複雑なWordPressサイト開発・運用を行っていると、VPS(仮想専用サーバー)よりも速度と信頼性に優れたマネージドサーバーが存在するのか、疑問に思ったことがあるかもしれません。
マネージドサーバーを導入すれば確かに業務の負荷が軽減しますが、完全に制御が可能という点でVPSの方が魅力的な選択肢とも言えます。
そこで今回は両者の性能を比較し、自前のVPSとマネージドサーバーの利点・欠点を掘り下げます。
また、Kinstaと従来のVPS構成との比較を交えながら、顧客満足度やチームの効率性がかかる場面で、わずか数ミリ秒のパフォーマンス差がどれほど重要かについてもご紹介します。
WordPressパフォーマンスの測定方法
開発者がマネージドサーバーと自前のVPS環境を比較する場合、ベンチマークは表面的なスピードテスト以上のものである必要があります。
そのため、単一の数値だけでなくパフォーマンスの複数の側面に注目します。以下、このようなパフォーマンス測定を行う際に注目すべき指標をご紹介します。
Time To First Byte(TTFB)
TTFBは、サーバーが最初のリクエストに応答するまでの時間を示します。この数値が低いほど、サーバー環境がサーバーとネットワークレベルで応答性を高めるように調整されていることを意味します。
web.devによれば、800ミリ秒以下が良好とされています。

複数のクライアントサイトを管理する制作会社にとっては、たとえ100ミリ秒の遅延であっても、プロジェクト全体で顕著な速度低下につながる可能性があります。
Core Web Vitals(コアウェブバイタル)
Core Web Vitalsは主に以下3つの指標で構成されます。
- Largest Contentful Paint(LCP):ページの主要コンテンツが表示されるまでの時間
- Cumulative Layout Shift(CLS):ページが読み込まれ際の視覚的な安定性(要素のズレなど)
- Interaction to Next Paint(INP):ユーザーの入力に対するサイトの反応の速さ
これらは単なる技術的な数値ではなく、Googleが検索表示順位に使用する指標です。エンドユーザーがサイトをどれだけ「速い」と感じるかに直接影響します。
試しにPageSpeed Insightsでgoogle.com
をテストしてみると、LCP、INP、CLS、FCP、TTFBを含むすべての指標のスコアが良好であることがわかります。

稼働率とエラー率
スピードだけでなく、信頼性も重要です。稼働率とHTTPエラー率を追跡することで、一貫してページを提供できる環境かどうかがわかります。Web制作会社にとって、クライアントサイトのダウンは1分1秒を争うものであり、収益の損失や信頼の損失につながりかねません。
トラフィック急増時の負荷処理
合成負荷テストは、数百または数千の同時接続を再現します。これにより、期間限定のプロモーション、バイラルキャンペーン、突然のトラフィック急増など、サーバー設定が過負荷の下でどの程度スケーリングできるかを確認することができます。
テストにおける公平性
ベンチマークは、公平でなければ意味がありません。偏った結果を避けるため、テスト設定は可能な限り実際の本番環境に近づけます。
- 同じWordPressバージョン:KinstaとVPSで同じWordPressコアバージョンを実行し、機能の同等性を確保。
- 同じプラグインとテーマ:コードの実行によってパフォーマンスが異なる可能性があるため、共通のプラグインとテーマを使用。
- 制御されたトラフィック再現:k6のようなツールで同時接続、ページナビゲーション、フォーム送信など、現実的なユーザーの行動を再現。
- 環境の同一性:可能な限り同じPHPバージョン、データベースバージョン、メモリ割り当てを適用。これにより、サーバーアーキテクチャだけを主要な比較要素として切り分け。
このように両者の性能を公平に比較していきます。各環境が通常時にどれだけ高速に動作するかだけでなく、限界まで追い込まれた際にはどれだけ安定性を保ち、スケーリングできるかを見ることができます。
自前VPS環境とKinstaのWordPress専用マネージドクラウドサーバーの比較
多くの開発者が自前のVPS環境を選ぶ理由には、完全に制御できる点にあります。
プロバイダの選択、スタックの設定、キャッシュの微調整、リソースの割り当てなどすべて自由に決定することができますが、その代償として、全ての設定を行い、常にチューニングを行い、継続的にメンテナンスを行わなければなりません。
