企業によるクラウドコンピューティングへの移行は驚くべき速度で進んでいます。各社が、オンプレミスだけでなく、クラウドテクノロジーによって提供されるメリットを求めるようになっています。
クラウドプロバイダの面々は、コスト削減、スケーラビリティ、セキュリティ、ビジネス継続性の向上をこれまで以上に進めています。この傾向は今後も加速するでしょう。
クラウドコンピューティング市場は現在、数多くのプロバイダ、技術、製品、サービスで構成される巨大なエコシステムへと成長しています。Gartnerによると、パブリッククラウドサービスへのエンドユーザー支出は2024年に前年比20.4%増の6,788億ドルに達すると予測されています。
| 2022 | 2023 | 2024 | |
| クラウドアプリケーション基盤サービス(PaaS) | 119,579 | 145,320 | 176,493 |
| クラウドアプリケーションサービス(SaaS) | 174,416 | 205,221 | 243,991 |
| クラウド業務プロセスサービス(BPaaS) | 61,557 | 66,339 | 72,923 |
| クラウドデスクトップサービス(DaaS) | 2,430 | 2,784 | 3,161 |
| クラウドシステム基盤サービス(IaaS) | 120,333 | 143,927 | 182,222 |
| 市場全体 | 478,315 | 563,592 | 678,790 |
世界のパブリッククラウドサービスにおけるエンドユーザー支出予測(単位:100万米ドル、出典:Gartner)
数多くのクラウドプロバイダが存在する中でも、Amazon Web Services(AWS)、Google Cloud、Microsoft Azureは、クラウド業界を代表する主要プレーヤーとして広く知られています。
今回は、その中でもGoogle CloudとMicrosoft Azureを比較します。なお、Google CloudとAWSの比較はこちらをご覧ください。
本記事では、複雑になりがちなクラウド技術をできるだけわかりやすく解説しながら、Google CloudとAzureの違いをさまざまな観点から見ていきます。
Google CloudとAzureが比較される理由
クラウドへの移行を検討する際、Google CloudとMicrosoft Azureは必ずと言っていいほど比較対象に挙がるクラウドプラットフォームです。
GoogleとMicrosoftは、クラウドコンピューティングが登場する以前から、世界を代表するテクノロジー企業として知られていました。提供する製品やサービスこそ異なるものの、両社はハードウェアとソフトウェアの両分野で培ってきた技術力とイノベーションで高い評価を得ています。こうした強固な基盤をもとに、現在のクラウドプラットフォームを構築し、市場を牽引しています。
実際に、Gartnerが2023年版のMagic Quadrantで発表した「戦略的クラウドプラットフォームサービス(Strategic Cloud Platform Services)」部門では、GoogleとMicrosoftの両社がリーダーに位置付けられています。これは、インフラサービスやプラットフォームサービスを含む、標準化・自動化されたパブリッククラウドサービスを評価するものです。

多くの企業が「ニッチプレイヤー」として評価されており、今後リーダーやチャレンジャーへと成長する可能性を秘めています。しかし、Google CloudとMicrosoft Azureは長年にわたり、この分野でリーダーとして高い評価を維持しています。
同様にリーダーとして位置付けられているのは、Amazon Web Services(AWS)と、やや規模は小さいもののOracleです。
GartnerはGoogle Cloudの強みとして、優れた設計思想、クラウドサービスへのAI統合への注力、そして高い持続可能性への取り組みを挙げています。一方で、プレビュー版サービスを提供した後、正式リリースまでのスケジュールが不透明な場合がある点には注意が必要だと指摘しています。
またAzureについては、戦略的パートナーシップの豊富さやハイブリッドクラウド・マルチクラウド環境への対応力が高く評価されています。その一方で、ベンダーロックインのリスクやセキュリティ面の課題についても言及されています。
こうした課題はあるものの、Google CloudとMicrosoft Azureは依然としてクラウド業界を代表する有力なプラットフォームであり、その存在感は今後も拡大していくと考えられます。
共に成長を続けるGoogle CloudとMicrosoft Azure
IaaS、SaaS、PaaSのいずれの分野においても、Google CloudとAzureは業界をリードする数百種類のクラウドサービスを提供しています。両社は継続的な技術革新を進めており、そのサービス群は今も拡大を続けています。
Gartnerの2022年の調査によると、GoogleとMicrosoftは、IaaS市場の約80%を占める主要なパブリッククラウドインフラプロバイダ上位5社に含まれています。
市場シェアではAWSが40%で首位を維持しており、Microsoftが21.5%でそれに続いています。Alibaba Cloudが7.7%、Google Cloudが7.5%となっており、Google CloudはAlibaba Cloudに迫る勢いを見せています。
現時点ではAWSやMicrosoftほどの規模には達していないものの、Google CloudとMicrosoft Azureはいずれも着実に市場シェアを拡大しています。特にGoogle Cloudは成長を続けており、Alibaba Cloudとの差を縮めています。
Gartnerの2018年のデータと比較すると、上位5社の中でMicrosoftの市場シェアは6ポイント、Google Cloudは3.5ポイント拡大しました。一方で、AWSは7.8ポイント低下しており、Alibaba Cloudの成長も鈍化しています。
現在もAWSが市場をリードしていますが、クラウド市場は急速に変化しており、今後の勢力図がどのように変わるかは引き続き注目されます。
Google Cloudの収益
Google Cloudはここ数年で大きな成長を遂げており、2023年も好調な業績を記録しました。
Googleが発表した2023年第4四半期および通期決算によると、年間売上高は860億ドルに達し、前年同期比で13%増加しました。GoogleのCEOであるSundar Pichai氏は、この成長について、Google Cloudを含む各種サービスへのAIや先進技術への投資が成果を上げていると説明しています。
その中でもGoogle Cloud事業の売上高は92億ドルを記録しました。
クラウド市場への新規参入が難しい理由のひとつは、莫大な初期投資と運用コストが必要になることです。しかしGoogle Cloudは、サービス開始から15年を経た2023年に、初めて黒字化を達成しました。
これは、業界を代表するクラウドプロバイダーであっても収益化までに長い時間を要することを示しています。実際、Google Cloudは2020年に56億ドルの損失を計上していましたが、その後大きく業績を改善しました。
2023年に908億ドルの売上高を記録したAWSにはまだ及ばないものの、Google Cloudは年々競争力を高めており、クラウド市場における存在感を着実に強めています。
Google Cloudの市場シェアの詳細はこちらをご覧ください。
Microsoft Azureの収益
