WordPressサイト向けの開発やデザインをフリーランスとして請け負っていると、自分の能力や収益性を十分に引き出せているのかと疑問を抱くことがあるかもしれません。

そんな経験のある方は、この記事が役に立つかもしれません。その気になれば、フリーランスからフルサービスのWordPress制作会社を立ち上げることができます。

今回は、WordPress制作会社を立ち上げ、より大きな成功と長期的な持続可能性のために規模を拡大する方法をご紹介します。

WordPress制作会社とは

フリーランスで仕事を請け負うのとWordPress代行業を営むのには大きな違いがあります。そして小規模なWordPressビジネスとフルサービスの制作会社には、さらに大きな違いがあります。

以下、それぞれの特徴を簡単にまとめてみます。

フリーランス 小規模ビジネス WordPress制作会社
規模 1名 10名以下 10名以上
関係性役割 すべての役割を自分で担う 少人数のチームで家族のように協力し合う 取締役、チームリード、チームメンバーで構成され、全員が明確な役割を担う
提供サービス WordPressサイト向けサービス WordPressサイト向けサービス、月次メンテナンス WordPressサイト向けサービス、月次メンテナンス、デジタルマーケティング、コーチング、その他専門サービス
顧客数 キャパシティに基づく チームの能力に基づく 大口の定期顧客+安定した新規顧客の流入
収益性 労働時間に基づく チームの労働時間に基づく 無限大
顧客獲得方法 コールドアウトリーチ、求人情報、口コミ、 口コミ、リードマグネット、コンテンツマーケティング 口コミ、リードマグネット、セールスファネル、コンテンツマーケティング、PPC広告、リマーケティング、アフィリエイト、ゲストブログ、注目度の高いプレスリリースなど

WordPress制作会社は、フリーランスや小規模ビジネスよりもはるかに多くの収益を生み出す可能性を秘めています。しかし大きな収益を上げるには、WordPress制作会社の立ち上げに労力を費やし、あらゆる準備を行う必要があります。

WordPress制作会社の立ち上げ準備

WordPress制作会社を立ち上げるには、単に自分のビジネスを「WordPress代行業」と銘打つだけでは不十分です。会社を立ち上げたからといって、成功や顧客の確保が保障されているわけではありません。WordPress制作会社を成功に導くためには、基本的なことはもちろん、強固な基盤を確立しなければなりません。

以下、WordPress制作会社の立ち上げに欠かせないタスクをご紹介します。

1. ミッションの明確化

Freelancermapの調査によると、フリーランスが直面する課題には以下のようなものがあります。

  • 顧客の獲得
  • 収入の変動
  • 時間の管理

次のクライアント探しと仕事の管理ばかりに気を取られていると、一流のクライアントが仕事を依頼したくなるような素晴らしいサイト開発という最も重要な任務に集中するのが困難になります。

WordPressビジネスを立ち上げ、ある程度安定してくると、あらゆる側面が変化していきます。そんなときこそ、あらゆる決断の軸となる確固たる「ミッション」を持つことが重要になります。ミッションを明確化することで、クライアント探しや仕事の管理に追われ、自分の苦労に意識が向いてしまう状態から、いかにクライアントに価値を提供できるかという視点に切り替えることができます。

ミッションを明確化するには、どのようなクライアントにサービスを提供するのか、つまり特定のニッチを見つけましょう。

WordPress制作会社ではありませんが、Codeableのミッションの進化には共感できるものがあります。

Codeableの会社概要ページ
Codeableの会社概要ページ

創業メンバーは、開発エージェンシーを経営していた経験から、自分たちが実際に経験していた問題に対するソリューションを構築することにしました(以下英語原文の日本語訳)。

フリーランス人口の増加と競争、それゆえの低単価と質の低下、納期遅れなど。この結果として、クライアントとフリーランスのどちらも満足できていない現状を変えなければならないと思いました

会社を立ち上げるにあたって、まず自分が最も情熱を注いでいる(注ぎたい)ものは何なのか、なぜそのWordPressサービスを提供したいのかを自問してみましょう。

また、提供予定のサービスに十分な需要はあるのか、またターゲットなる顧客層の要件は十分に満たされているのか。その分野に参入することで、どのような影響を与えることができるかを考えてみてください。最後に、「なぜそのサービスを提供するのか」の要約を書き出して、簡単な説明文を書いてみます。

