オンライン決済ツールの普及競争が激化する中、最近では業界をリードするStripeと新進気鋭のAdyenの2社が競い合っています。
両者ともに世界中のユーザーから支払いを受け取るための画期的な機能を提供しています。
Stripeはあらゆる規模のビジネスに有用で、カスタマイズ可能な決済プロセスと高度なAPIツールが売り。一方のAdyenは、オムニチャネル決済ソリューションを必要とする大型ECサイト、および実店舗を経営する企業に適しています。
そこで今回の記事では、両者の注目すべき機能、使いやすさ、利用料金、取引手数料、初期費用などを徹底比較していきます。それぞれのメリットとデメリットを見比べ、どちらが自社に適しているかを判断してみてください。
StripeとAdyenの比較概要
Stripe | Adyen | |
こんな会社におすすめ |
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料金 |
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利用可能な決済方法 |
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その他の機能 |
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StripeとAdyenの主な機能
StripeとAdyenは、ともに顧客からの支払いの受け取り、収益の管理などに役立つさまざまな機能を提供する人気の高い決済プラットフォーム。まずは、それぞれの主な機能を見ていきましょう。
Stripeの機能
Stripeは、グローバルにサービスを展開しており、さまざまな通貨に対応していることで知られています。
サブスクリプション型の決済も柔軟に設定・管理することができ、すぐに使える決済ページを要件に応じて編集し、買い物客の決済体験を向上させることも可能です。
また、請求書の発行ツール(Stripe Invoicing)と継続請求機能も組み込まれているため、経理担当者の負担も軽減されます。
他にもStripe Terminalで対面での支払い受け取り、Stripe Atlasでスタートアップの会社設立をサポート。また、不正使用行為を検出するStripe Radar、企業が瞬時に収益にアクセスできるStripe Instant Payoutsなど、便利な機能が満載です。
加えて、寄付の受け取りや高度な自動レポート、また数百にのぼる外部サービスとの統合も。
Adyenの特徴
Adyenも負けず劣らず数多くの通貨に対応し、グローバルな決済を支援。特にヨーロッパで利用されている決済方法を幅広くサポートしています。
容易なセットアップで、クロスチャネル販売向けのオムニチャネル決済に重点を置いています。
サブスクリプション決済や、割引やプロモーションの適用なども可能です。
独自に決済フローを作成することができ、さまざまな販売チャネルに組み込んで、すぐに支払いを受け取ることができます。
不正利用検知機能やスマート認証で、取引の安全性も確保。収益最適化や高度な分析ツールは、データ駆動型の意思決定に役立ちます。
また、100社以上のパートナーとの統合も可能です。
なお、すぐにアカウントを作成できるStripeとは異なり、アカウント登録には申請が必要になります。
StripeとAdyenの市場シェア
一般的には、AdyenよりもStripeの方が広く知られています。
評価額を比較すると、Stripeのシェアが20%であるのに対し、Adyenは11%とやや遅れをとっています。
東ヨーロッパ、南アジア、南米ではAdyen、西ヨーロッパ、北米ではStripeのシェアが高い傾向にあります。
セットアップと使いやすさ
ECサイトへの支払いゲートウェイの設定は、オンライン決済を受け入れる上で重要なステップ。どちらも比較的使用しやすいサービスですが、具体的な用途によって複雑になる可能性も。
Stripeはオンボーディングが容易で、登録手数料は無料です。
操作性については、ビジネスモデルによって異なります。基本的なストアであれば問題ありませんが、複雑なオンラインストアになれば、課金の仕組みも複雑化していきます。
Stripeには、開発の知識がないユーザー向けにデザイン済みの決済ページが用意されていますが、開発者であれば、高度にカスタマイズ可能です。また、Stripe Elementsを利用すれば、認証手段を使ってリアルタイムで決済を行うページを簡単に設定することができます。設定方法は、JavaScriptのコードを貼り付けるだけ。WordPressサイトの場合は、プラグインのインストールが必要です。
また、直感的な管理画面も魅力で、入金の追跡やレポートの作成も簡単。ツールとの統合も容易で、ワークフローの改善や分析の強化に有用です。
Adyenも登録手数料が無料で、初期費用はかかりませんが、アカウントの申請手続きはやや手間がかかります。審査の後、テストアカウントで機能を確認した上で、アカウントの申し込みに移ります。自分でアカウントを作成できず、営業担当者とのやり取りが必要になるため、中小企業には不向きかもしれません。
