大学や学校、オンライン学習プラットフォームなど、教育業界には入学者の管理、教材の販売、授業料の徴収など、他の業界にはない独自の要件とタスクがあります。
そのため、教育コンテンツを配信・販売するウェブサイト、ネットワークの構築には、教育業界に特化したプラットフォームを選択することが重要です。WordPressの人気ECプラグインWooCommerceでは、実用的かつ手頃な方法でこのような重要なタスクの背後にあるトランザクションを処理することができます。
WooCommerceは、個人でのオンライン講座の提供、授業料の受け取り、ダウンロード製品の販売などを簡単に実現でき、学生や受講者に優れた体験を提供することができます。WordPressの柔軟性と豊富なプラグインを活用することで、独自の要件への対応も簡単です。
今回は、WooCommerceが教育コンテンツの配信に適している理由、WooCommerceを使って、重要な「学習者への価値提供」を行うための方法を掘り下げていきます。
WooCommerceが教育コンテンツの配信に適している理由
WooCommerceは、比類のない柔軟性と拡張性が魅力であり、あらゆる規模の教育機関や教育者に適しています。受講者の管理から支払いの簡素化まで、シームレスで効率的な教育プラットフォームを構築するための機能が揃っています。
以下、そのメリットを詳しくご紹介します。
カスタマイズ性と拡張性
WooCommerce最大の強みは柔軟性です。少数のオンライン講座を提供する個人、複数のトレーニングプログラムを管理する教育機関、または多様な要件をもつ大規模な大学など、目標と用途に応じてカスタマイズが可能です。オープンソースという特徴から、サービスの成長に応じてサイトのあらゆる面を拡張することもできます。
また、WooCommerceはWordPressのプラグインであるため、WordPressで利用できるすべてのテーマ、プラグイン、カスタマイズ機能を活用できます。
費用対効果
教育分野専用のプラットフォームと比較して、WooCommerceは圧倒的に手頃に利用できます。ライセンス料が不要であり、無料で使えるプラグインも多数存在するため、予算をオーバーすることなく完全に機能するプラットフォームを構築できます。必要になる特定の機能にのみ投資することが可能です。
多数のプラグインと拡張機能
WooCommerceには、教育サイト向けのプラグインや拡張機能があります。例えば、LearnDashによるコースの管理、WooCommerce Subscriptionsによる定期購読や会員制サイトの提供まで、要件を正確に満たすことができます。受講登録から支払い処理のセットアップも簡単です。
効率的で便利
WooCommerceでは、運営管理も簡素化されます。単一の管理画面で登録情報の監視、支払い処理、在庫の追跡、物理的な教材の発送処理まで行うことができるため、日々の業務が効率化され、複数のソフトウェアを使用する必要性を最小限に抑えます。
豊富な統合機能
WooCommerceは、さまざまな外部ツールと統合することもできます。たとえば、StripeやPayPalのような決済代行サービス、LifterLMSのような学習管理システム(LMS)、MailchimpやHubSpotのようなマーケティングツールと接続することができます。また、これにより、学生のオンボーディングからメールキャンペーンまで、一貫したシステムで管理可能です。
グローバルリーチ
今日では、世界に向けて教材やコースを提供することが一般化していますが、WooCommerceでは、多言語および多通貨をサポートして、世界中のユーザーにサービスを提供することも可能です。
自動化による作業時間の削減
教育プログラムの運営に伴う繰り返しの作業も、WooCommerceで簡素化可能です。登録確認、支払いのリマインダー、コース修了メールなどのプロセスを自動化することで、貴重な時間を教育コンテンツの改良や生徒体験の向上に充てることができます。
セキュリティと信頼性
教育機関では一般に、支払い情報や受講者の個人情報などの機密データを扱います。WooCommerceはセキュリティを重視し、SSL互換性、データ暗号化、安全な支払い処理などの機能を提供しています。Kinstaなどの信頼性に優れたサーバーと組み合わせることで、サイトが確実に保護され、優れたパフォーマンスと信頼性を維持できます。
教育業界におけるWooCommerce使用例
WooCommerceはあらゆる教育業界の要件と多様な用途に対応しており、コースの販売から商品の販売まであらゆる管理を行うことができます。
具体的にイメージできるよう、教育業界におけるWooCommerceの主な使用例をご紹介します。
オンラインコースの販売と支払い受け取り
まず一般的なのは、オンラインコースの販売です。受講者が自分のペースで進められるコースやリアルタイムのオンライン授業など、さまざまな種類のコンテンツを提供し、柔軟な支払い方法に対応して安全かつスムーズな登録プロセスを構築できます。

