今日、WordPress制作会社が提供するサービスは、プラグインのインストールやテーマの調整にとどまりません。作業効率の高いチームを維持しつつ、複雑なクライアントの要件に対応し、スケーラブルで高性能なWordPressサイトを(多くの場合)厳しい納期の中で構築することが求められます。
そんなWordPress制作業を成功させるのに欠かせないのが、賢く統合した開発環境です。
そこで今回は、WordPress制作会社エージェンシーがアジャイルで信頼性の高いサービスを提供するためのツール、ワークフロー、システムをご紹介。5ページ程度のシンプルなサイトから複雑なマルチサイトまで、適切な環境を整えれば、チーム内での共同作業の効率化と納品までの作業の高速化を実現することができます。
ワークフローを強化するローカル開発ツール
WordPress制作会社にとって、ローカル開発は基本中の基本。ローカルで開発を進めることで、本番環境やステージング環境に触れることなく、安全にビルドとテストを行うことができます。優れたローカル開発ツールは、迅速かつ柔軟で、信頼性の高い納品プロセスの一部として活躍してくれます。
以下、最新のWordPress開発を効率化する3つのおすすめツールをご紹介します。
DevKinsta
DevKinstaでは、ボタンのクリックだけで簡単にローカルのWordPressサイトを作成することができます。各サイトはDockerコンテナで実行され、PHP、Nginx、MySQLを設定できるため、本番環境の再現も容易です。Adminer、ログアクセス、メールテストなどの機能も組み込まれていて便利です。

DevKinstaは、Kinstaのサーバープラットフォームと完全統合されているため、Kinstaをご利用の場合は、ローカルサイトの準備が整ったら数回のクリックでステージング環境に反映することができます。これによりフィードバックループが劇的に高速化され、面倒な引き継ぎ作業がなくなります。
WP-CLI
WP-CLIは、コマンドラインを使ったWordPress管理を可能にするツールです。プラグインのインストールや設定の更新から、ユーザーの作成やサイトの移行まで、クリックをスクリプト可能なコマンドに置き換えます。
WordPress制作会社では、複数のサイトにわたる設定とメンテナンスの自動化によく使用されています。タスクが大量にある場合は、作業時間を大幅に削減でき、スケーリング可能な一貫したワークフローを確立することができます。
WP Migrate
ローカル、ステージング、本番環境間でのデータの移動は、すぐに面倒な作業になるのが一般的ですが、WP Migrateを利用するとデータ移行を簡素化することができます。数回のクリックで、シリアル化されたデータを壊すことなく、データベース、メディア、テーマ、プラグインを取り込んだり反映したりすることができます。

DevKinstaやWP-CLIと併用することで、高速で信頼性が高く、チーム内での共同作業を考慮したローカルワークフローが強化されます。
バージョン管理とデプロイメントパイプライン
チームで効率よくサイトを納品するには、「きれいなコード」を維持することは欠かせません。複数の開発者が同じプロジェクトに参加している場合(特にそれぞれ異なる場所で作業している場合)、バージョン管理と自動デプロイメントが重要になります。
続いてはコードの質を保ちながら、デプロイメントを予測可能なものにするためのツールとプロセスをご紹介します。
GitHubとGitLab
GitHub、GitLab、BitBucketのようなバージョン管理ツールは、ビルドと共同作業の中核になります。
Gitリポジトリ、ブランチ、プルリクエストによって、チームメンバーはお互いのコードを上書きすることなく並行して作業を進めることができます。featureブランチ、hotfixブランチ、Release機能などを使うことで、整理整頓された状態を確保し、ステージング環境や本番環境にバグが紛れ込むリスクを減らします。
プルリクエストは品質管理としても機能します。コードをレビューしたり、コメントを残したり、変更をリクエストしたり、公開前に更新を承認したりすることができます。透明性を確保しながら責任を持って作業を進めることができるため、基準を高く保つのに役立ちます。
CIワークフロー
コードがレビューされ、マージされると、継続的インテグレーション(CI)ワークフローが実行され、これにはlintチェックの実行、アセットのコンパイル、ファイルの同期、ステージング環境や本番環境への変更の反映などのルーチンタスクを処理します。
WordPressプロジェクトの場合は、以下のようなタスクが処理されます。
- 構文の問題を検出するためのPHPリンターの実行
- SCSSやJavaScriptのコンパイル
- テーマまたはプラグインファイルのエクスポート
- Kinstaステージング環境へのデプロイ
- 完了後Slackに通知を送信
プロセスの一貫性を保ち、ヒューマンエラーを減らし、すべての変更が同じ信頼できるパスに従うようにします。
GitHub Actions + Kinsta API
WordPress制作会社の多くは、独自のデプロイメントワークフローの構築にGitHub Actionsを使用しています。
GitHub ActionsをKinsta APIと組み合わせることで、マージしたブランチをステージング環境に自動デプロイしたり、デプロイ後のスクリプト(データベースの更新やキャッシュのパージなど)を実行したりできる強力なシステムを構築することができます。また、プラグインの更新やテーマの再構築をトリガーしたり、Slackでデプロイのログやエラーレポートをチームに共有したりすることも可能です。
このような自動化を利用することで、ヒューマンエラーを最小限に抑え、コードのプッシュを監視することなく開発作業に集中することができます。
デザインとプロトタイピング
サイト開発において、デザインは言うまでもなく重要な要素です。WordPress制作会社は、アイデアを明確で構築可能な計画に落とし込むためにワイヤーフレームとプロトタイピングツールに依存します。デザインワークフローは、プロジェクトを軌道に乗せ、引き継ぎをスムーズに行い、クライアントに向けて進捗を最初から可視化するのに必要になります。
Web制作会社向けのデザインツール、アイデア出しからコーディングまでプロジェクトをスムーズに進める方法をご紹介します。
Figma
Figmaは、WordPress制作会社に選ばれているデザインツールで、ブラウザ上で動作し、リアルタイムの共同作業を支援します。ワイヤーフレームから完全なUIシステムまで直感的に作成可能です。