Codeableは以下のようなミッションを抱えています。

クライアントとフリーランスの双方に効率的に協力し合える健全な環境を構築すること

このように、ターゲットとする顧客の生活とビジネスを支援することに100%集中しなければなりません。

最後に、12ヶ月後、24ヶ月後、あるいは5年後にビジネスをどこまで拡大するかを想像してみます。会社を正しい方向に導くには、明確なロードマップが必要です。

Codeableのサービスは時とともに成長していますが、そのミッションは依然として変わっていません。

小規模なカスタマイズ作業から始まり、今日ではあらゆる形や規模のビジネスを支援しています。提供サービスの範囲は変わっても、フリーランスそれぞれの才能を最大限発揮し、平等な機会を与え、信頼に基づいた環境でクライアントとフリーランスの両方が仕事を行えるようにするという使命は変わりません。収益のためでなく、人々の生活に変化をもたらすために現在も成長を目指しています

ミッションの明確化とロードマップの作成は今すぐに公にする必要はありませんが、社内で共有しましょう。これにより、会社の目標やメンバーの個々のキャリアビジョンを一致させることができます。

ミッションが明確化されたら、公式の声明文を作成し、社員の目につく場所に張り出したり保存したりしておきましょう。会社にとって大きな決断を下す際には、いつでもこの声明文に立ち返ることができます。

2. サービス内容の明確化

誰に、そして何のためにサービスを提供するのかが決まれば、続いてはサービス内容です。「WordPress制作会社」と一口に言っても、具体的にどのようなサービスを提供するのかを明確にします。これには前のステップで検討したニッチが指針になります。

例えば、WordPressエージェンシーであるItinerisは、自社のウェブサイトで以下のように提示しています。

「私たちは教育機関、企業、会員制、第三セクターのウェブサイトを対象に、収益の最大化、認知度の向上、コンバージョンの改善、顧客ロイヤルティの向上を支援しています」
「私たちは教育機関、企業、会員制、第三セクターのウェブサイトを対象に、収益の最大化、認知度の向上、コンバージョンの改善、顧客ロイヤルティの向上を支援しています」

どのようなユーザーを支援するのかを明確にすることで、提供すべきサービスが見えてきます。Itinerisは、以下のサービスを提供しています。

  • プレミアムウェブ開発
  • デジタルブランディング
  • PCC広告などのメディア戦略
  • SEO改善

WP-Tonicは、LMS会員制サイトの開発を専門とする代行業者です。

eラーニングビジネスは、会員制サイトとオンライン講座の統合を支えるのに必要な機能を備えており、具体的には特定の顧客層に以下のサービスを提供しています。

一般的なWordPress制作会社と同じような内容のサービスを提供しなければならないということは決してありません。

その代わりに、顧客が本当に必要としているものは何かを考え、それがどのように自分のビジネスの強みにつながるのかを考えましょう

思い描いているビジョンが現在のチームでは実現できない可能性があっても大丈夫です。まずはゆっくりと規模を拡大しながら、徐々にサービスや製品を追加していきましょう。

当面は、実現可能なサービスの価値を最大化することに専念してください。

提供可能なサービス、そして顧客が必要としているものを洗い出して、次のステップに進みましょう。

ウェブ開発や顧客サイトの管理をサービスとして提供する場合には、信頼性の高いホスティングサービスを選ぶことが重要です。顧客サイトのパフォーマンスと安定性は、顧客の成功、ひいては制作会社の評判に直接影響します。

最近Kinstaで導入事例を公開したf.technologyは、代行業に理想的なホスティングサービスを探す際に、以下のような要件を設定したと言います。

  • ホスティング環境がサイトごとに分離されて、他のユーザーと共有されない
  • IPを変更することなく譲渡可能
  • ワンクリックのバックアップ復元、サブユーザー用のコントロールパネル
  • APIを介した集中自動管理システムとのやり取り
  • 顧客が24時間年中無休で利用できるカスタマーサポート

ホスティングサービスを探す際には、このくらい厳しい要件リストを作成することをおすすめします。明確な基準を設定することで、安全、高速、信頼性の高い理想的なホスティングソリューションを顧客に提供し、評判と信頼を構築することができます。

優れたホスティングサービスには、以下のようなメリットがあります。

  • サイトのダウンを最小限に抑える─信頼性に欠けるレンタルサーバーでは、サイトのダウンが頻繁に発生することを意味します。これは顧客満足度、そしてビジネス全体に悪影響を及ぼします。高い稼働率を保証することは、代行業にとって顧客の信頼を維持するための鍵となります。
  • ウェブサイトパフォーマンスの向上─低速なウェブサイトはユーザーを遠ざけ、Googleなどの検索エンジンでの表示順位の低下を引き起こします。スピードと信頼性を重視するホスティングを選択することで、顧客の成功を後押しすることができます。
  • セキュリティと安心感─顧客サイトでは機密情報を扱うことが多く、信頼性の低いレンタルサーバーでは、攻撃やデータ漏洩、マルウェアに対して脆弱になる可能性があります。信頼性に優れたホスティングは、SSL証明書、DDoS攻撃対策、毎日の自動バックアップなど、エンタープライズレベルのセキュリティ機能を提供してくれます。