例えば、WooCommerceで紹介されているgo! Take better photosでは、写真コースの登録と支払いを管理しており、受講者は簡単に登録して学習を開始することができます。
デジタルコンテンツの販売
WooCommerceでは、電子書籍、プレゼンテーション、有料記事などのデジタル製品を簡単に販売することができます。価格設定、在庫管理、ユーザーへの安全なファイル配信が可能です。

Cosmos Magazineは、デジタル購読やダウンロード可能コンテンツを提供しており、科学に興味を持つ世界中のユーザーを対象に学習教材を販売しています。
会員プログラム
WooCommerceを利用して継続的な収益を確立できる会員制プログラムを提供することも可能です。会員のみアクセス可能なリソース、学習ガイド、追加コンテンツを作成します。

識字教材を提供するHeggertyは、会員制機能を利用して教育者に専門ツールを提供し、指導をサポートしています。
イベント登録
ウェビナー、ワークショップ、セミナーも管理可能です。イベント登録の設定、チケット販売、出欠状況の確認などをすべてウェブサイトから管理でき、参加者へのリマインダーや確認メールを自動送信することもできるため、イベント管理が簡素化されます。

体験型科学館のDiscovery Cubeが運営するDiscovery Cube Connectは、WooCommerceを使用してオンラインワークショップの登録を管理して、生徒に魅力的な学習機会を提供しています。
授業料の徴収
WooCommerceは、授業料、研究費、認定料などの管理費の徴収も簡素化します。StripeやPayPalのような一般的な決済サービスと統合できるため、安全な支払い方法を簡単に保証できます。

Archaeology Scotlandは、教育プログラムの授業料の徴収とトランザクションの効率化にWooCommerceを使用しています。
学習キットの販売
実験キットや学習教材、ユニフォーム、Tシャツ、マグカップなどのオリジナル商品まで、物理的な商品も簡単に販売可能です。在庫、発送、注文追跡を1つのダッシュボードで管理できます。

マグネット式のSTEM教育キットを専門に扱うMagna-Tilesは、WooCommerceを利用して法人と個人向けに商品を販売し、体験型教育を促進しています。
寄付またはクラウドファンディング
経済的支援が必要な学校や団体は、WooCommerceで奨学金、プログラムの拡張、施設の整備のために寄付金の調達やクラウドファンディングの立ち上げを行うこともできます。具体的な目標額を設定し、リアルタイムで寄付を追跡可能です。
先ほど取り上げたDiscovery Cube Connectのサイトには、トップページの目立つ領域に寄付ボタンが設置されています。WooCommerceでは、複数の項目の寄付を募ることができます。
卒業生ネットワークの寄付と商品販売
卒業生ネットワークで商品を販売して、寄付を集めることも。アパレルやマグカップなどの記念品を提供することで、コミュニティ意識を強化し、卒業生からの継続的な支援を促すことができます。
学生インターンシップや求人掲示板
WooCommerceを利用して、学生限定の求人やインターンシップへのアクセスを収益化することもできます。この場合は、会員制サイトのように課金したユーザーのみがアクセスできるセクションを作ることになります。登録して支払いを完了した学生に限定コンテンツや求人掲示板などのリソースを通じて価値を提供し、同時に追加の収益を得ることができます。
教育コンテンツを配信するWooCommerceサイトの設定方法
WooCommerceを利用して教育サイトを立ち上げるには、いくつかの重要なステップがあります。効率的でプロフェッショナル、かつ拡張性のあるオンライン学校サイトを作成する手順をご紹介します。
ステップ1. WooCommerceに特化したサーバーを選ぶ
サーバー選びは、サイトのパフォーマンス、セキュリティ、信頼性に大きな影響を与えます。大量のコンテンツと同時接続を扱うことになり得る教育サイトでは、パフォーマンスが高く、セキュリティを重視し、WooCommerceに最適化されたサーバーを選ぶことが重要です。
適切でないサーバーを選ぶと、読み込み速度の低下、頻繁なサイトのダウン、セキュリティの脆弱性などにつながる可能性があります。
Kinstaでは、高性能なWooCommerceサイトに特化したWordPress専用マネージドクラウドサーバーを提供しています。サーバーレベルのキャッシュ機能、Cloudflare統合によるエンタープライズレベルのセキュリティ、Google Cloudのプレミアムティアネットワークなどを揃え、トラフィックの多い時期にもサイトがスムーズに動作します。
プランの選択後、専任のエンジニアがサイトを無料で移行します。自社開発の専用コントロールパネル「MyKinsta」を使って、サイトのパフォーマンスやバックアップなどの重要な機能を簡単に管理することができます。
ステップ2. WooCommerceをインストールする
サーバーを契約したら、続いてはWordPressサイトにEC機能を追加するためにWooCommerceをインストールします。
WordPress管理画面にログインしたら、「プラグイン」>「新規プラグインを追加」を開き、「WooCommerce」を検索してインストール、有効化を行います。WooCommerceを有効化したら、設定を行います。

