2016年、KinstaはWordPress専用マネージドホスティングのさらなる高速化に着手しました。このプロジェクト最大の目標は、インフラ全体を複数のプロバイダーからGoogle Cloud Platform(GCP)に移行、統合すること。
今日振り返れば、この時の選択は、現在の世界最速WordPressホスティングプラットフォームの構築に大きく貢献していると言えます。
そこで今回は、Kinstaの企業理念、そしてインフラストラクチャプロバイダーにGCPを選択した理由について掘り下げます。具体的には、コンピューティング最適化(C2)仮想マシン、プレミアムティアのルーティング、独自のコンテナ化ホスティングスタックを利用して、KinstaがどのようにWordPressホスティングを次のレベルに引き上げたのかをご説明していきます。
Google Cloud Platformの仮想マシン
Google Cloud Platformは、さまざまな仮想マシン(VM)を提供しています。仮想マシンは、CPU、RAM、SSD容量、高速インターネット接続を備えたデータセンター内のコンピュータと考えるとわかりやすいです。
通常のコンピュータと同様、VMはさまざまな構成で利用することができ、GCPでは、VMは複数の種類に分類されます。
- N1、N2、E2マシン─さまざまなワークロードに適した汎用性の高い構成。特定のタスクには最適化されておらず、ウェブサーバー、ビジネスアプリケーション、小規模なデータベースなどに適している。
- M1およびM2マシン─大規模なインメモリSQL、およびNoSQLデータベースやインメモリデータ分析など、メモリ集約型の用途向けにRAMを搭載。
- C2マシン─電子設計の自動化、高性能ゲーム、CPU負荷の高いWordPressなどを意識し特別に設計され、コンピューティングの面で最適化されている。Google Cloud Platform最速であり、Kinstaが採用している仮想マシン。
KinstaのGoogle Cloud Platformの使用方法
最速のWordPressホスティング体験を提供するという使命において、GoogleのC2仮想マシンは重要な役割を担っていますが、それだけではありません(これについては、後ほど詳しくご説明します)。
汎用マシンであるN1とC2の構成をベンチマークしたところ、C2ではWordPressサイトが200%高速化されることがわかりました。
では、コンピューティング最適化VMによって、なぜWordPressサイトが高速化されるのでしょうか。
WordPressのコア、プラグイン、テーマは、PHPで記述されています。データベースを呼び出してページを生成したり、WooCommerceストアの注文確認を送信したりなど、さまざまなタスクを実行するバックグラウンドプロセスは、ワーカープロセスと呼ばれます。
簡単に言うと、このワーカープロセスは、WordPressサイトのエンジンに相当します。WordPressサイトへのキャッシュされていないリクエストは、ワーカープロセスによって処理され、この処理速度はCPUの性能に依存します。このため、CPUの性能が極めて高いC2仮想マシンは、WordPressサイトの速度を向上してくれるというわけです。
Kinstaを利用する最大のメリットは、サイトスピードが格段に上がったこと。Kinstaのサーバーレベルでの速度最適化を超える機能に出会ったことがありません。使用していた最適化プラグインやキャッシュをすべて無効にすると、サイトが2倍以上高速になりました
Kinstaのホスティングが高速である理由
Kinstaのホスティングサービスの中核は、LXD、Nginx、MariaDB、およびPHP最新バージョンを独自に実装したコンテナ型ホスティングスタック。Kinstaのホスティングスタックは、Google Cloud Platform上に構築されたWordPressホスティング向けに特別に設計されています。また、利用可能な高速ソリューションの登場に応じて、常に微調整と最適化が繰り返されています。
インフラストラクチャでは、GoogleのC2マシンとプレミアムティアネットワークを採用しています。プレミアムティアでは、公共のインターネットパイプラインをできる限り避けることで、低レイテンシとより高速な(30~50%)トラフィックルーティングが保証されます。
これに対して、一般的なWordPressホスティングサービスの多くでは、より安価で安全性の低いものを利用しており、ネットワーク速度は二の次になっています。
Kinstaでは、独自のホスティングスタック、Googleの最速VM、トラフィックルーティング、および業界で培われた長年の経験を組み合わせ、Google Cloud Platformのパフォーマンスを最大化し、真にパフォーマンスに優れたWordPressホスティング体験を提供しています。世界37箇所のデータセンターの中から、訪問者に近いリージョンでサイトをホスティングすることで、コンテンツ配信のレイテンシを削減することができます。
多くのWordPressホスティング会社が「パフォーマンス重視」を謳っていますが、真にパフォーマンスを重視したホスティングでは、GCPのC2およびC3Dマシンやプレミアムティアネットワークのような、最高クラスの技術が標準搭載しているもの。
しかし残念ながら、そうはいかないのが今日のWordPressホスティング業界の現状です。GCPのC2マシンをサポートしているホスティングの多くでは、上位プランでしか提供していません。Kinstaでは、すべてのプランでGCPのC2(コンピューティング最適化)およびC3D(Compute Engine 汎用)仮想マシンを利用しています。