しかし、Adyenの管理画面は非常に使いやすく、決済プロセスのカスタマイズも簡単です。さらに、サードパーティサービスとの統合により、複数のプラットフォームへの導入も容易です。
料金体系(取引手数料や初期費用など)
決済プラットフォーム選ぶ際には、もちろん料金体系も気になるところ。
StripeとAdyenは、月額料金がかからない従量制の価格設定で、任意でPOS(Point of Sale)端末も利用できます。
以下の表で、両者の料金体系をまとめてみます。
Stripe | Adyen | |
初期費用 |
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月額費用 |
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取引手数料 |
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国際取引手数料 |
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通貨換算 |
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POS端末 |
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異議申し立てとチャージバック手数料
チャージバックや異議申し立てへの対応は、リスクマネジメントの一環です。
Stripeの場合、チャージバックまたは異議申し立て1件につき15ドル、Adyenの場合は、チャージバック1件につき5~100ドルが発生します。
両者とも、チャージバック保証(Stripe)やRevenueProtect(Adyen)などの異議申し立ての管理を効率化する追加機能を提供しています。
返金手数料
返金処理に関しては、どちらのサービスにも全額返金および一部返金オプションがあります。
Stripeでは、返金分の資金をStripe上、または銀行口座から引き落とすことができますが、処理手数料は戻りません。また、銀行によっては返金処理の手数料が発生することもあります。
Adyenの返金手数料は、1件あたり0.20ドルからの変動制を採用しており、自動返金用の資金(Refund Reverse)を確保しておくことができます。これによって返金処理が効率化されるため、顧客体験が向上されます。
サブスクリプション決済
定期課金(サブスクリプション決済)もまた、多くのビジネス、特にサブスクリプション型の料金プランを設けている企業にとっては、不可欠な機能。この点については、両者ともに十分な機能が組み込まれていますが、コスト構造はやや異なります。
Stripeのサブスクリプションとインボイス機能Stripeでは、Stripe Billingを利用すれば、決済に対して月次、四半期、年次の請求書を自動送信することができます。また、単発の請求書も同様に送信可能です。
Stripeの場合、100万ドル以上のサブスクリプション決済に対して、0.5%の手数料が発生し、請求書の自動照合は一律7ドルから。より複雑な決済が必要になる企業向けにも、柔軟な価格設定が用意されています。
Adyenは、追加費用なしで継続課金を設定することができ、個々の取引と同額の手数料で利用できます。このため、シンプルなソリューションを求めている企業にとっては、使いやすく費用対効果の高い選択肢です。また、顧客に月次、四半期、年次の請求書も送信可能です。
利用可能な決済方法
StripeとAdyenのどちらも、さまざまな決済方法に対応しています。
Stripeは、主要デビットカードやクレジットカードはもちろん、Apple PayやGoogle Payなどのデジタルウォレットでの決済に対応。
また、口座振替、銀行振込、リダイレクトでの支払い受け取りも可能です。
KlarnaやClearpayなどの後払い決済や、OXXO(メキシコの主要コンビニエンスストア)やBoleto(ブラジルの決済方法)なども。
より多く支払い方法を顧客に提供するために、Stripe Sources(Sources API)を利用することもできます。
一方のAdyenは、アメリカン・エキスプレスを含む主要クレジットカードとデビットカード、また口座振替、銀行振込振込、電子決済も受付可能です。
主にアジアで利用されているWeChatペイなどを含む、デジタルウォレットにも対応。
また、GrabPayやAtomeなどの後払い決済と、店頭での現金支払いも受け付け可能です。
Stripe同様、各種バウチャーやプリペイドカードなどのサポートに加えて、TWINTやVippsなどのモバイル決済にも対応しています。
利用可能な国と通貨
Stripeは、英国や米国を含む全47カ国で利用可能。ほとんどが西ヨーロッパと北米に集中していますが、APAC(アジア太平洋)地域の一部にも普及しています。また、通貨に関してはほとんどの種類をサポートしており、世界中の企業が利用できます。