自前VPS環境に必要なもの
自己管理型のVPS環境でWordPressを運用するということは、開発者兼シスアド(システム管理者)になることを意味し、以下のような業務が追加されます。
- ウェブサーバー(Nginx/Apache)、PHP、MySQLまたはMariaDBのインストールと設定
- サーバーモジュール、リバースプロキシ、プラグインなどによるキャッシュ層の手動設定
- サードパーティツールによる稼働時間とリソース使用量の監視
- セキュリティパッチやOSアップデートの適用
- トラフィック急増時により多くの電力をプロビジョニング、または新規インスタンスをスピンアップしてリソースを拡張
正確な制御を行うことはできるものの、機能の構築、UXの最適化、あるいはクライアントプロジェクトの出荷に充てる貴重な時間が失われてしまう可能性があります。
Kinstaのパフォーマンスへのアプローチ
Kinstaでは、ハイパフォーマンスのグローバルネットワークと次世代サーバーインフラを構築しているため、サーバーの設定に費やす時間を削減し、すぐにスピードと安定性を手にすることができます。
- 隔離コンテナ技術:各WordPressサイトが専用リソースを持つ隔離LXDコンテナで実行され、共用サーバーでありがちな「ノイジーネイバー問題」を回避
- 自動キャッシュレイヤー:サーバーレベルのキャッシュ(エッジキャッシュとオブジェクトキャッシュを含む)が設定されているため、パフォーマンスの改善にプラグインが不要
- 内蔵CDNの統合:エンタープライズレベルのCloudflare CDNが利用できるため、世界中のエンドユーザーにコンテンツを高速配信可能
- 急増に対応する自動スケーリング:隔離コンテナ、Cloudflareのエッジキャッシュ、簡単でスムーズなプランのアップグレードにより、突然のトラフィック急増にも対応可能(リソースの上限を超えてもサイトは引き続き稼働)
パフォーマンス比較
パフォーマンスについて語る際は、実例から得られるデータが最も説得力を持ちます。そこで3ヶ月の間にVPS環境を含む別のサービスからKinstaに移行された3,200以上のサイトを測定しました。全てのサイトは平均してKinstaへの移行直後に20%高速化されています。
以下のような機能により、コードの変更や再設計なしでサイトの読み込み速度が向上します。
- より高速な計算能力を発揮する次世代仮想マシン
- 世界最速クラスのバックボーンでトラフィックを配信するプレミアムグローバルネットワーク
- 300以上のロケーションを誇るCloudflare CDN
- キャッシュされたWordPressのHTMLの配信時間を平均50%以上短縮するエッジキャッシュ
測定可能な利益は、サイトを自前VPS環境からKinstaに移行した瞬間に得ることができます。
高負荷下での光速負荷処理
Hosting Stepによる負荷テストでは、Kinstaの平均応答時間はわずか27ミリ秒を記録し、「最高レベルの処理能力(エリートクラス)」に分類されました。これはトラフィックの急増時に、同時負荷が高くなる場合でも、サイトの応答性が維持されることを意味します。
モバイルでも1秒以下のレンダリング
独自に実施したテストでは、デフォルトのWordPressテーマを使用した場合でも、ページのレンダリング時間はPCで約800ミリ秒、スロットルされた4Gモバイル接続で約1.2秒でした。このレベルの応答性は、LCPやFIDのようなCore Web Vitalsのスコアの向上につながります。
以下の数値は、具体的な成果に直結します。
- TTFB(Time To First Byte)は、短ければ短いほど高速な初期のデータ取得が迅速であることを意味し、キャッシュやCDNが介入する前からより高速にページを読み込みます。
- エリートレベルの負荷処理により、突発的なアクセス集中時でもリクエストの取りこぼしや動作の遅延を防ぎます。
- LCP(Largest Contentful Paint)の表示速度が1秒未満であれば、ユーザー満足度や直帰率、さらにはSEOにも直接的な影響を与えます。
自前VPS環境を最適化してこのレベルに近づけることはできますが、高度なエンジニアリングリソースと継続的なメンテナンスが必要になります。Kinstaのサーバー環境はこのレベルを標準提供しているため、パフォーマンスや信頼性を犠牲にすることなく、チームが重要な開発作業に集中することができます。