さらに、お客様のサイトのスピードと安全を最大化するため、エッジキャッシュ、強力な2つファイアウォール、HTTP/3およびTLS 1.3、そして260+のPoPを誇るCloudflare統合を提供しています。サイト訪問者がブラウザでサイトを読み込むと、物理的に最も近い場所からキャッシュされたコンテンツが光速配信されます。
加えて、Kinstaの隔離コンテナ技術により、他のサイトとリソースを共有することがありません。これにより、サイトの速度、安定性、安全性がさらに高まります。
最後に、お客様のすべてのサイトを1日480回(3分ごと)に監視し、99%の稼働率を保証しています。
Google Cloud Platformを利用するホスティング会社
Kinstaだけが、Google Cloud Platform(GCP)を利用しているわけではありませんが、コンピューティング最適化(C2)仮想マシンとGoogleの超高速プレミアムティアネットワークをすべてのプランで提供しているホスティング会社は、Kinstaだけです。
KinstaとSiteGroundの比較
2020年5月、SiteGroundは、6箇所のデータセンターにあるGoogle Cloud Platformのインフラで稼働するサイトを対象に、N2仮想マシンのアップレグレードを発表しました。プレスリリースでは、N1からN2マシンへの移行により、CPUのパフォーマンスが40%高速化されると公表されています。
対するKinstaでは、12リージョンで200%高速なC2マシンを搭載した37箇所のデータセンターをサポート。より高速なサーバーでホスティングするだけでなく、ターゲットオーディエンスにより近い場所からサイトを戦略的に配信することができます。
KinstaとWP Engineの比較
2019年8月、WP Engineはコンピューティング最適化(C2)仮想マシンのサポートを発表しましたが、利用できるのは、月額290ドルからの上位専用プランのみ。
Kinstaでは、すべてのサイトがC2マシンで稼働します。スタータープランからエンタープライズプランまで、Google Cloud Platformの最速サーバーを利用することができ、予算を問わず、光速ホスティング体験を手にすることができます。
Kinstaでは、Googleのグローバルネットワーク全体で37箇所のデータセンターをサポートしているのに対し、WP Engineのサポートは14箇所のみ。Kinstaとは異なり、特定の場所でのホスティングには追加料金が発生します。
コンピューティング最適化(C2)VMの速度
Kinstaのホスティングの機能について掘り下げる前に、Kinsta独自のソフトウェアスタックを実行するC2マシンに移行した、クライアントサイトのパフォーマンス比較をご紹介します。
1分間に数百のPHPリクエストを処理する高トラフィックのニュースサイトの応答時間は、C2マシンへの移行により、250ミリ秒から80ミリ秒に改善されました(212.5%のパフォーマンス向上)。
Matthew Woodward氏の人気オンラインマーケティング&SEOブログの応答時間は、750ミリ秒から385ミリ秒に。これは、パフォーマンスが94.8%向上したことを意味します。
アプリ開発会社のNeuralabは、C2マシンへの乗り換え後、パフォーマンスが450ミリ秒から250ミリ秒に改善され、80%のパフォーマンス改善が見られました。
上記の事例以外にも、C2マシンへの移行後、数々のサイトでパフォーマンスの改善が見られています。最適化プラグインやコードの変更も不要で、もちろん隠れたコストもありません。
Kinstaのスピードが他と一線を画す理由
では、多くのホスティング会社が速度の劣るサーバーを使用していたり、上位プランのみでしかC2マシンをサポートしていないにもかかわらず、なぜKinstaではGCPの最速サーバーをすべての利用者に提供できているのでしょうか。この点に疑問を抱く方も多いはずです。
その答えは、実は至ってシンプルで、Kinstaは上場せず、顧客体験を最優先しているからです。C2マシンへの完全移行に至った裏側をご紹介するため、KinstaのCEOであるMark Gavaldaに当時の話を聞きました。
Kinstaの企業理念
Markによれば、コンピューティングに最適化されたC2仮想マシンへの移行は、Kinstaの企業理念が大きく関係しています。
Kinstaは、2013年の創業以来、たとえコストがかかっても、常に最高品質の技術やソリューション、そして人材を選んできました。顧客志向の戦略において、わかりやすいのは多言語サポートとインフラの2つです。
優れたカスタマーサポートは、創業当初から2024年現在まで、Kinstaの強みの一つ。飛躍的な成長を遂げた2013年以降も、24時間年中無休で稼働するカスタマーサポートは、応答時間2分以内と顧客満足度97%を維持しています。
KinstaのWordPress専用マネージドホスティングを利用するお客様の声もご紹介しています。
あらゆるホスティング会社が優れたサポートを提供していると謳っていますが、ほとんどが誇大広告。そんな中、Kinstaは真に価値のあるサポートを提供してくれています。コントロールパネルから24時間年中無休でライブチャットを利用でき、WordPressに精通した親しみやすいエンジニアが対応してくれます
コンピューティング最適化(C2)VMに移行するまでの道のり
高性能なC2マシンに移行する前は、Googleのプレミアムティアネットワークを経由する、GCPの汎用マシンN1を使用していました。N1マシンでも十分に高いパフォーマンスを発揮していましたが、GoogleがC2マシンを発表してすぐに、移行を検討し始めました。CEOのMarkは、C2マシンがまだアルファテストの段階にある時、その動向をいち早く確認するため、スイスのチューリッヒにあるGoogleのオフィスに足を運んでいました。
C2マシンに出会った瞬間から、C2マシンへの完全移行を決意したと語っています。
