近年、テレマティクスサービスの需要が世界中で飛躍的に増加するにつれ、サービスや製品をオンラインで販売する企業の数も急増。さらに、公共機関や政府にも、オンラインサービスの需要増に対応するための適応力が求められています。
今日、製品やサービスの売買において、テレマティクスは重要な役割を担っており、人や企業、公共団体に複雑なサービスを提供するために欠かせません。
クラウドコンピューティング技術は、複雑なグローバル市場で企業が競争力を維持するのに不可欠なインフラとサービスを提供します。
クラウドインフラの速度、スケーラビリティ、セキュリティは、今日あらゆる業種・規模の民間、非営利、および公的機関にとって必須要素。
程度や特徴は異なるものの、この発展は世界各地域の産業、社会、規制システムの特殊性により、世界の主要経済全体に影響を及ぼしています。
地域によって違いは見られますが、今後数年の方向性は定まっていると言われており、ガートナー社は以下のように発表しています(原文の日本語訳)。
2024年までには、システムインフラ、インフラソフトウェア、アプリケーションソフトウェア、ビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)にかかるIT支出の45%以上が、従来のソリューションからクラウドに移行することが予想される。この変化は、デジタル時代の初期から、クラウドコンピューティングがIT市場において非常に大きな変革力を持つことを意味する
今日の経済において、競争力を維持し、継続的に成長するためにはクラウド技術が不可欠であるという事実から、世界のさまざまな地域におけるクラウドコンピューティングの現状について知ることは有益です。
今回は、ヨーロッパ(EU加盟国および英国)におけるクラウド技術の現状に注目します。
ヨーロッパ各国におけるクラウド技術の導入状況にはかなりの差があるものの、クラウドコンピューティング技術に対して厳しい規制がある点は共通しています。つまり、クラウドインフラとクラウドサービスを提供する企業は、データセキュリティ、プライバシー保護、インフラに対する主権に関する厳しい要件を満たさなければならないことを意味します。
企業の間でクラウド技術が最も普及している国、各国でのクラウド技術の導入規制、そして国内外の規制を遵守しながらクラウド技術の導入を支援するために、Googleが行っている取り組みなどをご紹介していきます。
ヨーロッパにおけるクラウドコンピューティングの現状
欧州連合(EU)の統計局であるEurostatの最新レポートによれば、ヨーロッパにおけるクラウドコンピューティングの現状は以下のとおり。
- 2021年には、企業の41%が、主にメールホスティングとクラウド上のファイルストレージのためにクラウドコンピューティングサービスを採用。
- このうち73%の企業が、アプリケーションのセキュリティ強化、企業データベースのホスティング、アプリケーションの開発・テスト・デバッグにクラウドソリューションを利用。
2020年から2021年にかけて、ヨーロッパ全体のクラウドサービスの利用率は5%増。
クラウドの需要の高まりにはいくつかの要因がありますが、まず第一に「効率化」が挙げられます。自社で技術インフラを構築・拡張するかわりに、サードパーティが提供するクラウド上のリソースを利用することができます。
クラウドインフラを導入することで、セキュリティ、スケーラビリティ、高パフォーマンスといった最先端の技術を手にすることができ、同時にリソースを拘束する必要がないため、投資コストを運用コストに変換して、より柔軟な運用が可能になります。
また、中小企業や新興企業には、数年前までは考えられなかったようなビジネスチャンスをもたらしてくれます。インフラへの大規模な投資や、それを管理するための有用な人材の確保は、もはや必須ではありません。
しかし、同レポートによれば、10名以上の従業員を抱える企業の98%以上がインターネットを利用している中、クラウドサービスを利用している企業は41%にとどまり、国によってかなりの差があります。
以下のグラフは、2020年と2021年のヨーロッパ各国の企業におけるクラウドサービスの利用状況を表しています。2021年にクラウドサービスを利用する企業の割合は、スウェーデンとフィンランドが75%で1位、次いでオランダとデンマークが65%、イタリアが60%と続きます。
上位9ヶ国は以下のとおりです。
- スウェーデン(75%)
- フィンランド (75%)
- オランダ(65%)
- デンマーク(65%)
- イタリア(60%)
- アイルランド(59%)
- エストニア(58%)
- マルタ(57%)
- ベルギー(53%)
ヨーロッパでは、情報通信産業や専門的、技術的、および科学的な領域で幅広く利用されています。
企業の規模で見ると、大企業での利用率が最も高いのはもちろんですが、中小企業の導入率も徐々に伸びています。
ヨーロッパのクラウド市場に関するもう一つの興味深い統計は、サービスモデル別に見たクラウドサービスの選択です。
2021年には、メールサービス、オフィスソフト、財務会計アプリ、セキュリティ、ERP、CRMなどのSaaS(Software as a Service)サービスを利用する企業が94%を占めています。
データベースホスティング、ファイルストレージ、コンピューティングパワーなどのIaaS(Infrastructure as a Service)サービスは、74%の企業が利用。
そして、21%の企業がPaaS(Platform as a Service)サービスを利用しています。代表的なPaaS製品といえば、アプリケーションを開発、テスト、デプロイするためのクラウドホスティングサービスなど。
Eurostatが報告している企業のクラウドサービスへの依存度にも注目したいところです。企業が利用するクラウドサービスの高度化が進むほど、クラウドサービスへの依存度も比例して高くなると推測されています。
この推測では、利用するクラウドサービスの種類によって、企業を以下3つのカテゴリに分類することができます。
- メールサービス、オフィスソフト、ファイルの保存や自社ソフト実行のためのコンピューティングパワーなど、基本的なクラウドサービスを利用する企業
- 財務会計ソフト、ERPソフト、CRMソフトなどのやや高度なクラウドサービスを利用する企業
- セキュリティソフト、企業データベースのホスティング、アプリケーションの開発、テスト、およびデプロイのためのホスティング環境を提供するコンピューティングプラットフォームなど、高度なクラウドサービスを利用する企業
Eurostatのレポートによれば、調査対象企業の30%が、少なくとも1つの高度なクラウドサービスを利用しています。国別の採用率は、上からスウェーデン(60%)、デンマーク(59%)、フィンランド(57%)、オランダ(56%)、イタリア(48%)です。
ヨーロッパにおけるクラウド企業に対する規制と要件
Eurostatの調査から、ヨーロッパ企業におけるクラウドコンピューティング技術の採用が着実に進んでいることは明らか。そしてこの傾向は今後数年も続くと予想されています。
重要な点として、ヨーロッパにおけるクラウド技術の採用は、データ主権、データ保護、プライバシーの要件、そして競争を保護する規制に準拠しなければなりません。
欧州議会による2020年版の白書では、以下のように述べられています(原文の日本語訳)。