WooCommerceの設定ウィザードで、以下のような設定を行います。
- ストア情報:住所や通貨などの一般設定
- 支払い方法:StripeやPayPalなどの支払いサービスを統合してスムーズな取引を行う
- 配送設定:物理的な商品を販売する場合は配送対象地域や送料を設定

ステップ3. 要件に応じてサイトをデザインする
見栄えが良く、理にかなったデザインは、教育サイトにおける重要な側面の1つ。プロフェッショナルでありながら、受講者の関心を引くサイトを作りたいところです。
これには、学校サイトや教育プラットフォームに特化し、WooCommerceと互換性のあるWordPressテーマを選びましょう。AstraやKadenceなどは、軽量かつカスタマイズ性が高くおすすめです。

テーマを決めたら、早速カスタマイズを行なっていきます。ロゴや配色に一貫性を持たせ、ブランドアイデンティティに沿った読みやすいフォントを選択し、直感的なナビゲーションメニューと講座のカタログなどを作成します。
ステップ4. コースや商品、価格、登録プロセスを設定する
サービスを体系的にわかりやすく整理することも重要です。
オンライン講座や関連教材を追加するには、WordPress管理画面の「商品」>「新商品を追加」を開き、以下のような商品の各項目を追加していきます。
- タイトル:コース名(「上級者向け代数オンラインコース」など)
- 説明:コース内容、目的、成果を詳しく記述
- 価格設定:価格を設定して、セット割引の提供なども検討できる
- カテゴリーとタグ:ナビゲートのため商品を「オンライン講座」や「ワークショップ」などのカテゴリーに整理

アカウント作成、教材へのアクセス、オンライン授業への参加など、受講者がコースの購入後に必要なステップは明確に提示しましょう。
ステップ5. 支払い処理の設定と確認の自動化
サイト所有者として、スムーズで安全な取引を保証することは不可欠です。WooCommerceでは、支払い方法の設定がわかりやすく説明されています。
「WooCommerce」>「設定」>「決済」タブに移動し、StripeやPayPalなど、広く利用されている信頼性の高い決済サービスを有効にします。

決済方法を設定したら、ユーザーに注文の確認、登録情報の詳細、その他の重要な情報を伝える自動メールを設定します。メール内容は編集し、プロフェッショナルなトーンを維持しましょう。
WooCommerceのセットアップに関する情報は、以下でもご紹介しています。
- WooCommerceでバリエーションのある商品を作成する方法
- WooCommerceの商品追加・管理方法(+おすすめプラグイン10選)
- WooCommerceの決済ページ設定方法
- WordPressでStripeを簡単に設定する4つの方法
- WordPressのおすすめWooCommerce決済ゲートウェイ
- WooCommerce Subscriptionsで定期購読を販売する方法
ステップ6. 本稼働前にテストを行う
最後に、サイトがスムーズに動作し、ユーザーに優れた体験を提供できるよう、本稼働前に入念にテストを行いましょう。
まずはテストトランザクションを実行し、登録と支払いプロセスがうまく機能するかを確認します。また、商品の購入時にデジタルコンテンツやコースへのアクセスが適切に付与されるかもチェックしましょう。
Google PageSpeed Insightsのようなツールを使って、サイトの表示速度を評価し、必要に応じて最適化します。Kinstaでは、この作業を支援するパフォーマンス管理ツールを標準提供しています。
また、特定のグループに対して限定的にサイトを公開したり、βテストを行ったりすることで、正式なローンチ前に問題点や改善点を探り、調整を行うことができます。
WooCommerceの機能を最大化するおすすめのプラグインと拡張機能
WooCommerceの機能性は、多種多様なプラグインや拡張機能と統合できることにあります。うまく活用することで、ECサイトを包括的な教育プラットフォームに変身させることができます。最後に、WooCommerce向けのおすすめプラグインと拡張機能をご紹介します。
1. WooCommerce Subscriptions

