ウェブアプリケーション開発において、技術選びは非常に重要です。判断を誤れば、開発プロジェクトが必要以上に複雑になってしまいます。
そこで今回は、PHP界の二強とも言える、LaravelとWordPressを徹底比較し、その違いに迫ります。両者の違いを理解し、プロジェクトに適したソリューションを賢く選択しましょう。
Laravelとは
Laravelは、2011年にTaylor Otwell氏が自身が抱える開発課題を解消するため、そして作業の生産性を向上するために設計した、オープンソースのPHPフレームワークです。Otwell氏は、当時PHPの各プロジェクトで共通する基本的な作業の繰り返しを省略し、開発に専念できるツールがあれば、と考えていました。その後、設計したフレームワークが評価され、他の開発者のニーズを目の当たりにしたことで、Laravelの開発に本格的に取り組み始めました。
Symfony、CodeIgniter、CakePHPなど、オープンソースのPHPフレームワークは他にもありますが、Laravelには開発に必要な機能がすべて揃っており、その登場以降、非常に人気の高いフレームワークと言われています。PHPライブラリの機能が豊富なため、ルーティング、認証、セッション、キャッシュなどの基本処理を効率化することができます。
その人気から、Laravelを支える大規模なコミュニティも誕生し、複雑なアプリケーション開発に役立つパッケージも多数用意されています。さらに、サーバーサイドのプログラミング言語として知られているPHPは、78.9%のウェブサイトで使用されており、Laravelに精通した開発者には高い需要があります。
Laravel開発者の平均給与は年間90,487ドル(およそ1,200万円)と高額です。また、インターネット上にはLaravelの学習用無料・有料リソースが多数あり、Laravel開発者になるための道はそう険しくありません。
Laravelのアーキテクチャ
Laravelは、MVCアーキテクチャを採用しています。MVCとは、アプリケーションを3つの主要コンポーネント(モデル、ビュー、コントローラ)に分割して実装するデザインパターンです。各コンポーネントは、それぞれアプリケーションの特定の側面を管理します。
このアーキテクチャは通常、利用者に表示されるデータをアプリケーションロジックから分離するために使用されます。これによって、より効率的にソフトウェア開発を行うことができ、長期的なメンテナンスも容易になります。
Laravelアプリケーションでリクエストがルートに到達すると、ルーティングロジックがどのコントローラがリクエストを処理するかを決定します。次に、「コントローラ」が「モデル」データベースと通信し、要求されたデータを取得するように指示を出します。そして、コントローラがすべての情報を「ビュー」に配信して、ページが表示されるという仕組みです。
MVCの学習やメンテナンスは決して容易ではありませんが、Laravelはこれを巧みに取り入れ、バックエンドフレームワークから、クライアントサイドとサーバーサイドの両方のタスクを処理するフルスタックフレームワークへと進化しています。
主な機能
デザインパターンやフレームワークの構造に加えて、他にも2億2,200万ダウンロードを誇るLaravelには、他のフレームワークと一線を画す様々な機能があります。
以下は特に注目の機能です。
ルーティングとミドルウェア
ウェブアプリでもモバイルアプリでも、アプリケーションルートの設定が非常に簡単です。明快な構文で必要なルートとAPIを生成でき、容易かつ柔軟にルートを作成することができます。面倒なルーティングの設定ファイルは不要です。
Laravelでは、ルートを簡単に作成できるだけでなく、middleware
で保護する機能があり、アプリケーションに入るHTTPリクエストを監視・制限する実用的な仕組みになっています。
例えば、ルートを組み込みのミドルウェアAppHttpMiddlewareAuthenticate::class
でラップすると、ユーザーが認証されているかどうかが確認されます。認証されていない場合、ログインページにリダイレクトし、認証されている場合は、リクエストの継続を許可します。
キューとジョブ
時に、ユーザーに完了を待たせることなく、ウェブサイトやアプリケーションでタスクを実行しなければならないことがあります。例えば、アプリが画像のアップロードを処理したり、データベースにデータを保存したり、確認メールを送信したりする時などがその一例です。そんなときに一役買ってくれるのがキューの存在です。