EU加盟国にとって、自国の領土で作成されたデータを管理できない点は懸念事項となっている。世界のパブリッククラウド市場は現在、米国とアジアの企業によってほぼ独占状態。2018年の米国クラウド法の下で、米国の法執行機関が非米国居住者の個人情報を入手するための広範な治外法権的能力が認められていることから、欧州の政府および関係者は欧州以外のデータサービスの利用を懸念している。欧州政府は、非欧州企業が提供するクラウドソリューションから脱却し、欧州で開発されたクラウドソリューションの導入を進めている
ヨーロッパ圏外のクラウドインフラとクラウド企業は、ヨーロッパで事業を展開するためには、より複雑な競争環境で特定の要件を満たさなければなりません。
欧州連合が定めるデジタル主権要件を満たし、欧州企業のさらなる成長と変革を可能にするため、GoogleはGoogle Cloud Sovereign Solutions(日本語ではソブリンクラウドとも)を導入。ドイツのT-Systems、フランスのS3NS、スペインのMinsait、イタリアのTelecom Italiaなど、ヨーロッパの数社と提携しています。
ソブリンクラウドは、データ、運用、ソフトウェアの主権要件に対応し、クラウドに移行する機密情報に対する制御と透明性を改善するように設計されおり、例えば、GDPRなどの欧州規制やSchrems IIなどの法的裁定に準拠することができる
主要なクラウド企業では、自社製品とサービスをヨーロッパの規制に準拠するための措置をとっています。Google最大の競合他社である、MicrosoftとAWSは、データの安全性、セキュリティ、および主権を保護するための独自のプログラムを採用しています。
Microsoftは、Microsoft Cloud for Sovereigntyを発表し、Microsoft 365、Dynamics 365、Azureを含むMicrosoft Cloud全体のデータレジデンシーの要件を満たすことを可能に。AWSは、クラウドサービスを利用する企業がヨーロッパの規制に完全準拠できるようにしています。
なお、全体として、クラウドコンピューティングの導入はヨーロッパ各国で差があることは念頭においてください。
次のセクションでは、ヨーロッパの国別にクラウド市場を掘り下げていきます。各国の企業でどのようなクラウドサービスが最も利用されているかを把握し、各国の市場の特殊性を読み解きます。また、Google Cloudが各国の市場の特殊性にどのように対応し、現地の規制を遵守して最先端技術を提供しているかにも触れていきます。
フランスにおけるクラウドコンピューティング
Eurostatによれば、フランスにおける企業のクラウドコンピューティング導入率は、2020年の27%から2021年には29%に増加しています。他のヨーロッパの国と比較すると決して高い増加率ではありませんが、全体の伸びとは一致しています。
2021年に1つ以上のクラウドコンピューティングサービスを利用した企業のうち、クラウドストレージ(76%)やメールサービス(67%)などの基本なサービスを導入する企業が最も多くなっています。また、高度なサービスも広く利用されており、59%の企業がデータベースホスティングサービスを利用しています。
細かな内訳は以下のとおりです。
- 基本的なサービス
- メールサービス(67%)
- ストレージサービス(76%)
- オフィスソフトウェア(54%)
- やや高度なサービス
- 財務・会計ソフトウェア(44%)
- CRMソフトウェア(30%)
- 自社ソフト用のコンピューティングパワー(22%)
- ERPソフトウェア(31%)
- 高度なサービス
- セキュリティアプリケーション(51%)
- データベースホスティング(59%)
- アプリケーション開発、テスト、デプロイするためのクラウドプラットフォーム(25%)
フランスは、クラウド導入をリードする存在ではありませんが、クラウドコンピューティングの重要性は、現在の市場、そして将来の展望にも影響を与えています。特にフランスの競争委員会は、デジタル部門が優先事項であることを発表し、2023年に結果が公表されるエコシステム調査を進めています(以下原文の日本語訳)。
消費者、企業、そして公共機関は、クラウドを通じてコンピューティングリソースに簡単かつ迅速に手にすることができる。また、クラウドは業務管理の可能性を広げ、新型コロナウイルス感染症の蔓延時には特に有用になった。これは、フランスおよびヨーロッパのクラウド市場が活況を呈し、今後数年は年間平均25%以上の成長が見込まれ、経済において強力な価値創造への課題がもたらされる時期の見解である。このようなクラウドの成長には、経済やヨーロッパおよびフランスの産業のデジタル化を支援するため、革新的な技術の研究開発に対する公的機関からの大規模な支援が必要になる。クラウド産業を支える最近のフランスの国家計画は、その一例である
クラウドコンピューティング技術が国民経済に与える影響、そしてその影響が今後ますます大きくなることから、フランスでは政府や公的機関がクラウドコンピューティング技術に注目しています。フランス政府は、自国のクラウドエコシステムを支援するため、18億ユーロを投資し、以下のような目標を掲げています。
- フランスのクラウド企業が今日の主要市場で競争力を発揮するために十分な技術的・商業的基盤を確立する。
- 政府機関、大企業、その他戦略的に重要な企業の機密データ管理のため、信頼できるクラウドソリューション(Cloud de Confiance)の採用を促進する。
- 信頼できるクラウドサービス上に構築されたデータ領域を基盤として、フランスのデータ経済を発展させる。
フランスにおけるGoogle Cloud
フランスの主権基準、およびCloud de Confianceへの準拠の必要性から、Google Cloudとフランスのサイバーセキュリティ企業のThalesが提携し、信頼できるクラウドを共同で提供しています。
Google Cloudのサービスは、定期的に強化され、最新のイノベーションで補完されています。弾力性、俊敏性、技術的なオープン性をもたらし、ベンダーロックインなしに、透明かつ自律的なイノベーションを行うことができます。40年以上にわたってサイバーセキュリティ業界を牽引するThalesは、サイバーセキュリティ・オペレーション・センターで暗号鍵、アクセス、IDの管理、サイバー脅威の監視を確実に管理することで、フランスの主権要件に必要なセキュリティを保証。フランスの企業が求める信頼性とセキュリティをThalesが提供することで、生業を維持しながら、機密性の高いアプリケーションをクラウドに移行できるようにしています
Thalesとの提携にとどまらず、Googleはセキュリティやデータ主権に関するフランス当局の懸念に対応するべく、新たなリージョンをパリに開設。Google Cloud FranceのマネージングディレクターであるAnthony Cirot氏は、Google Cloudのブログで以下のように述べています(原文の日本語訳)。
Google Cloudは、真にグローバルであるということは、同時にローカルでもなければならないと考えています。つまり、顧客、顧客の所在地、規制、価値観にできる限り寄り添う必要があるということ
フランスにおけるクラウド導入の障壁を取り除くために設計された新たなリージョン(europe-west 9)は、独自の拡張性、持続性、安全性、革新的な技術を身近なものにし、フランスの企業がデジタル変革を取り入れ、推進できることを支援します
