企業によるクラウドコンピューティングへの移行は驚くべき速度で進んでいます。各社が、オンプレミスだけでなく、クラウドテクノロジーによって提供されるメリットを求めるようになっています。
クラウドプロバイダーの面々は、コスト削減、スケーラビリティ、セキュリティ、ビジネス継続性の向上をこれまで以上に進めています。この傾向は今後も加速するでしょう。
現在、クラウドコンピューティング市場は、プロバイダー、テクノロジー、製品、サービスの広大なエコシステムという様相を呈しています。Gartnerは、世界のパブリッククラウドサービス市場が17%成長し、2,664億ドルに達すると予測します。
2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
クラウドビジネスプロセスサービス(BPaaS) | 41.7 | 43.7 | 46.9 | 50.2 | 53.8 |
クラウドアプリケーションインフラストラクチャサービス(PaaS) | 26.4 | 32.2 | 39.7 | 48.3 | 58.0 |
クラウドアプリケーションサービス(SaaS) | 85.7 | 99.5 | 116.0 | 133.0 | 151.1 |
クラウド管理・セキュリティサービス | 10.5 | 12.0 | 13.8 | 15.7 | 17.6 |
クラウドシステムインフラストラクチャサービス(IaaS) | 32.4 | 40.3 | 50.0 | 61.3 | 74.1 |
合計市場 | 196.7 | 227.8 | 266.4 | 308.5 | 354.6 |
世界規模のパブリッククラウドサービス収益予測(表の出典:Gartner)注:四捨五入のため合計がぴったり一致していない可能性があります。
数千のプロバイダーを押しのけて、いくつかのテクノロジー企業がクラウドコンピューティングの世界で名声を確立しています。Amazon Web Services、Google Cloud Platform、Microsoft Azureが、多くの人の頭に思い浮かぶ3つの大手でしょう。
今回は、その中でも、GoogleCloudとAzureの2つを比較したいと思います。以前の記事で、すでにGoogle CloudとAWSの比較は行なっています。
今回の記事では、クラウドテクノロジーを取り巻く複雑さを噛み砕き、可能な限り初心者の方でもわかりやすい言葉を使ってご説明します。
KinstaではGoogle Cloud Platformのみを使用していますが、これに関係なく公平な立場から意見をお伝えします。
なぜGoogle CloudとAzureなのか
クラウドへの移行を検討している場合には、クラウドサービスプロバイダーを調査することが重要です。その調査の一環として、Google CloudとMicrosoft Azureを無視することはできないでしょう。
クラウドコンピューティングが始まる前から、GoogleとMicrosoftの両方がテクノロジー分野で世界的に名の知れたリーダーとして活躍してきました。両者、さまざまな製品とサービスを提供していますが、ハードウェア・ソフトウェアの専門知識、革新、卓越性がお家芸です。これを土台として、競合他社の追随を許さないクラウドプラットフォームを構築しています。
2019年、Gartnerはそのマジッククアドラントの中で、GoogleとMicrosoftを世界中のサービスとしてのインフラ(IaaS)クラウドサービスのリーダーとして位置づけています。ちなみにこの栄誉に名を連ねたのは、他にはAmazon Web Servicesのみです。
両者は、IaaSエリアにおける「ビジョンの完全性」と「実行能力」の両方の軸で高い評価を記録し、リーダーとしての地位に輝きました。
共に成長を続けるGoogle CloudとMicrosoft Azure
IaaS、SaaS、PaaSのどのソリューションを検討している場合でも問題ありません。Google CloudとAzureは、市場をリードする何百ものクラウドプロダクトとサービスを提供しています。革新を続けており、今後さらに多くのサービスが網羅されることでしょう。
Gartnerのデータによると、GoogleとMicrosoftの両方が、IaaS市場の80%のシェアを占める、パブリッククラウドインフラストラクチャプロバイダー上位5社に名を連ねているとのことです。
両クラウドテクノロジー大手は、顧客の規模を年々拡大し続けており、2019年を通じた収益の成長が見られます。両社は、業界トップの巨大クラウドプロバイダーであるAmazon Web Servicesに肩を並べるどころか、市場シェア奪取に向けて積極的な攻めを展開しています。
2019年のGoogle Cloud Platformの収益
2019年前半、Googleは第一四半期と第二四半期の財務報告にて目覚ましい成長を示しました。総収益におけるGoogleのクラウドサービスの貢献度は明確ではありませんが、GoogleのCEOであるSundar Pichai氏は、Google Cloud Platformから年間80億ドルの収益率を達成する見通しであると報告。2018年の同じ時点での年間ランレート40億ドルから驚異的な100%の増加です。
Googleは第三四半期の財務報告で会社全体の収益に対するウォールストリートの期待には遥かに及ばなかったものの、クラウドサービスの顕著な成長については報告しています。この数字は、Googleが今度もAmazon Web Servicesに市場シェアの面で迫り続ける可能性を示唆しています。一方、AWSは、同じ期間にAWSクラウドの収益が35%増加したと報告するにとどまっています。
Pichai氏は、2019年第四四半期の決算カンファレンスコールの中でGoogleのクラウドにおける収益の継続的な成長を発表しました。
これが気になる方は、Google Cloud Platformマーケットシェアガイドで詳細をご確認ください。
2019年のMicrosoft Azureの収益
Microsoft Azureクラウドサービスの収益を見ても、(Googleの例と同じように)実際にどれだけの内訳なのか判断するのは困難です。いまだに透明性は欠如しており「インテリジェントクラウド」グループ内でAzureの収益が報告されています。また同社は「生産性とビジネスプロセス」という収益グループで、Office 365やDynamics 365などのSaaS製品を隠すかたちとなっています。
透明性はさておき、同社は2019年に目覚ましい成長を見せています。先のGoogleと同じ期間に、MicrosoftはAzureの収益が第一四半期、 第二四半期、 第三四半期、 第四四半期にわたり60%超であると発表しました。
Azureの収益が一貫して60%増加していることを鑑みると、MicrosoftもAmazon Web Servicesから市場シェアを着実に奪取していることがわかります。ただしGoogle Cloud Platformには圧倒されていることになります。
Google CloudとAzureの機能比較
Google CloudとAzureの機能を比較する作業は、困難で時間がかかります。現在、両社は100以上のクラウド製品を提供しています。比較し得る同等のサービスを提供していても分類が異なることがあり混乱しやすいものです。
ただ幸いなことに、2つのプラットフォームは非常によく似ており、Google Cloud PlatformとAzure Platformは同じカテゴリに分類されています。あなたの時間を節約しつつ、明快さを確保するために、主要なカテゴリの最も人気のある製品を徹底的に比較しました。