KinstaのWordPress専用マネージドホスティングを利用すると、顧客サイトを安全で高性能なプラットフォームでホスティングし、常にサイトを高速に保つための機能を活用できます。インフラストラクチャとホスティングの業務をKinstaに一任することで、WordPress制作会社は大事な開発作業に集中することができます。

3. 料金の設定

小規模なビジネスを運営する場合は、価格を公開することには抵抗があるかもしれません。WordPressサイトの構築にかかる料金ではなく、サービスの価値に注目してもらいたいものです。

しかし、価値あるサービスの価格は隠す必要はなく、価格の公表によりビジネスの透明性や信頼性も向上します。

さらに、開発コストと定額料金をサイト上で事前に提示することで、見込み客の認識が整いやすくなり、ビジネスの効率化が図れます。

例えば、DevriXは以下のようなサイト開発の見積もり申請フォームを設置しています。

サービスに興味を持つ見込み顧客向けの見積もり申請フォーム
サービスに興味を持つ見込み顧客向けの見積もり申請フォーム

同社のウェブサイトでは、複数のページでサービス料金を提示しており、万が一サービスの料金に目が留まらず、このリクエストフォームにたどり着いたユーザー向けにも、以下のように料金に関する注意事項を記載しています。

DevriXは見積もり申請フォームでもカスタムWordPress開発の最低料金を提示している
DevriXは見積もり申請フォームでもカスタムWordPress開発の最低料金を提示している

これにより、見込み顧客とのやり取りがより有意義なものに。最初から価格に関する認識がある程度一致しているため、見込み顧客の課題や要件、それに見合ったソリューションの提示に焦点を当てることができます。

肝心の料金の設定に関しては、以下のようなステップが必要になります。

市場平均を調査する

手始めに、前のステップで作成したサービス内容を書き出してみましょう。

続いて、同じようなニッチ分野で、類似サービスを提供している競合他社について調査します。これにより、ターゲットとする顧客層がどの程度の料金を支払うことを期待しているのか、市場平均を把握することができます。

諸経費をリスト化する

続いて各費用をリスト化し、毎月いくらの支出が発生するのかを確認しましょう。これには以下のようなものが挙げられます。

  • ビジネスソフトウェア
  • ビジネスライセンスと保険
  • 税金の支払い
  • オフィスの賃料と光熱費
  • 備品や家具
  • ウェブホスティング、ドメイン、その他関連費用
  • 給与、福利厚生、有給休暇
  • 社員旅行のようなイベント

もちろん、これらの経費を単に賄うだけでは不十分ですが、まずは経費を分析し、ビジネスを計画通りに経営できるかを確かめなければなりません。

利益率の設定

続いて、利益を上げるためには、どの程度の上乗せが必要になるかどうかを考えます。

諸経費が月300万円程度だとしたら、健全な利益を上げるにはどのくらいの利益が必要になるのか。30%の上乗せ(90万円)で十分なのか。

また、顧客に一流のサービスを提供し、会社に貢献する社員を支えるには、会社に投資するための資金が必要になることも念頭に置きましょう。

適正な利益率を見つけて、目標月商を設定してください。

料金を設定する

次に、目標となる月商を月に受注できるプロジェクト数で割ってみます。

プロジェクトごとの費用を平均的な市場価格と比較し、適正であるかを確かめましょう。Kinstaの共同設立者兼CFOであるTom Zsomborgiは、以下のように述べています(以下英語原文の日本語訳)。

価格を強みとするビジネスなら、考え直すこと。底辺への競争が成功することは滅多にありません

十分な利益を上げ、顧客に満足する価値を提供できるのであれば、自信を持ってその料金設定を維持することができます。

料金を設定したら、価格設定表を作成して、準備が出来次第サイトで公開しましょう。

また、コストと料金は毎年見直してください。サービスの質が上がり、提供内容がより複雑化されると、自ずと数字も変動していきます。

4. 会社名の決定

一見、これが起業の最初のステップと思われますが、会社名を決める前に、何をどのようなレベルで提供するのかを決定することが不可欠です。

ブランドのアイデンティティを確立した上で、会社名を決定しましょう。以下のヒントを参考にしてみてください。

  • 会社の顔として露出したり、すべてのプロジェクトに関与したりすることがないのであれば、自分の名前は使用しない
  • できる限り短いもの
  • 発音しやすいもの
  • 独自の価値提案や強みを暗示するもの
  • 特定の何かが連想されるような言葉は避けて造語で勝負する
  • すでに他社がそのドメイン名やバリエーションを使用していないかを確認する
  • そのドメイン名が取得可能かどうかを調べる