Microsoftのクラウド事業は業界内で確固たる地位を築いており、今後も高い成長が期待されています。市場シェアではAWSに次ぐ第2位に位置しており、首位との差は依然として大きいものの、Google Cloudを上回る規模を維持しています。
2023年度、Microsoft Cloudの年間売上高は1,100億ドルに達しました。そのうち50%以上をAzureが占めているとされています。
MicrosoftもGoogleと同様にAI分野への投資を積極的に進めており、その技術を自社サービスへ迅速に取り入れています。AI戦略は同社の成長を支える重要な要因のひとつと考えられており、市場では大きな注目を集めています。
一部では、Azureが2026年までにAWSを追い抜く可能性があるとの見方もありますが、その実現については今後の市場動向を見守る必要があります。
また、近年大きく成長しているGoogle Cloudも有力な競合として存在感を高めており、Azureとの競争は今後さらに激しくなることが予想されます。
Google CloudとAzureの機能比較
Google CloudとAzureの機能を比較するのは、そう簡単ではありません。いずれも200以上のクラウドサービスを提供しており、同じような機能を持つサービスであっても名称が異なるため、全体像を把握するのは難しいところがあります。
とはいえ、両プラットフォームには共通点も多く、それぞれのサービスは機能ごとに整理されたカテゴリに分類されています。またGoogleは、Google CloudとAzureの対応サービスをまとめた比較情報も公開しています。
そこで本記事では、主要カテゴリにおける代表的なサービスを取り上げ、Google CloudとAzureの違いをわかりやすく比較していきます。
このセクションでは、コンピュート、ストレージ、ネットワーク、セキュリティなど、クラウドデプロイメントの基礎を解説していきます。これらはすべて、Kinstaが高性能かつスケーラブルなサーバー環境を提供するために活用している技術であり、欧米市場で急成長を遂げるサーバーサービスの1つとなる原動力にもなっています。
コンピューティング
まずはコンピューティングカテゴリでは、仮想マシン(VM)に焦点を当てます。Microsoft AzureとGoogle Cloudの設定を比較対照します。
両者がVMに同様のアプローチを採用していることがわかります。VMはそもそも、クラウド環境の根幹を成し、考え得るほとんどすべての種類の顧客に関連するワークロードを担います。
各VMの命名規則は異なります。Microsoft AzureではAzure virtual machines、Google CloudではCompute Engineとして知られています。どちらのプロバイダも、これとは別の高レベルの用語と概念も使用しています。
比較を明確にするために、こちらをご覧ください。GoogleがAzureとCompute Engineの違いを説明しています。下の表で分類されています。
| 機能 | Azure | Compute Engine |
| 仮想マシン | 仮想マシン | 仮想マシン インスタンス |
| イメージ | イメージ(「ブートディスクのみ」と「マシン全体」) | イメージ(ブートディスクのみ) |
| カスタムイメージ | 一般化されたAzure仮想マシン (VM) | カスタム イメージ |
| VMテンプレート | Resource Managerテンプレート | インスタンステンプレート |
| 自動インスタンススケーリング | Azure Autoscale | Compute Engineオートスケーラー |
| サポートされているVMのインポート形式 | VHD | RAW |
| デプロイメントの場所 | リージョン | ゾーン |
| プリエンプティブルVM | あり | あり |
| 増分スナップショット | あり | あり |
AzureとGoogle Compute Engineの高度な用語の比較
VMの機能
Compute EngineとAzureのVMを見てみると、両プラットフォームが多くの同じ機能を提供していることがわかります。具体的には次のことができるようになります。
- 自動スケーリングにより、要求に応じてVMインスタンスをデプロイ、終了する
- VMにさまざまな使用可能なオペレーティングシステムをインストールする
- ブートディスクイメージを使用してVMインスタンスを作成する
- 制限なしにVMインスタンスを管理する
- 識別しやすいようにVMにタグを付ける
VMのアクセス
VMのアクセスに関しては、Google CloudとAzureの間にはいくつかの重要な違いがあります。使用するマシンのタイプによって異なります。
Linuxマシンの場合、SSHベースでのマシンアクセスに違いがあります。Compute Engineでは、VMインスタンスがすでに実行されている場合でも、必要なときにSSHキーを作成できます。このプラットフォームは、ブラウザからのSSHもサポートしているため、ウェブブラウザを介してVMに直接アクセスでき、ローカルマシンにキーを保存する必要がありません。
一方Azureでは、SSHブラウザアクセスはありません。SSHベースのアクセスが必要な場合は、独自のキーを含める必要があります。
Windowsマシンの場合には、どちらのプラットフォームを使ってもアクセスは同様です。Compute EngineとAzureはどちらも、リモートデスクトッププロトコル(RDP)やWindowsリモート管理などの標準チャネルを介したVMへのアクセスをサポートしています。
VMの種類
GoogleとMicrosoftはどちらも、様々な構成でデプロイできる数百のマシンタイプを提供しています。VMリソースを必要に応じて拡張し、CPU数とRAMのGBを極端なハイエンド仕様にまで増やすことができます。それぞれの上限については以下の通りです。
- Google Compute EngineのVM:最大416個の仮想CPUと11,776 GBのRAMにスケーリング可能
- Microsoft AzureのVM:最大416個の仮想CPUと11,400GBのRAMにスケーリング可能
どちらのプラットフォームも、リソースの選択を便利にするように、マシンタイプについて同じ分類を用いています。必要に応じて、共有コア、汎用、メモリ最適化、コンピューティング最適化、ストレージ最適化、GPU、ハイパフォーマンスカテゴリからマシンタイプを選択できます。
次の表は、両サービスの最新のマシンタイプをまとめたものです。
| マシンタイプ | Azure | Compute Engine |
| 共有コア | 該当なし | f1-micro – g1-small e2-micro – e2-medium |
| 汎用 | A1 v2 – A8 v2 B1LS – B20MS D2a v4 – D96a v4 D2as v4 – D96as v4 D2 v3 – D64 v3 D2s v3 – D64s v3 D1-5 v2 – D5 v2 DS1-5 v2 – DS5 v2 |
n1-standard-1 – n1-standard-96 n1-highmem-2 – n1-highmem-96 n1-highcpu-2 – n1-highcpu-96 n2-standard-2 – n2-standard-80 n2-highmem-2 – n2-highmem-80 n2-highcpu-2 – n2-highcpu-80 e2-standard-2 – e2-standard-16 e2-highmem-2 – e2-highmem-16 e2-highcpu-2 – e1-highcpu-16 |