パリでのリージョン開設は、フランスの企業や行政機関が、「アプリケーションを運用して実行し、データをローカルに保存し、リアルタイムデータ、分析、AI技術をよりよく活用するできるようにする」ことを目的としています。
これは、フランスにおけるGoogle Cloudのプレゼンスが、フランスおよびヨーロッパのセキュリティと主権の要件に準拠していることを証明するもので、著しい成長を見せる市場における重要なステップです。
ヨーロッパ全域で、あらゆる規模・業種の企業がクラウドへのミッションクリティカルな業務およびデータの移行を検討しています。しかし、俊敏性、拡張性、パフォーマンス、イノベーションの可能性など、クラウドの利点が証明されているにもかかわらず、多くの企業では信頼性の欠如を理由に、性能に劣る技術を選択しています。Google Cloudは、強力なセキュリティ機能を搭載しているだけでなく、欧州の地理的地域にデータを保持する機能、ローカル管理およびカスタマーサポート、アクセス権限の包括的な可視化と制御、Google Cloudインフラストラクチャの外部で制御および管理するキーによるデータの暗号化など、企業独自のコンプライアンス、プライバシー、デジタル主権などの要件を満たす機能を提供しています
Google Cloudがフランス経済に与える影響は相当なもので、最近の調査によれば、2027年までに24〜26億ユーロ規模のGDPの成長、および1万3,000〜4,000名の新規雇用を生み出すと予想されています。Google Cloudがフランス経済に与える影響についてはこちらもご覧ください。
ドイツにおけるクラウドコンピューティング
Eurostatのレポートによれば、ドイツはヨーロッパ諸国の中でもクラウドコンピューティング技術の導入が急速に進んでいる国であり、クラウドサービスを利用している企業の割合は、2020年の33%から2021年には42%に上昇しています。
フランスに続いて、次はドイツの企業間におけるクラウドコンピューティングの導入傾向を見ていきます。
ドイツ企業のほとんどは、基本的なクラウドサービスを利用しています。やや高度なサービスを利用している企業は少数ですが、データベースやアプリケーションのホスティング、セキュリティアプリケーションなど、高度なクラウドサービスを利用している企業はかなりの数です。
詳しい内訳は以下のとおり。
- 基本的なサービス
- メールサービス(65%)
- ストレージサービス(61%)
- オフィスソフトウェア(55%)
- やや高度なサービス
- 財務会計ソフトウェア(40%)
- CRMソフトウェア(21%)
- 自社ソフトウェア用のコンピューティングパワー(25%)
- ERPソフトウェア(18%)
- 高度なサービス
- セキュリティアプリ(48%)
- データベースホスティング(33%)
- アプリケーション開発、テスト、デプロイするためのクラウドプラットフォーム(23%)
有識者の間でも、ドイツにおけるクラウドコンピューティングの需要の飛躍的な高まりが確認されています。ISG Provider Lens™の調査では、その需要の高まりから、2025年にはデータセンターの容量の半分以上を占めるようになると推測されています(以下原文の日本語訳)。
クラウドサービスに対する需要の高まりは、デジタル化の進展と、現代企業における弾力性と俊敏性の向上の必要性によってもたらされている。俊敏性を向上させるため、企業はデータセンターやホスティングコロケーション施設にクラウド技術を導入し、適切なインフラで迅速にサービスを展開できるようにしている。このようなアーキテクチャや技術の扱いは難易度が高く、ほとんどの場合、社内の従業員では管理できないことから、サービスサポートへの需要も高まっている。企業は自社のハードウェアへの投資を抑え、クラウドサービスの柔軟性と拡張性に依存することで、設備投資の削減を図っている
ISGのレポートでは、クラウドコンピューティングの成長が、ドイツにおけるデジタルネットワークの拡大とデジタル化の進展を促進すると報告されています。これは、フランクフルトのDE-CIXノードのデータスループットが、2020年1月の7.5Tbit/sから2022年10月には14Tbit/s超に急増していることも裏付けとなっています。わずか3年弱でおよそ2倍に増えていることがわかります。
また、需要の増加とリソースの減少が相まって、データセンターの建設に対する意識も高まっています。データセンターのエネルギー効率は着実に上がっており、ISGは次のように報告しています(原文の日本語訳)。
2020年のPUE(Power User Effectiveness、電力使用効率)値の平均は1.63であったのに対して、現在新規データセンターの各PUE値の平均は1.3以下に抑えられている。※PUE値は数値が小さいほど良い
ドイツにおけるGoogle Cloud
ドイツがヨーロッパと世界経済において大きな役割を担っていることを考慮すれば、Googleがドイツ市場に注目するのは当然のこと。2001年にドイツ初のGoogleのオフィスが開設され、2021年には4つのオフィスで2,500名の従業員を雇用しています。
2021年には、フランクフルトのクラウド地域の拡大、3つのゾーンで構成されたベルリン ブランデンブルクに新たなリージョンの開設、再生可能エネルギーへの大規模な投資計画など、2030年までにドイツに10億ユーロに相当する巨額投資計画を発表しています(以下原文の日本語訳)。
フランクフルトのクラウド地域をGoogle所有のハーナウのデータセンターで拡張、ベルリン ブランデンブルクに新たなリージョンを開設、そして再生可能エネルギーに大規模に投資することで、ドイツの可能性に投資し、デジタルと持続可能な経済への移行を支援するのが、Googleの明確な目的です。現在(2021年)から2030年までの間に、デジタルインフラとクリーンエネルギーへのこの投資は総額およそ10億ユーロです
2020年には、Googleは2030年までにカーボンフリーエネルギーで事業を運営するという目標を公表し、クラウド利用者に業界で最もクリーンなクラウドを提供すると同時に、ヨーロッパの意欲的な気候変動目標の達成を目指しています。
このような背景から、Googleはドイツにおけるカーボンフリーエネルギー供給会社として、ENGIE Deutschlandを選定しています。
これはヨーロッパ初のエネルギー供給であり、(Googleの)業務時間ごとにカーボンフリーエネルギーを調達することに重点を置いています。この新たな契約は、ヨーロッパにおける業界のロードマップや、より多くの24時間年中無休のカーボンフリーエネルギー契約を実現するだけでなく、クラウド利用者に二酸化炭素の排出量を削減できるリージョンをさらに2つ提供することを意味します。また、エネルギー供給会社と協力し、クリーンなエネルギーを供給する方法に変革をもたらすことで、ドイツの電力網の幅広い脱炭素化を支援します
これは、既存のカーボンフリーエネルギー、風力、太陽光、さらに人工知能も利用した次世代技術を含む再生可能エネルギーの利用促進を目的とした、革新的な提携です。高度なインフラとクリーンエネルギープロジェクトの開発を進め、デジタル変革を高速化し、ドイツとヨーロッパの企業の持続可能な未来を確保することを明確な目標として掲げています。