このセクションでは、コンピューティング、ストレージ、ネットワーキング、セキュリティなどのクラウド導入の基礎を扱います。ちなみに、Kinstaはこのすべてを利用し、最先端のスケーラブルなWordPressホスティングをクライアントの皆様に提供しています。お陰様でヨーロッパとアメリカでトップレベルの急成長を記録するWordPressホスティングサービスプロバイダーとなることができました。
それでは、本題に進みましょう。
コンピューティング
まずはコンピューティングカテゴリでは、仮想マシン(VM)に焦点を当てます。Microsoft AzureとGoogle Cloud Platformの設定を比較対照します。
両プロバイダーがVMに同様のアプローチを採用していることがわかります。VMはそもそも、クラウド環境の根幹を成し、考え得るほとんどすべての種類の顧客に関連するワークロードを担います。
各VMの命名規則は異なります。Microsoft AzureではAzure virtual machines、Google Cloud PlatformではCompute Engineとして知られています。どちらのプロバイダーも、これとは別の高レベルの用語と概念も使用しています。
比較を明確にするために、こちらをご覧ください。GoogleがAzureとCompute Engineの違いを説明しています。下の表で分類されています。
機能 | Azure | Compute Engine |
仮想マシン | 仮想マシン | 仮想マシン インスタンス |
イメージ | イメージ(「ブートディスクのみ」と「マシン全体」) | イメージ(ブートディスクのみ) |
カスタムイメージ | 一般化されたAzure仮想マシン (VM) | カスタム イメージ |
VMテンプレート | Resource Managerテンプレート | インスタンステンプレート |
自動インスタンススケーリング | Azure Autoscale | Compute Engineオートスケーラー |
サポートされているVMのインポート形式 | VHD | RAW |
デプロイメントの場所 | リージョン(Cloud Platformにおけるゾーンに相当) | ゾーン |
プリエンプティブルVM | あり | あり |
増分スナップショット | あり | あり |
AzureとGoogle Compute Engineの高度な用語の比較
VMの機能
Compute EngineとAzureのVMを見てみると、両プラットフォームが多くの同じ機能を提供していることがわかります。具体的には次のことができるようになります。
- 自動スケーリングにより、要求に応じてVMインスタンスをデプロイ、終了する
- VMにさまざまな使用可能なオペレーティングシステムをインストールする
- ブートディスクイメージを使用してVMインスタンスを作成する
- 制限なしにVMインスタンスを管理する
- 識別しやすいようにVMにタグを付ける
VMのアクセス
VMのアクセスに関しては、Google CloudとAzureの間にはいくつかの重要な違いがあります。使用するマシンのタイプによって異なります。
Linuxマシンの場合、SSHベースでのマシンアクセスに違いがあります。Compute Engineでは、VMインスタンスがすでに実行されている場合でも、必要なときにSSHキーを作成できます。このプラットフォームは、ブラウザからのSSHもサポートしているため、ウェブブラウザを介してVMに直接アクセスでき、ローカルマシンにキーを保存する必要がありません。
一方Azureでは、SSHブラウザアクセスはありません。SSHベースのアクセスが必要な場合は、独自のキーを含める必要があります。
Windowsマシンの場合には、どちらのプラットフォームを使ってもアクセスは同様です。Compute EngineとAzureはどちらも、リモートデスクトッププロトコル(RDP)やWindowsリモート管理などの標準チャネルを介したVMへのアクセスをサポートしています。
VMの種類
GoogleとMicrosoftはどちらも、様々な構成でデプロイできる数百のマシンタイプを提供しています。VMリソースを必要に応じて拡張し、CPU数とRAMのGBを極端なハイエンド仕様にまで増やすことができます。それぞれの上限については以下の通りです。
- Google Compute EngineのVM:最大416個の仮想CPUと11,776 GBのRAMにスケーリング可能
- Microsoft AzureのVM:最大416個の仮想CPUと11,400GBのRAMにスケーリング可能
どちらのプラットフォームも、リソースの選択を便利にするように、マシンタイプについて同じ分類を用いています。必要に応じて、共有コア、汎用、メモリ最適化、コンピューティング最適化、ストレージ最適化、GPU、ハイパフォーマンスカテゴリからマシンタイプを選択できます。
次の表は、両サービスの最新のマシンタイプをまとめたものです。
マシンタイプ | Azure | Compute Engine |
共有コア | 該当なし | f1-micro – g1-small e2-micro – e2-medium |
汎用 | A1 v2 – A8 v2 B1LS – B20MS D2a v4 – D96a v4 D2as v4 – D96as v4 D2 v3 – D64 v3 D2s v3 – D64s v3 D1-5 v2 – D5 v2 DS1-5 v2 – DS5 v2 |
n1-standard-1 – n1-standard-96 n1-highmem-2 – n1-highmem-96 n1-highcpu-2 – n1-highcpu-96 n2-standard-2 – n2-standard-80 n2-highmem-2 – n2-highmem-80 n2-highcpu-2 – n2-highcpu-80 e2-standard-2 – e2-standard-16 e2-highmem-2 – e2-highmem-16 e2-highcpu-2 – e1-highcpu-16 |
メモリ最適化 | E2 v3 – E64 v 3 E2a v4 – E96 v4 E2as v4 – E96as v4 E2s v3 – E64s v3 D11 v2 – D15 v2 DS11 v2 – DS15 v2 G1 – G5 Gs1 – Gs5 M8ms – M128ms M208s v2 – M416ms v2 S96 – S576m |
m1-ultramem-40 – m1-ultramem-160 m2-ultramem-208 – m2-ultramem-416 |
コンピューティング最適化 | F2s v2 – F72s v2 F1 – F16F1s – F16s |
c2-standard-4 – c2-standard-60 |
ストレージ最適化 | L8s v2 – L80s v2 L4s – L32s |
該当なし |
GPU | NC6 – NC24 NC6 Promo – NC24r Promo NC6s v2 – NC24s v2 NC6s v3 – NC24s v3 NV6 Promo – NV24 Promo NV12s v3 – NV48s v3 ND6s – ND24s ND40rs v2 |
NVIDIA® Tesla® T4 – NVIDIA® Tesla® K80 NVIDIA® Tesla® T4 Virtual Workstation – NVIDIA® Tesla® P100 Virtual Workstation |