| メモリ最適化 | E2 v3 – E64 v 3 E2a v4 – E96 v4 E2as v4 – E96as v4 E2s v3 – E64s v3 D11 v2 – D15 v2 DS11 v2 – DS15 v2 G1 – G5 Gs1 – Gs5 M8ms – M128ms M208s v2 – M416ms v2 S96 – S576m |
m1-ultramem-40 – m1-ultramem-160 m2-ultramem-208 – m2-ultramem-416 |
| コンピューティング最適化 | F2s v2 – F72s v2 F1 – F16F1s – F16s |
c2-standard-4 – c2-standard-60 |
| ストレージ最適化 | L8s v2 – L80s v2 L4s – L32s |
該当なし |
| GPU | NC6 – NC24 NC6 Promo – NC24r Promo NC6s v2 – NC24s v2 NC6s v3 – NC24s v3 NV6 Promo – NV24 Promo NV12s v3 – NV48s v3 ND6s – ND24s ND40rs v2 |
NVIDIA® Tesla® T4 – NVIDIA® Tesla® K80 NVIDIA® Tesla® T4 Virtual Workstation – NVIDIA® Tesla® P100 Virtual Workstation |
| ハイパフォーマンス | H8 – H16mH8 Promo – H16mr Promo | 該当なし |
| カスタムVMリソース構成 | なし | あり |
注:AzureとCompute Engineは定期的に新しいVMタイプを追加しています。各サービスの一覧については、Azure Linux仮想マシン、Azure Windows仮想マシン、Compute Engineマシンタイプをご覧ください。
ネットワーキング
Google CloudとAzureは、パートナーと共同で独自のネットワークインフラストラクチャを利用・拡張し、地球規模で展開されたデータセンターを相互に接続しています。野心的な拡張計画のもと、仮想マシン、他のクラウドサービス、オンプレミスサーバー間での高速接続を可能にする最先端のネットワーキングサービスを提供しています。
このセクションでは、GoogleとMicrosoftが提供するコアネットワーキングプロダクトと、その可用性とレイテンシについて簡単に説明します。
| プロダクト | Google Cloud | Microsoft Azure |
| CDN | Google Cloud CDN | Azure CDN |
| 専用の相互接続 | Cloud InterconnectCDN Interconnect | ExpressRoute |
| DNS | Cloud DNS | Azure DNS |
| ロードバランシング | Cloud Load Balancing | Azure Load Balancer |
| 仮想ネットワーク | Virtual Private Cloud | Azure VNet |
| サービス層 | Network Service Tiers | N/A |
Google CloudとAzureの同等のクラウドネットワーキングプロダクトの比較(表の参照元: Google)
ロケーション
Google CloudとAzureはそれぞれ、複数の国、場所、リージョンにまたがるデータセンターのグローバルネットワークを誇ります。各々に固有の、冗長性・フォールトトレランス・低レイテンシに便利なゾーンがあります。Azureのリージョンの方がより範囲が広い一方で、Google Cloudはより多くのロケーション数を誇ります。
Google Cloudのネットワークロケーションは現在、22のリージョン、64のゾーン、200以上の国で利用できます。最近、ソウルやソルトレイクシティなどの新しいリージョンが追加されました。

MicrosoftのAzureでのネットワークロケーションについては、現在、58のリージョンと140のゾーンが利用できます。

CDN
GoogleとAzureはどちらも同様のコンテンツデリバリネットワーク(CDN)を提供しており、読み込み時間の短縮、帯域幅の節約、アプリケーション、ウェブサイト、サービスの応答速度の向上に役立ちます。
Google Cloud CDN、そして、Azure CDNと名付けられたプラットフォームは、それぞれのネイティブプラットフォームと緊密に統合し、高度なロギングとモニタリングを可能にします。また、分散型サービス拒否(DDoS)攻撃に対する回復のために設計されたセキュリティソリューションも数多く用意されています。
専用の相互接続
時にオンプレミスからクラウドへのVPNが特定のワークロードに必要な速度やセキュリティを確保できないこともあります。そんな場合には、AzureやGoogleを利用し、容量の保証された高速ネットワーク回線をリースすることができます。どちらのプラットフォームも以下のように幅広いサービスを提供しています。
キャリアピアリング
キャリアピアリングは、サードパーティプロバイダを介した(そこから回線をリース)クラウドプロバイダへの専用相互接続の一種です。AzureのサービスはExpressRouteで、GoogleはCloud Interconnectです。
両者の接続速度は最大100 Gbpsです。Cloud Interconnectのプロバイダが24であるのに対して、Express Routeは102という幅広い選択肢を誇ります。Express Routeはプライベート専用回線も提供していますが、Cloud Interconnectの回線はパブリックネットワークを使用しています。
ダイレクトピアリング
ダイレクトピアリングは、Azureにはなく、現在Googleが提供しているサービスです。このサービスでは、仲介業者なしで、利用者のビジネスネットワークとGoogleのエッジネットワークを直接接続できます。Googleのサービスに直接接続し、高スループットのクラウドトラフィックの交換を可能にします。これは、33か国、100を超えるロケーションで利用できます。
コンテンツデリバリネットワーク(CDN)ピアリング
GoogleはCDNピアリングも提供しています。Googleのネットワークエッジロケーションを使用して、クラウド内のリソースとCDNサービスを直接接続できるというものです。Googleは、CDN相互接続サービスを通じ、いくつかのCDNサービスについて、これをサポートしています。繰り返しになりますが、現在、AzureはCDNピアリングを提供していません。ただしAzure CDNサービス内でAkamaiとVerizon CDNの専用接続をサポートしています。
DNS
DNSサービスは、人間が読むことのできるドメイン名を、サーバーが相互に通信するために使用するIPアドレスに変換します。
Google CloudとAzureはどちらも、それぞれ Azure DNS、Cloud DNSという名前の、クラウドで拡張できるマネージドDNSサービスを提供しています。機能はほぼ同じですが、どちらも最も一般的なDNSレコードタイプとエニーキャストでの配信をサポート。最近では、GoogleはDNSSECをサポートするように機能を拡大しています。ちなみに、Azure DNSはまだこれを採用していません。