コンポーネントベースの構造は、ブロックテーマと相性が良く、プロジェクト間でデザイン要素を再利用しながら、より迅速で一貫性のあるビルドを実現することができます。
ZeplinとAvocode
デザインが承認されたら、ZeplinやAvocodeようなツールを使って余白、色、フォント、アセット、CSSスニペットなど、開発可能な仕様に変換します。

ピクセルパーフェクトなテーマを作成する場合、Zeplinはモックアップをコードに変換する手間を省いてくれます。
フレームワーク、スターターテーマ、カスタムビルド
WordPress制作会社がカスタムビルドに既存のテーマを使用することはほぼなく、開発を簡素化し、コードの一貫性と拡張性を保つフレームワークと内部システムを持っています。
Sage
Sageは上級WordPress開発者の間で支持されているのには理由があります。WordPressのテーマ作成に最新のPHP開発プラクティスを取り入れており、(Laravelにインスパイアされた)Bladeテンプレート、構造化されたファイル構成、Laravel MixまたはViteを使用した現代的なフロントエンドワークフローを提供してくれます。

Sageを使用する場合は、Composerによる依存関係管理、環境ファイルによる安全な設定、より予測可能なフォルダ構造をサポートするWordPressボイラープレートであるBedrockと組み合わせるのが一般的です。
SageとBedrockを組み合わせることで、メンテナンス、デプロイ、スケーリング容易なWordPressセットアップを確保することができます。
プラグイン開発では、WordPress Plugin Boilerplateのようなツールがよく使用されています。ベストプラクティスを取り入れたプラグイン構築を考慮したすっきりした構造を提供してくれるため、クライアントサイト全体で再利用可能な機能を作成する場合に理想的です。
Underscores (_s)
本格的なフレームワークが不要で、軽量で柔軟なテーマを求める場合は、_s(Underscores)が今でも頼りになるスターターテーマです。

Automatticによって開発されたこのスターターテーマは、カスタムビルドを始めるのに十分な基盤を提供してくれます。よくコメントされたコードとWordPressのベストプラクティスが随所に施されているのも特徴です。
テーマの肥大化を最小限に抑える必要がある、小規模サイトや納期が厳しいプロジェクト、あるいは非常に特殊なデザインシステムを持つクライアントに特におすすめです。
カスタム内部フレームワーク
事業が成長すると、ワークフローやブランディングに合わせて設計したカスタムベーステーマ、コンポーネントライブラリ、プラグインフレームワークを使って、独自の内部システムを強化することも珍しくありません。これには以下のようなものが挙げられます。
- ACF、Gutenberg、またはカスタムブロック構築したモジュラーレイアウト
- 必要な設定を施したSEO、キャッシュ、アクセシビリティ用ツール
- JAMstackまたはReactフロントエンド向けのヘッドレスアーキテクチャ
- Figmaコンポーネントと同期する共有デザインシステム
内部フレームワークの確立は、効率性の追求はもちろんですが、一貫した品質と技術的な負担の削減、競争の激しい分野における自社サービスの差別化につながります。
クライアントとの連絡と契約の管理
ここまで挙げたツールやコードも重要ですが、クライアントとの信頼関係はビジネス成長を左右します。定期契約モデルは、明確なコミュニケーション、透明性、長期的な価値が重要であり、クライアント向けツールを使って簡素化することができます。
プロジェクト管理における透明性の確保
Trello、ClickUp、Asanaのようなツールを取り入れることで、タスク管理や進捗追跡を行い、クライアントに常に状況を共有することができます。ClickUpはオールインワンのワークスペースで、シンプルなカンバン方式のTrelloは少人数のチームや視覚的なワークフローを求める場合におすすめです。