WooCommerce Subscriptionsは、定期購読モデルを通じて定期的な収入源を確立するために欠かせない拡張機能です。
オンライン講座、会員制コンテンツ、あるいは有料コンテンツのアクセスに定額プランの設定、柔軟な課金スケジュール、自動更新、リマインダー通知の送信を行うことができます。いずれも毎週オンライン授業を提供したり、毎月新たなコースを公開したり、リソースライブラリなどの継続的なコンテンツを提供する教育プラットフォームでは重宝する機能です。
2. WooCommerce Bookings

WooCommerce Bookingsは、イベントや予約のスケジュールの管理を簡素化します。オンライン授業、ウェビナー、ワークショップ、マンツーマンの個人指導のような日時ベースのサービスを提供する場合はこれが便利です。1つの管理画面で予約を管理しながら、受講者が任意の時間を選択できるようにします。
この拡張機能は、決まった日時にリアルタイムで授業を展開する教育機関や個人に不可欠です。過剰予約やスケジュールの重複を避け、スムーズな調整を行うことができます。
3. YITH WooCommerce Membership

WooCommerceで会員制コンテンツを管理するには、会員制の学習環境をサポートするYITH WooCommerce Membershipプラグインもおすすめです。
特定の講座、教材、リソースへのアクセスを会員のみに限定することはもちろん、複数の会員層を設けてそれぞれに異なるレベルのコンテンツや特典を提供することも可能です。定期購読型の学習コンテンツや限定的な教育リソースを提供する場合に有用です。
4. LearnDash

LearnDashは、WordPressで特に人気の学習管理システム(LMS)プラグインです。ドラッグ&ドロップ式のコースビルダー、クイズ、受講者の進捗管理などののコース管理機能があり、受講の前提条件、証明書、バッジなどもサポートしています。
WooCommerceとも互換性があり、LMSのバックエンドを整理しながらコースを商品として簡単に販売できます。
5. LifterLMS

LifterLMSも人気LMSプラグインで、WooCommerceと連携して教育プログラムの提供方法を強化してくれます。コース作成、学生用ダッシュボード、進捗管理などの機能があり、実績、バッジ、証明書のようなゲーミフィケーションの要素もサポートしています。受講者の関心を継続的に引きながら学習を支援することができます。
非常に柔軟性が高いため、インタラクティブなコースを作りたい場合に適しています。
まとめ
WooCommerceは、オンライン講座や教材を提供・販売するサイトの管理におすすめしたいソリューションです。強力で柔軟性があり、費用対効果も高く、オンライン講座の提供、教材の販売、授業料の徴収、会員の管理などが簡単です。要件に応じたカスタムメイドのプラットフォームを構築するために必要な機能が一式揃っています。
WooCommerceの多用途性は、さまざまな教育業界の要件を支援する能力において際立っており、少人数の生徒を管理する個人から、世界に生徒を持つ大規模な大学まで、WooCommerceの恩恵を受けることができます。
カスタマイズ可能な商品オプション、複数の決済方法のサポート、自動化ツールなどが作業時間を削減し、管理作業の負担を軽減してくれます。プラグインや拡張機能が充実しているのも大きな強みです。
WooCommerceとKinstaのような信頼性の高いサーバーを組み合わせることで、サイトパフォーマンスからセキュリティまで、あらゆる指標で教育サイトのパフォーマンスを改善することができます。KinstaのWordPress専用マネージドクラウドサーバーは、教育コンテンツを提供するWooCommerceサイトを考慮して構築されており、速度、スケーラビリティ、自動バックアップやエンジニアによるサポートなどの機能により安心感を手にすることができます。
講座や教材をオンラインで気軽に提供するソリューションをお探しでしたら、WooCommerceの利用を検討してみてください。