トレードオフを考える─時間、パフォーマンス、信頼性
自前のVPS環境とKinstaの違いは、スピードテストで見られる結果だけでなく、開発者の時間と労力という隠れたコストにもあります。
前者ではウェブサーバーの設定からデータベースのチューニングまで、スタックを完全制御できますが、同時にシスアド業務もこなさなければなりません。パッチやアップグレード、パフォーマンス調整のたびに新たなタスクが生じ、稼働状況の監視、セキュリティ修正の適用、障害のトラブルシューティングに終日費やし、利益生産時間を失うことになります。
Kinstaでは、インフラ管理を一任することができるため、このような負荷から解放されます。サイト管理はこれまで通り行いつつ、トラフィック急増によるサーバーへの過負荷や変更適用によるシステムへの脆弱性の発生などを心配する必要がなくなります。積極的な監視、毎日の自動バックアップ、マルウェアのクリーンアップは、すべてバックグラウンドで実行されます。
その結果、信頼性の高い環境を確保でき、制作会社はメンテナンスに充てる時間を重要なクライアントワークに投資できるようになります。
開発者主導のWeb制作会社にマネージド環境が適している理由
開発者主導の制作会社が気になるのはおそらく、マネージドサーバー導入によってワークフローに制限が生じないかどうかでしょう。
Kinstaではこの点を考慮し、SSHアクセス、WP-CLI、Git統合、Redisサポート、ステージング環境が標準装備しています。VPSで設定するのと同じグレードのツールを使ってスムーズに作業を行うことができます。
ヘッドレスWordPressのような高度なプロジェクトもスムーズに実行でき、高速なAPI応答が非連結フロントエンドを支えます。WooCommerceストアにはRedisオブジェクトキャッシュを用いて、売上が増加する期間もトランザクションの応答性を保つことができます。大規模なマルチサイトは隔離コンテナで実行されるため、自前のサーバー環境の設定を頓挫させるリソースの競合を避けることができます。
以下、実際にKinstaを利用するお客様の導入事例を簡単にご紹介します。
NeuralabはAWSからの移行後、サイト速度が2倍に
約200のWordPressとWooCommerceプロジェクトを管理するWeb制作会社のNeuralabは、パフォーマンスの改善と運用の簡素化を求め、AWSからKinstaに移行しました。移行後、サイト速度は2倍になり、フロントエンドの応答性とバックエンドのワークフローの両方に測定可能な改善が見られました。

同社の開発者は、読み込み時間が全体で約1秒短縮されたのは、最適化されたインフラストラクチャと組み込みのキャッシュによるものだと評価しています。結果として、Neuralabはインフラ管理の手間を削減し、開発に集中することができるようになりました。
NCVVOは編集の高速化とエラーのない安定性を実現
クロアチアの国立教育外部評価センターであるNCVVOは、国家試験期間中の高トラフィックをサポートできるサーバーを探していました。Kinstaの導入前は、安定性の問題と低速なバックエンドに悩まされていました。

Kinstaへの移行後、同社のWordPress管理画面は10倍速くなり、コンテンツの公開と管理が大幅に効率化されました。また、集中的に変更を加えた1ヶ月間にHTTP 500エラーの発生率が0%という記録もでています。一般向けのサイトも改善され、ページ読み込み速度が改善されたことで、ピーク時にも学生や教育関係者により安定した体験を提供できるようになりました。
まとめ
能力測定結果によると、KinstaのWordPress専用マネージドクラウドサーバーは、速度、信頼性、およびスケーラビリティにおいて自前のVPS環境を上回ります。
Kinstaが開発者主導のチームにとって特に価値がある理由は、インフラ管理の負担を解消しながら、必要なコントロールをそのまま確保できる点にあります。VPSで使用するのと同じコマンドラインアクセス、ステージング環境、高度なツールを利用でき、パッチの適用、監視、サーバー周りの問題の解決には時間を割く必要がありません。
複雑なサイトを複数管理するWeb制作会社にとって、Kinstaを利用するメリットは明確で、インフラの頭痛の種を取り除きながら、高いパフォーマンスと開発作業の柔軟性を手にすることができます。クライアントサイトにKinstaのWeb制作会社向けプランをぜひお試しください。