ヨーロッパの他の地域と同様、ドイツでGoogle Cloudがプレゼンスを確立するもう一つの重要な要因は、機能やイノベーションに妥協することなく、セキュリティ、プライバシー、デジタル主権などに関するヨーロッパならではの要件を満たすクラウドソリューションにあります。これを実現するため、Googleはヨーロッパで求められる条件に即したクラウドを発表しています(以下原文の日本語訳)。
このイニシアチブの一環として、ヨーロッパの企業や組織のさらなる成長と変革を後押ししながら、最高水準のデジタル主権を提供するクラウドサービスの確立というコミットメントを引き続き示していきます
この取り組みの一環として、ドイツにおいて民間および公共機関向けのソブリンクラウドを構築するため、GoogleとT-Systemsはパートナシップを結んでいます。
イタリアにおけるクラウドコンピューティング
Eurostatのレポートによると、イタリアでもクラウド技術の導入が急速に進んでいます。2021年には、企業の60%が少なくとも1つのクラウドサービスを利用しています。
その大半は、メールサービス(96%)などの基本的なものを利用していますが、より高度なサービスの導入もかなり広がっており、70%の企業がセキュリティソフトウェアアプリケーションを採用しています。
クラウド技術導入の詳しい内訳は以下のようになっています。
- 基本的なサービス
- メールサービス(96%)
- ストレージサービス(58%)
- オフィスソフトウェア(58%)
- やや高度なサービス
- 財務会計ソフトウェア(52%)
- CRMソフトウェア(19%)
- 自社ソフトウェア用のコンピューティングパワー(14%)
- ERPソフトウェア(20%)
- 高度なサービス
- セキュリティアプリケーション(70%)
- データベースホスティング(39%)
- アプリケーション開発、テスト、デプロイするためのクラウドプラットフォーム(10%)
ミラノ工科大学のCloud Transformation Observatoryによると、2021年のイタリアのクラウド市場は38億4,000万ユーロ。前年比で16%増加しています。
Observatoryが収集したデータを見ると、イタリアではもはやSaaSサービスに牽引力はないことがわかります。2021年には、PaaS(Platform as a Service)が前年比31%増という驚異的な伸びを見せ、IaaS(Infrastructure as a Service)が23%増と続いています。
いずれも大きな成長率ですが、クラウドの導入が必ずしも適切な対策と組み合わされているとは限りません。Cloud Transformation Observatoryによると、34%の企業が、従業員のスキルアップ、クラウド担当者の確保による組織体制の強化、関連するビジネスプロセスの見直しなど、IT部門の組織改革をまだ導入できていないと回答しています。
クラウドがもたらす成長と発展の可能性を最大限活用するには、組織の近代化も欠かせません。
サービスモデルに関しては、イタリアではパブリッククラウドとハイブリッドクラウドが最も大きな割合を占めており、2021年には前年比19%増の約23億9,000万ユーロが費やされています。
この分野では、PaaSサービスが2021年に最も高い成長を記録し、総支出額は3億9,000万ユーロ超えと、前年比で31%増加しました。
大企業ではハイブリッドクラウドとマルチクラウド戦略が最も普及しており、平均して5社のサービスを採用しています。
Cloud Transformation Observatoryのレポートによれば、クラウドサービスを利用する企業のメリットは、数多く、多岐にわたります(以下原文の日本語訳)。
アプリケーションの拡張性、柔軟性、移植性の向上から、迅速な開発に関連する幅広い設計の俊敏性、ソフトウェアの実装および管理コストの削減まで、数々の利点がある
クラウドコンピューティングの導入が進むと、公共部門と民間部門の両方において、すべての業種が良い影響を受けると言われています。
民間部門では、銀行業が突出しており、クラウドコンピューティングへの投資が64%も伸びています。
クラウドコンピューティングは、昨年は調査・研究面で最も注目された分野だったが、今年は特に大手銀行で、投資の優先順位10項目の中で最も多く報告されている(出典:Rapporto ABI Lab 2022_ )
クラウドコンピューティングの導入が民間経済の多くに影響を与えるのであれば、公共部門にもクラウドの変革が期待できます。国の技術的な自律性を確保し、データを安全に管理して、デジタルサービスの耐障害性を高めるため、デジタル変革省と国家サイバーセキュリティ庁は、「行政のデータとデジタルサービスのクラウドへの移行経路に関する戦略的ガイドライン」を含む、Strategia Cloud Italiaを起草しています(以下原文の日本語訳)。
クラウドへの移行により、行政機関は、国の戦略的自治、セキュリティ、データに対する国家管理の必要な保証を維持しながら、プライバシー保護の原則、欧州および国の機関の勧告に沿ったデジタルサービス、安全で効率的かつ信頼できる技術基盤を提供できる(出典:Team per la Trasformazione Digitale)
イタリアにおけるGoogle Cloud
最近では、ミラノにGoogle Cloudリージョン(europe-west8)が開設。さらに2022年末にはトリノにも開設されることが発表されており、同国のクラウドへの関心は大きく高まっています。
この新たなクラウドリージョンにより、イタリアではデータを保存し、「高速で、信頼性が高く、安全な」クラウドサービスの力を活用して、国内にあるデータセンターから高可用性&低レイテンシのアプリケーションを開発、デプロイすることができるように。そしてそれらのプロジェクトはすべて、「業界で最もクリーンなクラウド」を謳うGoogleの一流のクラウドソリューションで実現されます。
TIMとBanca Intesaとの提携による2箇所のクラウドリージョンの開設に先立ち、トリノ大学の研究では、ピエモンテ州とロンバルディア州だけで2025年までに33億ユーロもの誘発効果と6万5千人の新規雇用が見込まれると算出されています。また、現地の企業がクラウドインフラを導入することで、この2つのデータセンターが国の経済や生産システム全体に与える構造的な効果は言及するまでもありません。
Googleは以下のように述べています(原文の日本語訳)。
ミラノの新リージョンは、革新的なパブリック、プライベート、ハイブリッドクラウドサービスを提供し、あらゆる規模や業種のイタリア企業がデジタル変革を加速できるように支援することを目的としています
また、Google Cloudの新たなデータセンターには、すでに進行中の経済の近代化や、公的機関や民間企業のインフラの移行を大きく後押しすることが予想されます。
新リージョンの開設は、データの可用性、データレジデンシー、デジタル主権、持続可能性といったイタリアのデジタル経済の需要に応えるため、地域レベルの能力を構築する具体的な一歩を意味します
技術面では、Compute Engine、Google Kubernetes Engine、Cloud Storage、Persistent Disk、CloudSQL、およびCloud Identityの標準的なGoogle Cloudサービスを備えています。