ハイパフォーマンス | H8 – H16mH8 Promo – H16mr Promo | 該当なし |
カスタムVMリソース構成 | なし | あり |
注:AzureとCompute Engineは定期的に新しいVMタイプを追加しています。各サービスの一覧については、Azure Linux仮想マシン、Azure Windows仮想マシン、Compute Engineマシンタイプをご覧ください。
ネットワーキング
Google CloudとAzureは、パートナーと共同で独自のネットワークインフラストラクチャを利用・拡張し、地球規模で展開されたデータセンターを相互に接続しています。野心的な拡張計画のもと、仮想マシン、他のクラウドサービス、オンプレミスサーバー間での高速接続を可能にする最先端のネットワーキングサービスを提供しています。
このセクションでは、GoogleとMicrosoftが提供するコアネットワーキングプロダクトと、その可用性とレイテンシについて簡単に説明します。
プロダクト | Google Cloud Platform | Microsoft Azure |
CDN | Google Cloud CDN | Azure CDN |
専用の相互接続 | Cloud InterconnectCDN Interconnect | ExpressRoute |
DNS | Cloud DNS | Azure DNS |
ロードバランシング | Cloud Load Balancing | Azure Load Balancer |
仮想ネットワーク | Virtual Private Cloud | Azure VNet |
サービス層 | Network Service Tiers | N/A |
Google CloudとAzureの同等のクラウドネットワーキングプロダクトの比較(表の参照元: Google)
ロケーション
Google CloudとAzureはそれぞれ、複数の国、場所、リージョンにまたがるデータセンターのグローバルネットワークを誇ります。各々に固有の、冗長性・フォールトトレランス・低レイテンシに便利なゾーンがあります。Azureのリージョンの方がより範囲が広い一方で、Google Cloudはより多くのロケーション数を誇ります。
Google Cloudのネットワークロケーションは現在、22のリージョン、64のゾーン、200以上の国で利用できます。最近、ソウルやソルトレイクシティなどの新しいリージョンが追加されました。
MicrosoftのAzureでのネットワークロケーションについては、現在、58のリージョンと140のゾーンが利用できます。
CDN
GoogleとAzureはどちらも同様のコンテンツデリバリネットワーク(CDN)を提供しており、読み込み時間の短縮、帯域幅の節約、アプリケーション、ウェブサイト、サービスの応答速度の向上に役立ちます。
Google Cloud CDN、そして、Azure CDNと名付けられたプラットフォームは、それぞれのネイティブプラットフォームと緊密に統合し、高度なロギングとモニタリングを可能にします。また、分散型サービス拒否(DDoS)攻撃に対する回復のために設計されたセキュリティソリューションも数多く用意されています。
専用の相互接続
時にオンプレミスからクラウドへのVPNが特定のワークロードに必要な速度やセキュリティを確保できないこともあります。そんな場合には、AzureやGoogleを利用し、容量の保証された高速ネットワーク回線をリースすることができます。どちらのプラットフォームも以下のように幅広いサービスを提供しています。
キャリアピアリング
キャリアピアリングは、サードパーティプロバイダーを介した(そこから回線をリース)クラウドプロバイダーへの専用相互接続の一種です。AzureのサービスはExpressRouteで、GoogleはCloud Interconnectです。
両プロバイダーの接続速度は最大100 Gbpsです。Cloud Interconnectのプロバイダーが24であるのに対して、Express Routeは102という幅広い選択肢を誇ります。Express Routeはプライベート専用回線も提供していますが、Cloud Interconnectの回線はパブリックネットワークを使用しています。
ダイレクトピアリング
ダイレクトピアリングは、Azureにはなく、現在Googleが提供しているサービスです。このサービスでは、仲介業者なしで、利用者のビジネスネットワークとGoogleのエッジネットワークを直接接続できます。Googleのサービスに直接接続し、高スループットのクラウドトラフィックの交換を可能にします。これは、33か国、100を超えるロケーションで利用できます。
コンテンツデリバリネットワーク(CDN)ピアリング
GoogleはCDNピアリングも提供しています。Googleのネットワークエッジロケーションを使用して、クラウド内のリソースとCDNプロバイダーを直接接続できるというものです。Googleは、CDN相互接続サービスを通じ、いくつかのCDNプロバイダー について、これをサポートしています。繰り返しになりますが、現在、AzureはCDNピアリングを提供していません。ただしAzure CDNサービス内でAkamaiとVerizon CDNの専用接続をサポートしています。
DNS
DNSサービスは、人間が読むことのできるドメイン名を、サーバーが相互に通信するために使用するIPアドレスに変換します。
Google CloudとAzureはどちらも、それぞれ Azure DNS、Cloud DNSという名前の、クラウドで拡張できるマネージドDNSサービスを提供しています。機能はほぼ同じですが、どちらも最も一般的なDNSレコードタイプとエニーキャストでの配信をサポート。最近では、GoogleはDNSSECをサポートするように機能を拡大しています。ちなみに、Azure DNSはまだこれを採用していません。
ロードバランシング
Google CloudとAzureはそれぞれ、トラフィックを複数のインスタンスに分散するロードバランシングサービスを提供しています。これは可用性とフォールトトレランスの向上を目的としたものです。さまざまな負荷分散タイプを使用したそれぞれの提供方法を見てみましょう。
HTTP(S)ロードバランシング
AzureとGoogleはL7ロードバランシングを提供しています。アプリケーションレイヤーでクライアントからのリクエストを分散し、L4ロードバランシングよりも高度なルーティングを実現します。
TCP/UDPロードバランシング
どちらのプラットフォームも、L4のロードバランシングもサポートしており、リージョン内、ネットワークトランスポート層でクライアントからのリクエストを分散します。
SSLロードバランシング
どちらのプロバイダーもSSLロードバランシングをサポートしており、サービスとの間でやり取りされるデータの暗号化と復号を行います。
仮想ネットワーク
AzureとGoogle Cloudの両方で、隔離されたセキュアな仮想ネットワークを作成できます。各プラットフォームには、複数のネットワーク(これをさらに小さなサブネットワークに分割可能)をデプロイできる機能があります。そしてこの仮想ネットワークにデプロイされたVMは、追加の構成なしで複数のサブネット間での通信が行えます。
Azureが提供するのはAzure VNetで、リージョン毎限定のサービスです。GoogleのサービスはVirtual Private Cloud(VPC)で、グローバルリソースです。Google VPCを詳しく見ると、Azureにはないいくつかの機能があることがわかります。例えば共有ネットワークなど。これにより、管理者は複数のプロジェクトに単一の共有仮想ネットワークとそれに対応するリソースの使用許可を与えられます。