いくつかの候補に絞れたら、従業員や以前の顧客、さらにはSNSのフォロワーなど、他の関係者にも候補を挙げてもらいましょう。

他の人に評価してもらうことで、自分たちでは見つけられなかった矛盾や違和感などに気づける可能性が高いです。

会社名が決まれば、ロゴやブランド要素の作成に移りましょう。

5. ウェブサイトの作成

制作会社のウェブサイトは、実績を示し信頼を確保できるものではなければなりません。つまり、見込み顧客にポートフォリオを提示する前に、まずはウェブサイトで会社の能力やサービスの質を証明する必要があります。

ウェブサイトは単に情報を提供するための手段ではなく、仕事に貢献してくれる「会社の一員」のような存在になるのが理想的です。

以下、そのためにできることをいくつかご紹介します。

信頼できるホスティングサービスを選ぶ

ウェブホスティングの管理は、特にトラフィックが増加するにつれて、どんどん手間がかかるようになります。

だからこそ、ウェブホスティングは外注するのが賢明です。読み込みの遅いサイトが顧客のビジネスの妨げになることは何としても避けなければなりません。

Kinstaのような代行業に特化したマネージドホスティングを利用することをおすすめします。

高速かつ安全、そして包括的なバックアップ機能で安心してサイトをホスティングできるだけでなく、Kinstaの独自コントロールパネル「MyKinsta」では、驚くほど簡単にバックエンドの調査やサーバーのパフォーマンス管理を行うことができます。

Kinsta独自のユーザー向けコントロールパネル「MyKinsta」
Kinsta独自のユーザー向けコントロールパネル「MyKinsta」

MyKinstaは、Kinstaが独自に設計したコントロールパネルです。マネージドホスティングによる安心感を得られるだけでけでなく、サイトを訪問する見込み顧客のために、サイトを常に最高の状態に保つことができます。

また、MyKinstaのユーザー役割を利用して、開発したサイトへのユーザーのアクセス権を完全に制御できます。また、完成したプロジェクトを顧客に譲渡するのも簡単です。

MyKinstaでは別のユーザーや企業アカウントにサイトを簡単に譲渡できる
MyKinstaでは別のユーザーや企業アカウントにサイトを簡単に譲渡できる

また、メールアドレスさえあれば、Kinsta以外のアカウントにサイトを譲渡することも可能です。この効率化により、他の重要なタスク(会社の管理と成長に関わる業務)により時間を充てることができます。

また、Kinsta APIを利用してWordPressサイトの作成、サイト一覧の取得、ワークフローを合理化するための特定のタスクの自動化など、Kinstaのサービスとシームレスにやり取りすることも可能です。

印象的なプロジェクトを提示する

ウェブサイトでは、質の高いポートフォリオを公開して、見込み顧客の関心を引かなければなりません。

WordPressポートフォリオプラグインを導入することを検討してみてください。

また、従来のポートフォリオの形にこだわらず、オリジナリティ溢れるポートフォリオの作成に挑戦してみるのも大いにありです。以下はNeuralabのポートフォリオです(NeuralabのKinsta導入事例はこちら)。

Neuralabのポートフォリオ
Neuralabのポートフォリオ

Neuralabは、ポートフォリオに独自のディテールを加えており、一見すると標準的なグリッド形式のポートフォリオですが、プロジェクト概要、Behanceからの閲覧数やいいね!の数などの詳細情報を視覚的に見せています。

チームメンバーを紹介する

小規模なビジネスであれば、直接クライアントと対面して挨拶するなどして、個人的に仲を深めて信頼関係を築くことができます。

しかし、会社の規模が大きくなるにつれ、社員が増え、1つのプロジェクトに複数の社員が関わるようになると、個人的なつながりを築くことが難しくなっていきます。このため、サイトでチームメンバーを紹介することで、顧客が感じ得る距離感を埋めることができます。

Triggerfishは、以下のようなページを設けています。

Triggerfishのチームメンバー紹介ページ
Triggerfishのチームメンバー紹介ページ

Triggerfishの会社概要の従業員ページでは、会社で働く従業員の写真と役職を見ることができます。

このように従業員を紹介するページを設けることで、顧客にサービスを支える裏方のメンバーを紹介でき、同時に「これだけの人員があなたのビジネスを支援します」といったアピールにもなります。

複数のサポートチャネルの用意

電話やメールはもちろん、見込み顧客には以下のようなさまざまな連絡方法を提供することも重要です。

なお、すべての連絡手段を提供できるからといって、サイトにすべて掲載する必要はありません。以下はRed Factoryの例です(Red FactoryのKinsta導入事例はこちら)。

Red Factoryのお問い合わせページにはフォームとGoogle マップが設置されている
Red Factoryのお問い合わせページにはフォームとGoogle マップが設置されている