キューは、複数のタスクのジョブを作成し、アプリケーションのバックグラウンドで完了させることで、ユーザー側での快適な動作を実現することができます。Laravelのキューは、Amazon SQS、Redis、さらにはリレーショナルデータベースなど、複数のキューバックエンドに対応した統一型のキューAPIを備えています。
CSRF対策
クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)は、不正なコマンドを正当なユーザーになりすまして実行する攻撃です。Laravelには、CSRFの脅威からアプリケーションを保護するセキュリティ強化策が実装されています。
Laravelでは、ユーザーごとにシークレットトークンが自動で生成され、セッションに保存されます。ユーザーからの要求には、セッションに保存されたものと一致するトークンが含まれていなければなりません。すべてのリクエストが正当なユーザーによるものであることが保証され、無効なトークンによるリクエストを拒否することができます。
アセットバンドル(Vite)
最近は、新規インストールされるすべてのLaravelアプリにデフォルトでViteが導入されています。Viteは、最新のウェブアプリケーションに優れた開発体験を提供することを目的とした、フロントエンドビルドツール。つまり、フロントエンドで変更が行われるたびに、Viteがアセットをコンパイルし、すぐさまブラウザに変更内容を反映してくれます。
HTTPセッション
セッションは、複数のリクエストにわたってユーザーに関する情報を保存するために使用されるものです。Laravelは、複数のセッションバックエンドをサポートしており、柔軟かつ整合性のあるAPIでアクセス可能です。
例えば、多言語対応のウェブアプリであれば、ユーザーの位置情報をセッションに保存し、リクエストごとに位置情報を確認して、その地域の言語でアプリを表示することができます。
キャッシュ
キャッシュは、同じデータの取得操作を繰り返し実行するのを回避するために使用されます。パフォーマンスに関する問題を防ぎ、一定の期間だけデータをキャッシュするのが目的です。
幸い、Laravelはデフォルトでfile
キャッシュドライバを使用するように設定されており、キャッシュの設定に時間を費やす必要はありません。シリアライズされたキャッシュオブジェクトは、サーバーのファイルシステム上に保存されます。また、Memcached、Redis、DynamoDB、リレーショナルデータベースなどの一般的なキャッシュバックエンドをサポートする機能もあります。
データベースマイグレーション
開発者のデータベースの設計、構築、操作を容易にする、Laravelに欠かない機能です。
また、異なるドメインやプラットフォームのユーザーと同じデータベース構造を共有することもできるようになり、バージョンコントロールに似ています。
認証とスターターキット
ユーザーの認証とログインの許可は、複雑かつリスクを伴う決断です。アプリやユーザーのデータを悪意のある行為から保護する仕組みが欠かせません。
Laravelには、この認証を迅速かつ安全に、そして容易に実行するための機能があり、作業負担を軽減してくれます。
また、認証機能を搭載したスターターキットがすぐに無料で使用できます。
BreezeとJetstreamは、ログイン、登録、パスワードリセット、メール確認、パスワード確認など、必要な認証機能を実装するのに良い出発点となります。
ヘルパ関数
基本的な機能を簡単に使用できる、便利なグローバルヘルパ関数が多数用意されています。例えば、dd()
(dump and die)関数を使って、変数の内容をブラウザに出力し、それ以上のスクリプト実行を阻止します。問題をデバックしたり、変数の内容を表示したりするのに有用です。
Laravelの使用事例
Laravelには、あらゆるプロジェクトの開発を実現する機能が詰まっています。その機能性から、複雑で高度なカスタマイズが必要なアプリケーションの構築に適していると言えます。
使用事例には、以下のようなものが挙げられます。
- 他にはない独自のアプリケーション─Laravelを一言で表すなら「無限カスタマイズ」。Laravelを使えば、パーソナライズされた機能を組み込みながら、他にはない高度なウェブアプリを構築することができます。内蔵の機能が不十分でも、豊富なヘルパ関数によって、必要なものをゼロから構築可能です。
- 企業アプリケーション─自社の課題解決をサポートするアプリケーションには、ウェブベースの事業用データ管理ツールがあります。例えば、課金システム、コンテンツ管理システム、プロジェクト管理システム、カスタマーサポートシステムなど。