クライアントへの情報共有ツール
ステージング環境(特にMyKinstaで利用できるもの)は、Web制作会社にとって欠かせません。Kinstaでは、ホスティングするすべてのサイトにステージング環境が標準で付属しており、本番サイトに触れることなく、機能のプレビューや品質保証を簡単に実行できます。

また、クライアントに稼働率、更新ログ、セキュリティスキャン、バックアップ、分析などを確認できるコントロールパネルを提供するのも一般的です。PDFまたはライブビューを介した月次レポートは、作業内容を要約し、継続的なサポートの価値を強化します。
特別なクライアント向けのサポートシステム
高度な要件を持つクライアントには、迅速かつ直接的なサポートが必要になります。これにはHelp ScoutやZendeskのようなツールを使用する会社もあれば、リアルタイムのコミュニケーションと迅速な承認を重視してSlackの共有チャンネルを利用している会社もあります。このようなシステムにより、応答時間を短縮して信頼関係を築き、チームに負荷をかけることなくクライアントをサポートすることができます。
自動化と品質保証
Web制作会社の規模が大きくなると、自動化が困難になります。コードの信頼性を保ち、問題を素早く発見し、信頼関係を構築すれば、重要な業務に集中することができます。
自動化テストで稼働前に問題を検出
カスタムプラグインやテーマの場合、テストの自動化が鍵となります。ユニットテストでは機能をチェックし、リグレッションテストでは変更による不具合を検出します。レイアウトの問題を見つけるためにTDD(テスト駆動開発)やビジュアルテストを取り入れることも考えられます。基本的なスモークテストであっても、ステージング環境や本番環境に到達する前に問題を見つけることができます。
CI/CDツール
継続的インテグレーションと継続的デプロイメント(CI/CD)ツールは、変更を本番に反映する際の負荷の大部分を処理してくれます。GitHub Actions、Bitbucket Pipelines、Buddyのようなプラットフォームでは、以下のようなタスクを自動化することができます。
- テストの実行
- アセット(JS、SCSSなど)のコンパイル
- ステージングまたは本番環境へのデプロイ
- キャッシュをクリアし、ビルドの完了後にチームに通知
これらのワークフローは、プルリクエストのマージや特定の日時でトリガー可能です。
このようなツールをKinsta APIと組み合わせて、変更をステージング環境に反映したり、デプロイ後にサーバーレベルのキャッシュをクリアしたりするタスクを自動化するのがおすすめです。すべてのリリースが同じ信頼できるステップに従うことを保証することができます。
ブラウザテスト
単一の画面サイズやブラウザ向けにデザインするのではなく、iPhoneから4Kモニターまで、すべての主要ブラウザでサイトが完璧に表示される必要があります。これには、自動ブラウザテストツールを使用するのが賢明です。
Ghost Inspector、BrowserStack、LambdaTestなどのプラットフォームでは、数十種類のデバイスとブラウザの組み合わせでスクリプトによるビジュアルテストを実行できます。以下のようなテストを夜間に自動で実行されるよに設定しておくと便利です。
- お問い合わせフォームと確認メッセージのテスト
- 買い物カゴおよび決済フローとの連動
- モーダル、ポップアップ、モバイルメニューの検証
- 視覚的な違いやレイアウトの崩れを検出
この種のテストは、Safariの固定ヘッダーの破損や古いAndroid携帯でのJavaScriptの衝突など、微妙な問題をサイト訪問者が気付く前にキャッチするのに役立ちます。
開発環境を支える高性能サーバー
最高の開発環境を整えても、基盤が強固でなければ意味がありません。WordPress制作会社にとっては、信頼できる高性能サーバーがこれに当たります。
優れたサーバーは、単にサイトを稼働する場所であるだけでなく、開発ワークフローの支援や保守管理の簡素化も行なってくれるため、クライアントへのより良い結果を提供するための「パートナー」になってくれます。
Web制作会社の要件を考慮して設計されたKinstaのサーバー
Kinstaは堅実なサーバーでありながら、開発環境の一部としてもお客様を支えています。Kinstaと連携すれば、ローカルプロトタイピングから本番稼動まで、開発ライフサイクルのあらゆる段階をサポートする機能を多数利用できます。