Red Factoryでは、お問い合わせフォームGoogle マップを利用した住所しか公開していません。

自分と社員の負担を考慮し、効率的かつ効果的な連絡手段のみを選んで提供しましょう。

コンバージョンプロセスを自動化する

営業担当の数が増えても、単純な仕事はウェブサイトに任せましょう。

例えば、カスタムメイドの開発サービスを提供しており、まずは見込み顧客にディスカバリーコールを予約してもらいたい場合は、WordPressの予約プラグインを使用して、ユーザーに自分で予約してもらうことができます。

定期購読のサービスを提供し始めたら、営業担当への問い合わせなしで契約してくれる見込み顧客も現れる可能性があります。

SkyrocketWPはメンテナンスサービスの申し込みを簡素化している
SkyrocketWPはメンテナンスサービスの申し込みを簡素化している

SkyrocketWPのように、「今すぐ購入(Buy Now)」ボタンと決済ページを実装することで、営業電話のような中間プロセスを省略することができます(SkyrocketWPのKinsta導入事例はこちら)。

6. 法的な手続き

ブランディングを確立したら、サービスの提供を開始する前に、法的な手続きを済ませておきましょう。

これは最も面倒なプロセスになるかもしれませんが、最も重要なステップです。法的な問題はいつどこから発生するか予測できません。はじめからすべて準備しておくのが最善です。

特に以下のタスクは初期段階で完了させましょう。

  • 法人登記
  • ブランドロゴの商標登録
  • ドメインの購入
  • 営業許可の申請
  • ビジネス保険への加入(賠償責任保険、損害保険、労災保険など)
  • ウェブサイトのプライバシーポリシー、利用規約、Cookieに関する通知

また、税務管理、人事、法務などの相談先にも目星をつけてくことをおすすめします。

立ち上げ時には必要なくても、ビジネスが軌道に乗れば、物事が急速に展開する可能性もあります。自分と会社を守るための重要な支援システムは確保しておきたいものです。

7. チームの育成

WordPress制作会社を成功させるには、何もかもを自分で担当するのではなく、タスクをチーム内で分散することです。

自分の役割を最小限に抑える

まずは自分の仕事をすべて書き出し、内容、必要な理由、そしてビジネス全体像における位置付けなどを理解しましょう。

やっていて楽しい仕事、自分が最もうまくこなせる仕事はすべて「キープ」、やっていて楽しくない仕事、時間がかかりすぎる仕事は「任せる」に振り分けます。その後、後者の仕事を誰に任せるかを考えます。

例えば

  • オンボーディングメールはプロジェクトマネージャーに
  • 請求書の作成とフォローアップは事務担当に
  • SNSの投稿はマーケティング担当に

タスクに適任な社員がいない場合は、新たな役職が必要です。すぐに必要になるとは限りませんが、そのタスクの責任が増えるタイミングで、適切な人員を確保しましょう。

コアチームを強化する

提供サービスや製品をリスト化すると、鍵となる役割が見えてきます。通常はウェブデザイナー、ウェブ開発者、コピーライター、プロジェクトマネージャーがこれに該当します。

必要不可欠な役割を会社の人員で満たせているかどうかを確認しましょう。

また、社員に能力に見合った給与を支払う予算があるかどうかを確認しましょう。ここに問題がある場合は、サービスの提供価格が適切でないか、チームを不必要に拡大しているかのどちらかです。次のステップに進む前に一度立ち止まって、問題を特定しましょう。

新サービス提供のために人員を強化する

会社を効率的に経営できるようになり、より多くの能力と予算が確保できるようになったら、新たなサービスやプロジェクトのために人員を強化するときです。

  • SEO
  • アニメーター
  • UXライター
  • カスタマーサクセスマネージャー
  • CTO(最高技術責任者)やCMO(最高マーケティング責任者)などの役員

WebDevStudiosのWordPress代行業の従業員ページでは、各部署のディレクターが重要な役割を担っていることがわかります。

WebDevStudiosのシニアチーム
WebDevStudiosのシニアチーム

ただし、役割を無理に増やすのは避けましょう。必要性があり、追加することで収益につながることが数字で証明されてから、人員を強化しましょう。

8. ツールやリソースへの投資

利益を考慮すると、ツールやリソースへの投資には抵抗があるかもしれませんが、より多くの収益を上げるにはより良いツールとリソースが必要です。

現状を評価する

現在利用しているビジネスツールやソフトウェアをリスト化し、それぞれどのような目的で使用しているかを把握します。

書き出したら各ツールの機能をビジネスとともに拡張可能かどうかを確認しましょう。拡張できない場合は手放し、自分やチームの作業が効率化されるツールを見つけます。この作業はより多くの顧客を確保し、収益を向上させるために必要不可欠です。