ロードバランシング
Google CloudとAzureはそれぞれ、トラフィックを複数のインスタンスに分散するロードバランシングサービスを提供しています。これは可用性とフォールトトレランスの向上を目的としたものです。さまざまな負荷分散タイプを使用したそれぞれの提供方法を見てみましょう。
HTTP(S)ロードバランシング
AzureとGoogleはL7ロードバランシングを提供しています。アプリケーションレイヤーでクライアントからのリクエストを分散し、L4ロードバランシングよりも高度なルーティングを実現します。
TCP/UDPロードバランシング
どちらのプラットフォームも、L4のロードバランシングもサポートしており、リージョン内、ネットワークトランスポート層でクライアントからのリクエストを分散します。
SSLロードバランシング
どちらのプロバイダもSSLロードバランシングをサポートしており、サービスとの間でやり取りされるデータの暗号化と復号を行います。
仮想ネットワーク
AzureとGoogle Cloudの両方で、隔離されたセキュアな仮想ネットワークを作成できます。各プラットフォームには、複数のネットワーク(これをさらに小さなサブネットワークに分割可能)をデプロイできる機能があります。そしてこの仮想ネットワークにデプロイされたVMは、追加の構成なしで複数のサブネット間での通信が行えます。
Azureが提供するのはAzure VNetで、リージョン毎限定のサービスです。GoogleのサービスはVirtual Private Cloud(VPC)で、グローバルリソースです。Google VPCを詳しく見ると、Azureにはないいくつかの機能があることがわかります。例えば共有ネットワークなど。これにより、管理者は複数のプロジェクトに単一の共有仮想ネットワークとそれに対応するリソースの使用許可を与えられます。
サービス層
Google Cloudは、プロダクトの一部としてNetwork Service Tiersを用意。パフォーマンスと価格でネットワークを最適化できます。Googleは、階層型クラウドネットワークサービスを導入した最初の大手パブリッククラウドプロバイダです。現在のところ、Microsoft Azureにはこれと比較できるオプションがありません。
Googleでは、プレミアムティアとスタンダードティアを選択できます。プレミアム階層を選択すると、Googleの高性能、低レイテンシ、信頼性の高いグローバルネットワークにアクセスできます。このサービスでは、ホップ数が最も少ない最速パスを介してトラフィックをルーティングし、トランスポートを高速化してセキュリティを向上させます。加えて、グローバルロードバランシングなどの追加のネットワーキングサービスにアクセスし、グローバルSLAによる保護が適用されます。

スタンダード階層を選択すると、他のパブリッククラウドプロバイダと同程度の低パフォーマンスのネットワークに接続します。ロードバランシングなどのネットワーキングサービスはリージョンに基づいたもので、グローバルSLAはありません。パフォーマンスを犠牲にしてもかまわない、コスト削減が優先される場合の選択肢となります。

現在、Azureでも同様のサービスが提供されており、Microsoftのプレミアムグローバルネットワークまたはルーティング設定に基づくトランジットISPネットワークを経由してインターネット送信(egress)を行うことができます。
仕組みはGoogle Cloudとよく似ており、料金体系もほぼ同じです。どちらもデータ転送量と送信元の大陸に応じて課金されますが、Google Cloudでは毎月200GB超の無料枠が提供されるのに対し、Azureの無料枠は100GBとなっています。
ストレージ
クラウドプロバイダが採用しているストレージやディスクの種類を理解することは非常に重要です。これらは、スループット(I/O)、ボリュームやインスタンスごとの最大IOPS、さらには短時間のバースト性能に直接影響し、システム全体のパフォーマンスを大きく左右します。
以下は、Google CloudとAzureが提供する主なストレージオプションの比較です。
| Google Cloud | Microsoft Azure | |
| ブロックストレージ | Persistent Disk | Azure Disk Storage |
| ファイルストレージ | Filestore | Azure Files |
| アーカイブストレージ | Cloud Storage Archive | Azure Archive Storage |
| オブジェクトストレージ | Cloud Storage | Azure Blob Storage |
Google CloudとAzureの主要ストレージサービスの比較(出典:Google)
Google CloudとMicrosoft Azureのストレージを比較するにあたり、ここでは主にブロックストレージとオブジェクトストレージに焦点を当てます。
ブロックストレージ
ブロックストレージは、クラウド上の仮想マシンで利用する仮想ディスクのようなものです。Google Cloudでは、Persistent Diskを使用してブロックストレージを提供しており、最大64TBのSSDおよびHDDストレージを利用できます。これらは、Compute EngineやGoogle Kubernetes Engine上で稼働するインスタンスに接続可能です。
一方、Microsoft Azureでは、Azure Disk Storageによって同様のブロックストレージ機能を提供しています。こちらも4TBから64TBまでのSSDおよびHDDを利用でき、Azure Virtual MachinesやVMware環境との連携を想定して設計されています。
両サービスには多くの共通点があり、いずれもネットワーク接続型のディスクボリュームを提供しています。また、必要に応じてローカルディスクを利用することも可能です。
分散オブジェクトストレージ
分散オブジェクトストレージとは、データをオブジェクト(blobとも呼ばれる)として保存するストレージ方式です。各オブジェクトは、データ本体、メタデータ、そして一意の識別子として機能するキーで構成されます。オブジェクトストレージは、デバイス、システム、インターフェースなど、さまざまなレイヤーで実装可能です。
Azureの分散オブジェクトストレージサービスは「Azure Blob Storage」、Google Cloudのサービスは「Cloud Storage」と呼ばれています。両者には多くの共通点があり、オブジェクトを一意のキーで識別する仕組みを採用しているほか、オブジェクトサイズ、最終更新日時、メディアタイプなどのメタデータをサポートしています。また、カスタムメタデータの追加や編集も可能で、静的コンテンツや画像・動画などのメディアファイルの保存によく利用されています。
さらに、両サービスともオブジェクトの暗号化、レプリケーション、バージョニング、ライフサイクル管理、変更通知などの機能を提供しています。
また、いずれも稼働率に関するサービスレベル契約(SLA)を設けており、基準を満たせなかった場合には補償を受けられる仕組みが用意されています。ただし、Google CloudのSLAは比較的見つけやすい一方で、AzureのSLAは多数のポリシーがまとめられた長いドキュメントの中に含まれています。
詳細については、Azure Storage SLA、およびCloud Storage SLAをご参照ください。
セキュリティ
