オンラインストアのデータを保持したまま、WooCommerceをダウングレードする方法をお探しですか?
例えば、WooCommerceの最新バージョンをインストールして、サイトに何かしらの問題が発生した場合には、素早くストアを復旧できる短期的な解決策が必要です。
WooCommerceをダウングレードして、バージョン更新前の状態に戻すのは、そんな解決策の1つ。
この記事では、WooCommerceのバージョンをダウングレードする3つの方法と、その最中に起こりうる問題を回避するヒントと注意事項を見ていきます。
WooCommerceのダウングレードが必要になる事例
WooCommerceのダウングレードが必要になる状況としては、WooCommerceのコアプラグイン自体、または拡張機能(WooCommerceプラグインやテーマなど)のいずれかに互換性の問題が生じた場合です。
WooCommerceは、新バージョンのリリース毎に徹底したテストが行われていますが、非常に変数が多いことから、時折問題が発生することがあります(余談ですが、WooCommerceのログ取得設定は、この問題検出に非常に有用になります)。
WooCommerce 3.0では、商品の画像ギャラリーに問題が発生し、多くのオンラインストアが、修正版のリリースまで旧バージョンへのダウングレードを余儀なくされました。
ただし、WooCommerceを前のバージョンに戻すことは、あくまで一時的な解決策です。
古くなったバージョンを長期間使用すると、セキュリティやパフォーマンスの問題が発生する恐れがあります。後者については、Kinsta APMのような監視ツールでパフォーマンスをデバッグする際に検出されることがあります。また、Query Monitor、MyKinstaの分析機能、またはPHPテストツールなどを使って問題を検出することも可能です。
WooCommerceのダウングレードは、長期的に問題を解決するまでの間、応急処置としてストアを通常通りに運営するのに便利です。
長期的な問題解決の一般的な方法としては、WooCommerceの開発チームによって既知のバグが修正されることが挙げられます。あるいは、追加したコードを修正したり、問題の原因となっている拡張機能を別のものに切り替えたり、ユーザー側で何かしらの作業が必要になる可能性もあります。
ダウングレードの事前準備
WooCommerceをダウングレードする際に問題が生じない様、事前にいくつか準備を行っておきましょう。
1. バックアップを作成する
ストアに変更を加える前に、サイトをバックアップしておいてください。バックアップがあれば、問題が起こっても(可能な限り)安全に特定の状態を復元することができます。
KinstaでWooCommerceストアを運営している場合は、自動的に毎日バックアップが行われます。とは言え、自動バックアップ後に顧客や注文情報が更新されている可能性もあるため、念のために最新のバックアップを作成しておくことをお勧めします。
必要に応じて、WordPressをバックアップする方法とWordPressのバックアップを復元する方法についての解説を参照してください。
2. ステージングサイトを使用する
ステージングサイトとは、隔離された安全なサンドボックス(仮想環境)上に存在する本番サイトの複製。本番のWooCommerceサイトに影響を与えることなく、サイトの変更をテストすることができます。
可能であれば、本番サイトでダウングレードを行う前に、ステージングサイトでダウングレードのテストを行ってください。
これによって、WooCommerce固有のデータベースのエラーなど、あらゆる問題を見つけることができます。
Kinstaを利用している場合は、MyKinstaでWooCommerceのステージングサイトを簡単に作成することができます。ステージング環境は、すべてのプランで無料で利用でき、高度な柔軟性が必要な場合には、アドオンでプレミアムステージング環境を追加することも可能です。
Kinstaを利用していない場合、ステージングサイトの作成方法についてはこちらをご覧ください。
3. WooCommerceデータベースの変更を確認する
WooCommerceを含め、WordPressプラグインのダウングレードに関する懸念点として、プラグインを更新すると、WordPressデータベースにも変更が生じます。
WooCommerceのバージョンを更新すると、以下のようなメッセージが表示されます。
更新後すぐにダウングレードを行い、データベースが更新されていなかった(あるいはまだデータベースの更新を実行していない)場合は、特に問題ありません。
しかし、すでにデータベースを更新しており、更新前のデータベースが必要になるWooCommerceバージョンにダウングレードしようとしている場合には、問題が発生する可能性があります。
したがって、本番サイトでダウングレードを実行する前に、サイトのバックアップを取り、ステージングサイトでテストを行うことが大切です。
4. WooCommerce拡張機能の互換性の問題を確認する
最後に、WooCommerceテーマと他のWooCommerceプラグインの互換性を考慮する必要があります。
例えば、最新バージョンでしか対応していないウィッシュリストプラグインをインストールしている場合は、ダウングレードすると、プラグインに問題が生じることがあります。
このような互換性の問題についても、ステージングサイトを使用すれば、本番サイトに変更を加える前に問題を検出することができます。
WooCommerceのバージョンをダウングレードするには(3つの方法)
それでは、WooCommerceのバージョンを前に戻す3つの方法を見ていきましょう。それぞれ手順を踏んでご説明していきます。
目的自体は同じなので、お好きな方法をお選びいただいて構いませんが、基本的には、最初にご紹介する方法をお勧めします。
また、繰り返しとなりますが、WooCommerceストアのバックアップを取ってから、ステージング環境で実行してください。
もちろん、これからご紹介するのは安全な方法ですが、WooCommerceは、時折バージョン間でのデータベース更新が行われ、不具合が生じる可能性があることを踏まえれば、用心に越したことはありません。
1. WordPress管理画面から旧バージョンのWooCommerceをダウンロードしてインストールする
最近のWordPressコアの更新以降、WordPressの管理画面からプラグインの任意のバージョンを選択して再インストールすることができるようになっています。
FTPを使用する必要がないため、これがWooCommerceをダウングレードする最も簡単な方法です(FTPを使用した方法は次にご説明します)。
以下、順を追って見ていきましょう。