- 拡張性の高いアプリケーション─定期的に新機能をリリースしながら拡張していくアプリを構築するなら、Laravelが答えです。柔軟なアーキテクチャによって、負荷に応じてアプリを拡張できます。さらに、Laravelのコアチームと世界中の開発者によってバグが修正され、頻繁に更新がリリースされているため、保守性にも定評があります。急速に進化するアプリケーション向きです。
- セキュアなアプリケーション─信頼性の高い認証システムの実装が容易なことから、クロスサイトスクリプティング(XSS)、クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)、SQLインジェクションに対して高い安全性を誇り、オリジン間リソース共有(CORS)もサポートしています。Laravelは脆弱性が低く、セキュリティに長けています。
以上を踏まえれば、どんなプロジェクトにもLaravelで良いのでは?と感じる方も多いはず。一見、他の選択肢に目を向ける必要がないように思えます。
そこで登場するのが、WordPressです。
WordPressとは
ウェブ開発業界がまだ誕生した頃、ウェブ開発は今では想像し難いほど参入障壁が高く、開発者向け支援ツールもほとんどありませんでした。
そんな中、救世主の如く現れたのがWordPressです。
2003年、Matt Mullenweg氏とMike Little氏は、PHPで記述されたオープンソースのコンテンツ管理システム(CMS)、WordPressを開発しました。他のCMSと同様、WordPressはウェブサイトの簡単な構築と保守管理を目的としていました。
しかし、WordPressの場合は、サイトをゼロから構築する必要がなく、コードの知識も不要。シンプルで洗練された外観のCMSから完璧なウェブサイトの構築を可能にし、ウェブ開発業界の可能性を押し広げました。
ちなみに、「WordPress」と言えば、WordPress.comではなく、自己ホスティング型のWordPress.orgを指すのが一般的です。WordPress.comとWordPress.orgの違いは、簡単にまとめると以下の通りです。
- WordPress.org:自分のサイトの一部としてインストールし使用する、自己ホスティング型&オープンソースWordPress。柔軟性が高く、限りなくカスタマイズが可能。
- WordPress.com:小規模で基本的なサイト向けの有料サービス。自己ホスティング型のWordPressサイトと比べて制限がある。
WordPressは20年近く前から存在していますが、依然として現役です。熱心なコントリビューターが、機能面やVue.jsなどの最新フレームワークとも統合可能な技術の実装を支えているおかげで、WordPressは時代と共に進化し、今でも人気を博しています。
WordPressを使用、学習するのに開発者である必要はありません。また、PHPで書かれているからといって、PHPの知識が必須というわけでもありません。ElementorとともにWordPressを使用すれば、数分とは言わないまでも、たった数時間で夢のウェブサイトを構築することができます。
WordPressのアーキテクチャ
WordPressは例えるなら、高性能なエンジンが搭載された車です。そのまま乗車することもできれば、他の機能(駐車センサー、GPSなど)を自由に装備することも可能です。
アーキテクチャは、プラグインベースです。WordPressだけですぐに使用することができますが、必要に応じてプラグインをインストールして機能を拡張することができます。
WordPressの新しいバージョンがリリースされると、コアファイルは上書きされます。そのため、WordPressコアを直接編集し、WordPressサイトに独自の機能を追加した場合は、アップデートすると編集内容は失われます。
これは、WordPress開発の鉄則につながります─機能の追加・変更は、子テーマ、またはプラグインで行うこと。
WordPressプラグインは、自己ホスティング型のWordPressサイトに機能を導入するソフトウェアです。その名の通り、ソフトウェアの一部を「プラグイン(差し込む)」することで、コーディングの知識がなくても、サイトに機能をインストールしたり、既存の機能を強化したりすることができます。また、プラグインの特性上、サイトの外観や機能に影響を与えることがあります。
なお、WordPressプラグインは、自己ホスティング型のWordPressサイトとしか互換性がありません。先ほど触れたWordPress.comは、テーマを変更してサイトを編集するというのが通例です。好きなプラグインを追加してサイトの機能を拡張することはできません。