クラウドのセキュリティの項目では、クラウドベースのシステム、データ、インフラストラクチャを保護することになる、基盤となるテクノロジー、制御、プロセス、ポリシーに焦点を当てています。
MicrosoftとGoogleは共に、最高レベルのクラウドセキュリティを提供することで有名です。両プロバイダは、10年以上にわたる開発の歴史を基に構築されたセキュリティモデルを進化させ続けています。
両社、高いレベルにて3つの方法でクラウドセキュリティを確保しています。
- クラウドプラットフォームのセキュリティ:クラウドプラットフォームのインフラストラクチャに組み込まれたセキュリティ策からデフォルトで保護
- クラウドプラットフォーム内のセキュリティ:アプリケーションとデータを保護するように構成することのできるセキュリティ製品とサービスをプラットフォーム内で提供
- 場所に依存しないセキュリティ:クラウドプラットフォームを超えてセキュリティ機能を拡張し、場所に関係なく資産を保護
こうしたセキュリティ要件に対応するため、Google CloudとAzureはどちらも幅広いセキュリティサービスを提供しています。以下では、その一部を比較してみます。
| Google Cloud | Microsoft Azure | |
| ファイアウォール、DDoS対策 | Google Cloud Armor、Google Cloud Armor Managed Protection Plus、Cloud Firewall | Azure Web Application Firewall(WAF)、Azure DDoS Protection、Azure Firewall |
| 証明書管理 | Certificate Authority Service | 該当サービスなし |
| コンテナセキュリティ | Artifact Registry、Artifact Analysis | Azure Container Registry、 Azure Defender for container registries |
| データ損失防止(DLP) | Sensitive Data Protection(Cloud Data Loss Prevention、DLP APIを含む) | Azure Information Protection |
| 暗号化 | Confidential Computing | Azure Confidential Computing |
| IDおよびアクセス管理 | Cloud Identity, Identity and Access Management | Microsoft Entra ID(Azure AD)、Azure Identity Management |
| リソースアクセス管理 | Organization Policy Service | Azure Policy |
| セキュリティ・リスク管理 | Security Command Center | Microsoft Defender for Cloud |
Google CloudとAzureの主要なセキュリティサービスの比較(出典:Google)
このセクションでは、Google CloudとAzureが提供する主要なセキュリティ機能を比較します。
コンプライアンス
政府・業界両方が情報管理の規制に力を入れる中で、クラウドプラットフォームのコンプライアンスが重要視されています。GoogleとAzureはどちらも厳格なセキュリティポリシーとプロセスで、CSA STAR、GDPR、HIPPA、PCI-DSS、その他さまざまなISO基準といった、厳しいコンプライアンス要件を満たしています。
現段階では、Azureのコンプライアンスがクラウドプロバイダの中で最高レベルであり、世界50の地域にわたり、90以上のコンプライアンス基準を満たしています。Googleのコンプライアンスも注目に値し、45のコンプライアンス基準を満たしています。
暗号化
データがクラウドにあるかどうかに関係なく、データの暗号化は重要です。データをエンコードしておけば、仮に傍受された場合でも、解読キーなしで解読することはほぼ不可能になります。
AzureとGoogle Cloudは、クラウドインフラストラクチャ内で、256ビットAESを使用した暗号化をデフォルトでサポートしています。また、利用者独自の暗号化キーの制御もでき、保管・転送中の暗号化を可能にします。Googleではこのサービスを「Cloud Key Management Service」、Microsoftでは「Key Vault」と呼ばれています。
ファイアウォール
ファイアウォールは、あらゆるインフラストラクチャのネットワーク防御における最前線。Google CloudとAzureはどちらも最先端のファイアウォールを提供し、ファイアウォールルールを介した構成から、ネットワークにアクセスできるユーザーを制御できます。
Azureはさらに、 Azure Firewall、 Azure Webアプリケーションファイアウォール、新しくリリースされたAzure Firewall Managerなどの「サービスとしてのファイアウォール」を提供しています。これらすべてがクラウドネイティブです。
Kinstaも、セキュリティの重要性を理解しています。セキュリティはアーキテクチャの土台から組み込まれており、Google Cloudプラットフォームを使用してすべてのクライアントの方向けにセキュアなWordPress専用サーバーを提供しています。さらに、KinstaはLinux Containers(LXC)を使用して各アカウントとWordPressサイトを完全に分離することで別のセキュリティの層を加え、これをLXDで調整しています。

Identity Access Management (IAM)
IAM(Identity and Access Management:IDおよびアクセス管理)は、システムへのアクセス権限を管理し、不正なアクセスを防ぐための仕組みです。
Google CloudとMicrosoft AzureはどちらもIAM機能を標準で提供しており、それぞれ「Cloud Identity」と「Microsoft Entra ID」を利用できます。両サービスとも、ユーザーロール、アクセスポリシー、多要素認証(MFA)など、幅広い機能を備えています。
これにより、アプリケーションやデータへのアクセス権限を細かく管理できるほか、誰が何にアクセスできるのか、またどのような操作を実行できるのかを制御できます。
共有責任
クラウドのセキュリティは共有責任で実現するもの。クラウドセキュリティにおいて大事なこととして、自分が担当する責任とプロバイダに任せる責任との線引きを理解することが挙げられます。
AzureとGoogle Cloudには、誰が何をしているかを理解するのに役立つ明確な共有責任モデルがあります。以下に、各プロバイダの共有責任を視覚的にご紹介します。
まずGoogle Cloudを見てみると、Googleとユーザーの責任範囲が明確に区分されていることがわかります。GoogleはSaaSやPaaSサービスに加え、IaaSの一部についても主な責任を負いますが、オンプレミス環境のセキュリティについてはユーザーが全面的に責任を負う必要があります。

Azureも責任分担に関しては非常によく似た考え方を採用しています。ただし、Azureでは、どの項目をMicrosoftが担当し、どの項目がユーザーとの共同責任となるのかが、より明確に示されています。

人材