WordPress.orgから使用したいWooCommerceバージョンをダウンロード
まず、WordPress.orgのWooCommerceプラグインページで詳細を表示します。
こちらからアクセスするか、WooCommerceのプラグインページに移動して「詳細を表示(Advanced View)」をクリックしてください。
「上級者向け設定」までスクロールし、「開発バージョン」のドロップダウンを開きます。
ダウングレードしたいWooCommerceバージョンを選択して、「ダウンロード」をクリックすると、ZIPファイルがコンピュータにダウンロードされます。
旧バージョンのダウンロードについて詳しくはこちらをご覧ください。
WordPress管理画面に旧バージョンをインストール
ZIPファイルを使って他のプラグインをインストールするのと同様に、WordPress管理画面から、旧バージョンをインストールします。
- WordPress管理画面で「プラグイン」>「新規追加」に進みます
- 「プラグインのアップロード」ボタンをクリックします
- 「ファイルを選択」をクリックし、先ほどダウンロードしたWooCommerce旧バージョンのZIPファイルを選択してください
- 「今すぐインストール」クリックします
すると、確認画面に移ります。
バージョン番号に間違いがないことを確認して、「アップロードしたもので現在のものを置き換える」ボタンをクリックしてください。
「プラグインの更新に成功しました」というメッセージが表示されたら、WooCommerceのダウングレードが完了です。
2. FTPを使用して旧バージョンをアップロードする
もう1つの方法として、FTPでサーバーに接続してWooCommerceのダウングレードを行うことも可能です。
WordPress管理画面でプラグインをダウングレードできるようになるまでは、これがWooCommerceを前のバージョンに戻す唯一の方法でした。
現在では、先ほどご紹介した方法でダウングレードできるため、あえてFTPを使用した複雑な手順を踏む必要はありません。
なお、この方法では、数分間サイトがダウンする可能性があるため、作業中はWordPressのメンテナンスモードを有効にしておくことをお勧めします。
手順は以下の通りです。
WordPress.orgから使用したいWooCommerceバージョンをダウンロード
まずは、WordPress.orgのWooCommerceプラグインページで「詳細を表示(Advanced View)」をクリックして、使用したいバージョンをダウンロードします。
このステップの詳細については、先ほど上でご紹介した1つ目の方法を参照してください。
FTPでサーバーに接続
次に、FTPクライアントを使用して、FTPでWordPressサイトのサーバーに接続します。以下のスクリーンショットの例では、無料のFTPクライアント、FileZillaを使用しています。
FTPを使用してWordPressサイトに接続する詳しい方法についてはこちらをご覧ください。
既存のWooCommerceプラグインフォルダの名前を変更
FTPで接続したら、サーバー上の「wp-content/plugins」に移動します。
「woocommerce」フォルダを見つけ、「woocommerce-delete」に名前を変更してください。フォルダ名を変更することで、万が一問題が生じても、サーバー上のファイルを保持したまま、このバージョンを無効にすることができます。
無事ダウングレードが完了したら、このフォルダは削除してOKです。
なお、プラグインフォルダの名前を変更してから、使用するバージョンのアップロードが終了するまでの間は、サイトが停止するため、注意してください。
旧バージョンのWooCommerceを解凍してアップロード
最後に、WordPress.orgからダウンロードしたWooCommerceの旧バージョンをアップロードします。
以下の手順で行ってください。
- WordPress.orgからダウンロードしたZIPファイルをPCで解凍
- 解凍した「woocommerce」フォルダをPCからWordPressサーバーの「plugins」フォルダにアップロード
- アップロードの完了を待つ(インターネット接続の速度によっては、完了まで数分かかる場合があります)
アップロードが完了すると、WooCommerceのダウングレードが確認できるはずです。
WooCommerceストアが正常に動作していることを確認後、操作前に使用していたバージョンのWooCommerceが保存されている「woocommerce-delete」フォルダを削除しましょう。
3. WP Rollbackプラグインを使用する
サイトにプラグインをインストールできる場合には、無料のWP Rollbackを使ってWooCommerceのバージョンをダウングレードすることもできます。
以下の手順に従って行ってください。
- WooCommerceサイトにWP Rollbackをインストール・有効化する(WordPress.orgから無料でインストール可能)
- WordPress管理画面から「プラグイン」>「インストール済みプラグイン」に移動
- プラグイン一覧の中から、WooCommerceプラグインを見つける
- 「Rollback」をクリック
すると、ダウングレード可能なWooCommerceのバージョンが一覧で表示されます。
使用したいバージョンを選択し、画面下部にある「Rollback」をクリックしてください。
確認画面で、選択したバージョン番号が正しいことを確認したら、「Rollback」ボタンをクリックして同意します。
しばらくすると、WooCommerceのダウングレードが完了したことを伝えるメッセージ「プラグインの更新に成功しました」が表示されます。
まとめ
WooCommerceを使用していく中で、重要な機能の保持や、何かしらのエラーの長期的な解決を待つ間の応急処置として、バージョンのダウングレードが必要になることがあります。
他のWordPressプラグインと同じ様に、WooCommerceもダウングレードすることができます。
1番簡単な方法は、WordPress管理画面から旧バージョンのWooCommerceをアップロードすること。FTP、または無料のWP Rollbackプラグインを使って実行する手法もあります。
ただし、WooCommerceのデータベース更新によって、ダウングレード時に問題が生じる可能性があるため、注意が必要です。
そのため、オンラインストアのバックアップ、そして本番サイトに適用する前にステージングサイトでテストを行うことが重要です。
それでも問題が解決しない場合には、WordPressサイトを前のバージョンに戻す方法(プラグインやテーマの問題解決に)をご覧ください。