の企業がShopifyを利用しています。2位と3位はニューヨークとフロリダで、それぞれ約3万1,000社、2万7,000社がShopifyを利用中です。
しかし、Shopifyの市場シェアの割合は、GMV(流通取引総額)、つまりプラットフォーム上で販売された商品の合計金額を考慮すると、変わってきます。
GMVの観点では、Shopifyのアメリカにおける市場シェアは10.3%であり、Amazonに大きく差をつけられるかたちで2位。そのシェアはWalmartとeBayの合計より僅かに低いくらいにはなります。
アメリカ以外でのShopifyの市場シェア
ShopifyはアメリカのEC市場を席巻していますが、その他の市場ではもう少し手こずっているようです。
中国は依然としてEC業界を代表する市場であり、その小売EC売上高は世界全体の52.1%を占めます(アメリカは19%)。中国が幅を利かせるアジア太平洋地域は、小売EC業界でも最大の市場であり、2021年のオンラインでの売上高は3兆ドル近くに達します。
この情報は、アメリカ国外のEC市場に大きな需要があること、そして、決してそのすべてがShopifyを使用しているわけではないことを物語っています。EC上位に名を連ねる他の国でもShopifyが力をつければ、さらに業界全体の成長は続いていくことでしょう。
Shopifyの年次報告書から分かることとして、2021年には、世界的にShopifyでビジネスを立ち上げ、成長を始めた事業が以前よりも多くなっています。
新規利用者のほとんどが依然として北米市場に属していますが(55%)、Shopifyの報告によると、北米以外からの利用者も構成比を増やしたとのことです。また、北米外の新規利用においては、北米のそれよりもスピーディーな売上の増加が見られています。
Shopifyが北米以外の市場で存在感を示し始める中、インド、ブラジル、アルゼンチンに注目したいところです。eMarketerの2021年国際ECレポートでは、上記の国々が最も急速に成長するEC市場として挙げられました。そこでのEC小売業界の売上は、2022 年には少なくとも26%の成長が見込まれるとのことです。
Shopify Plusの市場シェア
Shopify Plusは、企業向けの専用プランです。
2022年6月現在、Shopify Plusには2万6,344のドメインが登録されています。そのうち、運営元の重複がないドメイン数は1万7,562です(Shopify Plusでは、販売者が複数のドメインで店舗を運営することが可能)。
2021年から2022年にかけて、Shopify Plus登録者は、前年比31%増となっています。さらに、2022年第1四半期、Shopify PlusはShopifyのMRR(月次経常収益)の30%(3,180万ドル)に貢献しており、前年の26%という数字からの上昇が確認できます。
Shopifyで人気のジャンル
Shopifyで何がトレンドになっているのかを探ってみましょう。
Store Leads Appによると、2022年6月現在、Shopifyで人気のあるジャンルは以下の通りです。
- アパレル(28.1%)
- ホーム&ガーデン(10.6%)
- 美容&フィットネス(9.9%)
トラフィックソース
2022年のDataReportalのレポートによると、訪問者がECサイトに到達する方法として、「ウェブサイトに直接アクセスすること(27%)」が最も多く、次いで以下のようになっています。
- オーガニックSEO(22%)
- 有料検索広告(19%)
- メールのリンク(5%)
- 有料SNS広告(4%)
- オーガニックSNSコンテンツ(1%)
一方、Similarweb*は、ShopifyのPVのほとんど(40.15%)が直接アクセスによるもので、それに続くのが以下であると報告しています。
- オーガニック検索(27.34%)
- 紹介/参照型トラフィック(26.73%)
- SNS(2.56%)
- メールのリンク(2.27%)
- 有料広告(0.95%)
*Similarwebのデータは、PCを利用したアクセスのみを対象としたものです。
Shopifyでの販売は、決して国内に限定されません。2021年7月、Shopifyで構築されたオンラインストアへの全トラフィックのうち実に27%以上が海外(つまりストアとは別の国)からのものでした。
また、ECサイトとスマートフォンの関係も無視できないトピックです。2021年のブラックフライデーの週末、Shopifyサイトにおける売上の71%がモバイルデバイスで行われ、PCは29%にとどまりました。
ECサイトを運営する上では、モバイル向けに最適化された、そして、信頼性とパフォーマンスに優れたホスティングソリューションを是非ご検討ください。
利用者層
Shopifyの利用者層はどうなっているのでしょうか?調べてみましょう。
- Shopifyサイト訪問者の約60%は男性で、残りは女性です。
- Shopifyサイト訪問者の3分の1は、25~34歳です。
事業の成長と利用者獲得