サービス層
Google Cloud Platformは、プロダクトの一部としてNetwork Service Tiersを用意。パフォーマンスと価格でネットワークを最適化できます。Googleは、階層型クラウドネットワークサービスを導入した最初の大手パブリッククラウドプロバイダーです。現在のところ、Microsoft Azureにはこれと比較できるオプションがありません。
Googleでは、プレミアム階層とスタンダード階層を選択できます。プレミアム階層を選択すると、Googleの高性能、低レイテンシ、信頼性の高いグローバルネットワークにアクセスできます。このサービスでは、ホップ数が最も少ない最速パスを介してトラフィックをルーティングし、トランスポートを高速化してセキュリティを向上させます。加えて、グローバルロードバランシングなどの追加のネットワーキングサービスにアクセスし、グローバルSLAによる保護が適用されます。
スタンダード階層を選択すると、他のパブリッククラウドプロバイダーと同程度の低パフォーマンスのネットワークに接続します。ロードバランシングなどのネットワーキングサービスはリージョンに基づいたもので、グローバルSLAはありません。パフォーマンスを犠牲にしてもかまわない、コスト削減が優先される場合の選択肢となります。
これがサービスにもたらす違いを理解するために、 Cedexisのパフォーマンス測定を定期的にチェックして、レイテンシとスループットを比較できます。以下の図からわかるように、プレミアム階層では現在、スタンダード階層に対してレイテンシがほぼ20%減少しています。
スループットを見ると、プレミアム階層ではスタンダード階層に比べてスループットが100%増加していることがわかります。
ちなみにKinsta社員一同はサービスにおけるスピードの重要性を理解しています。だからこそ、すべてのクライアントの方向けにGoogle Cloud Platformのプレミアム階層を利用しています。非常に高速な読み込み時間を確保し、tracerouteホップを最小化し、データの移動距離を短縮しています。
ストレージ
クラウドプロバイダーが利用するさまざまなストレージとディスクの種類を理解することは非常に重要です。これが、予想されるスループット(IO)、ボリューム/インスタンスあたりの最大IOP、短時間での容量拡張機能に直接影響し、結果的にパフォーマンスに大きな違いが出ます。
Google CloudとMicrosoft Azureのストレージの比較では、主なストレージオプションであるブロックストレージとオブジェクトストレージに重点を置きます。
ブロックストレージ
ブロックストレージは、本質的にはクラウドベースの仮想マシン上で実行される仮想ディスクです。Google Cloudは、永続ディスク (SSD・HDDストレージ)を用いブロックストレージを提供します。これは、Compute EngineまたはGoogle Kubernetes Engineで実行されているインスタンスに接続できます。
Microsoft Azureは、ブロックストレージソリューションをBLOBとして提供しています。これは、Azure VMで実行、Azure VHDで保存されます。
データストレージの方法を除けば、Compute Engineの永続ディスクとAzure仮想ハードディスク(VHD)は非常によく似ています。それぞれにネットワークに接続されたディスクボリュームと、必要に応じてローカルディスクを接続する機能があります。
以下は、Compute Engine永続ディスクとAzure VHD間でブロックストレージがどのように比較できるのか詳しく説明したものです。
ブロックストレージ | Azure VHDs | Compute Engine 永続ディスク |
ボリュームタイプ | Standard Storage (HDD), Premium Storage (SSD) | 標準の永続ディスク(HDD)、SSD 永続ディスク |
管理方法 | 非マネージド ディスク、マネージド ディスク | スク 該当なし(プロジェクト レベルで Google Cloud により管理) |
ボリュームの接続 | 一度に 1 つのインスタンスにのみ接続可能 | 読み取り / 書き込みボリューム: 一度に 1 つのインスタンスにのみ接続可能 読み取り専用ボリューム: 複数のインスタンスに接続可能 |
最大ボリューム サイズ | 4 TiB | 64 TB |
冗長性 | ○ | ○ |
スナップショット作成 | ○ | ○ |
ディスクの暗号化 | デフォルトで暗号化 | デフォルトで暗号化 |
Azure VHDとGoogle Compute Engine永続ディスクのブロックストレージ機能を比較した表
次の表は、ローカル接続されたCompute EngineのディスクとAzureのディスクを比較したものです。
ブロックストレージ | Azure | Compute Engine |
サービス名 | ローカルSSD | ローカルSSD |
ボリュームの接続 | インスタンス | 共有されていないコア インスタンスすべてに接続可能 |
インスタンスあたりの接続ボリューム | インスタンス | 最大 8 |
ストレージ容量 | インスタンスのタイプに依存 | ボリュームあたり 375 GB |
ライブ マイグレーション | × | ○ |
冗長性 | なし | なし |
Compute EngineとAzureのローカル接続ディスクの機能を比較した表
分散オブジェクトストレージ
分散オブジェクトストレージは、データをオブジェクトとして保存する手法の一つであり、BLOBとも呼ばれます。 各オブジェクトは、データ、メタデータの量、そして固有の識別子として機能するキーで構成されます。オブジェクトストレージは、デバイスレベル、システムレベル、インターフェースレベルなど、複数のレベルで実装可能です。
Azureが提供する分散オブジェクトストレージは、 Azure Blob Storageです。一方でGoogle CloudはCloud Storageを提供しています。両者は多くの点で類似しており、一意のキーを使用してオブジェクトを識別し、オブジェクトサイズ、最終変更日、メディアタイプなどのメタデータ情報をサポートしています。どちらもカスタムメタデータフィールドの編集・追加機能があり、静的ウェブコンテンツやメディアなどのデータタイプに最もよく使用されます。
両プラットフォームは、オブジェクトの暗号化、レプリケーション、バージョン管理、ライフサイクル管理、変更通知などの追加機能をサポートしています。 アップタイムサービスレベル契約(SLA)と、その要件が満たされない場合のポリシーもあります。ポリシーと保証は、Azure Storage SLAとCloud Storage SLAで確認できます。
もちろん、サービスの提供方法にも違いがあります。下の表からは、Azure Blob StorageとGoogle Cloud Storageの機能と用語を比較することができます。
Feature | Azure Blob Storage | Cloud Storage |
デプロイユニット | コンテナー | パケット |
デプロイ識別子 | アカウント レベルの一意のキー | グローバル一意キー |
ファイル システムのエミュレーション | 制限されます | 制限されます |
オブジェクト タイプ | ブロック blob、追加 blob、ページ blob | オブジェクト |