GoogleとMicrosoftはともに、セキュリティ部門への投資を積極的に行っています。サイバーセキュリティ分野の優秀な人材の採用・育成・維持に取り組むことで、両社はクラウドセキュリティサービスの継続的な進化と改善を図っています。
Microsoftは、Cyber Defense Operations Centerをはじめとする専門チームを擁し、セキュリティを重視していることを強調しています。しかし、Azureでは過去に大規模なサイバー攻撃や情報漏えい事案が発生しており、そのセキュリティ体制に疑問の声が上がったこともあります。
一方、Google Cloudは比較的良好な実績を維持しており、Cybersecurity Action Teamを中心にセキュリティ対策を推進しています。またGoogleは、自社のセキュリティ対策やデータ保護の仕組みを詳しく説明したホワイトペーパーも公開しています。
さらに両社とも、外部のセキュリティ研究者との連携を積極的に進めています。Microsoftの「Azure Bounty Program」とGoogleの「Google Bug Hunters」では、発見された脆弱性に対して報奨金を支払う制度を設けており、報奨金額は100万ドルを超える場合もあります。
サポートと稼働率
クラウドサービスを導入・運用する際には、サポートが必要になる場面が少なくありません。また、サイトやサービスの安定稼働は、ビジネスにとって非常に重要な要素です。
そこで、Google CloudとAzureがどのように高い可用性を維持し、サービスの安定運用を支えているのかを見ていきましょう。
サポート
クラウドサービスをデプロイするにあたって、時にガイダンスやサポートが必要になることがあるでしょう。Google CloudとAzureはどちらも、技術仕様について説明した詳細なドキュメントを公開しています。各クラウドサービスの構成、展開、維持の方法も網羅されています。
これに加えて、どちらもクラウドユーザーとエキスパートの広大なネットワークの拠点として機能するコミュニティを用意しています。チュートリアル、ディスカッション、ミートアップなど、そこでは、様々なトピックについての意見交換が行われています。
それぞれのドキュメントとコミュニティは以下のリンクをご利用ください。
いずれかのタイミングで、より詳細なプロによる助けが必要になる可能性もあります。そんな時には、クラウドプロバイダから直接提供される公式のサポートを利用することをお勧めします。
AzureとGoogle Cloudの両方でクラウドサポートプランが利用できます。必要なサービスを手頃な価格で確実に利用できるよう、プランと料金を読んでご理解ください。
Google Cloudのサポートプラン
Google Cloudでは、Google Cloud Customer Careを通じて、無料のBasicプランに加え、Standard」「Enhanced」「Premium」の3種類のサポートプランを提供しています。
Standardサポートでは、複数のチャネルを通じて英語による技術サポートを無制限で利用できます。新しいプラットフォームへの移行や開発中のプロジェクトで少しサポートが必要な場合に適したプランです。料金は月額29ドルに加え、月間利用料金の3%となっており、Googleのエンジニアによるサポートを比較的低コストで受けられます。
Enhancedサポートは、月額500ドルに加え、月間利用料金の3%が必要となります。料金は大幅に上がりますが、24時間365日のサポート、多言語対応、エスカレーション対応に加え、サードパーティ製テクノロジーに関するサポートも利用できます。優先的なサポートを必要とする大規模な本番環境や、複数人のチームでの運用に適したプランです。
最上位のPremiumサポートはさらに高額で、専用の料金計算ツールが用意されています。料金は月額1万2,500ドルに加え、月間利用料金の4%です。しかし、迅速なサポート対応、専任のアカウント管理、組織向けのトレーニングクレジットなどを必要とする大企業にとっては、有力な選択肢となります。
このほかにも、テクニカルアカウントアドバイザー、Mission Critical Services、Assured Supportといった追加サービスを契約に加えることができます。
Azureのサポートプラン
Azureでは、無料のBasicプランに加え、「Developer」「Standard」「Professional Direct」「Enterprise」の4種類のサポートプランを提供しています。
Developerプランは月額29ドルの定額制で、開発環境や小規模プロジェクト向けのプランです。サードパーティ製ソフトウェアに関するサポートも利用できますが、対応は営業時間内のメールサポートに限られます。
Standardプランは月額100ドルで、24時間365日のサポートとより迅速な対応を利用できるため、大規模な本番環境に適しています。
Professional Directプランは月額1,000ドルで、さらに短い応答時間に加え、経験豊富なProDirect Delivery Managerによる技術的なアドバイスを受けることができます。
最上位のEnterpriseサポートは、Microsoft Unifiedを通じて提供され、24時間365日の高度なサポートに加え、さまざまなエンタープライズ向けサービスや機能を利用できます。
質の高い専門サポートは、あらゆるサービスにおいて重要な要素です。
そのためKinstaでは、カスタマーサポートチームをWordPressとLinuxに精通したエンジニアで構成しています。WordPressコアへの貢献者やプラグイン開発者、オープンソースコミュニティのメンバーなど、経験豊富な専門家によるサポートをご利用いただけます。中小企業からFortune 500企業まで、すべてのお客様に同じ高水準のサポートを提供していることもKinstaの強みです。
稼働率
サービス停止は、従業員が重要なシステムにアクセスできなくなったり、顧客が商品やサービスを購入できなくなったりするため、ビジネスの生産性に大きな影響を及ぼします。
Google CloudとAzureは、主要サービスのSLAにおいて、コンピュートやストレージなどの中核サービスに対して月間99.99%の稼働率を保証しています。しかし、どのクラウドプロバイダも完全ではなく、障害やサービス停止が発生する可能性はあります。
障害発生時には、サービスの稼働状況を迅速に把握することが重要です。現在のサービス状況は、各クラウドプロバイダが提供する以下のステータスダッシュボードで確認できます。
原因と期間を含む過去のインシデントの追跡もできます。両者がインシデントステータスの履歴を提供しています。
とはいえ、Google CloudとAzureはいずれも高い信頼性と実績を誇っており、大規模な障害が発生する可能性は極めて低いと言えます。また、両社とも世界各地に多数のリージョンと拠点を展開しているため、広範囲にわたる障害が発生した場合でも、堅牢なフェイルオーバー体制によってサービス継続性を確保できます。
請求と価格
価格は、クラウドプロバイダを比較するときに最も難しい比較項目の1つです。非常に多くの変数が介在し、さらに、すべてのプロバイダが独自の方法で価格設定や請求を行っています。
以下に、クラウドの価格に影響を与える変数をいくつか挙げておきます。このように色々あることで、プロバイダ間の直接的な比較が難しくなります。
- 仮想マシン:インスタンスの数、CPU数、必要なRAMのGB、オペレーティングシステム
- ストレージディスク:データのタイプ、ストレージのサイズ、冗長性の要件