Shopifyは、新型コロナウイルス流行を味方に付けた企業の一つです。インフラを提供することで、業種を問わずあらゆる店舗によるEC化を後押しし、ロックダウンの最中でも急成長を遂げました。
Genus AIによると、2020年3月から2022年1月にかけて、ECサイトの数は201%増加したとのことです。
特に、ドイツは同期間に480%の成長率を記録─Shopifyブームが起きました。
また、Shopifyのサイトで購入をした人の数は2020年末には4億5,700万人を超え、2021年末には31%増の5億9,700万人となりました。
Shopifyは複数の方法でユーザーを獲得しており、特に紹介とアフィリエイトプログラムを通じて成果を出しています。
- 2020年、4万2,200のパートナーがShopifyでの販売者登録の斡旋に成功し、2019年の2万4,500より72%増加しました。
- Shopifyアフィリエイトプログラムのメンバーは、Shopifyの有料プランに登録したユーザー1人あたり平均58ドルを獲得することができます。
- また、Shopifyは競合サイトからの乗り換えでもユーザーを獲得しています。Store Leadsによると、2022年5月から2022年6月までに1万3,794のオンラインストア(主にWooCommerceとWix)がShopifyに乗り換えたとのこと。
また、その逆も起きています。
同じ期間で、13,313のオンラインストアがShopifyからそれに代わるサービスに乗り換えています。ほとんどのユーザーがShopifyからWooCommerce、そして、Custom Cartに乗り換えました。
売上高と収益
2021年はShopifyにとって実りの多い年でした。
Shopifyは2013年に商品総量(GMV)で10億ドルを突破し、2021年第2四半期に初めて10億ドルの売上高を達成しました。
Shopifyは2021年にオンラインで、1,750億ドルもの売上を担いました。これは2020年よりも47%高い数値です。これを土台に、Shopifyは46億ドル(2020年比57%増)の総売上高を記録しています。
2022年第1四半期のShopifyの財務報告書からは、次のことがわかります。
- 総収益は12億ドルに成長し、2年間の年平均成長率は60%
- 月次経常収益(MRR)は1億520万ドルで、前年同期比(YOY)17%増
- Shopify Plusは3,180万ドル(MRRの30%-2021年の26%から上昇)に貢献
- 流通取引総額(GMV)は432億ドルで、2年間の年平均成長率は57%、2021年第1四半期比では59億ドル(16%)の増加
Shopify利用者の多くはアメリカに拠点を置き、収益の大部分もアメリカからもたらされています。Shopifyは2020年に北米に所在する販売者から21億5000万ドルを得ており、これは全体の収益の73.3%を占めます。
利用者にとっての利益
Shopifyストアを開設することで得られる収入について、掘り下げてみましょう。
- Shopifyストア運営者は、トラフィックや販売する商品の種類にもよりますが、月に1,000ドルから10万ドルの収入を得ています。
- Shopifyを利用することで、購入者一人あたり72ドルの収益が期待できます。低収益の店舗での平均注文額(AOV)は44ドルですが、高収益の店舗におけるAOVは149ドルとなっています。
また、セールの多いシーズンに向けてストアを最適化することで、さらに利益を上げることができます。
- Shopifyストア全体で、2021年のブラックフライデーからサイバーマンデーの週末にかけて、世界で63億ドルの売上が生まれており、2020年のブラックフライデーの週末と比較して23%増となりました。
- 2021年のブラックフライデーのピーク時の売上は、1分あたり310万ドルに達しました。世界規模でのAOVは100.7ドルに増加し、カナダ(115.14 CAD)、オーストラリア(158.80 AUD)、アメリカ(96.60ドル)の消費者が平均で最も多くの額を購入したとのことです。
人気のECプラットフォームが気になるあなたへ
EC人気は、未だ健在です。
事業経営者であれ、新進の起業家であれ、ECストアを立ち上げるのに遅すぎるということはありません。
数分でECストアを構築できるShopifyから始めるのは一つの手です。しかし、事業に求められる要件や、サイトを事細かに管理しなければならない理由が増えるにつれ、WooCommerceへの移行が大きな意味を持ちます。
WooCommerceは、WordPressと同じ会社により提供されています。オープンソースであり、どのようなホスティングプラットフォーム(サーバー)と組み合わせても、オンラインストアを構築できます。さらに、WooCommerceサイトは、簡単にインストールできる(合計何千もの)プラグインや、サイトの骨組みとなるお洒落なテーマを活用し、柔軟に調整可能です。
WooCommerceストアの構築を決心したら、まずは、WooCommerceに強いKinstaのホスティングサービスをご確認ください。