さらに、Google Cloudユーザーには、データレジデンシー制御、デフォルトの暗号化、組織ポリシー、VPCサービス制御などの恩恵も。
国内に2箇所のリージョンがあることで、より良いディザスタリカバリと高い地理的可用性を確保することができます。
6月15日にミラノで開催された2つのクラウドリージョンの発表会では、Google Cloudのイタリア担当マネージャーであるFabio Fregi氏は次のように述べています(原文の日本語訳)。
Googleは、イタリア国内で2つのリージョンを持つ唯一のクラウドプロバイダー。これにより、2つの拠点を活用することで、ディザスタリカバリを確保し、信頼性と可用性、そしてセキュリティを高めることができます。これはイタリア独自の恩恵です
セキュリティだけではなく、Intesa Sanpaolo社の情報システム担当エグゼクティブディレクターであるEnrico Bagnasco氏は、国全体でのインフラのスケーラビリティとデータストレージの重要性を強調しています。
ビジネス要件に対応するため、インフラの強力な弾力性と成長スピードに支えられながら、同時に費用削減と抑制も実現することができるため、コスト配分を非常に柔軟に行うことができることは非常に重要です
しかし、イタリアにおけるGoogle Cloudのプレゼンスは、インフラだけにとどまりません。ミラノとトリノの2つのデータセンターの開設は、クラウドインフラの構築と、国内での採用を促進する高度な技術スキルの両方に焦点を当てた、大規模な投資プログラム(約9億ドル)の一部に過ぎません。
ミラノのリージョン開設以外にも、以下3種類のトレーニングプロジェクトが立ち上げられています。
- Opening Future:Google、TIM、Intesa Sanpaoloのコラボレーションによって誕生した、中小企業、新興企業、学生、教師向けのデジタルトレーニングおよび開発に特化したポータルサイト
- Google Cloud Pro:TIMとの提携によるイタリアの開発エコシステム全体に開放されたクラウド技術に関する無料のトレーニングプログラム(受講者はCloud Engineer、Cloud Architect、Data Engineerの3つの教育コースを受講することができ、終了時にはGoogle Cloudの認定試験を受けることができる)
- Italia in Digitale:中小企業や個人を対象としたデジタルトレーニングに特化したプロジェクト(デジタルマーケティング、データ管理、顧客とのコミュニケーション、オンラインビジネスの始め方、データ分析ツールの使用など、デジタル経済のあらゆる側面を網羅したコースを提供)
詳しくは、こちらのブログ記事をご覧ください。
スペインのクラウドコンピューティング
他のヨーロッパ諸国と同様、スペインでも2020年(26%)と2021年(31%)の間に、少なくとも1つのクラウドコンピューティングサービスを利用する企業の数が大幅に増加しています。
1つ以上のクラウドコンピューティングサービスを利用している31%の企業のうち、大多数がメールホスティング(82%)とストレージサービス(80%)にクラウドを利用しています。高度なクラウドサービスを利用している企業の割合も高く、62%がセキュリティアプリ、69%がデータベースホスティングを採用しています。
詳細は以下のとおりです。
- 基本的なサービス
- メールサービス(82%)
- ストレージサービス(80%)
- オフィスソフトウェア(63%)
- やや高度なサービス
- 財務会計ソフトウェア(40%)
- CRMソフトウェア(38%)
- 自社ソフトウェア用のコンピューティングパワー(35%)
- ERP ソフトウェア(33%)
- 高度なサービス
- セキュリティアプリケーション(62%)
- データベースホスティング(69%)
- アプリケーション開発、テスト、デプロイするためのクラウドプラットフォーム(28%)
Eurostatのデータは、欧州委員会のDESIレポート(Digital Economy and Society Index)でも確認されており、2021年のスペイン企業のクラウド技術導入率は、ヨーロッパ平均の34%に対し、27%とやや遅れをとっています。同レポートの全文はこちら(欧州委員会の公式サイト)からダウンロード可能です。
しかし、世界のその他の主要経済国と同じように、スペインでもクラウド技術に対する関心は大きく高まっていることに変わりはありません。スペイン政府は、国内の公共および民間組織の発展と近代化のためのリソースおよび機会として、デジタル化とクラウド技術の採用の重要性を認識しています。
Asociación Española de Startupsが支援するプロジェクト「Nubes」によれば、スペインのパブリッククラウド市場は、2020年に約28億6,000万ユーロの収益を上げ、そのほとんどは約10億6,000万ユーロのSaaSからもたらされています。
スペインにおけるGoogle Cloud
2020年には、スペイン企業のデジタル変革を加速させるため、Google CloudとTelefónicaが提携を発表。以下のような目標を提示しています(原文の日本語訳)。
- 企業のデジタル化を促進し、スペインの行政をサポートして、新型コロナウイルス感染症蔓延後の国内の経済回復を支援
- 国内におけるクラウド地域の立ち上げ
- Google Cloudのモバイルエッジコンピューティングを利用した5Gソリューションのポートフォリオを共同開発
そして2022年4月、Google Cloudのスペイン担当マネージャーであるIsaac Hernandez氏は、Telefónica提携によるマドリードのクラウドクラウドリージョン(europe-southwest1)の開設を発表しました(以下原文の日本語訳)。
スペイン企業の増大するテクノロジーニーズに対応するために設計された新しいマドリッド地域(europe-southwest1)は、低遅延で可用性の高いクラウドサービスを高い国際セキュリティとデータ保護基準で提供し、すべて業界で最もクリーンなクラウド上で提供します
この新クラウドリージョンは、現地の規制に準拠した新たなデジタル変革の機会を創出することを目的とし、政府、医療、金融サービスなどの規制の厳しい業界において、特に重要なセキュリティと主権に関する政府の要件を満たしています。
マドリードにリージョンを設けることで、クラウド導入の障壁を取り除き、スペインの企業や政府機関が国内における可用性、データレジデンシー、持続可能性の要件を満たしながら、デジタル変革を加速させることができるようになります
クラウドコンピューティング市場おいて、企業の信頼、セキュリティ、プライバシー、主権は必須要件。これを考慮し、GoogleはMinsaitと提携して、スペインの公共および民間企業に主権クラウドソリューションを共同で提供しています。
この提携は、最も機密性の高いデータを安全かつ主権的に管理しながらイノベーションを促進し、公共および民間組織向けの信頼性の高いクラウドサービスの強化を目指すものです。経済産業省およびデジタル変換省にも支援を受けています。
スペインにおけるGoogleのコミットメントは広範囲に及び、クラウド技術を採用するための人材の育成も含まれます。Isaac Hernandez氏のレポートには、以下のように述べられています。