主な機能
WordPressの人気の秘密は、最低限の操作であらゆることを実現できる内蔵機能にあります。以下、主な機能を見てみましょう。
プラグイン
WordPress最大の強みは、プラグインにあります。つまり、追加で何らかの機能が必要になれば、それに応じたプラグインをインストールするだけで実現できてしまいます。複雑なギャラリー、SNSウィジェット、カレンダー、SEOツールなど、数えきれないほどの種類が用意されています。
ユーザー管理
ウェブサイトに投稿者を招待したり、他のユーザーをコミュニティに加えたりするのが非常に簡単です。WordPressのユーザー管理では、管理者が数回のクリックで、サイト上のユーザー情報(ユーザー、役割、機能など)をCSVファイルでインポート/エクスポートすることができます。
メディア管理
WordPressメディアライブラリとして知られる、サイトのアセット管理に必要な機能をすべて揃えたメディア管理システムがあります。ドラッグ&ドロップでメディアを追加できるほか、投稿にalt属性、キャプション、画像、ギャラリーを追加することも。
さらに、画像編集ツールもいくつか組み込まれています。KinstaでWordPressサイトを運営されている場合は、数回のクリックで簡単に画像を最適化し、パフォーマンスを改善することができます。
最新ブラウザとの互換性
WordPressコアのすべてのコードがW3Cに完全準拠おり、最新ブラウザとの互換性を心配する必要はありません。現在の主要ブラウザ、および将来登場するであろうブラウザでもスムーズにサイトが動作します。
テーマシステム
ウェブサイトのアイデアはあるけれど、デザインをどう制作すればいいのかわからないという場合も、WordPressなら安心です。
WordPressにデフォルトで付属する3つのテーマに加えて、テーマディレクトリには、魅力的なウェブサイトのデザインに役立つ数百種類ものテーマが揃っています。
また、自分で編集したテーマをアップロードして、オリジナルの外観を実現することも可能です。
内蔵のコメント機能
WordPressにはコメント機能が内蔵されており、読者が投稿にコメントすることができるため、ユーザーのエンゲージメントがこれまで以上に簡単になっています。また、コメント欄のパフォーマンスを最適化し、スパムコメントを防止することも。
公開ツール
下書きの作成、投稿の編集と公開が行える高度なコンテンツ公開システムによって、コンテンツの管理が容易です。また、投稿や固定ページの公開・非公開を設定し、パスワードで保護することもできます。
WordPressの使用事例
絶え間なく改善されていくその機能性から、今やWordPressは単なるブログプラットフォームを超えた存在です。誰もが境界なく創造でき、共有できるプラットフォームを目指す世界規模のコミュニティによって支えられた、強力なソフトウェアです。
WordPressで構築可能なサイトの例は、以下の通りです。
- コミュニティサイト─コミュニティサイトとは、ユーザーが集まり、議論し、情報を交換し、つながり、関係を形成するプラットフォーム。WordPressでは、この手のサイトの構築が簡単です。また、WordPressのマルチサイト機能を利用すれば、1つのWordPressで複数のサイトを運用することができます。マルチサイトの保守管理に便利なプラグインもいくつかあり、Kinstaでもマルチサイトをすぐに構築可能です。
- オンラインストア─ECサイトのアイデアがあり、今すぐ始めて大きく展開したい場合には、WordPressがぴったりです。適切なプラグインをインストールすれば、たった数分でサイトを本稼働させることができます。WooCommerceは、特に人気のECプラグインです。高度に編集可能で、コミュニティによるサポートも充実しており、定期購入型のサービスを販売することも可能です。
- 会員制サイト─物理的な商品やデジタル商品を販売するだけでなく、会員制サイトの構築にもおすすめです。例えば、講師や作家が、コンテンツを一部のユーザーに向けて発信したい、という場合に便利かもしれません。WordPressでは、有料コンテンツへのアクセス権を含んだ有料会員登録制をとることができます。Kinstaで会員制サイトを運用して、会員制機能のパフォーマンスを最適化するのがおすすめです。
- 企業サイト─企業であれば、プロフェッショナルで組織的なウェブサイトを構え、競合他社に差をつけながら自社の魅力をアピールしたいところ。WordPressで適切なテーマさえ選べば、簡単に実現可能です。また製品や作品の紹介にも役立つプラグインも豊富に用意されています。