対するAdyenは、ヨーロッパの33カ国に加え、日本、ブラジル、カナダ、メキシコ、プエルトリコ、米国、UAEなどで利用可能です。また、36種類の通貨に対応しており、世界のあらゆる地域から支払いを受け付けることができます。
カスタマーサポート
どちらのプラットフォームでも、契約するプランによって利用できるサポートが異なります。
Stripeでは、24時間年中無休で電話、メール、チャットによるカスタマーサポートを無料で利用可能(すべて日本語対応あり)。加えて、開発者向けのリソースも閲覧できます。
また、テクニカルサポートも3種類のプランで展開されており、ベーシックなものには、24時間年中無休のメール、電話、チャットサポートに加えて、優先サポート、営業担当者への直接問い合わせなどが含まれます。他2つのプランは、プレミアムおよびエンタープライズアカウント向けに、テクニカルリソース、リアルタイム監視と警告、専用サポートチャネルなどを含むより高度なサポートを提供しています。
さらに、Discordやその他のフォーラムに開発者コミュニティもあります。
TrustPilotでは、Stripeのチャットサポートは「簡単な問題であれば迅速かつ親切に対応してくれる」と評価されていますが、複雑な問題になると、解決に数ヶ月かかることもあり、迅速な対応を必要とする企業にはやや懸念が残ります。
一方、Adyenはトレーニングを受けたエンジニアによる24時間無休の電話サポートを利用することができます(日本語未対応)。また、無料の知識ベースや開発者向けドキュメントライブラリも無料で閲覧可能です。
Adyenのカスタマーサポートは、厄介な問題に対しても柔軟に解決策を提供してくれることで定評があります。しかし、TrustPilotでは会社の成長と共にメールサポートの返信が遅くなってきているとの声も。
StripeとAdyenどちらを利用するにせよ、サポートの質は、扱う問題や契約プランによって変動すると言えます。
決済体験
今日のデジタル社会において、顧客にシームレスで安全な決済体験を提供することは不可欠。どちらのサービスも、オンラインおよび対面での取引に対応する堅牢な決済機能を持っています。
Stripeには、用途や要件によってカスタマイズ可能な、構築済みのホスト型決済ページがあり、レスポンシブデザイン、多言語対応、税金徴収、ブランディング、独自ドメイン、割引設定などの機能が組み込まれています。
決済ページは、専門知識がないユーザーでも簡単にセットアップできるよう、すでにデザインされており、必要に応じてAPIを使って、独自に編集することも可能です。決済ページは、サイトに組み込むことができるため、買い物客はサイトを離れることなく支払いを済ませることができます。
また、Stripe Terminalで、実店舗での対面取引を受け付けることも。これによって、オンラインと実店舗両方での決済処理をシームレスに統合できます。
Adyenにもすぐに利用できるデザインされた決済ページがあり、任意でカスタマイズも可能です。決済ロジックの作成やブランディングも可能で、ウェブサイト、アプリ、オンラインマーケットプレイスなど、さまざまな販売プラットフォームへの導入が可能です。
AdyenのmPOSソリューションで店頭での決済処理もでき、モバイル端末から簡単に支払いを受け取ることができます。また、カード、デジタルウォレットなど、さまざまな決済方法もサポート。
外部サービスとの統合
StripeとAdyenのどちらもさまざまなツールと統合可能で、容易に機能を強化することができます。
Stripeのパートナーディレクトリには、ECサイトから接客業、会計まで、さまざまな用途に有用な数百のサービスが掲載されています。BigCommerceやAdobe Commerceなどの人気ECプラットフォームもあります。
さらに、HubSpot、Xero、BookNowなど、組織全体のワークフローと事業運営を強化する統合機能もあります。
対するAydenも数百のサービスと提携しており、あらゆる統合を実現します。
Stripe同様、Omnichat、WooCommerce、Salesforce B2B、BigCommerceなどのECプラットフォームとの統合もあり。加えて、Chargebee、Aptos、Oracle Hospitality、DrivenCXなどを利用して、会計、顧客サポート、顧客体験などの内部プロセスを合理化することも可能です。
この点については、両者互角と言えるでしょう。どちらの方が適しているかは、ビジネスの要件と現在使用しているツールによって決まります。
セキュリティ
StripeとAdyenは、どちらも決済代行サービスとして、最高レベルのセキュリティの確保を重視しています。
Stripeは、PCI DSSのレベル1に準拠し、決済セキュリティに関する最も厳しい基準をクリア。TLS(SSL)を使用してすべてのサービスにHTTPSリダイレクトを採用しており、支払い情報はAES-256で暗号化されます。
また、Stripeの決済情報は別のホスティング環境で暗号化されるため、さらなる安全性が保証されます。