Googleは、Grow with Googleプログラムを立ち上げ、すでにスペインで100万人以上の人材育成を支援しています。将来的にはマラガにサイバーセキュリティのセンターを開設し、Indra Minsaitと共同でAI Lab Granadaの設立を支援する計画も
オランダにおけるクラウドコンピューティング
Eurostatのデータによれば、オランダでのクラウドコンピューティング技術の採用率は急速に高まっており、2020年には1つ以上のクラウドサービスを利用する企業の割合が53%だったのに対し、2021年には65%に上昇すると言われています。
オランダにおける企業のクラウド技術採用率は、ヨーロッパで第3位にランクインしています。
それだけではなく、Eurostatによれば、オランダは高度なサービス(エンタープライズのデータベースホスティングなど)の採用率においてもヨーロッパをリードしており、78%という驚異的な数字を記録しています。
内訳は以下のとおりです。
- 基本的なサービス
- メールサービス(82%)
- ストレージサービス(81%)
- オフィスソフトウェア(72%)
- やや高度なサービス
- 財務会計ソフトウェア(66%)
- CRMソフトウェア(49%)
- 自社ソフトウェア用のコンピューティングパワー(28%)
- ERPソフトウェア(35%)
- 高度なサービス
- セキュリティアプリケーション(64%)
- データベースホスティング(78%)
- アプリケーション開発、テスト、デプロイするためのクラウドプラットフォーム(30%)
オランダは、間違いなくデジタル変革の最前線にある国のひとつであり、The Digital Economy and Society Index(DESI 2022)のレポートでは、以下のように述べられています。
オランダは、2022年版のDESIにおいて、EU加盟国27ヶ国中3位にランクインしている。ヨーロッパ諸国を一貫してリードしており、すでに高いスコアを記録しているにもかかわらず、いくつかの主要な分野でさらに進歩を遂げている
オランダの企業は、平均して他のヨーロッパ諸国を大きく上回っており、特にクラウド技術(60%)、ビッグデータ(27%)、SNS(49%)を利用する企業の割合が高くなっています。
まだ改善の余地はあるものの、クラウド技術の導入や経済・社会のデジタル化という点では、ヨーロッパそして世界で最も進んだ国のひとつです(関連リソース:Dutch Digitalisation Strategy 2.0)。
オランダにおけるGoogle Cloud
ヨーロッパの経済市場におけるオランダの重要性を考慮すれば、2016年の時点で、Googleが6億ユーロを投じてオランダのフローニンゲン州エームスハーフェンにデータセンターを開設していることには納得です。
その後、2018年には5億ユーロのキャンパス拡張、2019年6月にはエームスハーフェンのさらなる拡張、そして2020年にはミッデンウメールのリージョン開設を発表。
これにより、Googleのオランダにおけるデータセンターへの投資総額は25億ユーロに達しました。
さらにGoogleは、すべてのデータセンターを再生可能エネルギーで稼働させることを約束しています(以下原文の日本語訳)。
2017年から、年間の電力消費量をすべて100%再生可能エネルギーでまかない、2020年には、2030年までにすべてのデータセンターとキャンパスを24時間365日カーボンフリーなエネルギーで稼働させることを約束します。オランダでこれを達成するべく、データセンター用の再生可能エネルギーの確保のため、GoogleはDelfzijlとZeelandの風力発電所(KrammerおよびBouwdokken)、Delfzijl Sunportの太陽光エネルギーパークと契約しています
オランダのクラウドコミュニティによる洞察─Simon Besteman氏
オランダのクラウドコンピューティングの状況について、Dutch Cloud CommunityのマネージングディレクターであるSimon Besteman氏にお話を伺いました(以下原文の日本語訳)。
Dutch Cloud Communityとは
Dutch Cloud Community(DCC)は、ホスティングとクラウドの分野の支部組織で、以下2つの支部組織が合併してできたものです。
- ISP Connect─共用/ウェブホスティング業界で活躍するメンバーで構成された団体
- ITアウトソーシング企業の面々
あるジャーナリストの言葉を借りるなら、『前者は1台のサーバーに何千もの顧客を乗せる関係者の団体、後者は1人の顧客に対して何千ものサーバーを持つ団体という対照的な存在』です。
この2つの団体の区別は、現実、つまり市場によって覆されました。というのも、さまざまな関係者がホスティングのあらゆる側面に関与するようになったためです。2020年、DCCは約100社の会員を持つ組織として誕生しました。
ホスティング企業に利用可能なSBIコードはないため、ホスティングに関心を持つ企業の数を正確に上げることは難しいです。サーバーで顧客情報をホストしている場合、その企業は『IT企業』と見なすことができれば、『ホスティング企業』と定義することもできます。
DCCの使命は、健全なセクターの確保だけでなく、自由でオープンなインターネットの実現にあります。DCCはこの重要な役割を担っており、業界の大手から中小企業まで約100社が参加しています。
DCCには会員とパートナーがあり、後者は主にその分野のサプライヤーです。DCCとの提携を通じて、その分野とコミュニケーションをとり、自分たちの考えを共有することができます。DCCの存在は、例えば年に一度開催するバーベキューのように、気軽にすべての会員と交流できる場になっています。
パートナーはスポンサーとなり、その方法はお金を出資したり、専門知識を共有したりなど様々です。もちろん会員がそのパートナーの顧客になることも可能です
DCCの活動
Dutch Cloud Communityは、大きく分けて以下4つの分野で活動しています。
- アドボカシー:若くて規制が確立していない業界から、テレコム業界のように厳しく規制された業界への移行に忙しい分野です。オランダの企業がホストするコンテンツの報告に、より良いプロセスを確保することが重要です。
- 分野ごとの教育:若くて高度な教育を受けた人材の需要が高いことから、Hogeschool Utechtと共同で学士課程が設立しました。デュアルシステムで週4日はオフィス、週1日は学校でコースを受講します。ネットワークエンジニアリングとクラウドセキュリティ/ソフトウェア開発の2つのコースがあります。
- 知識の共有:DCCでは知識の共有を徹底しており、四半期ごとに特定の分野のプロフェッショナルが知識を共有しています。6つのグループに区分され、セキュリティ、法務、サステナビリティ、社会的責任などの分野で、会員そしてパートナーも一緒に取り組んでいます。オランダのホスティング会社がウクライナの企業に無償でホスティングを引き継ぎ、特に都市が爆撃された状況でも簡単に利用できるようにした『Cloud for Ukraine』はその一例です。
- コミュニティ:毎年、Cloudfest(ドイツ主要イベント)でバーベキューを開催しています。約500名が集まって知識を交換する『ダッチナイト』は非常に盛り上がります。