WordPressを使ったウェブサイト制作の可能性は、ほぼ無限大。目的さえ明確になれば、この人気CMSで実現できるはずです。
とは言え、Laravelにも同じことが言えます。では一体、どちらを利用すれば良いのでしょうか。
LaravelとWordPressの類似点と相違点
まずは、LaravelとWordPressの共通点を見てみましょう。
- 無料&オープンソース
- さまざまな種類のウェブサイトを構築可能
- 大規模なコミュニティと充実したサポート
- 内蔵機能が豊富
- 高速かつ柔軟
- オブジェクト指向の構造
- 世界中のコントリビューターによる信頼性と保守性
続いて、両者の相違点は以下の通りです。
- Laravelは、ウェブアプリをゼロから構築するためのフレームワークであり、WordPressは高度な機能によってウェブサイトをゼロから作成する必要がない。
- Laravelを扱うにはPHP開発の知識が求められるが、WordPressはコーディング経験不要。
- LaravelはMVCアーキテクチャ、WordPressはプラグインアーキテクチャを採用。
- Laravelではパッケージで機能を拡張・追加するのに対し、WordPressではプラグインを使用する。
LaravelとWordPressの徹底比較
LaravelとWordPressのどちらを選択するかは、両者ともあらゆるプロジェクトに対応可能なことから、容易な決断ではありません。この2つで迷っている方のために、ここからLaravelとWordPressをさらに掘り下げて比較していきます。
人気度
LaravelとWordPressは全く同じサービスでないため、この観点で両者を比較するのは公平性に欠けるでしょう。LaravelはPHPフレームワークであり、WordPressはコンテンツ管理システム。この違いは大きいです。
WordPressで構築できるものは、Laravelでも実現可能です。しかし、逆にLaravelで構築できるものすべてをWordPressで達成することはできません。
つまり、「無限の可能性」を突き詰めれば、Laravelに分があります。どんなに複雑な要件にも対応可能なウェブアプリケーションを構築するフレームワークであることを考えれば、納得です。WordPressの目的は、コンテンツ管理を簡素化することにあります。
これを踏まえ、Googleトレンドにおける過去5年間の両者の人気度は以下のようになっています。
LaravelがWordPressに大きく差をつけているのは一目瞭然です。しかしこの結果は、必ずしもLaravelの方が優れているという意味ではありません。人は流行っているものが気になり、追いかけたくなるものです。
Laravelは、現在流行りのPHPフレームワークで、Laravel開発者の採用コストは徐々に高額になっています。したがって、プロジェクトの要件に合うのであれば、WordPressを選ぶのが賢い判断かもしれません。
費用対効果
Laravelを選択する場合、信頼性の高いバックエンドの構築に経験豊富なPHP開発者、そして魅力的でユーザーフレンドリーなアプリを作成するためのフロントエンド開発者が必要になります。開発者は、必要な機能をすべてゼロから構築しなければならず、採用コストが膨れ上がる可能性があります。仮にパッケージを活用して作業を簡素化できたとしても、アプリとパッケージをプログラム的に統合する開発者を雇わなければなりません。
一方のWordPressは、プラグインやテーマの購入が必要になる可能性が高いことを考えると、完全無料とはいきませんが、開発者を雇う必要はありません。これによって、確実に費用と手間を削減できます。ウェブサイトを編集するのに開発者を雇うことになったとしても、WordPress開発者は、Laravel開発者よりも採用コストが安価な傾向にあります。これは使用する技術によるもので、Laravelでは高度なウェブアプリ向けに難易度の高い技術を扱うことがあるためです。
ホスティング
これについては、甲乙つけ難いものがあります。というのも、Kinstaの新サービス、アプリケーション&データベースホスティングなら、WordPressサイトを運営するにしても、Laravelのウェブアプリケーションを運用するにしても、数回のクリックでデプロイできるからです。
ウェブアプリケーションとデータベース向けに設計されたKinstaのホスティングサービスでは、レイテンシが大幅に削減され、プロジェクトの速度と応答性も改善されます。今なら、ご利用初月は20ドル分無料でお使いいただけます。