オブジェクトのメタデータ | ○ | ○ |
オブジェクトのバージョニング | 手動、オブジェクト単位のスナップショット | バケット内のすべてのオブジェクトの自動バージョニング(有効にする必要あり) |
オブジェクトのライフサイクル管理 | 〇(ライフサイクル ルールまたは Azure Automation を使用) | 〇(ネイティブ) |
オブジェクト変更通知 | 〇(Azure Event Grids を使用) | 〇(Pub/Sub を使用) |
サービスクラス | 冗長レベル: LRS、ZRS、GRS、RA-GRS 階層: ホット、クール、アーカイブ |
Standard, Nearline, Coldline, Archive |
デプロイの範囲 | ゾーン、リージョン | Regional、Multi-Regional |
冗長性 | ○ | ○ |
Azure Blob StorageとGoogle Cloud Storageのオブジェクトストレージの機能を比較した表
Security
クラウドのセキュリティの項目では、クラウドベースのシステム、データ、インフラストラクチャを保護することになる、基盤となるテクノロジー、制御、プロセス、ポリシーに焦点を当てています。
MicrosoftとGoogleは共に、最高レベルのクラウドセキュリティを提供することで有名です。両プロバイダーは、10年以上にわたる開発の歴史を基に構築されたセキュリティモデルを進化させ続けています。
両社、高いレベルにて3つの方法でクラウドセキュリティを確保しています。
- クラウドプラットフォームのセキュリティ:クラウドプラットフォームのインフラストラクチャに組み込まれたセキュリティ策からデフォルトで保護
- クラウドプラットフォーム内のセキュリティ:アプリケーションとデータを保護するように構成することのできるセキュリティ製品とサービスをプラットフォーム内で提供
- 場所に依存しないセキュリティ:クラウドプラットフォームを超えてセキュリティ機能を拡張し、場所に関係なく資産を保護
このセクションでは、Google CloudとAzureのセキュリティ面での主要な機能のいくつかを比較します。
コンプライアンス
政府・業界両方が情報管理の規制に力を入れる中で、クラウドプラットフォームのコンプライアンスが重要視されています。GoogleとAzureはどちらも厳格なセキュリティポリシーとプロセスで、CSA STAR、GDPR、HIPPA、PCI-DSS、その他さまざまなISO基準といった、厳しいコンプライアンス要件を満たしています。
現段階では、Azureのコンプライアンスがクラウドプロバイダーの中で最高レベルであり、世界50の地域にわたり、90以上のコンプライアンス基準を満たしています。Googleのコンプライアンスも注目に値し、45のコンプライアンス基準を満たしています。
暗号化
データがクラウドにあるかどうかに関係なく、データの暗号化は重要です。データをエンコードしておけば、仮に傍受された場合でも、解読キーなしで解読することはほぼ不可能になります。
AzureとGoogle Cloudは、クラウドインフラストラクチャ内で、デフォルトにて256ビットAESを使用した暗号化をサポートしています。また、利用者独自の暗号化キーの制御もでき、保管・転送中の暗号化を可能にします。GoogleはそのサービスをCloud Key Management Serviceと呼び、MicrosoftはKey Vaultと呼んでいます。
ファイアウォール
ファイアウォールは、あらゆるインフラストラクチャのネットワーク防御における最前線。Google CloudとAzureはどちらも最先端のファイアウォールを提供し、ファイアウォールルールを介した構成から、ネットワークにアクセスできるユーザーを制御できます。
Azureはさらに、 Azure Firewall、 Azure Webアプリケーションファイアウォール、新しくリリースされたAzure Firewall Managerなどの「サービスとしてのファイアウォール」を提供しています。これらすべてがクラウドネイティブです。
Kinstaも、セキュリティの重要性を理解しています。セキュリティはアーキテクチャの土台から組み込まれており、Google Cloudプラットフォームを使用してすべてのクライアントの方向けにセキュアなWordPressホスティングを提供しています。さらに、KinstaはLinux Containers(LXC)を使用して各アカウントとWordPressサイトを完全に分離することで別のセキュリティの層を加え、これをLXDで調整しています。
Identity Access Management (IAM)
IAMシステムを使用すると、システムにアクセスできるユーザーを制御して、入り口の部分で招かれざる訪問者を阻止することができます。
どちらのプロバイダーもビルトインのIAMシステムを提供しており、GoogleにはCloud Identity and Access Management (IAM)があり、MicrosoftにはAzure Active Directoryがあります。両者は、ユーザーの役割、アクセスポリシー、多要素認証といった同様の機能を持ちます。
これによりアプリケーションとデータへのアクセス権が誰に付与されるのか、その人が何にアクセスできるのか、データに対して何ができるのか制御できます。
共有責任
クラウドのセキュリティは共有責任で実現するもの。クラウドセキュリティにおいて大事なこととして、自分が担当する責任とプロバイダーに任せる責任との線引きを理解することが挙げられます。
AzureとGoogle Cloud Platformには、誰が何をしているかを理解するのに役立つ明確な共有責任モデルがあります。以下に、各プロバイダーの共有責任を視覚的にご紹介します。
Azure
Google Cloud Platform
人材
GoogleもMicrosoftも、セキュリティ部門での継続的な雇用と拡大に多額の投資を行っています。両プロバイダーは、サイバーセキュリティセクター最高の人材の獲得と維持に努めており、これによりクラウドセキュリティサービスの継続的な進化と改善を確実のものにしています。
数字で見ると、Microsoftは3500人を超えるサイバーセキュリティのプロを誇り、Googleの550人に比べて優勢です。どちらのプロバイダーも、それぞれAzure、Googleの脆弱性報酬プログラムを通じて、幅広いサイバーセキュリティ市場の専門知識を積極的に活用しています。網羅されていないセキュリティの脆弱性を見つけた者には、100,000ドル以上の報酬が出されます。
サポートとアップタイム
サポート
クラウドサービスをデプロイするにあたって、時にガイダンスやサポートが必要になることがあるでしょう。Google CloudとAzureはどちらも、技術仕様について説明した詳細なドキュメントを公開しています。各クラウドサービスの構成、展開、維持の方法も網羅されています。
これに加えて、どちらのプロバイダーも、クラウドユーザーとエキスパートの広大なネットワークの拠点として機能するコミュニティを用意しています。チュートリアル、ディスカッション、ミートアップなど、そこでは、様々なトピックについての意見交換が行われています。
それぞれのドキュメントとコミュニティは以下のリンクをご利用ください。
いずれかのタイミングで、より詳細なプロによる助けが必要になる可能性もあります。そんな時には、クラウドプロバイダーから直接提供される公式のサポートを利用することをお勧めします。
AzureとGoogle Cloudの両方でクラウドサポートプランが利用できます。必要なサービスを手頃な価格で確実に利用できるよう、プランと料金を読んでご理解ください。