ホスティング会社は10~15年以上存在しています。中には自社サーバーを過大評価し、クラウドソリューションへの乗り換えに遅れをとっている会社もありますが、多くはクラウドへの移行を利便性と費用の両方に基づいて決断し、Google Cloud、AWS、さらにはローカルのプライベートクラウドソリューションへと移行しています
DCCを利用する企業数
オランダでの採用率はそれなりに高く、ベルギーではその数はやや落ちます。クラウドファーストはもはや大企業だけのものではなく、中小企業にも浸透しています。
2019年には、オランダの従業員数20名以上の企業の75%、2021年には93%がクラウドを利用しています。この急激な増加は、在宅勤務が強いられた新型コロナウイルス感染症の流行が大きな要因です
最も導入率の高い業界
クラウド導入率が最も高いのは、ビジネスサービス/貿易の分野です。対して、教育や非営利は他の分野よりやや遅れをとっていると言えます。NPOの大半はボランティアによる運営で、クラウドの志を支える知識や予算が確保できないことが主な原因と考えられています。教育機関向けには補助金制度がありますが、制度の存在を知らない学校もあります
クラウドサービスの利用方法
- オフィス/生産性向上
- バックアップ/ストレージ
- プロセス/トランザクション
- 財務管理
- CRM
- 物流
- インテリジェンス/分析
- 開発
SaaSは、パンデミック時に65%から80%に爆発的に増加しました。多くの企業が従来のシステムと比較し、負担が大きく軽減されることに可能性を見出しています。ただし、雇用を考慮し自社システムを保護する責任者や管理者は常に存在します。
オランダでクラウドの導入が活発なのは、実利的な文化が関係しています。オランダには会社を経営する若年層やスタートアップが多く、どの会社もITインフラやソフトウェアの管理はアウトソーシングしています
クラウド市場の総売上高
2021年、クラウド市場の世界売上高は2,750億ユーロを超えました。2017年以降、毎年20~30%ずつ拡大しており、売上高の大部分である約50%は、SaaSサービスの販売によって生み出されています。これに関する詳細は、オランダ消費者・市場庁の資料「Market Study Cloud Services」(オランダ語)に記載されています
オランダ最大のクラウドサービスプロバイダー
オランダのクラウドサービスは、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)の3大勢力。この3社は、利用されているクラウドサービスの大半を占めることから、『ハイパースケーラー』と呼ばれることもあります。
顧客/ユーザーの大多数はローカルのサービスを利用しており、これがパブリッククラウドの普及を後押ししています。独自のクラウドサービスを提供するため、多くのサービスがこの3社のいずれかを利用しています。
近年、クラウドサービス市場は驚異的な成長を遂げており、今後も止まらないでしょう。利用者の増加、そして企業のクラウドサービスへの継続的な投資が成長の原動力になります
その他のヨーロッパ諸国におけるクラウドコンピューティング
ヨーロッパの主要国/市場では、クラウド市場が急速に成長を続けていますが、それ以外のヨーロッパ諸国におけるクラウドコンピューティング技術の採用率は、非常に異質であると言えます。上位に位置する北欧諸国から、採用率の低い東欧や南欧諸国までさまざまです。
北欧諸国におけるクラウド技術の導入率はかなり高くなっています。
- フィンランド:75%
- スウェーデン:75%
- デンマーク:65%
- ノルウェー:64%
Eurostatによれば、フィンランドとスウェーデンは、2021年に75%の企業が少なくとも1つのクラウド技術を導入しており、ヨーロッパで1位にランクインしています。デンマークとノルウェー(ノルウェーは非EU加盟国)はそれぞれ65%、64%で僅差で続きます。
オーストリア(40%)、ベルギー(53%)、チェコ(44%)、エストニア(58%)、アイルランド(59%)も比較的高い導入率を記録しています。
東欧と南欧諸国では状況は大きく異なり、クラウド技術の平均導入率は30%を下回っている現状です。
英国におけるクラウドコンピューティング
米国国際貿易庁によると、英国はヨーロッパで最大のクラウド市場であり、米国に次いで世界第2位のICT市場です。
さらに以下のようなデータも(以下原文の日本語訳)。
英国のハイテク系VC投資は、世界第3位(米国、中国に次ぐ)とヨーロッパの他のどの国よりも多く(フランスとドイツの合計よりも多い)、刑事的に厳しい状況の中、2020年には過去最高の210億ドルを達成することが予想される
2020年、英国におけるパブリッククラウドサービスの売上は約120億ドル。ここでもAWS、Microsoft Azure、Google Cloudが3強です。
ITAのレポートでは、2020年にパブリッククラウドサービスの需要が大きく伸び、市場の動向は大企業と中小企業の双方に影響を及ぼすと言われています(以下原文の日本語訳)。
英国企業はクラウドファーストのアプローチを着実に採用しており、ITの大部分をクラウドに移行する時期を予見できる企業も増加している
同レポートで強調されているもう一つの特徴は、マルチクラウド戦略とクラウドネイティブソリューションの採用です。英国企業は、IT投資に対して最も大きな価値を提供する企業を好み、データを移動してベンダーロックインを回避することを望んでいますが、これは最終的にさらなる複雑化を引き起こす可能性があります。
ITAのデータは、最近のいくつかの報告書でも確認されています。英国の大企業の89%が1つ以上のクラウドベースのサービスを利用し、英国議会は、国内のクラウド市場は2023年までに350億ポンドを超えると予測しています(2019年から驚きの73%増)。
そして今後数年の予測も同様で、Business Wireによれば、クラウド市場が2023年から2027年にかけて目覚ましい成長を遂げると予測されています。人工知能、モノのインターネット、機械学習などの新興技術の普及が、成長をさらに後押しすることになりそうです。
英国におけるクラウドコンピューティング技術の普及の障壁として、英国から他国へのデータ移動に関連する懸念が挙げられます。英国議会の報告書では、次のように述べられています(原文の日本語訳)。
クラウドは動的な性質を持つことから、データは定期的に移動され、組織は特定の場所にデータを残すことを求めない限り、データの正確な場所を知ることはまずない。一部の関係者は、英国の企業や個人に帰属するデータを、英国が法的な支配力を持たない法域に保存することに懸念を表明している
European Policy Studiesは、欧米諸国のデータの92%が米国に、4%が欧州で保持されると推測している
さらに英国には現在、法的なデータレジデンシー要件が存在しないため、英国とEU加盟国の企業間の自由なデータフローが継続するかどうかは、英国のプライバシー保護の妥当性に関するEUの評価次第であると言われています。
移行期間後に発生する可能性のある規制上の障害を回避するため、英国のGoogle利用者は、以前はGoogle Ireland Ltd.の下でプロビジョニングされていたが、現在はGoogle LLC(米国)がこれを行っている。
英国におけるGoogle Cloud
Googleは、2003年に最初の英国オフィスを設立。ロンドンのデータセンターは2017年に開設されました。現在、英国で6,400名以上の従業員を雇用しています。