学習のしさすさと使いやすさ
Laravelは、PHPの開発を容易にするために設計されたフレームワークであり、開発者に優しい構文で知られています。
したがって、Laravelの学習は、ある程度の経験値を持つPHP開発者にとっては容易と言えますが、初心者が学ぶには一筋縄ではいきません。もちろん、優れたリソースとドキュメントがあれば、学習しやすくなりますが、Laravelはあくまで開発者のために設計されています。そしてここで言う開発者というのは、当然プログラミングの経験を持つ人を指しています。
WordPressは、開発者でなくても理解し、学習することができるよう、シンプルに作られています。これはWordPressの大きなメリットの1つです。WordPressを初めて使う人でも、10分ほどで基本的な要素は理解することができます。
パフォーマンス
Laravelのコードベースは、非常によく記述されており、世界トップクラスのPHP開発者によって高度に最適化されています。Laravelは、様々なパッケージによって補完可能な機能を内蔵することで、複雑な作業を効率的に処理できるように作られています。しかし、開発者は、パフォーマンスの問題を回避するために、Laravelのパフォーマンスを最適化するコツを心得ていなければなりません。
WordPressサイトの場合は、表示速度が遅い、特定のプラグインの性能が低いなどの問題に直面することがあります。シンプルなサイトであれば問題ありませんが、サイトが成長し、追加でプラグインやリソースが必要になった際には、解決策を見つけるのが困難になることも。
しかし、ベストプラクティスに従うことで、WordPressサイトを高速化することができます。また、WordPressサイトを念頭に置いて設計されたMyKinstaのような高性能コントロールパネルを使用するのも手です。
スケーラビリティ
Laravelのアプリは、MVCアーキテクチャで構築されているため、必然的にスケーラブルになります。先に触れた通り、MVCはアプリケーションロジックとユーザーに表示されるデータを分離しているため、各コンポーネントで個別に作業することが非常に簡単です。このため、ユーザー体験やウェブアプリケーションの速度やパフォーマンスに与える悪影響を心配することなく、事業の拡大に合わせて機能を強化・削除したり、プロジェクトを適応させたりすることができます。
一方で、WordPressの拡張には限りがあり、プラグインを追加すればするほど、サイトの速度が遅くなります。したがって、速度を落とさずにサイトを拡張することは容易ではありません。しかし、Kinstaの企業向けWordPress専用マネージドホスティングなら、パフォーマンスを落とすことなく、安全にサイトを拡張することができます。
開発時間
Laravelのプロジェクトはゼロからの開発となるため、優れたCMSと固有の機能を兼ね揃えたプロジェクトの完成までには、当然時間がかかります。しかし、実力のある開発者であれば、開発作業を助ける豊富なツールとそれを支える大規模なコミュニティを活かすことで、コード記述にかかる時間を大幅に削減することができます。
とは言え、この観点では、WordPressが圧倒的に優勢です。時間のかかりそうなカスタマイズも、DevKinstaを使ってサイトを構築すれば問題ありません。DevKinstaはKinstaの無料ローカルWordPress開発ツールで、WordPressプロジェクトの設計、開発、デプロイを簡単に行うことができます。
セキュリティ
Laravelのアプリケーションは、フレームワークの高度なセキュリティ機能により、その安全性が保証されます。そのため、機密性の高いデータを扱う場合には優れた選択肢です。認証システム、パスワードの暗号化、経路保護、CSRFやSQLインジェクションなどの脅威への対策など、強力なセキュリティ機能が内蔵されています。
WordPressは、過去にセキュリティ上の懸念がありましたが、徐々に検出・対処されるようになり、近年では大幅に改善されています。
それでもやはり、追加パッケージが不要なLaravelの方が信頼性に長けており、安全性が高いと言えるでしょう。
SEO
Laravelには、SEOに関する機能は特にありません。SEOを改善するには、外部パッケージが必要です。ウェブアプリのあらゆる要素を微調整できるため可能ではありますが、それなりの手間と時間が求められます。