隙間を埋める

またツールやリソースの一覧を見て、足りないものがないかを確認しましょう。購入を先延ばしにしていたり、まだ利用する時期じゃないと考えていたソフトウェアがあるかもしれません。

例えば

  • フォトストックサイトの有料プラン
  • デザイナーや開発者向けのデザイン共有ツール(ハンドオフツール)
  • 有料WordPressプラグインまたは有料WordPressテーマ
  • SEO監査ツール
  • 時間管理ソフトウェア
  • セールスファネルツール

必要なものだけに絞り込まず、チームの要件を考慮しましょう。チームがベストな状態で仕事を行い、顧客により良いサービスを提供するためには何が必要かを検討してみてください。

サービスを提供する前に、必要に応じてツールを追加、アップグレード、あるいは削除しておきましょう。事業が軌道に乗ってからこのような作業に手を焼くのは厄介です。

9. プロセスの作成と文書化

制作会社には多くの仕組みが必要であり、これにはさまざまなメリットがあります。

よく練られて文書化されたプロセスを作成することで、顧客に一貫した結果を提供するのが容易になります。また、新入社員が即戦力として活躍するのにも有用です。

システムを適切に確立することで、会社としてのスピード、敏捷性、正確性を高めることができます

以下は、Iron to Ironのウェブサイトです。

Iron to Ironのウェブサイトではウェブ開発プロセスが要約されている
Iron to Ironのウェブサイトではウェブ開発プロセスが要約されている

同社は、顧客サイトの構築プロセスを隠さずに公開しています。

おそらく社内では、各プロセスの手順を詳細に記した文書が作成されているはずです。さらに確立したプロセスは、一連のソフトウェア自動化、チェックリスト、テンプレートによって保管することができます。

組織的プロセス

ツールとリソース同様、現在業務で使用しているプロセスをリスト化しましょう。

古くなっているもの、あるいは効率的でないものがないかを確認し、必要に応じて更新します。また、他に必要なプロセスがないかも吟味してみてください。

新たなサービス(あるいは定期購読や製品)を追加するのであれば、関連するプロセスをマスターリストに追加しましょう。

リードの追跡やフォローアップ、顧客への請求書発行、あるいはある社員から別の社員へのプロジェクトの移行など、考えなければならないプロセスは多数あります。したがって、本業であるウェブ制作から離れ、制作会社が全体としてうまく機能するための大局的な側面を監督することが非常に重要になります。

各プロセスごとに個別のドキュメントを作成したら、社内のDropbox、Google ドライブ、プロジェクト管理プラットフォームなど、安全で一元化された場所に保管しましょう。

顧客管理プロセス

見込み顧客の創出(プロスペクティング)、オンボーディング、顧客管理プロセスも忘れてはなりません。

顧客の数が増えるにつれ、システムなしすべてを把握するのが困難になります。

CRM(顧客関係管理)、フレンドリーなプロジェクト管理とコミュニケーションツール、またCMSを簡素化するためにWordPressのカスタム管理画面を構築するプロセスなどが必要です。

また、提案書、契約書、オンボーディング用テンプレートもあらかじめ用意しておきましょう。これにより、見込み顧客に対するセールスプロセスが効率化され、より迅速にプロジェクトを開始することができます。

従業員管理プロセス

従業員の採用、テスト、オンボーディングにも同様のことが言えます。

仕事を始めたばかりの頃は、知り合いに紹介を頼んだり、ウェブ上で求人情報を掲載したりすることで事足りたかもしれませんが、制作会社を立ち上げるとなると、「求めているスキルセットを持っている」だけでは不十分です。

スキルセットはもちろんのこと、以下のような人材を探さなければなりません。

  • 専門的な役割を果たす人材
  • 会社で長期的に成長したいと考えている人材
  • 社風に合う人材

1つの弱みが致命的になる可能性があるため、妥協はできません。

面接と採用のプロセスを構築し、適切な人材を見つけましょう。そして採用後は、新入社員がすぐに活躍できるようなプロセスも必要になります。

また、従業員をプロセスの作成と文書化に関与させることも重要です。

信頼できる社員がれば、プロセスの作成と文書化のプロジェクトを一任しましょう。従業員が会社の形成により深く関与することができれば、より長期的に会社にコミットしてくれる可能性が高くなります。

10. 内部報告の設定

会社や顧客リスト、チームの規模が大きくなるにつれ、すべてを把握するのが難しくなっていきます。制作会社のビジネス上の意思決定を賢く行うには、データへのアクセスが必要です。