いかなる犠牲を払っても、この仮想マシンをすべての顧客に提供しなければならないと確信しました
GCPのコンピューティング最適化(C2)VMの決定的な特徴は、比類のないシングルスレッド性能にありました。
WordPress関連の負荷のほとんどはシングルスレッド。そのため、1つのタスクに対して何十ものCPUを使って計算を並列化することはできません
シングルスレッド性能は、WordPressサイトをホストする上で非常に重要です。
膨大な数のベンチマークを実施した結果、C2の3.8GHzの持続型オールコアターボCPUは、2.2GHzのCPUを搭載したN1と比べて、1つの仮想マシンが常時処理できる作業量を効果的に倍増することが判明。ベンチマークテスト後、すぐにGoogle Cloudに問い合わせ、C2の可用性に関する詳細を入手しました。
C2インスタンスで利用可能なリージョン
2020年初頭には、以下のサポート地域で、インフラ全体をC2仮想マシンに完全移行しました。北米、ヨーロッパ、アジアなどに設置されたデータセンターにC2が搭載されています。
- Changhua County, Taiwan (asia-east1)
- Hong Kong (asia-east2)
- Tokyo, Japan (asia-northeast1)
- Osaka, Japan (asia-northeast2)
- Seoul, South Korea (asia-northeast3)
- Mumbai, India (asia-south1)
- Delhi, India (asia-south2)
- Jakarta, Indonesia (asia-southeast2)
- Sydney, Australia (australia-southeast1)
- Melbourne, Australia (australia-southeast2)
- London, United Kingdom (europe-west2)
- Frankfurt, Germany (europe-west3)
- Zurich, Switzerland (europe-west6)
- Montréal, Canada (northamerica-northeast1)
- Toronto, Canada (northamerica-northeast2)
- São Paulo, Brazil (southamerica-east1)
- Columbus, Ohio, USA (us-east5)
- The Dalles, Oregon, USA (us-west1)
- Los Angeles, California, USA (us-west2)
- Salt Lake City, Utah, USA (us-west3)
- Las Vegas, Nevada, USA (us-west4)
今後、Google Cloudが他の地域にもサポートを展開する際には、それに応じてKinstaのインフラもC2マシンに移行し続ける予定です。
Googleの柔軟なVM設計と、Kinstaの高度なエンジニアリングとシスアドチームのおかげで、N1からC2への移行はシームレスに完了しました。C2移行後のお客様の満足度は非常に高く、お客様のことを第一に考え、Googleの最速サーバーに完全移行することが、最良の選択であったと自負しています。
すべてのプランで最速のホスティング体験を提供し続ける
スピードは、どんな犠牲を払ってでも妥協してはいけないもの。
今日、テクノロジーの未来と可能性は無限大。Kinstaは、WordPressホスティング業界における革新に日々尽力しており、顧客体験、満足度、パフォーマンスの向上という観点から、常に最新技術に目を向けています。
私たちは、Google Cloudと密接に連携し、新製品をいち早くテストできるようにしています。最新のインフラの進歩には、常に注目しています
─Mark Gavalda(Kinsta CEO)
5年後には、C2マシンが最速サーバーではなくなっている可能性もあります。しかし、KinstaでWordPressサイトを運営していれば、すでに最新サーバーにサイトが無料移行されていること間違いなしです。
Kinstaは、Google Cloudと密接に連携し、新製品をできるだけ早くテストできるようにしているため、最新のインフラストラクチャや技術に常に注目していることをお分かりいただけると思います
今から5年後には、C2 VMがWordPress向けの最速サーバーではなくなっているかもしれません。いずれにしても、Kinstaのお客様のサイトは、常に最新のサーバーに無料で移行いたしますのでご安心ください。
まとめ
豊富な仮想マシン、超高速ネットワーク、シスアド向けの充実した機能など、Google Cloud PlatformはWordPressホスティング業界において、その人気を急速に伸ばしています。Google Cloud Platformを利用しているホスティング会社はKinstaだけではありませんが、すべてのプランでC2マシンを提供しているのはKinstaだけ。
Kinstaでは、スタータープランからオーダーメイドプランまで、すべてのお客様にGCP最速のコンピューティング最適化(C2)VMを提供。利用開始初日から、Google CloudのC2マシンとプレミアムティアネットワークをフル活用することができます。
さらに詳しい情報は、C2ベンチマークテストをご覧ください。
Kinstaでは、これからの将来に向けて革新と反復に照準を合わせ、世界で最高かつ最速のWordPressホスティング体験を構築することに尽力しています。
KinstaとWordPressの最新情報は、隔週のニュースレターでお届けしています。
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