WordPressサイトは、通常、検索エンジンで上位に表示されやすい部類に入ります。SEOを意識した設計になっており、Yoast SEOなどのプラグイン使って強化することもできますが、プラグインを使用しなくてもSEOが考慮されています。デフォルトのSEO関連機能も充実しており、URL構造の調整、タクソノミーの作成と管理が可能で、ほとんどのテーマがレスポンシブ対応になっています。
速度
Laravelのオブジェクト関係マッピング(ORM)は、他のPHPフレームワークと差をつける強みの1つです。データベースへのクエリには光速なEloquent ORMが使用されています。あるいは、Eloquentモデルよりもさらに高速なLaravelのクエリビルダを使用することもできます。
WordPressは、利用するプラグインの数によって速度が落ちる可能性があります。したがって、プラグインを慎重に選択し、インストール前にコードの質を検証することが推奨されます。
LaravelとWordPressの併用
Laravelは、今日最も人気のあるオープンソースのPHPフレームワークで、アプリのフロントエンドとバックエンドの両方を管理することができます。しかし、バックエンドでは常に複雑な操作が求められます。したがって、多くの開発者がLaravelをWordPressと併用し、Laravelでフロントエンドを管理して、WordPressでバックエンドを処理するという手法をとっています。
WordPressのもう一つのメリットは、広く普及していて、誰でも簡単に使用できること。ユーザーや投稿者にコンテンツの管理方法を教える必要がないため、ウェブアプリケーションを開発するのに有益です。
LaravelをWordPressで使う方法はいくつかあります。以下は特におすすめの手法です。
Corcel
Corcelは、LaravelとWordPressを統合する優れたオープンソースパッケージです。Laravel Eloquentモデルを採用し、WordPressデータベースから直接コンテンツを取得することができます。WordPressをバックエンド(管理画面)またはCMSとして利用しながら、他のPHPフレームワークによる反対側(モデル層)にあるデータへのアクセスが可能になります。
CorcelはLaravel向けのパッケージですが、Composerを使用するすべてのPHPプロジェクトで使用することができます。
WP Eloquent
WP Eloquentは、WordPressのデータベーステーブルをラップするためのパッケージです。Posts、Comments、Post Meta、User、User Metaの各モデルが含まれています。
ただし、長い間更新が行われていないため、使用前にアップデートが必要になる可能性があります。
WordPress Rest API
WordPress Rest APIを使用すると、ブログでJSON APIが利用でき、認証不要の読み取り専用リクエストを行うことができます。
この手法によって、データの読み出しと取得の処理が大幅に効率化され、コードの大部分も簡略化されます。
LaravelとWordPressのどちらを使用すべきか
あるソリューションから、別のものに移行することを余儀なくされた際、どういうわけか、今気に入っている機能を手放さなければならないと感じることがあります。そんな中、LaravelとWordPressは、どちらも様々なプロジェクトを実現できます。
大事なのは、要件や目的を満たしてくれるツールを選ぶことです。
以下のような目的には、Laravelを選ぶのが賢明です。
- 社内の課題を解決するための企業向けアプリを構築する場合
- 高度かつ独自の機能が求められる場合
- 機密性の高いデータを扱う場合
- 高速で将来的に拡張が必要になる場合
- APIが必要になる場合
そして、以下のような目的には、WordPressがお勧めです。
- ブログ、ニュースサイト、大量のコンテンツを抱えるサイト
- すぐにサイトを作成して稼働させたい場合
- 企業または個人のプレゼンテーション用ウェブサイト
- SEOに強いウェブサイト
- シンプルでわかりやすいECストア
結論として、Laravelは高度にカスタマイズされたウェブアプリケーションの構築に適しています。WordPressよりも費用がかかり、プロの開発者を採用する必要がありますが、好きなだけ機能を盛り込みながら、アプリの拡張を実現することができます。一方のWordPressは、軽量なウェブサイトや、機能面で大きな更新が必要になる可能性が低いサイトに打ってつけです。
あなたなら、LaravelとWordPressのどちらを利用しますか?以下のコメント欄でぜひお聞かせください。
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