AydenもPCI DSS v3.2に準拠し、トップクラスの決済セキュリティを実現します。決済端末にはエンドツーエンド暗号化(E2EE)を採用して、決済情報を暗号化。銀行承認が行われる際には、プラットフォーム上で復号されます。
また、PCI P2PE認定の決済ソリューションを使用しており、決済情報のPAN(プライマリアカウント番号)とトラックデータも暗号化されます。さらに、独自のリスクマネジメントシステム「RevenueProtect」によって、不正行為の検出と軽減、異議申し立てやチャージバックの処理も可能です。
ドキュメント
両者とも、ウェブサイトやアプリケーションへの導入・設定に役立つ開発者向けドキュメントを公開しています。
Stripeのドキュメントは製品ごとに分かれているためわかりやすく、必要な情報を探しやすいのが魅力です。
また、Stripe APIを使って決済プロセスを構築する開発者向けに、解説記事やリファレンスも豊富に揃っています。
Adyenの開発者向けドキュメントも機能や特徴ごとに情報が整理されており、なおかつ包括的な内容になっています。利用開始方法から、代金の回収、レポート作成まで、そして管理画面やアカウントの使い方に関する情報も詳細に掲載されています。
また、セキュリティ、統合、認証に関するリソースもあり、安全かつ合理的な決済プロセスの構築に役立ちます。
メリットとデメリット
ここまでで、StripeとAdyenには、どちらにもさまざまな機能が豊富に揃っていることがお分かりになったはず。Stripeは使いやすいプラットフォームと高速な決済処理、Adyenはシームレスなオムニチャネル決済統合で知られています。
Stripeのメリットとデメリット
Stripeは、あらゆる規模のビジネスに支持されており、高速な決済処理と豊富なカスタマイズ機能が特徴です。その一方で、チャージバック手数料が高額、PayPalのサポートに制限があるなどのデメリットも。
メリット
- あらゆる規模のビジネスを考慮した3種類のサポートプラン
- 買い物客のユーザー体験を高める高速な決済処理
- 47カ国対応
- 35種類の決済方法と135種類以上の通貨をサポート
- シンプルなオンボーディング
- 直感的なインターフェースと使いやすいデザイン済み決済ページ
- 簡単な継続課金設定と請求書の発行
- 高度な編集が可能な決済ページと開発者向けドキュメント
- 決済ワークフローを最適化する数百のサービスとの統合
- Stripe Instant Payoutsによる即時決済
- Stripe Radarによる不正行為の検知
- 最高レベルの安全性と安定性
- 高度なレポート作成ツール
デメリット
- 決済完了までにかかる時間は決済方法によって異なり、最大6日かかることも
- 決済ページのカスタマイズには開発者が必要
- PayPalが利用できない
- 技術サポートの利用が有料
- チャージバック手数料が高額
Adyenのメリットとデメリット
Adyenは、オンラインストア、実店舗、アプリの決済を統合するオムニチャネル決済プラットフォーム。さまざまな決済方法のサポートと高度なセキュリティが強みです。しかし、その料金体系はやや複雑で、毎月の最低取引額が高めに設定されているのが難点と言えます。
メリット
- オンラインとオフラインの決済を一元的につなぐ、シームレスなオムニチャネル決済
- ヨーロッパやアジアで利用されている決済方法を多数サポート
- オンラインストア、実店舗、アプリの各決済チャネルを通じた支払いの受け取りが容易
- 月額費用や初期費用が不要
- 本契約までに機能を試すことができるテストアカウントあり
- 機能が充実したmPOS端末
- 24時間年中無休で利用できる技術サポート
- 編集可能な管理画面と決済プロセス
- 高度な暗号化とRevenueProtectによる最高クラスのセキュリティと不正検知
デメリット
- 変動制の価格設定がややわかりにくい
- 毎月の最低取引額は120ドル
- アカウント登録の申請手続きに手間がかかる
- 自分でアカウントを作成できない
まとめ
StripeとAdyenは、どちらもオンラインストアと実店舗の両方に導入可能な決済プラットフォームです。
Stripeはあらゆる規模のストアに適していますが、特に北米やヨーロッパの小規模ビジネスやスタートアップ向きで、簡単なオンボード、コーディング不要、そして事業を強化する各種ツールが揃っています。
高度なカスタマイズには開発者の手が必要になりますが、手数料は一律でわかりやすく、セキュリティも万全なので安心です。
一方のAdyenは、あらゆる決済方法のサポート、mPOS端末、優れたカスタマーサポートが特徴で、対面およびオンライン決済を扱う大規模なビジネスにおすすめです。
ワークフローを合理化するための統合機能も充実していますが、アカウントの申請手続きにやや手間がかかる点、そして料金体系がやや複雑な点には注意が必要です。
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