- DevKinsta:Kinstaサーバーとシームレスに統合されたフル機能のローカル開発ツール。ステージング環境に変更を反映する前に、ローカルでビルドとテストを実行可能。
- ステージング環境:Kinstaでホスティングするすべてのサイトに付属しており、ワンクリックで作成可能。更新のテスト、クライアントからのフィードバックの収集、あるいは新機能のプレビューなどに便利。
- Cloudflare統合によるCDN:すべてのプランにエッジキャッシュとDDoS対策を備えたグローバルCDN(コンテンツデリバリネットワーク)が標準装備。
- アプリケーション&データベースサーバー:WordPressフロントエンドがカスタムAPIまたは外部サービスに接続するヘッドレスまたはハイブリッドビルドに理想的。
- 専用コントロールパネルMyKinsta:複数のクライアントサイトの管理、パフォーマンス分析の表示、ユーザー役割とアクセス制限の設定、サイト単位のタスク処理などを、1箇所で快適に実行できる。
優れたサーバーを利用することで、よりスムーズに高速で稼働率の高いサイトでクライアントを満足させることができます。クライアントへの見積書にKinstaのサーバーを含めることで、高性能サイトに加えて安心感も提供することができます。また信頼性の高いインフラストラクチャに支えられたフルサービスの一部としてサーバーを再販して、継続的な収益を確保することも可能です。
その他の補助的ツール
フレームワーク、デザインツール、デプロイメントパイプラインは、開発の中核になりますが、プロジェクトを予定通りに進行し、継続的に支払いを受け取るのに役立つ補助的なツールも存在します。
決して派手なツールではありませんが、プロフェッショナルでパフォーマンスの高い体験を提供するためには欠かせません。
時間管理と請求書作成
正確な時間管理と請求書の作成は、Web制作会社だけでなくあらゆるビジネスにとって必要不可欠。Harvest、Toggl、Elorusのようなツールは時間の記録、定期契約の管理、ブランディングを反映した請求書の作成に役立ちます。
HarvestはプロジェクトツールやSlackと統合可能です。Elorusには定期的な請求書発行や経費追跡などの機能があり、長期的なプロジェクトや1つクライアントに複数プロジェクトをのクライアントに最適です。
社内ドキュメント
NotionやConfluenceのようなツールを使って、社内用ドキュメントを作成することで社内で正確に情報を共有し、クライアント情報を追跡することができ、また新入社員のオンボーディングも効率化されます。
Notionは柔軟なカスタマイズを求める場合、Confluenceは大規模またはより技術的なチーム、特にAtlassianの製品をすでに利用している場合に適しています。
Slackとの統合
Slackは単なるチャットアプリではなく、Web制作会社にとっては司令塔のような存在になります。適切な統合を行うことでGitHubのコミット、デプロイ、サポートチケット、クライアントのフォーム送信を即座に通知で受け取ることができ、ツールを切り替えずに全員で情報共有することができます。
フォームとコンテンツの自動化
CRMやメールプラットフォームなどのツールとWordPressを自動化することで、同期が簡単になります。Gravity FormsをUncanny Automator、WP Fusion、Make.comと組み合わせてワークフローをトリガーしたり、ユーザーデータを同期したり、社内のメンバーに即座に通知を出したりすることができます。これにより時間の有効活用、エラーの削減、クライアント体験の改善を実現できます。
まとめ
今日WordPress制作会社を運営するには、きれいなコードと優れたデザインだけでは不十分です。共同作業を支え、納品までのプロセスを高速化し、クライアントに応じて拡張できる信頼性の高い開発環境が必要になります。DevKinstaや自動デプロイメントから、ブラウザテストやクライアントとのやり取りまで、今回ご紹介したすべての要素が一貫した質の高いサービスの提供に貢献してくれます。
Kinstaは、WordPress専用マネージドクラウドサーバーとして、ワンクリックのステージング環境、Cloudflare CDN、ヘッドレス対応、サイト管理を楽にする専用コントロールパネル「MyKinsta」などを提供し、お客様のワークフロー改善をサポートしています。
開発環境を改良するにしても、ゼロから構築するにしても、ツールとパートナー選びが事業の成功を大きく左右します。KinstaのWeb制作会社向けプランをぜひお試しください。