Google Cloudのサポートプラン
- Google Cloudでは、役割に基づいたサポートとプレミアムサポートという2種類のサポートプランを提供しています。
- • 役割ベースのサポートには、基本、開発、本番の3つの階層があり、ユーザーあたり無料〜月額250ドルで利用できます。
- 層が上がるにつれて、サポートタイプの追加、応答時間の高速化、コミュニケーションチャネルの増加、可用性の上昇、上の役職に就く者が問題を担当するオプションが付加されます。
- 開発と本番の役割ベースのサポートプランを組み合わせることが可能です。
- プレミアムサポートは最高レベルのサポートで、年間150,000ドル以上になり、使用するサービスに応じ、GCP/G-Suite利用の4%の追加費用が含まれます。
- プレミアムサポートには、15分の迅速な応答、専任アカウントマネージャー、トレーニング、新製品のプレビューなどが含まれます。
- サポートは完全にカスタマイズ可能でGoogle Cloud Platform Pricing Calculatorを使用してコストを見積もることができます。
- Google Cloudは、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナに及ぶ従来型サポートも提供していますが、間もなく完全廃止予定です。
Azureのサポートプラン
- Azureサポートプランには5種類、ベーシック、デベロッパー、スタンダード、プロフェッショナルダイレクト、プレミアがあります。
- ベーシック、デベロッパー、スタンダードのサポートプランは、Google Cloudの役割ベースのサポートプランに相当し、無料からユーザーあたり月額100ドルという低価格です。
- 等級が上がるごとに、サポートタイプが増え、通信チャネルが増え、応答時間が速くなり、アーキテクチャ一般のサポートが追加されるなど、サービスに厚みが出ます。
- プロフェッショナルダイレクトサポートは、役割ベースのサポートとプレミアサポートの中間に位置し、1ユーザーあたり月額1000ドルです。
- これは、根幹業務をAzureに依存している企業を対象としています。
- サポートはスタンダードよりも一歩進んでおり、1時間以内での応答、アーキテクチャサポート、運用サポート、トレーニング、専任アカウントマネージャーが特徴です。
- プレミアサポートは最高レベルのサポートです。価格はMicrosoftに問い合わせる必要があります。
- 複数のプロダクトにわたりAzureに依存する企業を対象としています。
- サポートには、15分以内の応答、カスタマイズ可能なアーキテクチャと運用サポート、オンデマンドトレーニング、専任テクニカルアカウントマネージャー、ローンチサポートが含まれます。
一流のプロによるサポートは、どのサービスにとっても重要です。
だからこそ、Kinstaのサポートチームは全員が高い熟練度を誇るWordPress・Linuxエンジニアで構成されます。 WordPressコア、オープンソースプロジェクトに活発に貢献し、プラグインの開発を行うエキスパートと話すことができます。中小企業であっても、フォーチュン500企業であっても、等しくプレミアムサポートを利用できます。当社サポートサービスは他社の追随を許しません。
アップタイム
サービスとウェブサイトのアップタイムを維持することは、ビジネスに欠かせない要素です。いかなる停止も生産性に悪影響を及ぼし、スタッフは主要なシステムにアクセスできなくなり、顧客はウェブサイトから購入できなくなってしまいます。
Google CloudもAzureもそのコアプロダクトに関するサービスレベル契約(SLA)の中で、コンピューティングやストレージなど月間99.99%のアップタイムを保証しています。ただしもちろん、完璧なプロバイダーは存在せず、ダウンタイムが発生することはあります。
障害発生時に重要なサービスステータスを追跡するには、次のダッシュボードを使用して、各クラウドプロバイダーのリアルタイムのパフォーマンスを確認できます。
原因と期間を含む過去のインシデントの追跡もできます。両プロバイダーがインシデントステータスの履歴を提供しています。
どちらのプロバイダーも高いパフォーマンスを誇り、停止の可能性は限りなく低いと言えます。数百のリージョンとロケーションにまたがるGoogle CloudとAzureのネットワークが世界各地に存在するため、両方のプロバイダーは、広範囲にわたる障害が発生した場合でも、堅牢なフェイルオーバーオプションを提供してくれます。
請求と価格
価格は、クラウドプロバイダーを比較するときに最も難しい比較項目の1つです。非常に多くの変数が介在し、さらに、すべてのプロバイダーが独自の方法で価格設定や請求を行っています。
以下に、クラウドの価格に影響を与える変数をいくつか挙げておきます。このように色々あることで、プロバイダー間の直接的な比較が難しくなります。
- 仮想マシン:インスタンスの数、CPU数、必要なRAMのGB、オペレーティングシステム
- ストレージディスク:データのタイプ、ストレージのサイズ、冗長性の要件
- 定期購読モデル:秒、分、時間、日、月、または年ごとの費用に基づいた支払い
- 支払いモデル:従量課金制、リザーブドインスタンス、または長期契約から選択
- ロケーション:データセンターの設置場所
多くのクラウドプロバイダーは、コストを簡単に計算する方法を用意しておらず、比較はさらに複雑になります。Google CloudとAzureも例外ではありません。
皆さんがそれぞれのニーズに応じてGoogle CloudとAzureを比較できるようにツール、情報、ガイダンスをご用意しました。
Google CloudとAzureの料金比較
Google CloudとAzureの製品ページからわかるように、選べるサービスは何百にもなります。各製品に独自の概要と価格設定セクションがあるため、コスト比較中に「迷子になる」可能性は大いにあります。たとえ少数のコンピューティングリソースとストレージリソースを組み合わせる場合でもです。
ただ幸いなことに、どちらのプロバイダーも価格計算ツールを提供しています。ですので、必要なクラウドリソースがわかっていれば、料金見積もりのための最初の一歩を踏み出すことができます。
また、費用を大まかに把握できる無料の比較ツールがウェブ上には多数あります。その中の1つがCloudaradoです。いくつかの基本的なクラウドリソースの要件を入力するだけで、コストの大まかな比較が可能になります。
例として、16 CPU、32 GBのRAM、そして2 TBのストレージを搭載した、Linux OSを実行する1つのVMインスタンスを選択してみました。すると、以下のように素早く費用の見積もりが生成されます。
クラウドプロバイダー | クラウドホスティングの中身 | 1ヶ月ごとの費用 |
Google Cloud | カスタムマシン32 GB RAM / 16x CPU 2 TBディスク | 421ドル |
Microsoft Azure | D16 v3 マシン 64 GB RAM / 16x vCPU 400 GB + 1.61 TBディスク | 627ドル |
この無料比較ツールはすぐに概算を知るには便利です。しかし、正確な費用を理解するには、Google CloudとAzureの計算機を使って調べる必要があります。
それでは、もう少し詳しく、両プラットフォームの価格比較をしてみましょう。コンピューティングリソースは通常、クラウドの総支出の3分の2に達するため、Google Compute EngineとAzure VMのコンピューティングコストに特に焦点を当てることにします。これはまた、他のほとんどのサービスの基盤も形成します。