データを確認する時間は取らなければなりませんが、レポートを作成する作業は自動化することができます。

  • Google アナリティクス(またはその他のアクセス解析ツール):サイトのトラフィック、参照元、直帰率、コンバージョンなどの主要なパフォーマンス指標を追跡
  • CRM:営業パイプラインに入った見込み顧客、コンバージョン率、顧客生涯価値、予測収入などを把握
  • プロジェクト管理ソフトウェア(TrelloやAsanaその他多数):プロジェクトのステータス、ボトルネック、非効率なワークフローなどを監視
  • コミュニケーションツール(SlackやChatwork、Microsoft Teamsなど):社内での迅速かつ効率的なコミュニケーションを実現
  • 時間管理ツール:チームのパフォーマンスとスコープクリープ(プロジェクトが本来の範囲を超えること)を監視
  • ログ:未解決のエラー、再発する問題、顧客サービスの機会損失などをフォローアップ
  • オンラインレビューや顧客からのフィードバック:チームの成果を評価して改善点を特定

このようなレポートを自動化することで、作業時間を大幅に削減することができます。浮いた時間は、プロジェクトの成功をチームでお祝いしたり、漏れたプロセスを修正するためにチームマネージャーと協力したり、評判の芳しくないサービスの廃止を検討したりする作業に充てることができます。

WordPress制作会社の成長戦略

ここまで見てきたとおり、WordPress制作会社を始めるには、やらなければならないことが多数ありますが、準備を終えて経営を開始したら、あとはビジネスを大きくしていくのみです。

Kinstaは、2013年にウェブ開発会社からマネージドWordPressホスティング会社に転身。これは非常に大きな決断でした。現在は、多くのお客様に信頼される高品質の製品を維持しながら7桁(100万ドル)の大台を超え、継続的に成長を続けています。

これは偶然や運によってもたらされたわけではありません。最後に、WordPress代行業を拡張するための成長戦略をご紹介します。

定期的な収益源を確立する

多くのWordPress代行業社では、ウェブ開発サービスの提供が基盤となりますが、唯一の欠点は単発のサービスであるということです。このため、収益予測が難しく、また常に新規顧客の獲得のためにエネルギーを費やさなければならない可能性があります。

したがって、定期的な収入源を確保できれば、キャッシュフローに大きな安定性をもたらすことができます。

WordPress制作会社が定期的な収益を確保する方法には、以下のようなものが挙げられます。

いくつかのサービスは、自社でプロセスを管理する必要がありません(メンテナンスサービスを外注し、顧客に手数料を請求するなど)。

その他のサービスも、定期的なサポートと更新は必要になりますが、一度構築すればそれほど手間がかかりません。

コンテンツを定期的に公開する

クライアントのために奔走するのではなく、「この会社にお願いしたい」とクライアントに思わせることが重要です。

これを実現する最善の方法は、質が高く有益なエバーグリーンコンテンツ(時間が経過しても価値を失わないコンテンツ)を公開して、知名度と権威を高めることです。

影響力のあるコンテンツを公開すれば、顧客(またはビジネスパートナー)をこちらから探す手間を省くことができることに気がつくはずです。

パートナーを見つける

WordPressをメインとしたビジネスを経営する以上、FacebookグループオンラインフォーラムWordCampsSlackコミュニティ、デザインカンファレンスなど、さまざまな機会を利用しましょう。

他の人たちとつながったり、パートナー提携をしたりする機会が多数見つかります。

ウェビナーやオンライン講座を共同企画したり、有能な開発者と一緒に仕事をしたりすることができるかもしれません。あるいは、ニッチの異なる別の制作会社とパートナー提携することも可能です。

WordPressコミュニティを通じた出会いや学びの機会、パートナー提携などの可能性は計り知れません。

信頼できるホスティングを利用する

代行業が成長するにつれ、複数の顧客サイトの安定性とパフォーマンスを確保するには、利用するホスティングサービスが非常に重要です。優れたホスティングは、稼働率を保証してくれるだけでなく、セキュリティ、スピード、管理のしやすさを提供してくれます。