英国は、クラウドコンピューティング技術において主導的な地位にあります。このため、Googleは英国に大規模な投資を続けており、2021年には米国と英国を結ぶ海底ケーブル(Grace Hopper)を敷設し、10億ドルの投資を投じてCentral Saint Giles開発を購入、また、英国のGoogleオフィスでは、全体で1万人の社員を抱える規模に達しています。
Kinstaのクラウドソリューション─Google CloudのSaaSからPaaSへ
近年の国際的な出来事や市場の進化により、多くの企業が自社製品やサービスの提供をテレマティクスチャネルに移行しています。高い質のサービスを維持するため、常に高速で安全、かつ拡張性のあるサイトを所有することがこれまで以上に重要な時代はありません。ECサイトにおいては、スピード、セキュリティ、スケーラビリティ、信頼性といった機能が必須になります。
これを受け、共用、専用、VPSサーバーなどの従来のホスティングから、より柔軟で信頼性に優れ、パフォーマンスの高いクラウドソリューションに移行する企業が増加しています。
クラウドホスティングソリューションの導入は、大企業のようなリソースやスキルを持たない小規模なビジネスにとっては一見複雑ですが、中小企業が市場競争力を維持し、サイトと共に成長してくためには、クラウドコンピューティングの利点を利用しない手はありません。
Kinstaは、Google Cloudとクラウドソリューションの導入に伴うすべての障壁を避け、最先端のクラウドサービスを気軽に利用したいと考えるあらゆる分野や規模のビジネスの仲介役です。
私たちの使命は、Google Cloud Platformをベースとした最高クラスのクラウドホスティングをシンプルかつ手頃な価格で提供すること。Kinstaでは、ほんの数回のクリックでGoogle Cloudにサイトやアプリケーションをインストールできます。
KinstaのPaaSサービスモデル
Kinstaのインフラストラクチャ全体は、Google Cloudのプレミアムティアネットワークで稼働しています。プレミアムティアとスタンダードティアの違いは、前者では転送中のデータが100%Googleのプライベートバックボーンを介してルーティングされる点にあります。れによりホップ数が減り、レイテンシが減少し、パフォーマンスが向上します。
Kinstaでは、すべてのお客様にC2(コンピューティング最適化)VMを提供しています。C2は計算負荷の高いワークロードに適した超高性能マシンで、以下のような用途に理想的です。
- 計算負荷の高い負荷
- 高性能ウェブサーバー
- ゲーミング(AAAゲームサーバー)
- 広告配信
- ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
- メディアトランスコーディング
- AI/ML
また、Google Cloudホスティングにとどまらず、プランにはエンタープライズ向け機能も付帯します。
すべてのプランで、以下のツールと機能をご利用いただけます。
- MyKinsta─サイト、アプリケーション、およびデータベースを簡単に完全制御できるよう、Kinstaが独自に開発した専用のホスティングコントロールパネル
- 開発者ツール─SSHおよびWP-CLIのサポートを含む
- ステージング環境─サイトごとに利用可能
- Cloudflare統合─より優れたセキュリティ、およびサイトのパフォーマンス向上を実現するため、Cloudflareと統合し、DDoS対策、CDN、HTTP/3対応、自動のSSL証明書、ワイルドカードサポートを備えたファイアウォールを提供
- DevKinsta─WordPressサイトを数分で構築、テスト、およびデプロイするための無料のローカルWordPress開発ツール。数回のクリックでローカルマシン上にWordPressサイトを作成し、AdminerやMailHogなどの強力な開発/管理ツールを使用可能。作業を終えたら、ワンクリックでKinsta上のステージング環境に反映することができる。
さらに、業界トップの知識と対応の速さを誇るカスタマーサポート、データベースの検索と置換、ユーザー管理、デバッグモードの有効化、サイトの譲渡など、複雑で手間のかかる操作を数回のクリックで完結できるツールも多数揃っています。
また、お客様が市場ターゲットにできる限り近づくことができるよう、すべてのGoogle Cloudデータセンターをサポートし、現在は世界37箇所のデータセンターの中からお好きな場所をお選びいただけます。MyKinstaでサイトに適したデータセンターを選択する方法はこちらをご覧ください。
また、ヨーロッパの主要市場にいるユーザーや顧客を考慮し、Kinstaでは創業当初からサービスやブログで公開するコンテンツをできる限り多くの言語で提供しています。
現在、KinstaのサイトおよびMyKinstaは以下の言語に対応しています。
また、英語に加えて、フランス語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語によるカスタマーサポートも提供しています。
- 英語:24時間年中無休
- フランス語:午後15時〜午前2時(月曜から金曜)
- イタリア語:午後15時〜午後23時(月曜から金曜)
- ポルトガル語:午後18時〜午前2時(月曜から金曜)
- スペイン語:午後23時〜午前9時(月曜から金曜)※いずれも日本時間(JST)
Kinstaは、Google Cloud Platformのインフラストラクチャの活用するのにうってつけの選択肢であるだけでなく、付加価値の高いサービスや機能も利用できる、他にはないソリューションです。
まずは、MyKinstaの見本紹介セッションや20ドル分の無料利用枠を使用して、アプリケーションホスティングおよびデータベースホスティングをリスクなしでお試しください。
まとめ
この記事では、欧州連合の統計局であるEurostatが提供するデータに基づき、ヨーロッパのクラウドコンピューティング市場の現状に迫りました。
国によって顕著な違いはあるものの、ヨーロッパの主要市場全体でクラウドコンピューティング技術の採用は急速に進んでいます。
いわゆる「ハイパースケーラー」は、データ主権、セキュリティ、プライバシーの確保を目的としたヨーロッパの規制に対応しなければなりません。ヨーロッパ市民のデータが米国などの異なる管轄区域に存在するという事実は、市民の権利を保証するために厳しい規制を制定するヨーロッパにとって確かな課題です。
大手クラウドサービスは、欧州の規制の要件に適応することでこの課題に対処し、Googleは新たなクラウドリージョンの解説や、ヨーロッパの大手ITCや通信会社との提携で対応しています。
これにより、ヨーロッパの企業は市民の法律と権利を尊重しながら、最先端のクラウド技術の恩恵を継続的に受けることができています。
Kinstaは主要なクラウドホスティングサービスとして、すべてのお客様にGoogle Cloud Platform上で最高クラスのWordPress専用マネージドホスティング、アプリケーションホスティング、データベースホスティング、および静的サイトホスティングを提供しています。
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