- 定期購読モデル:秒、分、時間、日、月、または年ごとの費用に基づいた支払い
- 支払いモデル:従量課金制、リザーブドインスタンス、または長期契約から選択
- ロケーション:データセンターの設置場所
多くのクラウドプロバイダは、コストを簡単に計算する方法を用意しておらず、比較はさらに複雑になります。Google CloudとAzureも例外ではありません。
そこで、Google CloudとAzureの料金を比較する際に役立つツールや情報、参考資料をご紹介します。ご自身の利用状況に合わせた料金比較にお役立てください。
Google CloudとAzureの料金比較
Google CloudとAzureの製品ページからわかるように、選べるサービスは何百にもなります。各製品に独自の概要と価格設定セクションがあるため、コスト比較中に「迷子になる」可能性は大いにあります。たとえ少数のコンピューティングリソースとストレージリソースを組み合わせる場合でもです。
ただ幸いなことに、どちらのプロバイダも価格計算ツールを提供しています。ですので、必要なクラウドリソースがわかっていれば、料金見積もりのための最初の一歩を踏み出すことができます。
また、費用を大まかに把握できる無料の比較ツールがウェブ上には多数あります。その中の1つがCloudaradoです。いくつかの基本的なクラウドリソースの要件を入力するだけで、コストの大まかな比較が可能になります。
例として、16 CPU、32 GBのRAM、そして2 TBのストレージを搭載した、Linux OSを実行する1つのVMインスタンスを選択してみました。すると、以下のように素早く費用の見積もりが生成されます。
| クラウドーサーバーの中身 | 月額料金 | |
| Google Cloud | カスタムマシン32 GB RAM / 16x CPU 2 TBディスク | 421ドル |
| Microsoft Azure | D16 v3 マシン 64 GB RAM / 16x vCPU 400 GB + 1.61 TBディスク | 627ドル |
クラウド料金比較の前提条件
比較対象を揃えるために、Azure VMとCompute Engineのリージョン、CPU、オペレーティングシステムを同じにしました。
- リージョン:米国東部、バージニア北部(Google:us-east4 | Azure:east-us)
- OS:Linux – Free (CentOS)
- vCPU/コア:4
インスタンス/VMタイプ全体で、同等のRAMと4つのCPUを備えたインスタンスを選択しました。
- 汎用
- コンピューティング最適化
- メモリ最適化
- GPUインスタンス/VM
以下が、選択したインスタンスを含む比較の表です。
| Azure VM | Azure RAM (GiB) |
Compute Engine | Google RAM (GiB) |
|
| 汎用 | D4ads v5 | 16 | n4-standard-4 | 15 |
| コンピューティング最適化 | F4as v6 | 16 | c2-standard-4 | 15 |
| メモリ最適化 | E4a v4 | 32 | n4-highmem-4 | 30 |
| GPU | NC6 | 56 | NVIDIA T4 | 60 |
従量課金制
Google CloudとAzureはどちらも従量課金モデルを提供しています。このタイプの料金モデルでは、支出を柔軟に制御できますが、結果的な費用はかさむことがあります。従量課金制は1時間あたりの料金が最も高くなります。
| Azure VM | Azure 価格(1時間あたり) | Compute Engine | Google 価格 (1時間あたり) |
|
| 汎用 | D4ads v5 | 0.206ドル | n4-standard-4 | 0.1895ドル |
| コンピューティング最適化 | F4as v6 | 0.284ドル | c2-standard-4 | 0.2351ドル |
| メモリ最適化 | E4a v4 | 0.252ドル | n4-highmem-4 | 0.2488ドル |
| GPU | NC6 | 0.9ドル | NVIDIA T4 | 0.35ドル |
上の表からわかるように、Azureの同等インスタンスと比較した場合、Google Compute Engineはすべてのカテゴリで低い料金となっています。
価格差はそれほど大きくなく、実際のコストは選択するVMによって異なりますが、この比較ではGoogle Cloudに軍配が上がります。
また、継続利用割引を活用すれば、料金をさらに抑えることもできます。これは、マシンの実行時間が長くなるほど割引率が高くなる仕組みで、月間最大30%の割引を受けられます。Azureにも同様のSavings Plan for Computeがあり、こちらは最大65%の割引が適用されます。
さらに興味深いことに、Google CloudとAzureはいずれもSpot VMによって、より大きな割引を提供しています。Compute Engine側でリソースが必要になった場合にインスタンスが停止される可能性を許容できるのであれば、さらにコストを削減できます。
たとえば、NVIDIA T4の通常料金が1時間あたり0.35ドルであるのに対し、Spot料金では1時間あたり0.14ドルまで下がり、60%のコスト削減になります。
確約利用割引とリザーブドインスタンス
クラウド環境を本格的に運用し、長期利用を前提とした契約が可能であれば、従量課金モデルと比べて大幅なコスト削減が期待できます。Google CloudとAzureはいずれも、1年または3年の利用を約束することで割引を受けられる長期契約プランを提供しています。
Google CloudのCommitted Use Discountsでは、最大57%、メモリ最適化インスタンスでは最大70%の割引が適用されます。一方、AzureのReserved Instancesでは最大72%の割引が提供されており、Azure Hybrid Benefitと組み合わせることで最大80%のコスト削減が可能です。
ただし、クラウド料金と同様に、実際の割引率はさまざまな要因によって変動します。料金計算ツールを試してみると、インスタンスタイプ、リージョン、オペレーティングシステムなどが割引額に影響することがわかります。実際にはさらに多くの条件が関係するため、事前に十分な検討と試算を行うことが重要です。
1年契約
このことを念頭に置いて、次に、確約利用とリザーブドインスタンスによる1年間の契約が二者間の価格にどのように影響するのか比較してみましょう。
| Azure VM | Azure 価格(1時間あたり) | Compute Engine | Google 価格(1時間あたり) | |
| 汎用 | D4ads v5 | 0.1413ドル | n4-standard-4 | 0.1194ドル |
| コンピューティング最適化 | F4as v6 | – | c2-standard-4 | 0.1407ドル |
| メモリ最適化 | E4a v4 | 0.1704ドル | n4-highmem-4 | 0.1567ドル |
| GPU | NC6 | 0.6593ドル | NVIDIA T4 | 0.22ドル |
この比較では、Google Cloudが引き続きAzureを下回る料金を実現しており、特にGPU関連のコストで優位性が見られます。ただし、Azureはより大きな割引制度を提供しているため、利用条件によっては結果が逆転する可能性もあります。
3年契約