クラウド料金比較の前提条件
比較対象を揃えるために、Azure VMとCompute Engineのリージョン、CPU、オペレーティングシステムを同じにしました。
- リージョン:米国東部-バージニア北部(Google:us-east4 | Azure:east-us)
- OS:Linux – Free (CentOS)
- vCPU/コア:4
インスタンス/VMタイプ全体で、同等のRAMと4つのCPUを備えたインスタンスを選択しました。
- 汎用
- コンピューティング最適化
- メモリ最適化
- GPUインスタンス/VM
以下が、選択したインスタンスを含む比較の表です。
インスタンスタイプ | Azure VM | Azure RAM (GiB) |
Compute Engine | Google RAM (GiB) |
汎用 | B4MS | 16 | n1-standard-4 | 15 |
コンピューティング最適化 | F4 | 8 | c2-standard-4 | 16 |
メモリ最適化 | E4 v3 | 16 | n1-highmem-4 | 26 |
GPU | NC6 | 56 | NVIDIA® Tesla® T4 | 64 |
従量課金制
Google CloudとAzureはどちらも従量課金モデルを提供しています。このタイプの料金モデルでは、支出を柔軟に制御できますが、結果的な費用はかさむことがあります。従量課金制は1時間あたりの料金が最も高くなります。
インスタンスタイプ | Azure VM | Azure Price (per hour) |
Compute Engine | Google Price (per hour) |
汎用 | B4MS | $0.166 | n1-standard-4 | $0.150 |
コンピューティング最適化 | F4 | $0.199 | c2-standard-4 | $0.167 |
メモリ最適化 | E4 v3 | $0.252 | n1-highmem-4 | $0.166 |
GPU | NC6 | $0.9 | NVIDIA® Tesla® T4 | $1.40 |
Compute EngineとAzureの従量課金制の時間毎の料金を示した表
上記の表からわかるように、Google Compute Engineは、Azureに比べて、汎用、コンピューティング最適化、メモリ最適化のマシンタイプの価格が最も低くなっています。
これは請求方法の違いによるものです。Azureは従量課金制のインスタンスに対して定額料金を設定しており、Googleは一定のしきい値を超えると自動的に継続利用割引を適用します。この割引額は、サービスを使用するほどスケールアップし、15%から始まり最大60%にまでなります。この割引方法がないと、Google Compute Engineは実際には1時間あたりのコストがAzureより高くなります。
興味深いことに、Google Cloudでは、プリエンプティブル仮想マシンでさらに大きな割引も提供しています。インスタンスが他のリソースに必要な際にCompute Engineがインスタンスを終了するのに問題がない場合には、さらに大きなコスト削減を享受できます。n1-standard-4プロセッサを見てみると、プリエンプティブルマシンタイプを選択した場合、1時間あたり0.15ドルから0.04ドルに75%値下がりします。プリエンプティブルマシンタイプは、Google Cloudの従量課金モデルの一部としてのみ利用できることにご注意ください。
GPUインスタンスを見ると、Azureはそのネイティブプロセッサを武器に、GPUの価格を非常に低く設定しています。Google CloudはサードパーティのNVIDIAプラットフォームを利用しGPUサービスを提供することで(継続利用割引が適用されることを差し引いても)価格を大幅に高く設定することになっています。
確約利用割引とリザーブドインスタンス
クラウドの導入を真剣に考え、長期的な利用があらかじめわかっているなら、従量課金モデルよりも大幅に節約することができます。Google CloudとAzureのどちらにも長期的な価格モデルがあり、最大1年または3年の前払いで価格を抑えられます。
確約利用と呼ばれるGoogle Cloudの長期契約モデルでは、最大75%の割引が適用されます。これはAzureのリザーブドインスタンスに相当し、こちらも同様に最大80%の大幅な割引が用意されています。
クラウドの他の項目と同じように、割引にも影響を与えるいくつかの変数があります。料金計算ツールを簡単に見てみると、インスタンスのタイプ、ロケーション、オペレーティングシステムは、その中のほんの一部にすぎないことがわかります。他にも多くの要素が介在しますので、それを深く理解し考慮するようご注意ください。
1年間契約
このことを念頭に置いて、次に、確約利用とリザーブドインスタンスによる1年間の契約が二者間の価格にどのように影響するのか比較してみましょう。
インスタンスタイプ | Azure VM | Azure Price (per hour) |
Compute Engine | Google Price (per hour) |
汎用 | B4MS | $0.0974 | n1-standard-4 | $0.1280 |
コンピューティング最適化 | F4 | $0.1248 | c2-standard-4 | $0.1407 |
メモリ最適化 | E4 v3 | $0.1564 | n1-highmem-4 | $0.1594 |
GPU | NC6 | $0.5733 | NVIDIA® Tesla® T4 | $0.88 |
Compute Engineの1年間の確約使用と、1年間のAzureのリザーブドインスタンスの時間あたりの料金
驚くべきことに、1年のリザーブドインスタンスに対してAzureが最大40%の割引を提供することで、バランスに変化が生じました。Azure VMは、汎用、コンピューティング最適化、メモリ最適化、GPUマシンタイプの4つのカテゴリすべてで、より安価なオプションとなりました。このケースでは、Google Compute Engineが最大で30%高いことがわかります。
3年間契約
比較をさらに一歩前に進め、確約利用とリザーブドインスタンスによる3年間の契約では、プラットフォーム間の価格比較にどのような影響が出るのか見てみましょう。
インスタンスタイプ | Azure VM | Azure Price (per hour) |
Compute Engine | Google Price (per hour) |
汎用 | B4MS | $0.0626 | n1-standard-4 | $0.0914 |
コンピューティング最適化 | F4 | $0.0786 | c2-standard-4 | $0.094 |
メモリ最適化 | E4 v3 | $0.1 | n1-highmem-4 | $0.1239 |
GPU | NC6 | $0.3995 | NVIDIA® Tesla® T4 | $0.64 |
Compute Engineの3年間の確約利用とAzureの3年間のリザーブドインスタンスにおける時間あたりの料金(2020年1月現在)
3年間の長期契約にしても(1年契約と同じように)どちらのプロバイダーがより安価であるかについての変化はありません。Azureでは同等の従量課金制モデルに対して最大62%の割引が適用され、Googleは39%です。依然としてCompute Engineが汎用、コンピューティング最適化、メモリ最適化、GPUの全てにおいてより高価となりました。