信頼性の高いホスティングサービスには、以下のような特徴があります。

  • 24時間年中無休で利用できるカスタマーサポート:複数の顧客サイトを管理する制作会社にとって、24時間体制のサポートは必要不可欠。優れたホスティングサービスであれば、いかなる問題にも迅速で対応し、潜在的なサイトのダウンを最小限に抑えるために即時サポートを提供してくれます。
  • 高い稼働率保証:少なくとも99.9%の稼働率を保証しているサービスを選ぶことを強くおすすめします。顧客サイトを常にオンラインに保ち、収益の損失を防いで、ビジネスの評判を守ることができます。
  • 隔離コンテナ:隔離コンテナ技術は、1つのサイトのリソース(RAMやCPUなど)が同じサーバー上の他のサイトから分離されることを保証します。これにより、他のサイトのパフォーマンスやセキュリティの問題が波及するリスクを解消することができます。
  • CDN(コンテンツデリバリネットワーク):エンドユーザーに近いサーバーにコンテンツを配信することで、サイト速度が向上します。読み込み時間が短縮されて、世界中で高パフォーマンスを確保可能です。
  • キャッシュ:信頼性の高いホスティングでは、優れたキャッシュ機能を提供しています。キャッシュを使用することでサーバーの負荷を軽減し、頻繁にアクセスされるデータをローカルに保存して素早く取得することで、サイトのパフォーマンスが改善されます。
  • 複数のデータセンター:世界各地にデータセンターを持つホスティング会社では、サイトをホスティングする場所を選択できるため、速度が向上し、地域的な障害に対する冗長性を確保することができます。
  • DDoS攻撃対策:分散型サービス拒否(DDoS)攻撃はサーバーを圧倒し、サイトのクラッシュを引き起こします。優れたホスティングサービスでは、DDoS攻撃対策を提供しており、悪意のあるトラフィックが顧客サイトを妨害するのを阻止します。
  • 自動バックアップ:定期的にバックアップを作成することで、障害やデータ損失が発生した際に迅速にサイトを復元できます。リスクを最小限に抑えるには、毎日または毎時のバックアップが欠かせません。
  • マルウェアスキャンとセキュリティ:信頼できるホスティングサービスは、マルウェアなどの脅威を常にスキャンしています。また、データを保護するためにファイアウォールやSSL証明書などの強固なセキュリティ対策も提供してくれます。

WordPress代行業を支えるKinstaのホスティング

Kinstaは、上記で挙げた機能をすべて揃えており、ビジネス拡張を視野に入れたWordPress制作会社に理想的な選択肢です。Kinstaを利用すると、24時間年中無休のライブチャットサポート(双方向自動翻訳ツールで日本語にも対応)にアクセスでき、土日や祝日、年末年始であっても、問題の発生時には問い合わせることができます。また、99.9%の稼働率を保証し、Google Cloud Platformによって提供される隔離コンテナ技術を使用して、サイトのセキュリティを強化しています。

加えて、組み込みのCDN、サーバーレベルのキャッシュ、37箇所のデータセンター(日本は東京と大阪の2拠点)、顧客のオーディエンスに応じたサイト速度の最適化なども提供しています。DDoS攻撃対策毎日の自動バックアップマルウェアスキャンSSL証明書などのエンタープライズレベルのセキュリティ機能により、お客様のクライアントサイトを高速かつ安全に保ちます。

さらに、MyKinstaでは、サイトごとにログインする必要はなく、1つのインターフェースから複数のウェブサイトを一元管理可能です。ワークフローを合理化するように設計された直感的なコントロールパネルで多くの時間を削減し、技術的な問題に関する頭痛の種を解消して、代行業の成長に集中することができます。

まとめ

WordPressがサイトビルダーの分野で過半数の市場シェアを長年維持していることを考慮すれば、WordPress制作会社の立ち上げを検討する価値は十分あります。

ただし、フリーランスでWordPressサービスを提供するのと、一連のサービスや定額制の製品を提供する制作会社では、勝手が大きく異なります。

思いつきで会社を立ち上げて、「代行業を営んでいます」と謳うことはできません。WordPress制作会社を成功させるには、以下のような多数の業務をこなす必要があります。

  • 会社のミッションと自分のポジションを明確化する
  • 顧客が必要とし需要のあるサービス内容を考える
  • 適正かつ競争力のある価格を設定して利益を上げ、ビジネスの成長を促進する
  • 制作会社としてインパクトがあり独自性のある会社名を見つける
  • 営業やマーケティングを代行するウェブサイトを構築する
  • 法的な手続きを終わらせる
  • 長期的にわたって一緒に目標達成を目指すチームを作る
  • これまで以上に迅速で優れた仕事を可能にするツールやリソースに投資する
  • ビジネスの拡大を可能にするプロセスを作成し文書化する
  • ビジネスの主要なパフォーマンス指標を常に把握できるよう、レポートの作成を自動化する

これらのタスクを完了させる自信がなければ、WordPress制作会社の立ち上げは再検討した方がいいかもしれません。WordPressでサイトを構築したいと考えているユーザーや企業は、まず制作会社を探す傾向にありますが、WordPressサービスを提供するフリーランスや特定のニッチに特化した小規模ビジネスは、費用対効果が高く、よりパーソナライズされたサービスを提供することができます。

WordPress制作会社を立ち上げることを決断したら、この記事をぜひ参考にしてみてください。小規模なWordPressビジネスでも活用できる成長戦略が多数あります。

Suzanne Scacca

WordPress、ウェブデザイン、SEOに精通。WordPressツールをテストしたり、優れたウェブデザインを探したりする以外の時間は、Xでウェブをより良いプラットフォームへと改善するためのヒントを共有することに精を出している。