比較をさらに一歩前に進め、確約利用とリザーブドインスタンスによる3年間の契約では、プラットフォーム間の価格比較にどのような影響が出るのか見てみましょう。
| Azure VM | Azure 価格(1時間あたり) | Compute Engine | Google 価格(1時間あたり) | |
| 汎用 | D4ads v5 | 0.0943ドル | n1-standard-4 | 0.0853ドル |
| コンピューティング最適化 | F4as v6 | – | c2-standard-4 | 0.094ドル |
| メモリ最適化 | E4a v4 | 0.1193ドル | n1-highmem-4 | 0.1119ドル |
| GPU | NC6 | 0.4790ドル | NVIDIA® Tesla® T4 | 0.16ドル |
ただし、3年間のリザーブドインスタンス契約を前提にすると状況は変わってきます。Azureの割引率の高さが効いてきて、Google Cloudとの差を縮めるだけでなく、一部のケースでは上回ることもあります。その差はごくわずかですが、確かに確認できます。
無料トライアル
始めたばかりでまだ長期契約はしたくない場合、または大量のリソースが必要ない場合は、無料トライアルがいいでしょう。どちらのクラウドプロバイダも、さまざまな製品とサービスで無料枠を提供しています。Google Cloudの無料枠は、次の2つのコンポーネントで構成されています。
- 全てのGoogle Cloudサービスにアクセスできる12か月の無料試用と300ドルのクレジット(これの期限は12か月の試用期間中)
- (利用限度付きで)常に無料で一般的なGoogle Cloudリソースを利用できる
当然、無料利用枠にはさまざまな条件があります。たとえば、現在料金を支払っている顧客ではないこと、以前に無料試用を利用したことがないことなど。
条件を満たせば、コンピューティング、データベース、ストレージ、データ分析、管理・開発ツール、AI・機械学習、セキュリティサービスといった18の主要なGoogle Cloudプロダクトを「常に無料で」利用できます。
以下は、主要な製品の一部とその利用制限です。
- e2-micro VMインスタンス1台(30GBのPersistent Disk付き、対象の米国リージョン限定)
- Cloud Storage 5GB(Class Aオペレーション月5,000回、Class Bオペレーション月50,000回を含む)
- NoSQLドキュメントデータベース1つ(ストレージ1GB、1日あたり読み取り50,000回、書き込み20,000回、削除20,000回)
- App EngineのF1インスタンスを1日あたり28時間分利用可能
- App EngineのB1インスタンスを1日あたり9時間分利用可能
Azureの無料試用版では、2つのコンポーネントを使用した同様のアプローチが採用されていますが、これにはいくつかの重要な違いがあります。
- 一部のAzureサービスを12か月間無料で利用可能(利用上限あり)。さらに200ドル分のクレジットが付与されますが、最初の30日以内に使用する必要があります。
- 一般的なAzureリソースを常時無料で利用可能(利用上限あり)
Google Cloudと同様に、Azureの無料トライアルを利用するにはいくつかの利用条件を満たす必要があります。ただし、Azureが提供する無料リソースについては、条件を満たしている限り継続して利用できます。
対象には、LinuxおよびWindows VM、Managed Disks、File Storage、Blob Storage、SQL Databaseなどの主要サービスが含まれます。これらのサービスには利用上限が設定されていますが、200ドル分の無料クレジットを利用することで、より多くのリソースを利用できます。
さらに、コンピュート、データベース、ネットワーク、ID管理、セキュリティ、開発ツール、分析、管理とガバナンス、AI・機械学習、コンテナサービスなど、55以上のAzureサービスを無料で利用できます。
そのコア製品の例は以下の通りです。
- Azure App Service:Webアプリ、モバイルアプリ、APIアプリを最大10個まで利用可能(ストレージ1GB、利用時間は1日1時間まで)
- Microsoft Entra ID:ID管理サービス(保存オブジェクト50,000件まで、すべてのクラウドアプリへのシングルサインオン[SSO]に対応)
- Azure DevOps:ユーザー5名まで無料で利用可能
- DevTest Labs:アプリのテスト環境を迅速かつ効率的に構築できるサービスを無料で利用可能
無料利用枠という点では、Azureの方がやや優位と言えるでしょう。無料トライアル期間はGoogle Cloudの90日間に対して12か月間と長く、無料で利用できるサービス数もGoogle Cloudの20以上に対して50以上と充実しています。
一方で、どちらのサービスも豊富な常時無料のリソースを提供しているため、無料トライアル終了後も一定の範囲で利用を継続できます。
Google CloudはAzureよりも手頃?
Google CloudとAzureのどちらが安いのか、一概に結論づけることはできません。クラウドサービスは非常に複雑であり、選択するデータセンター、VMの種類、料金プランなど、さまざまな要素がコストに大きく影響します。
実際には、構成の検討や最適化に多くの時間を費やした結果、選択するリソース構成や料金モデル、適用される割引によって、Google Cloudの方が安くなる場合もあれば、Azureの方が安くなる場合もあります。
つまり、Google CloudとAzureのどちらが低コストになるかは、利用する企業やプロジェクトの要件によって異なります。自社のニーズに最も適したクラウドプロバイダこそが、結果的に最も費用対効果の高い選択肢となるでしょう。
そして最後に、もうひとつ考えておきたい点は、「安価であることが良いことであるかどうか」ということです。
まとめ
この記事では、「Google CloudとAzureのどちらが優れているのか」という、多くの人が抱く疑問に答えるために両者を比較してきました。
しかし、さまざまな観点から検証した結果、明確な結論を出すのは簡単ではありません。両プラットフォームとも高品質なサービスと豊富な機能を提供しており、それぞれに強みがあります。
Google Cloudは、先進的なプラットフォームの強化を続けながら、新たなデータセンターの展開も進めています。クラウド事業の成長も続いており、その勢いはAlibaba CloudやAWSの市場シェアに影響を与えるほどです。特にパフォーマンスやコスト効率を重視する企業にとって、有力な選択肢となっています。
一方のAzureも、近年大きな進化を遂げています。AI関連サービスへの投資を強化しているほか、コンプライアンス、冗長性、可用性といった分野でも高い評価を得ています。Google Cloudと同様に競争力の高いプラットフォームであり、用途によっては優れた選択肢となるでしょう。
とはいえ、今回取り上げたのは両サービスの一部に過ぎません。より広い視点で見れば、主要クラウドプロバイダ同士の競争はユーザーにとって大きなメリットをもたらします。各社が市場シェア獲得を目指して競い合うことで、より優れたサービスや機能、幅広い提供地域、そして競争力のある価格が実現されるからです。
最終的に重要なのは、「どちらが優れているか」ではなく、「自社の要件に最も適しているのはどちらか」。Google CloudとAzureの特徴を理解した上で、自社に合ったプラットフォームを選択しましょう。