この3年間のケースでは、Googleのマシンタイプは、Azureのそれよりも最大46%高価という結果になりました。
無料トライアル
始めたばかりでまだ長期契約はしたくない場合、または大量のリソースが必要ない場合は、無料トライアルがいいでしょう。どちらのクラウドプロバイダーも、さまざまな製品とサービスで無料枠を提供しています。Google Cloud Platformの無料枠は、次の2つのコンポーネントで構成されています。
- 全てのGoogle Cloudサービスにアクセスできる12か月の無料試用と300ドルのクレジット(これの期限は12か月の試用期間中)
- (利用限度付きで)常に無料で一般的なGoogle Cloudリソースを利用できる
当然、無料利用枠にはさまざまな条件があります。たとえば、現在料金を支払っている顧客ではないこと、以前に無料試用を利用したことがないことなど。
条件を満たせば、コンピューティング、データベース、ストレージ、データ分析、管理・開発ツール、AI・機械学習、セキュリティサービスといった18の主要なGoogle Cloudプロダクトを「常に無料で」利用できます。
以下は、主要な製品の一部とその利用制限です。
- 1か月あたり30 GBのHDDを備えた1つのF1-micro VMインスタンス:米国リージョンでのみ利用可能
- 5 GBのクラウドストレージ:1か月あたり5,000回のクラスAオペレーションと50,000回のクラスBオペレーション
- 1 GBのストレージを備えた1つのNoSQLドキュメントデータベース:1日あたり50,000回の読み取り、20,000回の書き込み、20,000回の削除
- App Engine1日あたり28インスタンス時間
Azureの無料試用版では、2つのコンポーネントを使用した同様のアプローチが採用されていますが、これにはいくつかの重要な違いがあります。
- 使用に制限のある特定のAzureサービスの12か月間無料トライアル+$ 200のクレジット(最初の30日間でのみ使用可能)
- 常に無料で一般的なAzureリソースを利用可能(これにも利用制限ポリシーが適用される)
Google Cloudと同様に、無料利用枠を使うにあたって条件がいくつかあります。
Azureの無料アカウント利用の場合(12か月間サービスを試用できるGoogle Cloudとは異なり)20のAzureサービスのみが対象になります。これには、Linux、Windows VM、マネージドディスク、ファイル、Blobストレージ、SQLデータベースなどの主要プロダクトが含まれます。これらサービスには使用制限があり、200ドル分の(タダでもらえる)クレジットを使って拡張することができます。
また、コンピューティング、データベース、ネットワーキング、ID、セキュリティ、開発者ツール、分析、管理とガバナンス、AIと機械学習、コンテナサービスなど、25を超える幅広いAzure製品の永久無料アクセスも獲得できます。
そのコア製品の例は以下の通りです。
- 1 GBのストレージを備えた10個のウェブ、モバイル、またはAPIアプリ用のAzure App Service
- ID管理に使えるAzure Active Directory:ユーザーあたり10のアプリのシングルサインオン(SSO)をサポート
- Azure DevOpsの5人分のユーザーが無料
- DevTest Labsを無料で利用可能:迅速でシンプルかつ無駄のないアプリテスト環境が作成できる
無料枠について長期的に見たとき、Google Cloudの方がAzureよりも優れていると言えます。Google Cloudは「常に無料」のサービスの一環として、クラウドデプロイ基盤の大事な要素であるVMインスタンスとストレージを提供しています。一方で、Azureは最初にVMインスタンスとストレージを提供するものの、これらサービスは12か月経過後には期限切れになります。
Google CloudはAzureよりも安価なのか?
両クラウドプロバイダーの複数の製品、サービス、価格モデルを調査し終えた今でも、Google CloudがAzureよりも安いかどうかについての明確な答えは出せません。
「選択肢次第」です。実際の価格は、この記事で触れてきた非常に多くの変数に依存します。どの製品を使いたいのか、その製品についてのリソース要件はどうなのか、サービスを実行するデータセンターはどうか、長期的な契約をすることを厭わないかどうか、そして今回の記事では触れていない要素もまだまだあります。
Google CloudとAzureコンピューティングサービスの料金比較からは、料金体系が容易に変化し得ることが明らかになりました。従量課金制モデルでは、Google Compute EngineのVMインスタンスを構成して割引を利用することで、Azure VMの場合よりも75%安くなります。
とは言え、3年先まで見越して契約をすれば、価格のバランスが大きく変わり、Azure VMがCompute Engineインスタンスよりも最大30%安価になります。
最終的に、Google CloudがAzureよりも安いかどうかの答えは、あなたの選択にかかっています。あなたの事業に固有のクラウド要件により、どのクラウドプロバイダーが最も安価なオプションであるかが決まります。そして、大事な疑問も投げかけたいと思います。「安い」=「優れた選択肢」だと言えるでしょうか?
まとめ
これら2つの大手プロバイダーを比較するにあたり、私たちは多くの人が求める答えに焦点を当てました。GoogleCloudとAzureのどちらが優れているのか。
広範囲にわたる調査を実施し、その結果をまとめましたが…正直な答えは「私たちにもまだわからない」です。どちらのプロバイダーも、驚くほど高いレベルの製品とサービスを提供しています。いずれにも、短所をはるかに上回る長所が数え切れないほどあります。
KinstaはGoogle Cloudに軍配を上げ、WordPressホスティングソリューションの強化に実際に使用しています。Google Cloudは、最先端のプラットフォームに改善を加え続けています。サービスは常に成長し、今後1年間で新しいデータセンターロケーションの追加も計画されています。
Googleの人気の高まりを反映するかのように、AzureとAWSから市場シェアを奪い、年間のクラウド収益ランレートが2倍に。速度と価格の両方で妥協できない方には、Google Cloud Platformがお勧めです。
Azureも負けておらず近年大きな進歩を遂げました。これはMicrosoftのCEO、Satya Nadella氏が企業を「クラウドファースト」、「モバイルファースト」戦略にシフトした結果に他なりません。Googleと同様に、Microsoftもデータセンター拡張計画を継続し、ネットワークインフラストラクチャの改善に多額の投資を行っています。
Azureのコンプライアンス、冗長性、可用性により、Azureは非常に魅力的なプラットフォームとなっています。過去1年間で60%という顕著な成長が見られ、今後も成長が続くことが予想されます。
しかし、まだここで扱った内容は氷山の一角です。より広い見方をすれば、大手クラウドプロバイダー間の絶え間ない競争は望ましいことです。市場シェアを獲得しようと切磋琢磨した結果、私たちには新しく改善の施された製品やサービス、より広い可用性、そしてより低い価格という恩恵がもたらされます。進化よ永遠に。
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